この素晴らしい駄目神様にお祈りを!   作:与麻奴良 カクヤ

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最終回(仮)です。一話前にも投稿してあるので、お気に入りから来た人はご注意を。


313 この素晴らしい駄目神様にお祈りを!(仮)

 私達カズマ君パーティーに特別報酬の三億エリスが受け渡されると知って、ギルド内は大騒ぎだ。 

 そんな中、ルナさんだけが申し訳なさそうしているのを私は見た。

 

 

 嫌な予感がするのは私の気のせいだとい………………いな~。

 ってさっそうと駄目だったよ!!

 せめてもの抵抗で、私に被害が出ないように離脱を!!

 

 

 何故か私が離脱を考えるかと言うと、申し訳なさそうにしているルナさんの手元には、正規の書類っぽい物があったからだ。

 それが借金の請求書だと、私は知っている。

 ちらりと見えた金額部分には、幾つもの0が並んでいんだよ!

 

 

「それじゃあカズマ君!!私はオトモダチを見つけたので、そちらに向かいます!!今日は何だかイジ……久しぶりに会ったので帰って来ないと思いますが、気にしないで下さいね!?」

 

「あぁ、分かった…って今イジリって言おうとしたよな!?それに、この酔っ払い女神の世話はどうするんだ!!?」

 

「誰が酔っ払いよ!!ゆにな~気にしなくても大丈夫よ~!」

 

 

 サッサとこの場から離脱したいわたしの背中に、アクア様が優しいお言葉をかけて下さる。

 私はそれに感謝と黙禱を捧げながら、ギルド内の騒がしい中心から離れた。

 

 

 

 本当に借金の請求書から逃れたいんだったら、ギルドから出ていけばいい。

 でも、私はその中心から離れるだけに留めたのはちゃんと理由がある。

 それは、

 

 

「ゆんゆん、おひさ~!!」

 

「きゃっ!?き、きゅうに出てこないでよゆにな~!!」

 

 

 もぉ~!!と私に対して怒っているのは同じ紅魔の里出身で、私とめぐみんの同期であるゆんゆんだ。

 カズマ君に言ったオトモダチとは、本当にお久しぶりな登場のゆんゆんを見つけたからである。

 これで一応のアリバイになる。でかしたぞゆんゆん!

 

 

「で?鎧さんの襲撃事件の場面に居なかったゆんゆんが、どうしてこの場に居るの?もしかして、参加してないのにこの気分を味わいたかったとか?それはダメだよ、この宴は鎧さん討伐作戦に参加した冒険者でないと参加できないんだから」

 

「よ、鎧さん?誰の事を言っているのか全然わからないよゆにな。あっ!もしかして、魔王軍幹部のベルディアの事を言っているの?…………なかなか個性的な名前を付けたね。後、宴に参加できなくても冒険者ギルドに居るのは、別に違反でも何でもないんだから」

 

 

 ありゃりゃ、冷静に返されたよ。

 もしかしてゆんゆん、成長している?

 …………主に胸が!!?

 まだ成長止まって無かったのかよ。

 

 

「ちっ!」

 

「今何で舌打ちしたの!!?」

 

 

 あ、やっぱりゆんゆんだ。

 お姉さんは安心したよ。

 

 

 ゆんゆんと合流した私は、カズマ君達から出来るだけ遠く人の少ない隅っこに移動した。

 

 

 あ~、カズマ君とアクア様が叫んでいるなんて聞こえない~。

 見つからない様に潜伏スキルAを使っているなんてワタシハシラナ~イ~。

 

 

 勿論、魔法を使っている事など、ゆんゆんには気づかれるはずもない。

 

 

「それで?魔王軍の幹部討伐には参加しなかったけどその余韻には浸りたくてギルドに来たが、やっぱり私にはレベルが足りなかった状態だったゆんゆんは、魔王幹部討伐の英雄パーティー一員であるこの私にいったい何の用ですか?」

 

「何の用ってゆになから私を椅子に座らせたよね!?そ、それに!余韻に浸りたかったわけじゃないもん!!ちょっとクエストの受注に立ち寄っただけだし………」

 

「……………………悲しそうな顔を向けないでよ。「同じ紅魔族出身なのに、私の方が頭がよかったのに、大成功しているゆになちゃんに、ネタ魔法しか持ってないのになんやかんや言って仲間ができ始めているめぐみん。どうして私には仲間やお友達が出来ないのぉ!!」って顔をしないでね」

 

「こ、心を読まないでくれるかなぁ?」

 

 

 いや、心を読むなんて高度なことしないでも、ゆんゆんの今の顔を見たら誰でもわかると思うよ?

