SAO帰還者のIS
第九十五話
「疾風の帰還」
IS学園の各所で修復工事が行われている中、本日とうとう日本代表候補生合宿からシャルロットが帰ってくる事となった。
先にレクト本社へ寄って専用機の受領をしてから来るとの事なので、学園に戻ってくる頃にはシャルロットは再び専用機持ちとなるのだ。
「みんなー! ただいまー!!」
そして、そのシャルロットが遂に帰ってきた。時間としては既に夕飯も過ぎて、寮生達も入浴を済ませて歓談している時間帯だが、寮の玄関からシャルロットの元気な声が聞こえた一夏達は歓談ルームから出迎えに出てくる。
「おかえりシャルちゃん」
「お義姉ちゃん! うん、ただいま!」
帰ってきたシャルロットの姿を見て、一夏はそっと胸を撫で下ろす。千冬から聞かされた過酷だという話の合宿を終えたシャルロットの事を心配していたのだが、どうやら気にし過ぎていただけらしい。
「シャルロット、専用機はもう受領したのか?」
「うん、これだよ」
和人に問われてシャルロットが胸元から取り出したのはオレンジ色のロザリオだった。中央に椛の花を模ったサファイアがあしらわれたソレは、シャルロットの専用機の待機形態だ。
「橙風、それがこの子の名前なんだ」
「橙風……オレンジの風、シャルロットにぴったりだね」
オレンジ色のラファール・リヴァイヴを嘗ての専用機としていた彼女に、確かにぴったりの名前だ。
「そういえば、噂で聞いたんだけど一夏も新しい専用機を受領したんだよね?」
「ああ、これだ」
一夏の右手首にあるチェーンブレスレット、青い翼をモチーフにしたソレをシャルロットに見せた。雪椿の待機形態であるブレスレットは、白式の時のガントレットより軽いと実は密かに一夏の好評を受けている。
「実はまだ橙風の試運転がまだで、一度もテスト戦闘してないんだ。だから……」
「そういう事か……良いぜ、俺も丁度雪椿に少しでも慣れなきゃいけないって思ってたからな」
互いに受領したばかりの新しい専用機、まだ慣れない機体同士での模擬戦は言わば稼動テストのようなものだ。
剣士としての実力の高さも相まって一年最強の座を和人や明日奈、百合子と競い合っている一夏と、IS操縦者としての才能が一年の誰よりも高く、その秘めたポテンシャルは千冬にすら迫ると密かに束が注目しているシャルロット、その模擬戦ともなれば見所満載の激しいバトルになると予想するのは容易い。
「勿論、やるからには勝ちに行くよ」
「へぇ……ならこっちも負けられないな」
IS操縦者としての矜持を持って、勝ちに行くと宣言するシャルロットと、剣士の矜持に誓って負けられないと受けて立つ一夏の間に見えない火花が散った。
この後、千冬に翌日のアリーナ貸切申請に行くと、新型機のテストという名目で許可が出る事になる。二人の対決は、翌日の放課後、第3アリーナにて、行われる事が決まった。
翌日、一夏とシャルロットの姿は第3アリーナにあった。アリーナの管制室には千冬と束、それから和人と明日奈、百合子、夏奈子の姿もある。
「あれ? 山田先生は?」
「そういえば、居ないねー」
「山田君なら今日はデートだそうだ……チッ」
和人と明日奈の疑問に答えた千冬が舌打ちをしていた。その隣で束が親友の様子に苦笑しつつモニターに映る一夏とシャルロットの様子を伺う。
雪椿を纏ってブレイブハートⅡを構えた一夏と、ラファール・リヴァイヴをモチーフにしつつ、白式や瞬光をベースにした意匠の機体、橙風を纏ったシャルロットは、お互いに緊張した様子は見られない。
「それじゃ~いっくん、シャルルン! 模擬戦を始めるよー!」
試合開始のブザーを鳴らすと、二人の間にARウインドウのランプが点灯し、三つの赤ランプが消え、青に切り替わった瞬間、二人はぶつかった。
アリーナ中央、そこでぶつかる白と橙、互いに剣を握り火花を散らし金属音を響かせている。
「せぇああ!」
