ギルドの受付は職業故に、冒険者個人の収入を知っている。
年に一度の税金徴収などがある為だ。
ルナはゆになの収入を思い浮かべた。
(確か、結構な金額を稼いでいたはず)
「そんなベテラン受付嬢のルナさんは、初心者パーティーの収入も当然知ってますねぇ?」
「まさか!収入が下がると知ってパーティーに入ったのですか!?」
ルナはこの街に着いた時から、高難易度のクエストをバンバン完了しているゆになが初心者パーティーの収入を知らないと思っていた。
だから、こそっと教えて「考えて貰えないかな?」と思っていたのだが。
知ってるゆになが、それでもパーティーに入るのが考えられない。
普通、誰が自分から収入が下がると知って、これまでの現状を変えるだろうか?
ルナのそんな考えは、次のゆになが言った一言で吹き飛んだ。
「そこで!秘密(公然)の単独クエストです!」
そこでルナはやっと理解が及ぶ。
それだけで下がるなら、空いてるときに副業でやれば良いだろう?と言う考えだ。
もっとも、高難易度のクエストを副業と言うには少し舐めているのだが、流石チート転生者。
普通の冒険者とは違う。
「はぁ、特に規定違反ではないので、大丈夫です。ギルドとしても高難易度のクエストを受けてくれるゆになさんは重宝していますし」
「じゃあ、お願いしな~す!」
ルナに良いクエストのキープを頼んだゆになは、隅の方で期待する様な目で見てくるゆんゆんを無視して、別のテーブルに座った。
そこから何時間経っただろうか?
ゆんゆんがゆになに声を掛けようと、席を立ち直ぐ座ると言う奇行を数えること五回繰り返した頃、ゆになのアクア様レーダーがピンっ!と反応した。
その反応を受けたゆになは飛んだ。
文字通り”飛んだ„
無駄に洗練された重力魔法を使い、自分の周りだけをGを軽くして、一歩でふわぁと宙に浮かぶ。
それだけでも、ギルド中の視線を釘付けにするのだが、それだけでは終わらないのがゆになだ。
宙に浮いたゆになは自分だけに効果が及ぶ様に調整して、真横のGを掛ける。
宙に浮いたまま真横に移動するゆになに、ギルド中の冒険者は開いた口が塞がらなかった。
もし、この場にカズマが居たのならこう言うだろう。
「武空術かよ!!?」と。
隅のテーブルでゆんゆんが「また、奇行をおおぉぉぉ!!!」と嘆いているが、ゆになは知っちゃこったない。
そして……………
「おはようございます!アクア様!!」
「うぉぉぉ!!」
最敬礼姿でアクアを出迎えた。
注:「お願いしな~す」は誤字ではありませんよ!