 あ、ゆんゆんのボッチ適正SS+を知っている紅魔の里の皆さんでないと分からないですか。

 良かったね、心を読まれる心配が減ったよ!?

 

 

 それから、ゆんゆんの話を献身的になって聞いてあげた。

 まぁ、案の定紅魔族ってネームバリューで中々声をかけてもらえず、逆にゆんゆんから溢れ出る根暗オーラが声をかけて貰えない事態を悪化させて、ギルドの隅っこで一人チェスで遊ぶ始末。

 ついには簡易的な大会で優勝出来る程の腕前になったらしい。

 ってそれはどうでもいい。

 

 こちらに来てもう大分経つが、パーティーでクエストに行った回数はついにはゼロ。

 冒険者としては食っていけるが仲間が出来ない。

 どうやったら出来るか考えてと頼み込まれてしまった。

 あの~ゆんゆん?

 冒険者をお友達作りのお仕事と勘違いしてない?

 

 

「単刀直入に問おう。ゆんゆんは一体何が言いたいの?」

 

「え…えっと………。私と一緒にクエストへ同行してください?」

 

「何故に疑問形。………………はぁ~、いいですよ。明日から臨時パーティーを組みましょう。となると、一応アクア様じゃなくて単純バカなダクネスさんに「少し一人行動にします」的なことを伝えて。カズマ君はいっか。帰って来ないって言ってるし」

 

「へ?……?っちょっと待って!わ、私とパーティー組んでくれるの?」

 

 

 悲しそうなゆんゆんとパーティーを臨時で組んであげることにした私は今後の行動について考え始めた。

 すると、ゆんゆんがぽけーってした顔になった後、勢いよく私の顔に自分の顔を近づけて確認を取ってくる。

 そっちの方向に興味は無いが、キスができそうな距離だ。

 

 

 こんなにも興奮するってどんだけ同行者に飢えていたんだよ。

 多分、人と会話したのも数か月振りになるとか?

 幾ら何でもそれはないよね?

 頬っぺたを何回も抓っている姿を見ると不安になってくるよ。

 

 

 私が一時的にパーティーを組んであげると言っただけで興奮しているゆんゆんに、私は「クリエイト・ウォーター」で水を頭にぶっかけて冷やしたあげた。

 その際にギルドの備品である机や椅子が濡れてしまったが、請求はゆんゆんにお願いします。

 

 鎧さんの特別報酬が入った為、今日はクエストを受ける気がなくなった私は、昨日の疲れを癒すべく宿に戻ろうと椅子を立ち上がろうとしたその時。

 ゆんゆんが私にストップをかける。

 

 

「あ、ゆになちょっと待って」

 

「何ですか?頭に水をかけたことは謝らないよ?」

 

「それはそれで言いたいことがあるけど…………。そうじゃないのよ。待って今探すから」

 

 

 ゆんゆんはそう言って脇に置いてあったカバンの中を漁り始めた。

 チラッと見えてくるカバンの中身は、チェスにトランプ、本、何故か枕。

 この子はギルドに一体何をしに来ているのだろうか?と思ったが、話が長引きそうに思えたのでいじるのは辞めた。

 ごちゃごちゃに見えるカバンの中は、本人にとっては分かるように整理されているらしく、探し物は比較的に早く見つかった。

 それをゆんゆんは私に手渡ししてくる。

 

 

「手紙?」

 

「ほら、私って村長の後継者じゃない!?だからこうやって時々手紙や仕送りが来るの」

 

 

 あ、普通の家で仕送りがない私への当て付けですか?

