SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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今回より原作で言うワールドパージ編です。短いです。


蘇る浮遊城の守護者編
第九十六話 「狙われたIS学園」


SAO帰還者のIS

 

第九十六話

「狙われたIS学園」

 

 某国某所にある亡国機業(ファントム・タスク)のアジト、その首領の執務室に二人の男が豪華な机を挟んで睨み合っていた。

 

「だから、ちゃんと説明して貰えませんかねぇ? なぜ僕の専用機開発を凍結するのか」

「しつけぇなぁおめぇは。おじさんさっきから何度も説明してんでしょーが! おめぇにはトーデス・トリープ、ゴールデン・ドーン、サイレント・ゼフィルス、アラクネ、ジャック・ザ・リッパー、ハングドマン、ポイズンの7機と、無人機部隊全機の第4世代へのバージョンアップを優先して貰うからおめぇの専用機なんざ作ってる暇は無ぇって」

 

 言い争っているのは亡国機業(ファントム・タスク)のトップ、首領であるスカイと、幹部の1席を与えられ研究開発を一任している須郷伸之の二人だった。

 

「だから、その程度で僕の専用機を遅らせるならまだしも凍結など納得出来るわけが!」

「言わねぇと分かんねぇか? 雑魚に回すコアの余裕は無ぇって言ってんだよ」

 

 スカイの言い分としては、須郷のような戦いのたの字も知らない素人に専用機を作るくらいなら、その分のコアで無人機を作った方が戦力になるというもの。

 対する須郷の言い分は自分は天才だから、戦いだって自分用にフルカスタムした専用機があれば誰にも負ける事は無いというものだ。

 

「とにかく、これは亡国機業(ファントム・タスク)首領である俺の決定であり、命令だ。おめぇは素直に従いな」

「くっ……!」

 

 これ以上反抗するのであれば反逆罪で処刑する。そう暗に言われた須郷は屈辱感で顔を歪めながら踵を返し部屋を出た。

 部屋を出た後、須郷は早足で自分の研究室まで戻ってくると、振り向き様に閉じた扉を思いっきり殴りつける。

 

「クソッ! クソッ!! クソがっ!! 何故僕があんな低脳な男に従わなければならないんだ!! 首領だからだって? ふざけやがって!!! あんな脳筋な低脳男より、僕の方が首領に相応しいというのに……っ!」

 

 何とか、自分こそがこの組織で最強の存在なのだと、首領の座に最も相応しい人間なのだと認めさせなければならない。

 ならばどうすれば良いのか、簡単な話だ。誰も成し得ていない結果を、明確な結果を叩き出せば良いのだ。

 

「ふん、スコール達では無理だったIS学園の制圧、僕ならば可能だ」

 

 制圧とは、何も武力で行う事だけが全てではない。自分ならもっとスマートに、確実な方法でIS学園を制圧する事が出来る。

 

「ククク……あの小僧への復讐も出来る一石二鳥、いや明日奈さんを取り戻す事も出来るから一石三鳥な手段があるなぁ」

 

 そう言って須郷はポケットから取り出したメモリースティックを手に研究室奥にあるスーパーコンピュータの椅子に座った。

 メモリースティックに張られたシールには文字が書かれている。『システムSAO』と……。

 

 

 場所は移りIS学園は現在秋の体育祭に向けた準備が始められようとしている時期に入っていた。

 体育祭はIS学園で修学旅行と同じISが一切絡まない行事なので専用機を持たない生徒も純粋に楽しめるイベントとして毎年人気行事の一つとして挙げられている。

 

「んで、千冬姉……俺に会いたいっていうのは倉持の人なんだよな?」

 

 そんなある日、IS学園の職員室に呼ばれた一夏は千冬から倉持技研の方で一夏と直接話がしたいというアポイントメントが来ているという話を受けていた。

 

「そうだ。お前の所属はレクトだから正直な話、今更受ける謂れは無いが……白式が倉持とレクトの共同開発した機体だったから完全な無関係ではいられないのでな……是非とも倉持本社に来て欲しいとのことだ」

「篝火ヒカルノさんねぇ……確か千冬姉と束さんのIS学園時代のクラスメートだっけ?」

「ああ、よく知っているな」

「昔、ウチに遊びに来たじゃん。千冬姉が束さん以外の友達を連れてきたのは初めてだったから覚えてるんだよ」

「友人、ねぇ……」

 

 現在の倉持技研第二研究所所長、篝火ヒカルノは有名だ。倉持技研でも変人として有名だが、かの束と千冬の元クラスメートとしても、実は有名だったりするのだ。

 

「私はアイツを友人だと思った事は無いが……まぁいい。それより奴が望むのは雪椿の情報だろう。メンテナンスをさせて欲しいと言っていたからな」

「あ、なら断って。あれは束さんが作った機体だし、そもそも完全にレクト所属の機体として登録されてるんだから、倉持がメンテして良い理由は無い」

「だろうな。私も最初からそのつもりだ……ただまぁ、奴はしつこい所がある、注意だけしておけ」

「了解」

 

 一先ず話はそれだけだという事なので職員室を出ようとした一夏と、自分の仕事に戻ろうとした千冬だったが、突如鳴り響いた警報に姉弟揃ってその鋭い目付きで警報ウインドウを睨み付ける。