「てぇええああ!!」
一夏が右手に握るブレイブハートⅡの一閃をシャルロットが握る近接戦闘用物理光学切り替え式ブレード「梔子」が受け止め、逆にシャルロットは左手に展開したレーザーマシンガン暦を連射する。
その名の通りマシンガンとなって連射されるレーザーを剣で弾きながら距離を取った一夏は左手にブローニングハイパワーDAカスタムを展開して発砲、遠距離でもシャルロット相手に応戦していた。
「一夏が銃だなんて珍しいね!」
「相変わらず銃は苦手だけどな!」
レーザーと実弾が入り乱れる中、一夏はシャルロットの様子の変化に気づいていた。最初こそ、真剣な表情をしていたというのに、次第に口元が歪み、瞳から理性の光が失われ始めているのだ。
「あは……」
「お、おいシャル……?」
「あは、あはははははははははは……あーっはははははははははははは!!!!」
レーザーの連射速度が、心成しか上がった気がする。それと同時にシャルの顔には狂気の笑みが浮かび、瞳からは完全に理性の光が失われていた。
「って!?」
いきなり、シャルロットが右手に巨大なリボルバーマガジンを搭載したパイルバンカーを展開して突撃してきた。
ギリギリでリベレイターⅢを展開して受け止めたのだが、その直後に6連発で襲い掛かった暴虐的なまでの衝撃にリベレイターを弾き飛ばされてしまい、一夏本人もアリーナの壁へ突き飛ばされてしまった。
「くっ……重いなぁ」
「チッ……生きてたか」
「って、おいシャル!?」
舌打ちして不穏当な事を口走ったシャルについツッコミを入れた一夏だったが、その姿を見た瞬間に頬が引き攣る。
何故ならシャルロットの……橙風の腕が従来の2本に加えて4本の機械アームが展開された6本腕に増えていたのだから。
「これが橙風の第三世代型システム、多目的武装腕「雷切」だよ!!」
その6本の腕にはそれぞれ違う武装が装備されている。先ほどのレーザーマシンガン暦に、 梔子、ガトリングパイルバンカー鬼殺し、大型レーザーライフル「颯」、対ISライフル「ウルティマラティオ・ヘカートS」、大型石弓型IS用ロングボウ「アーバレスト」がそれぞれの腕に構えられ、遠距離武装に関しては全てが一夏に向けられていた。
「ヤバッ!?」
慌てて一夏は全身の展開装甲を開き、青い翼を羽ばたかせながらその場を離脱する。次の瞬間には一夏が居た場所を大量のレーザーと矢、実弾が降り注いで地面を抉っていた。
「うわぁ」
ドン引きである。一先ずシャルロットに近づくにはあのえげつない武装を攻略する必要があるようで、そして一夏の持つ武装で遠距離での破壊力があるのはファイヤーバレットだけ。
「でも俺、あれ苦手だしなぁ」
やっぱり自分は根っからの剣士であり、どこまで行こうと、銃を持とうとも剣だけしか取り得が無いようだ。
取り合えず右手のブレイブハートⅡだけでは心許ないと左手の銃を格納して新たな剣を展開した。その手に握るのは機械でできた柄のような物、その柄からピンク色のレーザー刃が展開される。
「GGOで数少ない剣をモチーフにした光剣カゲミツMk-Ⅱ、ALOとGGOのコラボ二刀流、キリトさんより先に行かせてもらうぜ!!」
残念ながらカゲミツではソードスキルが使えないものの、武装としては優秀だ。実弾や矢に関してはブレイブハートⅡで、レーザーはカゲミツで弾きながら一夏は世界最速を誇る雪椿の超加速に
「いっけぇえええええええええ!!!!」
「チッ! 一夏ぁああああああああ!!!」
結果だけを言うとしよう。勝負の行方はギリギリで一夏の勝利となったのだが、一夏の心には確かなトラウマが刻まれ、アリーナは……3ヶ月間の使用不可能との診断が下される事となるのだった。
次回は原作で言うところのワールドパージ編、ですがここはクロエが味方に居るので少しオリジナルな展開を用意しますた。
まぁ、簡単に言うなら敵の電子工学に強い人間が、ね……。