 よし、ケンカなら買いますよ?

 今ここで!

 

 

「…でって!?何で拳を振りかぶっているのかなぁ!!??」

 

「うん?ゆんゆんは自慢したいだけなのかなぁ~?って」

 

「めぐみんにはするかもしれないけど、ゆになにはしないわよ!」

 

 

 めぐみんにはするんだ。

 まぁ、めぐみんの家は貧乏だもんねぇ。

 それに、ゆんゆんはめぐみんを特にライバル視しているから、一つでも勝てる部分が欲しいのだろう。

 そっとしておいてあげよう。

 

 

 そう言えば私に手渡して来た手紙は何なのだろう?と私は手元にある手紙をひっくり返して宛名を確認した。

 よく考えれば分かることだけど、ゆんゆんが私に開けてない手紙を渡すって事は宛先が私であることが普通なわけで、例に漏れずこの手紙は私宛だった。

 差出人を見ると、お母さま。

 

 

「何で私宛の手紙をゆんゆんが?はっ!もしかして郵便物の偽造受け取り!?遂に犯罪に……」

 

「あのね!!私の話をちゃんと聞いてたの?私宛の荷物の中にそれが入っていたから持ってきてあげたのに」

 

「あっホントだ。「郵便代が勿体無いので村長の郵便物に混ぜておきます」って書いてある」

 

「不法投入!!?お父さんもしっかり確認してよぉ~」

 

 

 まさか自分宛の荷物にコッソリ紛れ込ませてあったものだとは思わなかった手紙に、ゆんゆんが項垂れている間に私は手紙の内容を読む。

 

 

『ゆになへ

 

   お元気ですか?お母さんは、ゆになが見知らぬ街でうまくやっていけてるかあまり心配ではありません。(じゃあなんで聞いたし!?)だってゆになは私の子ですもの!こちらは変わりはありません。今日もいつも通り、魔王軍に嫌がらせの襲撃を行って来ました。(あ~~ね)こちらの現状報告は以上です。しかし、お母さんはゆになに言いたいことがあります。それは……………………(ゴクリ)…………仕送りは何時になったら届くのかしら?(あ、仕送りを受け取る方ではなく、送る方でしたか)お母さん、もうそろそろ貯金が無くなってしまいそうなの。(………)後、偶には帰って来なさい。結婚相手を探してあるので(もう!!?気が早すぎるよ!?)ではゆになが大金と一緒に帰ってくる日を楽しみに待っています。

 

                        ゆになの母クインローMARK2より

 

 追伸:因みにお母さんは三日前まで風邪でダウンしてました。             』

 

 

 色々と突っ込ませて欲しいが、やめておこう。

 だって私がこんな性格なんだよ!?

 親がそんなのだって不思議じゃないよね!?

 取り敢えず私がすることは…。

 

 

「ゆにな、どんな内容だった?」

 

「……………………知らない方がゆんゆんの為ためですよ(主にツッコミどころが多すぎで息が持つかどうか)」

 

「そ、そうなんだ」

 

 

 手紙の存在を無かった事にすることだった。

 

 

 さてと、明日から頑張りますか。

 先ずはゆんゆんとパーティー活動。

 次にアクア様とカズマ君の借金返済の手伝い。

 その後は、また魔王軍の幹部が来るかもしれない。

 まぁ、面白可笑しく生きる努力をしよう。

 そうしたら、私にも……………………。

 

 

 私はギルドから宿までの道のりで、そんなエピローグ的な事を考えた。

 

 

 

 

 私にも

 

 駄目神様にお祈りを挙げるのではなく

 

 心の底から

 

 この素晴らしい世界に祝福を挙げられるようになるかもしれない。

 

 

 

 

 

         この素晴らしい駄目神様にお祈りを!完(仮)




 大変長らくお付き合いいただきありがとうございました。仮エンドです。また再開するかもしれませんが今までありがとうございました。
 活動報告に後書き的な事と今後について、後現状報告をしてます。そちらも宜しければどうぞ。
 では、また会える日まで。

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