 

「千冬姉、何事だろう?」

「わからん、取りあえず山田君の療養中は更識姉が役割を担っているから、あいつに確認するか」

 

 学園中のシャッターが閉じて窓すら開かなくなり、職員室でもパニックが起きている中、千冬が楯無に連絡を取ろうとするも、どうやら通信系も遮断されているらしく、連絡が取れない。

 

「千冬姉! 放送!」

「そうかっ!」

 

 職員室にも放送設備はあり、校内放送で楯無を呼ぶ事も出来る。

 

「しかし、どこに呼ぶか……恐らく校外に出られないだろうからアリーナは無理だな」

「警報が鳴ってるのに衝撃や爆発音が無いって事は襲撃じゃないな……となると学園コンピュータにウイルスとかか?」

「となると……」

 

 学園地下にあるVR研究部の部室であるヴァーチャルルームの更に下の階層にある特別区画、そこに専用機持ちを集める。そう結論した千冬はそう校内放送で伝えると一夏と向き合う。

 

「これから地下へ向かう。途中で閉じている扉やシャッターについては、非常事態だ、破壊して構わん」

「オッケー!」

 

 一夏と千冬、二人の姿が光に包まれると、次の瞬間一夏は雪椿を、千冬は暮桜を纏ってトワイライトフィニッシャーと雪片を構えた。

 

「行くぞ!」

「おう!!」

 

 世界最強姉弟が動き出す。職員室の壁をそれぞれの剣で粉微塵に斬り裂いた二人は全速力で学園地下の特別区画へと向かうのだった。

 

「ふむ、織斑先生……減給ですね」

 

 最も、学園最高権力者に壁を粉微塵にした所を見られているので、後ほど千冬は酒代が減る事を嘆く事になるのだが、それはまた別のお話。……早い話、粉微塵はやり過ぎた。

 

 

 一夏と千冬が特別区画の管制室に到着する頃には学園の専用機持ちはダリルとフォルテ以外が揃っていた。

 ダリルとフォルテが来ていない理由は丁度二人とも校舎の外に出ていた為、校舎閉鎖と共に締め出されてしまったのが理由らしい。

 

「しかたないか……一先ず今いるメンバーで対処に当たる。現在IS学園は何者かのハッキングを受けて全システムがダウンし、非常シェルター機能を残し一切のシステムが使えなくなっている」

「今は私がハッキングに対して対処してるけど、こりゃ難しいねぇ」

 

 束をしてハッキングの対抗に困難を極めるなど、犯人は一人しか思い浮かばないが、今はそれを言っても仕方が無い。

 

「今のところ、学園の生徒に被害は出ていないが、いつまでもこのままでいる訳にもいかん。そこでだ、専用機持ちにはISコアネットワークとアミュスフィアを併用した電脳ダイブを行ってハッキングに対処して貰いたい」

「で、電脳ダイブ……」

「それって確か」

「IS操縦者の保護神経バイパスを経由して行うのが本来の仕様だったはずだよ。理論上可能って話は僕も聞いた事あるけど、あくまで理論上の話だから今回はアミュスフィアを併用するんだと思う」

 

 ただ、残念なことにこの状況で用意出来たアミュスフィアの数はこの場に居るメンバー全員分ではない。

 電脳ダイブを行えるのは6人だけ。となると誰が電脳ダイブをするかという話になる。

 

「織斑、確かお前と桐ヶ谷、結城姉、宍戸の四人はフルダイブ環境への耐性が強いのだったな?」

「ああ、2年もフルダイブした状況で過ごしてたからな。SAO生還者は基本的にフルダイブ環境への耐性が一般人より高い」

「ならば四人は確定だ。残り二人をどうするか……」

「いや、待ってくれ千冬姉、俺はダイブしない。万が一を考えて学園の防衛に当たるぜ」

「む、そうか……となると宍戸、お前も織斑と共に学園防衛の為に残れ。ダイブするメンバーは桐ヶ谷、結城姉、結城妹、オルコット、クロニクル、更識妹だ。織斑、宍戸、篠ノ乃、鳳、更識姉は学園の防衛だ」

 

 千冬の号令と共に各自動き出す。和人、明日奈、セシリア、シャルロット、クロエ、簪の6人は電脳ダイブの為にダイブ用ベッドへ横になりアミュスフィアを被って、一夏、百合子、箒、鈴音、楯無は特別区画から千冬と共に出て行った。

 

「じゃあいっくよ~!」

 

 管制室に残った束は全員のスタンバイが完了したのを確認し、右手でハッキングの対処をしながら左手で電脳ダイブの為のシステムを起動、それぞれのメンバーの意識を専用機のコアネットワークにアミュスフィアを解して電脳化、そのままIS学園のシステム内へフルダイブさせた。

 

「須郷……ついに、動き出したんだね」

 

 電子工学において、自分と同等か、それ以上の天才である須郷を相手に、このまま現実世界でハッキングの対応をしていては、最悪負ける事も考えられる。

 だから、もしもの時は……。

 

「私も、本気を出すよ」

 

 束は、白衣のポケットからアミュスフィアを取り出し、そっと握り締めた。




さて、次回はリアルとVR、どちらの戦いを先に持ってくるかなぁ。
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