アンデットナイトをめぐみんの爆裂魔法で全滅させると、鎧さんが直々に相手にしてくれるようになったよ。
そんな中、私がもう一度相手をしようかと考えている内に、「頭が可笑しい子、頭が可笑しい子」と壊れた機械の様に垂れ流していた冒険者さん達が、私達パーティーを援護するように鎧さんをじりじりと囲んでくれた。
あの~、そうやって援護しようとしてくれる気持ちは嬉しいんだけど、私と鎧さんレベルになると邪魔でしかないよ?
援護してくれるなら、もっと他の方法がある……………………ある…あれ、何だっけ?
ほら、鎧さんも邪魔だって言っちゃってください!
囲んでくる冒険者さん達を見た鎧さんはと言うと、片手に頭を、もう片手に剣を持って肩をすくめる。
「ほう、俺の一番の狙いはそこにいる連中なのだが、万が一にもこの俺を倒すことができたなら、さぞ大金が支払われるのであろうな。……さぁ、一獲千金を求める冒険者よ、まとめてかかってくるがいい!!」
邪魔どころか、かかって来いと言っちゃったよ。
あ~あ、それを聞いた冒険者さん達もやる気を出しちゃったし。
戦士風の貴方、「後ろには目が届かない?みんなでかかれば大丈夫?」そのセリフは死亡フラグだから!!
「おい、相手は魔王軍の幹部だぞ、そんな単純な手で倒せるわけねぇーだろ?」
私と同じ事を思ったカズマ君が、戦士風の冒険者さんに警告した。
それと同時に援護をするつもりで手を剣の柄に持っていき…………止まる。
カズマ君ー?柄に手を当てたまま止まっちゃってどうしたの?
必殺技の構えかしら?
そんなカズマ君の警告に答えるように、戦士風の冒険者さんは鎧さんに突っ込んで行った。
「時間稼ぎができれば十分だ!!緊急の放送を聞いて直ぐにこの街の切り札がやって来る!!あいつが来れば魔王軍の幹部だろうとお終いさ!」
突っ込みながら他の冒険者に四方から攻撃したら死角が出来るはず、と言って指揮を飛ばした。
「カズマ君、この街の切り札とやらを知ってますか?」
「おいおい、そんなの知ってたら、一目散に逃げてあいつとやらに全て押し付けるい決まってるじゃなか」
ですよねぇ。
でも、なんか引っかかってるんだけどなぁ。
私が攻撃すると、味方のはずの冒険者さん達に被害が出るので、黙って鎧さんを見ていると鎧さんは、頭を空に投げた。
あ、あれは確か………放って置いたらヤバい奴だったような気が……………。
と、観戦モードで黙って見ていると、隣りのカズマ君もあれがヤバい奴と感じ取ったのか、突っ込んで行っている冒険者さん達に向かって叫ぶ。
「やめろ、行くな……!」
しかし時すでに遅し、一斉に斬りかっかってくる冒険者さん達の攻撃を鎧さんはいとも簡単に回避した。
そして、全ての攻撃を回避して見せた鎧さんは剣を握り直して………瞬く間に攻撃して行った冒険者さん達を切り捨ててしまった。
目の前に簡単に人が死んだのに、私が感じた感情はというと、
だからカズマ君が警告したのに。
という、あっけないものだった。
別に私は、人の死に慣れている訳ではない。
寧ろ初めてだ。
だけど、死は初めてではない。
殆ど毎日自分の手でモンスターを殺している。
この世界は簡単に生物を殺して、簡単に殺される世界だ。
だから、死ぬ覚悟なんかとうの昔に出来ている。
それ覚悟が、人が目の前で死んでも特に何も思わない感情を引き起こしているのだと思う。
しかし、隣にいるカズマ君はそう簡単に人の死を振り切れる訳ではないようだった。
そりゃそうだ。
カズマ君がこの世界に転生してきて半年も経っていない。
もしかしたら、この世界がゲームだと思っていたのかもしれないね。
切り捨てられた冒険者さん達がどしゃりと音を立てて崩れる音を聞いて、鎧さんは満足そうに片手で落ちてくる頭をキャッチする。
その一連の動きをなんでもないかのように気楽に鎧さんは私達に言ってくる。
「次は誰だ?」
て、手のひらにある頭の目が心なしか、私を見ている気もしなくもない。
全力で目を逸らしますよ。
だって、魔剣グラムをエンチャント進化させるの疲れるもん。
鎧さんの言葉に怯む冒険者さん達、そんな中一人の女の子冒険者が叫び声を上げた。
「あ、あんたなんか!!今にミツルギさんが来て一撃で倒しちゃうんだから!!」
えっ!!??
