ここで分かった事をおさらいしよう。
一つ、噂は本当で、魔王軍幹部は確かにいる。
二つ、廃城の付近には結界が張ってあり、破るのは困難。
三つ、廃城内には敵が一体もいなくて、幹部だけである。
四つ、幹部の名前はベルディアで、禍々しい鎧さん。
以上の四つの事である。
もう、これで良くね?
私、頑張ったよ?
大した努力はしてないけど。
もう帰ろう。
これだけでも十分な成果と言えるでしょう。
そう思った私は、テレポートの発動準備をする。
「それでは、私はこの辺で……………」
鎧さんに帰りの挨拶をしようとした所で、昨日のルナさんの言葉が甦った。
『幾らゆになさんでも、それ(幹部の討伐)は難しいのではないでしょうか!?』
なんかムカついてきた。
これでもし私がルナさんに、鎧さんを倒したと言ったら、ルナさんはどういう表情をする?
どんな顔をするのか見てみたい。
……………ならば倒そう、鎧さんを!
急に言葉を止めた私に、疑問を抱いた鎧さんが心配して声をかけてくれる。
「お、おい?急にどうした。大丈夫か?」
「ん?親切にどうも。ちょっと思考の渦に入っていただけです。それでは私はこの辺で……………………目標を討伐するよん!!」
「ふぁっ!?」
「『グラビティ』!!」
不意打ちで、鎧さんに向かって横方向の重力を喰らわせる。
私の攻撃を食らった鎧さんは広い部屋の壁まで吹き飛ばされる。
が、何とか態勢を整えて、腰に差してあった大きな剣を私に向けてきた。
「不意打ちとは感心しないな。それに、なんださっきの魔法は?」
「禁術ですよ!知らないんですか~?」
「禁じられた術を知る訳がないだろ!!」
相手のペースにはさせない。
取り敢えず、鎧さんを煽ってみた。
うん、結構な乱れっぷり。
煽り作戦は使えるっと。
鎧さんを煽りながらも、作戦を立てる。
未知の攻撃にも反射で耐えた。
流石幹部と名乗る程の実力があるね。
まだ、一ターンも終わってないけど。
「ふん!変な魔法を使うのだな?俺に攻撃を当てた事を褒めてやろうではないか。しかし、貴様はそれまでだ」
「それまでかどうかは……ってええぇぇぇぇ!!!」
鎧さんはかぱぁ、と自分の首を引き千切った。
いや、引き千切ったと言うのは違う。
だって千切った音がしなかったもん。
取ったと言う方が正しい。
「まさか人間じゃない!?」
「魔王軍の幹部と言っただろう!?」
人間じゃない種族で首が取れる種族?
…………いた。
種族と言っても良いかわからないけど、アンデットモンスターの一つに首が取れるのが。
ウィズさんと同じくらい強くて、未練のある騎士の鳴り果てたアンデットモンスター。
「鎧さんじゃなくて、デュラハンさんでしたか」