理由は活動報告覧に書いた通りです。ほとんど私用ですが、待ってくださっていた方には感謝しかありません。
次話はもう少し早く書くことが出来るように努力致しますのでよろしくお願いします。
当然頭上から降ってくる洪水クラスの水の塊。理由は勿論、アクア様が調子扱いてこんな時に女神様の本領を発揮したせいです。
「ちょまっ!!」
「み、水!?ゴボボボボボォォォ」
真っ先に私と鎧さんが溺れた。洪水クラスってことで被害は私と鎧さんだけに収まらない。
周囲にいた冒険者さん達やカズマ君、ダクネスさん、果てには術者であるアクア様までもが突如として現れた水に押し流される。
い、息ができない!水中呼吸魔法を……………………って魔力の殆どを神水剣の維持に使っているんだった!!
くっ、仕方ないね、解除するか。溺死とかは嫌がだからね。
ピカンっと効果音を立てながら『神水剣 ヒュードルテオスクシフォス』が光に包まれ、収まる頃には普通の魔剣グラムに戻っていた。いや、神具である魔剣グラムが普通ってどうよ?とか思うけど、私が使っているからこんなもんで、本来の所有者である勇者(笑)の御剣御夜君が使えば、エンチャント進化レベルのパフォーマンスが出来るはず。
そんな事を考えながらエンチャント進化を解くと、魔法で自分の周りに空気の幕を創り上げる。それでも勢いが強すぎて、私の呼吸を安定させるのが精一杯。
何が言いたいかというと、余裕があったら水中で鎧さんを打ち取ろうと考えておりました。結果は勢いで一歩も動けなかったよ!
勢いに負けないように踏ん張ること数分後、膨大な水は街の中心部に流れて行った。
水が引いた直後何とか耐え切れた私が見た光景は、地面にぐったりと倒れこんでいる冒険者さん達にカズマ君、カズマ君に捕まっているめぐみん、呼吸は大丈夫だったそうですが勢いにやられたアクア様に、何故か頬を紅く染めているダク、変体騎士様。
そして…
「ちょっ!!貴様ら、一体何を考えている。馬鹿なのか?大馬鹿者なのか??…ッく、あのままケイキと剣を交えていた方がマシだったわ!!」
「そんなに褒めないで下さいよ~~!」
同じくぐったりと倒れていた鎧さんだったが、そこは魔王軍幹部と言うべきか?誰よりも早く立ち上がる。剣を杖にしてよろよろとしている姿は、結構ダメージが入っているように見えるけど。
立ち上がると鎧さんは、あの大洪水レベルの水について愚痴る。そのついでに、私と戦っていた方が良かったと褒めてくれたのはまんざらでもない私です。
いやはや、私と剣を交えていた方が良かったって?死に方の問題?あ、死んでたから倒され方の問題ですか?
溺死、もしくは大弱点を突かれて倒されるよりも単なる剣術の勝負で負けたかったとか?そう言えば、鎧さんは前世は真っ当な騎士様だったって言ってたもんね。
正々堂々とした勝負で負けたのなら未練はないとか?でも、私はエンチャント進化や、身体能力強化、似非剣術スキルと言ったチートを使っております故、正々堂々とは言えないね。
とは言えど、鎧さんが濡れ濡れ状態で弱体化しているのは間違いではない。私と正々堂々と勝負したかった鎧さんには悪いけど、ここは……………
「今がチャンスよ!!私の大活躍で弱っているこの機に何とかしなさいカズマ!!!早く行って、行きなさいカズマ!!」
私が鎧さんに速攻をかけようとした瞬間、アクア様がわざわざ大声を出して攻撃のタイミングを鎧さんに教えてしまいました。しかも、ご氏名はカズマ君。私は完璧にお呼びではない様子です。私はいらない子ですかアクア様??
アクア様のご指名を受けたカズマ君は、何故かアクア様を睨みながら鎧さんの前に出て来る。そして、左腕を突き出して手のひらを鎧さんに向ける。
まさかあれは!!向ける相手が間違ってますよカズマ君?
