ゆになの日常その一です。
あの私が自殺をし、女神アクア様と出逢い、転生から早十二年。特に語るべき事もなく、すくすくと成長していった。
赤ちゃんからやり直しものだと、初めの数年は特に何もなくて何か変化起こるまで飛ばすよね!と言う、べたな展開で今まで特に代わり映えの無い日常を過ごしてきた。(本人にとって)
ではなぜ今になってこうも語っているのかと言うと、それはこれから私の物語が動き出すから。バン!!
私はこの頃、ほぼ毎日ある場所へ朝から昼過ぎまで通っていた。
「………あるえ!」
「はい」
「かいかい!」
「はい」
「さきべりー!」
「はひ」
先生の出席確認に呼ばれた人は返事を返していく。
そう、前世でも十二年近く通っていた、学校だ。
普通の学校であったなら、私は直ぐに登校拒否になっていたが、この世界では違う。
先程から答える声は女子生徒のみ。
この学校では男女別のクラス分けになっている。
前世の女子高はこんな感じだったのだろうか?
私の前世は共学だったから分かんないや。
「めぐみん!」
「はい」
私の住む村の人たちは、人数が少ない代わりに、周りの人たちからは紅魔族と呼ばれ、目が赤い。
しかもなんと!!!紅魔族は名前からして分かる様に高い・・・
「ーな!、-にな!!、ーゆにな!」
「・・・・・・はい」
「何ふてくされてんだ!お前は!!まぁいい、全員揃ってるな!」
だって、これからという時に止めた、先生が悪いじゃないですか!
頭皮が薄くなって心配していることをクラス中に広めてやろうか!?
そんな事を考えている内に、最後のクラスメートの点呼も終わり、ホームルームが続く。
「それではテストの結果を発表する。三位以内にはいつも通り、『スキルアップポーション』を渡すから取りに来るように」
もうお気づきだろうか?
前世では一般的には聞きなれない物だが、私は頻繫によく目にしていた物、全てのゲームや小説ではないが当たり前のように存在するもの。
『スキルアップポーション』・・・その名も通り、技能を上げる薬だ。
そう、この世界ではモンスターが世界中に生息し、人々が魔王に苦しめられていると言うお約束ファンタジー世界。
あのクソ教師に遮られて言えなかったが紅魔族は高い知力と魔力を生まれつき備わっている!
私たち紅魔族が暮らす里は『紅魔の里』と呼ばれ、ある程度の年齢になるとこの学校で一般的な知識を学び、十二歳になると『アークウィザード』と呼ばれる上級魔法使いに就けられ、魔法の修業が開始する。
私が女神アクア様にお願いした通りの転生先だ。
異世界に行ったら、魔法を使いたいよね!
ここだと自然的に魔法使いになれるから最高。
私がいるクラスでは魔法が使える生徒は一人もいない。
落ちこぼれだとか、そういうのじゃない。
魔法を覚えたら卒業、ということになっている。
そのため、魔法を覚える為に必要なスキル、これは先ほど先生が言った『スキルアップポーション』を飲むか、モンスターを倒して経験値を得てレベルアップボーナスでスキルを取得するしか方法がない。
早く魔法を覚えたい者は勉強を頑張る。
もちろん私は・・・
「他の者もめぐみんを見習い、早く上級魔法を習得出来るよう、励むように!では授業を始める!」
テスト上位者になんか入れる訳がない。
先生の話を聞き流しながら、私の冒険者カードを見る。
冒険者カードとは冒険者ギルドが登録時に発行している身分証明書のようなものであり、紅魔族の里では魔法を覚える為に学校で発行している。
カードには私の名前の他に、職業『アークウィザード』の文字。
レベルは4
その下にはスキルポイント25が表示されてある。
更に下は初級から始まり、中級、上級魔法とスキルの一覧が見える。
習得できる初級と中級の文字は光っていて、ポイントが足りない上級魔法は薄暗い文字だ。
あと5ポイントで卒業出来る!
