SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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第三の白こと雪椿、本格登場!


第九十一話 「新たな翼、雪椿」

SAO帰還者のIS

 

第九十一話

「新たな翼、雪椿」

 

 その機体の設計自体は、束が白式を調整していた頃から既にあった。だが、その当時はまだ設計段階で、実際に形にする事は無かったのだが、紅椿を箒に渡して、そして白式が二次移行(セカンドシフト)した事によって本格的な開発がスタートしたのだ。

 本来は圧倒的な展開装甲のデータ不足で設計段階のまま止めていた計画も、白式・聖月のおかげで展開装甲のデータが取れるようになりスムーズな開発が出来るようになった。

 この時点で、既に束の中では操縦者として一夏を想定していた。故にパーツの一つ一つ全てを一夏に合わせて作り、組み上げている。

 そして、最終的に完成まで漕ぎ着ける為、白式のコアと生きているパーツの一部、それから夏奈子が乗っていたテンペスタのコアを組み込んで、白騎士と白式・聖月、それからテンペスタの魂を受け継ぐ第三の白として完成した。

 

「それが、この第4世代型完成系IS……雪椿」

「雪、椿……」

 

 雪椿を見上げた一夏は、その全体を細かく見ていく。ウイングスラスターは白式・聖月とほぼ同等の大きさだが、白式・聖月のような機械的なフォルムではなく、美しい曲線を描いた形をしている上、展開装甲を搭載しているのだろう、継ぎ目も確認出来た。

 腕はそのまま白式・聖月の物を流用しているらしく変化は無い。脚部は紅椿に似たフォルムになっており、こちらの方が若干角ばっている。

 だが、何より大きいのは腰周りだろう。リアスカートアーマーの形状が白騎士によく似ているが、白騎士との違いは展開装甲用の継ぎ目がある事とブースターが取り付けられている事だ。

 

「武装はそのまま白式の物を修理して搭載してあるし、ソードスキルシステムも健在だから、いっくんが使おうと思えばいつでも使える状態だよ」

「……束さん」

「な~に?」

「ありがとう、ございます」

 

 雪椿から目を離すこと無く束に礼を言う一夏に、束は微笑を浮かべて一夏が雪椿に乗り込めるよう手元のスイッチを操作、雪椿を屈ませた。

 

「さあ、いっくん……新しい翼を受け取って」

「はい!」

 

 初めて白式に乗った時と同じ様に、機体に背中を預ける様にして乗り込むと早速だが初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)が開始された。

 そして、それと同時に一夏の意識は途切れてしまうのだった。

 

 

 真っ白な空間、そこに一夏はいつの間にか立っていた。あの時……白式が二次移行(セカンドシフト)したときと同じ空間に居るのだと気づくのに時間は掛からなかった。

 

「いるんだろ? 白式、白騎士」

 

 何も無い空間に声を掛ければ、背後に気配を感じて振り返る。

 すると、そこには白いワンピースを着た少女と純白の鎧を着た女性が立っていて、そしてそれぞれの横には少女と同じ白いワンピースを着た幼女と、ライムグリーンのドレスを着た少女が立っていた。

 

「なんか、増えてるな」

 

 白いワンピースの幼女は、恐らく雪椿なのだろう。だが、ライムグリーンのドレスを着た少女については見当がつかない。

 

「君は、誰だ……?」

「私は、あなたの娘の翼」

「……ああ、そっか」

 

 テンペスタだ。束は雪椿に白式のコアと一緒にテンペスタのコアも搭載していると、そう言っていた。

 そのテンペスタが、夏奈子の乗っていたテンペスタで、一夏の娘の翼というのも間違いではない。

 

「白式……」

「なぁに?」

「ごめんな……俺が不甲斐ないばかりに、君を壊してしまって」

「……ううん、わたしも、貴方の力になれなくてごめんね?」

 

 白式が謝る事なんて無い。そう言おうとした一夏を止めたのは、白騎士だった。

 

「あなたは、我々の最高のマスターです。強敵を恐れる事無く、再び力を求め、その力を愛する者を守る為に使うと、その意思を曲げない」

「当然だって。俺の剣は、ユリコと、夏奈子を守る為にあるんだって、今でも胸張って言えるぜ」

「だから、わたしはそんな貴方の力に、最後までなれなかったのが悔しい」

 

 白式も、悔いていたのだ。もっと機体性能を一夏に合わせて、枷を無理に外してでもソードスキルを使える状態にしていれば、あの時一夏は、もっと戦えていたのに、と……。

 

「だけど、俺たちはこうして新しい翼で再会出来た。雪椿とテンペスタっていう、新しい相棒と一緒にな」

 

 一夏が雪椿とテンペスタの頭を撫でると、二人は何処か心地良さそうな表情で頭を一夏の手に摺り寄せる。

 