カズマ君が発動しよとしている魔法に「え?その魔法って女の子限定じゃなかったけ?」と驚愕する私だったが、ここは空気を読む私。
「今度こそお前の武器を奪ってやるよ!覚悟しろッ!!」
「やってみろ!!弱体化したと言えど、魔王軍幹部であるこの俺に駆け出しの冒険者の『スティール』如きで武器を撃ばえる訳がなかろうが!」
カズマ君はもう何回もチャレンジしていたらしい『スティール』を鎧さんに向かって発動させる。 一方で鎧さんも負けていられない。何時もの様に首をお空高く放り投げて、カズマ君に対峙するように大剣を構えた。
鎧さん、終わったな。カズマ君相手にスティールを喰らうのは不味いよ。
私よりも低いとはいえ、カズマ君は幸運値が以上に高い。そんなカズマ君に対して鎧さんはアクア様の洪水で弱体化済み。
どちらが勝つかは一目瞭然。そこに私はちょっとした悪戯心が芽生えてしまった。ただでさせカンストしているカズマ君に運を上げる魔法を使うとどうなるのであろうか?と。
「そ~れ、『ブレッシング』」
「『スティール』っ!!!」
「ちょっと待てっ!!ケイキ、お前っ!!今何かやっただろ!!??」
私の幸運上昇魔法を受けたカズマ君は気にせず、鎧さんに向かってスティールを発動する。私の突然の行動に、鎧さんは何やら大焦りだが、私はそんなの知らな~い。
ドキドキとカズマ君の結果を待つが、冒険者さん達が落胆する声でカズマ君が武器を奪う事に失敗したことを悟る。
あれ?激運に上昇魔法を掛けたせいで効果が逆になった?でも、鎧さんは大剣を握りしめたまま動かないし…………。
カズマ君は失敗した。しかし、鎧さんは動かないでいる。
両者フリーズ状態に私がそろそろ動こうかな~?て考えていると、ふと思い出した。
そう言えばお空にあるはずの鎧さんの頭はどこに行ったの?
私はお空を見上げて見るが、鎧さんの頭を見つけることは出来なかった。じゃあ鎧さんの手の中?いいえ両手は大剣を握りしめている。ではではその辺に転がっている?と周りを確認するが、何処にもない。
突然行方不明になってしまった鎧さんの頭。しかし、以外な場所から見つかった。
「あ、あの……………………首を返してもらえませんでしょうか?」
「……………………あ、そんなとこにいた」
何と!カズマ君の腕の中から見つかったのだ。如何やらカズマ君はスティールで鎧さんの大剣ではなく、お空に放り投げた顔を奪い取ったらしい。
見つめ合うカズマ君と鎧さん。そんな中、カズマ君が出した答えは!!?
「お~いお前ら、サッカーしようぜ!」
「あ~!!やるやる!!へいパース」
「いででで!!!お、おいやめろ!!」
「ひゃひゃひゃ、これおもしれえな」
「俺にもやらせろよ」
「バカ、俺の方が上手ぇに決まっている貸せ!」
カズマ君は私の要望通り、鎧さんの頭を足で蹴ってパスしてくれた。パスを受け取った私は、足に強化魔法をかけてから、冒険者さん達にレクチャーしながらサッカーのルールを教える。
すると大反響。皆さん我先にボール、基鎧さんの頭でリフティングに挑戦している。頭故にちょと蹴りずらいが、私は見本として数回のリフティングを成功させた。次の人に渡して、私は監督役に徹する。
あ、あの人私よりも上手い!!わ、私だって重力操作を行えば、無限に出来るもん!
