SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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お待たせしました。今回は難産だった……。


第百五話 「体育祭前」

SAO帰還者のIS

 

第百五話

「体育祭前」

 

 体育祭、それは学生達の秋の風物詩。それは青春の汗と魂のぶつかり合い。男女問わず、血で血を争う陸上の祭典。

 ここIS学園でもそれは同じで、ISというパワードスーツを使う事無く、生徒達が己の肉体を限界のその先まで使い、体力の続く限り競い合う。

 

「てな訳で、1組が優勝する為に俺達はどんな手を使ってでも勝利を捥ぎ取る!!」

「はいナツ君落ち着こうねー」

 

 クラス委員長である一夏は教卓に立ってSHRという時間をクラスメート達の出場競技決めに割り当てていた。

 そんな競技決めで何故か熱くなった一夏を、隣で副委員長の明日奈がハリセンを一夏の後頭部に叩き付けて黙らせる。

 

「それで、競技なんだけど、100m走、200m走、400m走、1500mリレー、借り物競争、ハードル、砲丸投げ、走り高跳び、軍事障害物競争、仮装競争、パン食い競争、二人三脚、騎馬戦、玉打ち落とし……誰がどれに参加するかで勝敗を分けそうだよー」

 

 IS学園の生徒は基本的に運動神経が良い。なのでどれに参加しても問題は無いのだろうが、それぞれ得意な競技、持久力などが異なるので、上手く人員を割り振るのが優勝への鍵となる。

 

「アスナさん、俺は仮装競争に出たいんですが」

「え、ナツ君が?」

「ええ、仮装となれば黙ってられません」

 

 何故か仮装に乗り気な一夏に疑問を持つも、本人が出たいというのなら文句は無い。なので明日奈は仮装競争の出場者に一夏の名を書き込んだ。

 

「はいは~い! わたし、軍事障害物競争やるよ~」

「えっと、のほほんさんが軍事障害物競争、他に軍事障害物競争やりたい人は? ……夜竹さんと国津さんね」

「では、私は200m走を」

「四十院さんが200m、他は? ……相川さんに鏡さん、百合子か」

 

 順調に参加種目が決まった。和人も400m走に、明日奈が100m走に、それから和人と一夏、明日奈、百合子の4人が1500mリレーのクラス代表選手として参加する。

 因みに一夏が参加する仮装競争には箒、セシリア、シャルロット、ラウラ、明日奈、和人、百合子も参加する事になった。

 

「うん、こんなところか……じゃあ最後にクラス代表として一言、狙うは優勝の二文字だけ! その為にお前ら!! 敵を捻じ伏せてでも貪欲に勝利を渇望するんだ!!!」

「はい熱血禁止ー」

 

 熱血が再発した一夏にクラス中が引いている中、再び明日奈のハリセンが一夏の後頭部に叩き付けられるのと同時にSHRが終了するのだった。

 

 

「ええ!? い、一夏が仮装競争に出るですってぇ!?」

 

 昼休み、いつもの専用機持ち+ラウラを入れたグループで食堂に集まり、昼食を食べていた際、一夏が体育祭にて仮装競争に出るという話になったとき、鈴音が驚愕の声を挙げていた。

 

「お、おい鈴、一夏が仮装するのがそんなに可笑しいのか?」

「はぁ!? 箒、アンタ知らないの?」

「いや、何をだ?」

「そっか、一夏のアレってまだ箒が居た頃に完成した訳じゃないのね……」

 

 アレとは何なのか、全員が聞きたそうに鈴音に注目するが、一夏が話すなと目で語っていた為、鈴音もため息を零しながら誤魔化しつつ説明する。

 

「一夏には十八番とも呼ぶべき仮装……てかコスプレがあるのよ。しかも、そのクォリティの高さが馬鹿みたいに高すぎて笑うに笑えないレベルのね」

 

 鈴音から言えるのはそれくらいだ。彼女の脳裏には中学時代のクラスパーティーで一夏が行った宴会芸と称したコスプレが浮かんでいる。

 あの姿を見て鈴音も、友人の弾や数馬も、クラスメート達も、そのクォリティの高さに爆笑ではなく戦慄したのだ。

 

「ところで、体育祭も重要だけど、1年生は体育祭後に修学旅行よね? その辺の話もそろそろ話題になるんじゃない?」

 

 この中で唯一の2年生である楯無は去年、修学旅行に参加した人間だ。彼女が言うにはIS学園の修学旅行の行き先は京都、修学旅行と言えば京都なのはIS学園も普通の高校といったところだろうか。

 

「京都、か……」

「アスナさん?」

「あ、ううん……京都って、わたしの家、結城の本家があるんだよねー」

 

