アクア様はローブの人影がリッチーであると言った。
リッチーって確か、魔法を極めた大魔法使いが人間の身体を捨てて、意思のあるアンデットモンスターになり果てた姿、そうだった気がする。
ゲームなんかで言う、中ボスかラスボス級のモンスター。
どうりで高い魔力を感じた訳だ。
本来だったら、私が本気の威力を込めた重力魔法で足止めをしなければならない相手。
その間に、アクア様に浄化してもらう。
そして今日の朝にはリッチーを倒した冒険者として街の英雄に。
本来、だったらだ。
「やめて~~~~!!!誰です??いきなり現れて何をするんですかぁ!!あぁ、私の魔方陣を消さない~!やめ、やめて下さいいいい!!」
「うっさい、黙りなさいアンデット!どうせこの魔方陣でロクでもない事を企んでいたんでしょう!こんなもの、こうよ、こう!」
アクア様はリッチーの制止も聞かずに、魔方陣をグリグリと踏んでいる。
私も参戦した方がいいのでしょうか?
それとも、アクア様とリッチーをボーっと眺めている取り巻きゾンビどもを倒した方がいいのでしょうか?
私がどう行動しようか悩んでいると、リッチーが魔方陣の説明を必死になってしている。
「やめてー!この魔方陣は迷える魂を天に還す為の物なんです~!!ほら、たくさんの魂がこの魔方陣で空に昇っていくでしょう!?」
あ、本当だ。
確かに魂らしい物体が、ひゅるるるぅぅぅっと空高く昇って行ってますね。
私はなんだか、このリッチーが良い人に見えてきました。
だが、アクア様はリッチーと言うアンデットモンスターと言うだけで許せないらしく。
「リッチーの癖に生意気よ!そんな善行をチマチマとやってないで、アークプリーストであるこの私に任せなさい!墓地ごと浄化してあげるわ!!」
「えっ!ちょ、ちょっと待っ」
アクア様は墓地ごと浄化すると宣言なさいました。
アクア様、その行いはとても素晴らしい事ですが、もうちょっとリッチーの話を聞いてあげてもよろしいのでは?
問答無用で攻撃魔法を放ってくる訳でもなさそうですし。
まぁ、そう考えるだけで私はアクア様の行動を止めませんが。
「『ターンアンデット』!!」
アクア様はリッチーの制止を無視して、浄化魔法を唱えました。
あぁ、アクア様が神々しく光を放っています。
アクア様の前では取り巻きゾンビどもは一溜まりもないのですよ!!
ってそれだと、リッチーにも被害が及んじゃいますよね。
やっぱり、リッチーの話は聞かないおつもりですか。