そう言えば、「友達はボール」が名言な作品の真似事がこの世界だったら出来るかも。魔法があれば超次元サッカーも夢ではないのだ。
そんな事を考えていると、カズマ君がダクネスさんにただ立ち尽くしている鎧さん本体に向かって攻撃を与えるチャンスを与えていた。
ダクネスさんが一太刀入れたいと言っていたのを私は完全に忘れていたけど、カズマ君はちゃんと覚えていたらしい。
「おいダクネス、一太刀喰らわせたいんだろ?ゆになも、ちょっと来てくれて」
「はいはーい。お呼ばれしたゆになちゃんはどこにでも参上しますよ~」
「うん、そういうの今はいいから。それよりもダクネスのどうしょうもない剣術を、どうにかして当てることが出来るようにできないか?」
「あ~、ちょっと私の事何だと思っていますか?便利屋、何でも屋扱いなの??」
最近、カズマ君の私への扱いが酷くなっているような件について。もうこれだけで、ラノベが一冊書けちゃうよ。
冗談はこのくらいにしておいてっと、問題はどうやってダクネスさんの攻撃を当たるようにするか?ですか。簡単な方法はダクネスさんにスキルポイントを使ってもらい、両手剣スキルを取てもらうのだ。でも、変なところで意志の硬いダク…変体騎士様は攻撃が当たるようになることは望んでないでしょう。(今回の様に特別な理由は除いて)では問題は今回限りで両手剣スキルを発動してやること。…………結構難しいかな。
私がこの難題について頭を捻っていると、カズマ君がしびれを切らしたのか「もういい」と私に言ってきます。この発言は喧嘩を売っているのかな?
「…出来ないならいいぞ。ダクネスがホントに攻撃を当てられる保険の様なものだから――」
「『スキルレンタル』対象者はダクネスさん、貸し出しスキルは初級両手剣術スキル」
「な、なんだこのかつてない湧き上がる衝動は!!?」(両手剣の扱いが出来るようになったからです)
「って、できるのかよ!!」
「ふっふっふっ、ゆになちゃんが出来ないと何時言いましたか?」
結構難しかったのは方法を考えるまで。ダクネスさんにスキルを覚えて貰うのではなく、私から貸し出したらいいじゃん!と考え付いたら、後は簡単。初級創作魔法でスキルレンタルを作ってダクネスさんに私の初級両手剣術スキルを貸し出しただけ。
私から両手剣術スキルを貸してもらったダクネスさんは、カズマ君に拾ってもらった自分の剣を大きく振りかぶり、サッカーボールにされている頭のせいで微動だにしない体に向かって切りつけた。
「これはっ!お前に殺された、私がお世話になった奴らの分だぁ!!この一撃に全てを載せるからな。まとめて喰らえぇ~!!!」
「ぐはっ!」
ダクネスさんが斬りかかった瞬間、サッカーを楽しんでいた冒険者さん達の方向から鎧さんのくぐもった声が聞こえてきた。
鎧さんの本体は、私が何度も攻撃を繰り返して与えたダメージとアクア様の洪水で弱ったせいか、ダクネスさんの強い一撃で魔王さまの加護が与えられている鎧の一部分が無残にも砕け散り、胸元にザックリと大きな傷を負ってしまう。
そして、いつの間にか戻って来られていたアクアにカズマ君が最後の一撃を任せる。
「おし。アクア、後は頼んだ!」
「頼まれたわ!!」
全快の状態でも悲鳴を上げさせたアクア様の浄化魔法。それを私の猛攻でHPとSAN値を削り、弱点の水で弱体化、ダクネスさんの一撃で魔王様から頂いたと言う加護付きの鎧も壊れた。そんなHPが赤状態な状態で女神の浄化魔法。もう、オーバーキルでしかない。
アクア様は手のひらを壊れた鎧部分に向けて、魔法を演唱した。
「『セイクリッド・ターンアンデッド』ッ!!」
「ちょ、まっ!ぎやゃゃあああああぁぁぁぁ~!!」
浄化魔法を受けたのは身体部分だけど、聞こえてくる悲鳴はサッカーを楽しんでいる冒険者さん達の方向から。シュールだなぁ、と思いつつ今度のターンアンデッドが効いていることに安心する。
鎧さんの身体部分が白い光に包まれて、段々と薄くなり消えていく。範囲外であった鎧さんのボール部分もきれいさっぱりなくなり、遊んでいた冒険者さん達が困惑している。
あの盛り上がり様、後でサッカーボールを作って売ってみるものいいかも知れないね。誰かがマネする前にバカ売れバカ売れ。
ってあれ?途中から忘れていたけど、鎧さんって何でこの街に来たんだっけ?めぐみんの爆裂魔法が原因だった気が…………。
ともあれ、こうして魔王軍幹部である鎧さんを無事に討伐する事が出来たのであった。
次回『アクア様は空気を読まないお方です』
注、予告はあくまでも予告です。更新する内容にと違いが発生する場合がございますのでご注意を。
では、また次回。