ちょっとトラブルがありましたが、何とか百一話の更新です。
SAO帰還者のIS
第百一話
「天災と天才と未来の天才」
和人達が扉に吸い込まれた先にあったのは、嘗てのアインクラッド75層フロアボスの間そのままの部屋だった。
和人が感じた嫌な予感は、この部屋を見た瞬間に当たってしまっていた事を確信してしまい、この部屋の主と実際に戦った事のある和人と明日奈は勿論、映像で見て知っているセシリア達も緊張感が走る。
「前と同じなら……」
「あそこよ!」
姿を現さない敵の姿を探そうと、アインクラッドの時の記憶を思い返し、明日奈が天井を指差した。そこには、全員の予想通りの光景があった。
天井付近にある突き出た岩の上、そこから見下ろす巨大な骨……両手の鎌と長い胴体が特徴的なそいつは、嘗てアインクラッド攻略組から14人の死者を出した最強最悪のフロアボス。
「あれが……」
「スカル・リーパーですの……?」
まだ距離がかなり離れているというのに、こちらを見下ろすスカル・リーパーの眼光と、その鎌の鈍く輝く怪しげな光が、否応なしに恐怖を与えてくる。
あれが、14人もの実力者達を殺した最悪のボス、攻略組の大半がギリギリの戦いを強いられ、やっとの思いで勝利出来た強敵なのだ。
セシリア達の武器を握る手にも、自然と力が入った。
「皆さん、気をつけて下さい。この世界での死は、精神の消滅を意味します」
クロエの言う内容、それは即ち、この世界での死は現実の死に等しいという事だ。つまり、状況的にはSAOの時と何も変わらない。
「命を懸けるなんて、今更だ……っ! 行くぞ!!」
『おう!』
クロエとユイ以外の全員が羽根を出して飛び上がり、和人と明日奈を先頭にスカル・リーパーへ突撃する。
スカル・リーパーもこちらが飛び上がったのを機に鎌を構えながら飛び降りて来たので、和人はエリュシデータとダークリパルサーを構え、ライトエフェクトによって刀身を輝かせた。
「うぉおおおおおお!!!」
和人とスカル・リーパーがすれ違い様に剣と鎌を激突させた。二刀流ソードスキル、ゲイル・スライサーと鎌の激突は相当な衝撃波を発生させ、一瞬だがスカル・リーパーの動きが止まる。
その隙に、和人の後ろから閃光が奔り、スカル・リーパーの胴体を穿つ。明日奈による細剣最上位ソードスキル、フラッシングペネトレイターによる文字通り閃光の一撃はスカル・リーパーの体を持ち上げた。
「スイッチ!!」
「スイッチですわ!!」
二人と入れ替わる形で今度はシャルロットとセシリアが飛び出した。それぞれ剣をライトエフェクトによって輝かせ、片手剣ソードスキルであるソニック・リープと短剣ソードスキルであるクロス・エッジで再び振り抜かれた二本の鎌を迎え撃ち、大きく弾き返す。
「簪さん!」
「今だよ!」
「うん! せぇええええええ!!!」
最後に、薙刀を構え、刀身をライトエフェクトによって輝かせた簪がスカル・リーパーの顔面へ突撃する。
薙刀から放たれるは刀ソードスキルの一つ、上下に一撃ずつ素早く斬り裂き、一拍子置いて放たれる突刺の計3連撃、緋扇が決まり、スカル・リーパーを地面へと叩き落した。
「油断するな! まだ来るぞ!!」
硬直が解けた和人は間髪入れず両手の剣をライトエフェクトによって輝かせ、一気に急降下すると、煙の中から振るわれた鎌にエンド・リボルバーで迎え撃った。
「キリト君スイッチ!!」
「っ! せぇあ!!」
エンド・リボルバーの2撃目で鎌を弾き、後ろへ後退するのと同時に明日奈がリニアーによる一撃を叩き込み、即座にセシリアと簪が両サイドから鎌を受け止めてシャルロットが明日奈とスイッチする。