遅くても一ヶ月以内で上級魔法のポイントが貯まる。
「うひひひぃ」
「・・・ゆにな。お前、何気持ち悪く笑ってんだ?」
おぉっと!ついつい顔が緩んでしまった。
その後、一時間目の授業と身体測定を乗り越えた。
身長も胸も前と殆ど変わらずだった。
同じクラスのめぐみんに比べたら、いくらかマシだと思うことにした。
けっして、あるえとは比べるか!!
すこ~しだけ、気分が堕落した後受けた二時間目
「お前らは、上級魔法こそ最強の魔法だと思っているだろうが・・・」
担任の先生がプリンを頬張りながら説明を続ける。
あーーープリンかぁ~~。
久しぶりに食べたいなぁ~。
あっ、上級魔法を覚え終わったら、ネタ魔法の爆裂魔法を習得しても面白いそうだなぁ。
三時間目は紅魔族にとって通り名がどれほど重要なことかを学んだ。
通り名か~。
大体決めているしな~。
こうして暇な座学も終わり、体育改め実践訓練の時間がやってきた。
と言っても戦闘前の通り名をカッコイイ名乗りを上げてポーズの研究に励むと言う内容。
ホントはモンスターを倒すとかやりたいのに。
まぁいいや。
さて、ペアを探さなきゃね。
と言っても大体決まっている。
あるえは・・・めぐみんとか、じゃあ今日はゆんゆんとか。
一人、ペアが作れずオロオロしているクラスメイトに話しかける。
「ゆんゆん!さぁ!私とカッコイイポーズの研究をしましょうか!!」
「ゆ、ゆになちゃん!あ、ありがとう」
ゆんゆんは村長の娘さんで文武両道で優秀なんだけど、紅魔族にしては珍しく、普通の感性を持っている変わり者で友達がいない。少ないのではなく、いない。大事なことなので二回言った!
私が時々、相手をしてあげている。
「それじゃあ私からいくよ!」
「うん!」
「我が名はゆにな!!紅魔族で唯一の禁術の使い手で、異世界より召喚されし者!!」
片手を腰に当て、もう一方の手でピースを作り、その間から片目が見える様にポーズをとる。
「はいチーズ」で撮るポーズだ。
「ゆ、ゆになちゃん、通り名で噓はいけないよぉう。あなたは禁術を使えないし、異世界から召喚された訳でもないでしょう!」
「ふっふっふっ、虚言ではない!我は禁術を操る事くらい、容易くこなせる。異世界から召喚されたのを黙っていたのは魔王軍を欺く為の罠だったのだ!!」
「おっ!ゆにな、いい名乗りじゃないか!スキルアップポーションをやろう。ゆんゆんもゆになの様にカッコイイ名乗りを期待しているぞ!!」
「せ、先生ぇ~」
先生からスキルアップポーションを貰い、私の番は終了。
「今度はゆんゆんの番ですよ。さぁ!私に村長の娘である実力を見せて下さい!!」
「わ、我が名はゆんゆん。や、やがては紅魔族の長となるもの・・・うぅ、やっぱり恥ずかしいよぉ」
ゆんゆんが片目を閉じ、恥ずかしそうに腕を交差させたポーズを私に見せてくる。
うん、ポーズはそれなりに出来ているけど、セリフがイマイチなんだよな~。「やがて紅魔族の長となるのも」ってのは確かにゆんゆんしか言えないことだけどな~」
「ゆになちゃん。声に出てるよぉ!」
へ?失敬、失敬。
それにしても、恥ずかしがってるゆんゆんは可愛いなぁ~。
その後は先生が演出しか考えずに降らした雨が土砂降りになり、授業は中止、私たちは急いで教室に戻った。
先生が自らの失敗を邪神に押しつけたお陰で、残りの授業が自習になって終わった。