女の子冒険者の叫び声に、私とカズマ君の脳が止まる。
そんなことも知らず、冒険者さん達は希望に縋るように言う。
「おい、もう少しだけ持ちこたえるぞ。あの魔剣のにぃちゃんが来ればきっと魔王軍幹部だって……」
「ベルディアとかいったな!!いるんだよこの街にも高レベルで凄腕の冒険者がよ!!」
ヤバいヤバいヤバいヤバい!!
今、冒険者さん達が希望にしている御剣御夜こと勇者(笑)は、カズマ君に勝負を挑んだ挙句負けて、魔剣グラムを取られて、めぐりめぐって私に買い取られた魔剣グラムを返してもらうために、良剣探しの旅に出かけたはず。
つまり、この街に居ない。
勇者(笑)、みんなの期待に応えれない希望は肝心な場面の数時間前に散ったよ。
で、私が勇者(笑)に向かって合掌していると、カズマ君が肩を掴んできた。
「そいえば、その手に持っている剣はなんだ?」
「えーっと、魔剣グラムですね!」
「行ってこい」
「えぇ!!嫌だ。疲れたもん」
「こんな時に駄々こねるんですか?ゆになは根性なしですね」
「カズマ君の背中に背負われているめぐみんにいわれたくないし!!」
「こんな時に喧嘩するなよ!なぁゆにな頼れるのはお前だけなんだ。もう一人の頼みの綱であるアクアは死んだ冒険者のとこ行って何かやってるし」
え?とアクア様の方向を向くと、確かにアクア様は死んだ冒険者さん達の顔をペタペタと触っていました。
……………………うん。
きっと女神様らしく、死者に対してお祈りをしているのでしょう。
そうです、そうに決まっています。
「アクア様には何か考えがあるのでしょう」
カズマ君にはそう答えておいた。
そうやって「お前行けよ」「嫌ですよ」としていると、あっさりと冒険者さん達を殺した鎧さんに怖気づいて、希望(勇者(笑)にすがっている冒険者さん達と私達を守るように立ちはだかる者が一人いた。
「ほう、次は貴様が俺の相手をするのか?」
鎧さんは左手に持った首を、鎧さんの前に立ちふさがったダクネスさんへと突き出した。
自らの大剣を正面に構え、堂々としているその姿は何処に出しても恥ずかしくないクルセイダーそのもの。
「……………………はぁ」
私はその姿を見て、自分が疲れたなんて駄々こねる自分があほらしく思えてきて、ため息を一回。
カズマ君の方を向いて………
「この状況でどうやって遊ぼうかと考えている自分があほらしく思えました。私も前に出ます」
「やっと出てくれるのか……。じゃあ俺達も」
「邪魔になるので近づかないでください。それと、鎧さんは聖魔法以外に水が弱点です。私に隙が出来たら援護をよろしくお願いしますね」
私はそう言うだけ言うと、歩いてダクネスさんの隣に向かった。
「け、ケイキも出てくるのか…………今度は本気で行くからな」
「あ~そうですか、そうですか」
私に向かって言ってくる鎧さんに生返事で返すと、ダクネスさんに小声で作戦を伝える。
「ダクネスさんは盾役に徹底してください。防御スキルを軽くみている訳ではないのですが、一応支援魔法をかけておきます。攻撃は私に任せてくださいね」
「わ、分かった。一緒に奴を倒そう!」
私がダクネスさんに作戦っていうか役割を一方的に伝えると、ダクネスさんは驚きの表情になりながらも頷いてくれた。
何よ、何よ、私だってやる時はやるんですよ~っだ。
何時も何時もふざけている訳じゃないんだよ。
これ以上鎧さんを遊ばせておけば、被害が拡大すると思ったんだよ。
……………………すみません、それもあるけど金目におぼれました。
兎に角、第二ラウンドを終わらせますか。
よくあるタイプミス
『抱くん根素』
根素がひらがななら、あっち系の意味に………。