「私はずっとコアネットワークから見ていました。あなたが、あなたの娘を……私の操縦者を、心から愛しているのを。だから、私はあなたと一緒に、あの子を守りたい」

「いっしょに、たたかおう?」

「……ああ、一緒に戦おう。今度は、絶対に負けない! 俺にはユリコや夏奈子だけじゃない、白騎士、白式、雪椿、テンペスタ、お前達が居る。俺達が一緒なら、もう誰にも負けやしないぜ!」

 

 一夏が右手を差し出すと、それが何を意味するのか気づいて白騎士が手を重ねた。そして、それに続くように白式が、雪椿が、テンペスタが、それぞれ手を重ねると、重ねられた手を中心に眩い光が一夏達を包み込んだ。

 

 

 雪椿の最適化(フィッティング)を行っていた束は、最後の調整を終わらせてEnterキーをタッチした。

 これで、一次移行(ファーストシフト)が行われて雪椿は正式に一夏の専用機として完成する。

 だが、しかし……雪椿と一夏の姿が光に包まれた瞬間、束にすら予想出来なかった事象が発生した。

 

【Fist sift stand by……complete】

【Second sift stand by……complete】

【third sift stand by……complete】

【Fourth sift stand by……complete】

 

 白騎士、白式、雪椿、テンペスタ、その全てと心を通わせた一夏だからこそ起きた奇跡。ISが世に送り出されて10年、未だ誰一人として到達し得なかった4段階目の進化……四次移行(フォースシフト)を、初めて乗ったばかりの機体で、一夏は果たしてしまったのだ。

 

「うそ……」

 

 完全に束の予想外な出来事を目の当たりにして、呆然と呟いてしまった。今まで、束も存在こそ知っていたが、机上の空論に過ぎなかった四次移行(フォースシフト)が、まさかこの様な形で実現されるとは、思いもしなかったのだから。

 

「あ、あはは……あはははははは! やっぱりいっくんは凄いなぁ……いつも束さんの予想を超えてくるんだもん! いっくんを見てると、こんな世界でも絶対に退屈しないね」

 

 一度は、こんなつまらない世界を壊そうとも考えた事があった。いや、今でも壊すべきだと判断してしまえばいつでもテロ行為と呼べる事を行って世界を滅茶苦茶にしてしまう事も考慮している。

 だけど、織斑一夏という無限の可能性を秘めた存在が居るこの世界は、きっとこれから楽しくなるのだと、束は確信しているのだ。

 

「束さん、ありがとうございます。これで俺は、また戦える」

「そう……それじゃあ、早く行ってあげて。君の愛する子の所へ」

「はい!」

 

 束が手元の装置を操作すると、天井が開き、幾層ものシャッターが次々と開く事で地上が見えるようになった。

 

「織斑一夏、雪椿……行くぜ!!」

 

 PICを起動して宙に浮いた雪椿の全身にある展開装甲が開かれる。すると、今までの白式・聖月の展開装甲のように蒼いエネルギーが放出されたのだが、腰や脚部の装甲は白式のように刃のような形に放出されているのに、非固定浮遊部位(アンロックユニット)になっている大型ウイングスラスターの展開装甲は、まるで天使の翼のような形となって一夏の全身を包み込むように放出された。

 そして、ゆっくりと蒼いエネルギーの翼が開かれると、同じ蒼いエネルギーの羽を撒き散らしながら大きく羽ばたき、瞬時加速(イグニッションブースト)を使ったわけでもないのに、それ以上の速度で一気に飛び上がる。

 

「グゥッ!? す、凄い加速だ……っ!」

 

 超高速機動は白式で慣れていたのに、それでもキツイと感じてしまうほど、雪椿の加速は圧倒的だった。

 間違い無く世界最速であろう速度で飛んだ雪椿に乗る一夏の視界には、飛び立って10秒と経たず第2アリーナが見えてくる。

 

「さあ! デビュー戦だ!! 派手に行こうぜ雪椿!!!」

 

 右手に展開されたトワイライトフィニッシャーⅡを加速しながら構えてライトエフェクトの輝きを纏わせた。

 ジェットエンジンの如き爆音と、紅い光芒、それは白の剣士ナツこと一夏にとって己の代名詞と言うべきソードスキル。

 IS学園でも何度も使用してきて、既に生徒達の間でも有名になっている程、一夏を象徴する最強の突進突刺スキル……片手剣上位ソードスキル、ヴォーパルストライクだ。

 

「うぉおおおおおおおああああああああああっ!!!」

 

 気合の咆哮と共に、一夏のヴォーパルストライクはスカイと無人機が突入したシールドの穴からアリーナへと飛び込み、百合子へボルメテウスを放とうとしていたスカイを……捉えた。




雪椿が展開装甲の翼を広げたシーンですが、劇場版新機動戦記ガンダムW Endless Waltzのウイングガンダムゼロカスタムの初登場シーンをイメージしています。
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