ダッダッダッダッダッ!
ゆになが階段を上がる音だけが部屋に響く。
ゆになが空元気気味にお姉さんの元から出ていき、部屋に戻った頃、お姉さんはゆになの心配をしていた。
「ゆになちゃん、どんどん食べなくなっているわ。今日なんて特に少ない」
お姉さんはゆにながここに来た時の事を回想する。
思い出すのは元気な様子で食事を取るゆになちゃんを思い出すのみ。
(あの時はまだ食欲もあったし、沢山食べていたわ。やっぱり仕事が上手く行ってないのかしら?それとも、教会へのお布施が多過ぎるのではないのかしら!?)
お姉さんはゆになに教会に渡すお布施の金額を聞いたことがあった。
その額は生活に困らない額だったはず。
昨日までは少なくとも果物一個ではなかった。
食事代を払える位のお金は手元にあったという訳だ。
お姉さんは知らないがゆになの今日の晩御飯が少ない理由はキチンとあった。
ゆになは、今日のお布施の額は減らしていなかった。
もともと、今日の収入-お布施=ゆになが自由に使えるお金だ。
しかし今日は収入がいつもよりいつも少ない。
そして、アクアにワイロを渡している。
ゆになが使えるお金は赤字だった。
仕事が上手く行ってない、と言う予想が当たっているとは思いもよらないお姉さんは、少し的外れな事を考えていた。
(アクシズ教なんて、町の迷惑にしかなっていないのに。そんな奴らにお布施だなんて……司祭におこずかいをあげている様なものじゃない!!)
そう考えるお姉さんだったが、ゆにながお布施を差し出しているのは「アクア様にだ!」と言い張るだろう。
そして「アクア様に渡っていなくても、アクア様に渡す気持ちがあればアクア様はお恵みを与えてくださるはず」と続けるはず。
(はぁ、普通の人よりはユーモアに溢れた子だけど、ゆになちゃんがエリス教徒だったら良かったのに)
そこまで考えて「これ以上考えても仕方ない」と結論を出したお姉さんはある準備に取り掛かった。
ゆになはバタンと音を立てて、部屋のドアを閉めた。
そしてそのまま、備え付けのベットに倒れる。
「ハァ・・・一体いつまで続ければいんだろう……………」
外に出ている時とは真逆のテンションだ。
ゆになはベットに倒れたまま動かない。
お姉さんに食べると言った果物も、荷物と共に放置されている。
グぅ―とゆになのお腹が鳴ったが、それでもゆになは動こうとしない。
(お腹が空いた。でも、食欲が湧かない。昔と一緒だ。……………何もしたくないな)