SAO帰還者のIS
第百二話
「絶対最強、黒の剣士」
「おおおおおおあああああ!!!」
電脳空間に和人の咆哮が響き渡り、次いで甲高い金属音が鳴り響いた。
振り下ろされる鎌を剣で受け流しながらスカル・リーパーの懐へ飛び込み、走りながらライトエフェクトで輝かせていたエリュシデータによるヴォーパルストライクを突き刺す。
その横では明日奈が鎌を抑えるシャルロットと簪の後ろから飛び出してリニアーをスカル・リーパーの顔面に叩き込み、スイッチしたセシリアがアクセル・レイドを決めていた。
「まだだ! 散開してもう一度波状攻撃!!」
スキル後の硬直が解けた和人がシャルロットと共に明日奈に振り下ろされた鎌を弾き返し、簪がクロエの作り出した巨剣と共にセシリアの防御を行うと、二人も硬直が解けたので一度距離を取る。
同時にクロエ以外の全員が散ってスカル・リーパーの全方位から休む間の無い攻撃を展開すると、スカル・リーパーも誰をターゲットにするのかでラグを起こしたのか動きが少しだけ鈍くなった。
「避けろ桐ヶ谷!!」
「っ!!」
突如、頭上から聞こえた声に、和人は咄嗟に反応してその場から飛び退くと、スカル・リーパーの顔面が頭上から顎下まで一振りの刀が振り下ろされた。
刀のソードスキル、絶虚断空による一撃は、その威力からスカル・リーパーを吹き飛ばし、その先に大量の槍が降り注ぐ。
「あれは……無限槍!」
「遅くなったな桐ヶ谷」
「お、織斑先生!?」
無限槍の最上位ソードスキル、インフィニティ・モーメントがスカル・リーパーに降り注いだのだと気づいた和人の横に降り立った一人の女性、それは千冬だった。
ALOにおけるサクラの服装と刀のユキサクラを右手に持ち、そしてサラマンダーの羽を生やした千冬は不適な笑みを和人に向けている。
「お待たせ」
「加勢に来たぞ」
「一気に倒しちゃいましょ!」
千冬だけではない。百合子、箒、鈴音もそれぞれSAOとALOの服装と装備で降りてきた。やはり、先ほどのインフィニティ・モーメントは百合子によるものだったらしい。
「織斑先生……いつの間にソードスキル?」
「何、夏休みの間は時間を見つけてALOにログインしてスキル熟練度を上げていたからな……もう一度、お前にリベンジする為に」
「あ、あはは……」
あの時、千冬はALOでのデュエルで和人に負けたのが悔しかったらしく、あれ以来ALOに何度もログインしてスキル熟練度を上げてソードスキルを鍛え上げていたようだ。
だが、今はそれが頼もしい。仮想世界最強と、現実世界最強、二人の最強がこうして揃って最悪のボスと相対するのなら、これほど心強いものはない。
「結城姉、お前が指揮を執れ」
「は、はい! 織斑先生はシャルちゃんとツーマンセル! 箒ちゃんは百合子ちゃんと、セシリアちゃんは鈴ちゃん、簪ちゃんとわたしは……」
「いつでも行けるぜ、アスナ」
「うん! わたしはと簪ちゃんはキリト君と一気に行くよ!! クロエちゃん!!」
「スカル・リーパーの残りHPから算出……全員が最上位ソードスキルを使って、私がトドメを入れる事で決着です」
「よし! なら出し惜しみは無しだ!! 全員、最上位ソードスキルで、スカル・リーパーのHPを削り切る!!」
『了解!!』
先ず最初に動いたのはリアルでもALOでもコンビを組む事が多いセシリアと鈴音だ。
短剣と戟を構えながら走り出し、それぞれ刃をライトエフェクトで輝かせると、振り下ろされたスカル・リーパーの鎌を和人と明日奈が弾き返した隙に飛び上がる。
「やぁああああ!!」
「せいやぁあああ!!」
放たれた短剣による超高速4連撃と戟による超高速6連撃、短剣最上位ソードスキルであるエターナル・サイクロンと槍最上位ソードスキルであるダンシング・スタンピードが決まり、スカル・リーパーが大きく仰け反った。
「箒!」
「先に行け百合子!」
「うん!!」
次いでスイッチして二人と交代したのは箒と百合子だ。真っ直ぐスカル・リーパー目掛けて走る箒とその周りの槍を蹴り上げながら自身も飛び上がった百合子、二人の刀と無限槍の最上位ソードスキルが、発動した。
「はぁああああああ!!!!」
高速で動き回る箒から放たれた5連撃、刀の最上位ソードスキルである散華がスカル・リーパーに叩き込まれた瞬間、その頭上で無数の槍がライトエフェクトを纏いながら……打ち出された。
「インフィニティ・モーメント!!」