凄まじい連携で一同、スカル・リーパーを追い込んでいるかのように見えるが、実は違う。誰もがスカル・リーパーの一撃を受ける訳にはいかないという緊張感の下で戦っているのだ。
スカル・リーパーの鎌の一撃は、嘗てのアインクラッド攻略組の凄腕達ですら一撃で死に至る程の強力無比なもの、そんなものを受ければ和人達とて無事では済まない。
「皆! 畳み掛けろ!! 攻撃の手を緩めるな!!」
和人の呼び掛けに応え、全員が一斉に攻撃へと移る。スカル・リーパーとの激戦は、まだまだ始まったばかりだ。
千冬が侵入者の対処に向かった後、一人残された束は和人達のサポートの為、ずっとハッキングの対応を行っていた。
和人達が戦うハッキングプログラムのコアが倒されなければ、学園に仕掛けられているハッキングが止まる事は無い。だからこそ、束は休むことなく続くハッキングの対処に対応しなければならないのだ。
「駄目だ、かず君達苦戦してる……! このままじゃ、みんな……」
正直、先ほどからハッキングの勢いが更に強くなっていて、束一人では対処するのに手一杯となり、和人達のサポートを行う事が出来ずにいる。
何とかしなければ、このままでは大切な愛娘と、愛弟子や、弟分の友人達が、死んでしまう。
「どうしたら……っ」
『篠ノ之博士、お手伝いは必要ですか?』
「っ!?」
その時だった。突如、通信画面が開いて束に声を掛けてきた人物が一人……通信画面には一人の可憐な少女が映っていた。
「な、ななちゃん!?」
『はい、七色・アルシャービンですよ。お久しぶりです』
「え、で、でもどうして……」
『IS学園がハッキングを受けているのに気づいて、それに乗じてハッキングして状況を理解したためですよ』
何やら凄く不味い事を口走ったこの少女、七色・アルシャービンとはVR技術の研究で世界的に有名な人物で、裏の茅場晶彦と表の七色・アルシャービンと呼ばれる程の知名度を誇る天才だ。
実は、嘗て束とは面識があり、一時期は匿って貰ったりもした事がある。歳の離れた友人とでも言えば良いのか、そんな関係だ。
「ななちゃん、手伝ってくれるの?」
『博士が必要と言うなら、喜んで』
「じゃあ、お願い!」
『わかりました! 七色・アルシャービン、これよりお手伝いに入りますね』
「うん! 二人なら、きっとかず君達をサポート出来るよ」
「二人、じゃなくて、三人ですよ……束さん」
「!? いっくん!!」
背後の扉が開いて、一夏が中に入ってきた。その後ろからは千冬や百合子、箒達も揃っている。
「……いっくん」
「今は、気にしないでください」
一夏の全身を染める返り血を見て、束が悲しそうな表情をするが、今はそんな時ではないと、一夏は隣の席に座ってコンソールを立ち上げた。
「えっと、七色博士?」
『ええ、男性IS操縦者の織斑君ですね』
「ああ、俺も手伝うけど、良いよな?」
『博士からは貴方も電子工学に強いと聞いてるわ。だから、頼める?』
「勿論だ」
立ち上がったコンソールに手を添えた一夏は既に準備完了。それから百合子達に目を向けると、百合子、箒、鈴音、千冬は頷いて電脳ダイブの準備を始めた。
「よし、じゃあ束さん」
「おっけー!」
「七色博士」
『準備完了!』
「じゃあ……行くぜ!!」
天災と天才、そして未来の天才の三人によるハッキングへのカウンターアタックが始まった。同時に、百合子達の電脳ダイブも開始され、電脳世界で戦う和人達への本格的な援護が行われる。
「須郷、お前の思い通りに行くと思うなよ……!」
次回、電脳世界での戦いも決着。仮想世界最強と現実世界最強が揃ったんですから、まぁ敵無しでしょうよ。