 日本において結城家とは京都を本拠地とする超が付くほどの有名な名家だ。京都を中心に地方銀行を経営しており、政財界と太いパイプを持つ正真正銘の良家。

 

「そういえば、明日奈さんがIS学園に居る事って結城本家は何も言ってないの? 私とお姉ちゃんは更識家が特殊だから名家でも事情が違うけど、結城家は普通の名家でしょ?」

「う~ん……正直な事を言うなら母さんと本家、両方が大反対してるかな。母さんも本家も、ISは野蛮人の玩具っていう認識を持ってるみたいで、それを学んでいる事が気に入らないみたいだよ。むしろリハビリを終えたなら早く普通の進学校に転校しろとも言われてるから」

 

 それが嫌だったから明日奈は夏休みに帰省しなかったのだ。勿論、その事で母が大層ご立腹だという話を父から聞いているので、冬休みは京都の結城本家への正月恒例の挨拶へ行く事もあって帰省する必要があるのだが。

 

「冬休みといえばアレですわ! アインクラッドのアップデート!」

「確か、クリスマスだったわよね? 今は確か19層までクリアされてるみたいだから、それまでには20層が攻略される筈よ」

 

 そうだ。そうなればアップデートされる事で21層が開放され、22層へ行く為のフロアボス戦に挑める。

 その日はキリト達が総戦力で21層を攻略し、フロアボス戦をアップデート当日に行う予定を立てているのだ。

 

「アップデートのことはまた今度にしませんこと? 今は体育祭の話ですわ」

「そうだね……僕も話したい事があったんだよ。何で軍事障害物競走に手を挙げようとしたのにラウラが僕の手を押さえたのか、とかね?」

「っ!? い、いや、それはだな……」

 

 シャルロットに銃を持たせてはいけない。これは今の1組全員の共通認識である。日本代表候補生の合宿から帰ってきたシャルロットが最初の銃の授業で見せた暴走、それを知れば誰もが彼女を銃を使う軍事障害物競走に出そうなどと思うまい。

 そして、それがシャルロットにとっては不満だったようで、隣の席から乗り出して手を挙げようとしたシャルロットの手を強引に押さえつけたラウラに満面の笑顔を向けていた。

 

「ラウラ♪ 今度の休みは一緒にお買い物しようね~♪」

「ヒィッ!? い、嫌……買い物は、買い物は……嫌だぁあああああああ!?」

 

 一体ラウラに何があったのか、シャルロットとの買い物がトラウマになっているようで、今も真っ青な顔でガクガク震えながら壊れたラジオのように「キセカエ……キセカエコワイ、キセカエコワイ、キセカエコワイ……」などと呟いている。

 

「何があったのよラウラに……」

「え~? 前にラウラが私服を持ってないからって事で一緒に買い物に行っただけだよ?」

 

 まぁ、そのときに店員と一緒になってラウラに散々着せ替え人形の如く様々な服を着せて楽しんでしまったのだが、それが原因だろう。

 

「一緒に買い物……あの、お兄様」

「ん?」

「実は、私も私服はそれほど多くないのです」

「あ~……じゃあ、今度の休みにでも街に行くか?」

「本当ですか!?」

「お、おう?」

 

 シャルロットとラウラが一緒に買い物に行ったと聞いて、クロエが隣に座る一夏の制服の裾を掴んで目を閉じたまま彼の顔を見上げる。

 そんなクロエの言いたいことを理解した一夏は、せっかくの妹分の我侭を叶えてやりたいと思い、百合子が頷いたのもあってか了承した。

 恐らく、次の次の休みには百合子とデートを要求されるだろうが、それは願ったり叶ったりなので問題は無い。

 

「あれ? キリト君、どうしたの?」

 

 ふと、明日奈が先ほどから大人しくしている恋人に話しかけると、和人はハンバーグを箸で突きながらボーッとしていたのか、少しだけ反応が遅れた。 

 

「ん? いや……そうだな、アスナ、今度の休みなんだけどさ」

「うん?」

「俺達も、デートに行かないか?」

「!? ほ、ホントに!?」

「ああ、渡したい物が……あるんだ」

 

 渡したい物が何なのか、それはこの場で黙秘されてしまったが、アスナは純粋にデートを喜んでいたので良しとする。

 そうして休み時間が終わりを向かえ、食事を終えた面々は教室に戻るのだが、一人残った和人はポケットから取り出した指輪ケースを眼前に持ってきて、そして……ポケットに戻すと歩き出した。

 




次回は早々に体育祭開始!
一夏君の十八番とは、一体何なのか……。
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