無限槍最上位ソードスキル、インフィニティ・モーメントは百合子が持つ全ての槍が頭上から降り注ぐ広範囲スキルだ。巨体のスカル・リーパーにとっては全身を槍が貫く凶悪スキルとなるだろう。
「織斑先生!」
「続け、結城妹」
「はい!」
更にスイッチして箒と同じ刀の最上位ソードスキル、散華を使う千冬が先にスカル・リーパーにスキルを叩き込み、そしてその後ろからシャルロットが片手剣最上位ソードスキル、超高速6連撃ファントム・レイブを決めた。
「せあぁあああああああ!!!」
シャルロットがファントム・レイブを決めた瞬間だった。一筋の閃光がスカル・リーパーの顔面を穿ったのは。
それは明日奈が十分な助走を取って放った全力の細剣最上位ソードスキル、フラッシングペネトレイターだ。
「簪ちゃん!」
「スイッチ!!」
後退する明日奈と入れ替わり、簪が薙刀を構えてスカル・リーパーに箒や千冬と同じ、刀の最上位ソードスキル、散華を叩き込み、残りHPを確認した簪は一気にその場から飛び退く。
「和人さん!」
「ああ、行くぜ!」
更なるスイッチと共に、和人が最後の一撃を決める為に出てきた。後はその両手のライトエフェクトで輝く剣を叩き込む、それだけだったのだが、スカル・リーパーが突如目を光らせ、高速で移動して和人の後ろに回りこんだ。
「なっ!?」
不味い、もう和人はスキル発動状態に入っているので、回避行動は取れない。このままでは和人は……死ぬ。
『その人は、死なせねぇ!!』
だが、スカル・リーパーの鎌が和人を貫く事は無かった。何故なら、聞き覚えのある声と共に、スカル・リーパーの動きが止まり、その身を巨大な剣が貫いたのだから。
「ナツ! クロエ!」
『キリトさん! 今だ!!』
「決めてください」
「キリト君!」
「パパ!!」
「キリトお義兄さん!!」
「和人さん!」
「和人!」
「義兄さん!」
「和人さん!」
「和人さん!」
「桐ヶ谷!!」
一夏が、クロエが、明日奈が、ユイが、百合子が、セシリア、鈴音、シャルロット、箒、簪、千冬、皆が和人に最後の一撃を託した。
その想いに応える為に、和人は強引に身体の向きをスカル・リーパーの方へ向けて、更に強くライトエフェクトで輝いたエリュシデータとダークリパルサーを強く握り締める。
「うぉおおおおあああああああああ!!!!」
放たれたのは太陽のコロナのごとくスカル・リーパーに襲い掛かる連撃、二刀流最上位ソードスキル、超高速にして脅威の27連撃、ジ・イクリプスだ。
「これで、終わりだぁあああああ!!!!!!」
ジ・イクリプス最後の一撃が、ダークリパルサーの刃が、スカル・リーパーを貫いた。一瞬の静寂の後、スカル・リーパーの全身が歪み、派手な音と共にポリゴンの粒子となって消える。
「終わった……な」
ゆっくりと、両手の剣を背中の鞘に戻した和人は、後ろを振り返った。そこには、この戦いを共にした仲間達と、それから和人の所へ駆け寄る愛する恋人と、愛娘の姿が。
「キリト君!」
「パパ!!」
抱きついて来た二人を、抱き止めた和人はそっと二人を抱き締める。戦いを終えた後は、やはりこの二人の温もりを感じるに限ると、最近の和人の戦闘後のマイブームだ。
「お疲れ、アスナ」
「うん、キリト君もね」
「パパ、カッコ良かったですよ!」
嬉しい事を言ってくれる愛娘には、お礼に抱っこをしてあげる事にした。嬉しそうに笑うユイに、和人と明日奈は釣られて笑みを浮かべる。
「やっぱりキリト君は、最強だよ」
「いや……俺一人の力じゃない」
「え?」
「皆が居てくれたから、それに何よりアスナとユイが、傍に居てくれるから……だから俺は、強くあろうと出来るんだ」
電脳世界最強の和人が、最強たる所以、それは仲間の力があってこそであり、そして何より大きいのは、愛する恋人と、愛娘が傍に居る事、それが何よりも和人を最強とする理由だ。
「ナツ、ハッキングの方はどうだ?」
『お蔭様で、キリトさん達がスカル・リーパーを倒した事で止まりましたよ』
「そっか」
なら、後は現実世界に帰るだけなのだが……。
「パパ、ママ……」
SAO時代の姿でユイと一緒に居られる滅多に無いチャンスなので、和人と明日奈は先に現実世界に戻る仲間達を尻目に、少しの間だけ親子三人の時間を過ごすのだった。
……決して、ユイの寂しそうな顔に負けた訳ではないと、親馬鹿二人は後に語ったそうだが、誰が信じるか。
次回、今回の件の後の須郷のお話が。