SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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な、何とか出張前に一話だけ書き上げられた。


第百八話 「チームワーク最高峰、最後のリレー対決」

SAO帰還者のIS

 

第百八話

「チームワーク最高峰、最後のリレー対決」

 

 完成度の高い千冬のコスプレをした一夏、しかしその姿は最早コスプレというより変装と言って差し支えないレベルで、本物との身長差と肩幅くらいしか違いが見分けられないというのは、姉弟だからこそなのだろうか。

 結局、仮装競争は着替えを最初に終えた鈴音が1位という形で終わり、今は全員が一夏の周りに集まっていた。

 

「……相変わらず、アンタのそれって変装レベルね」

「これが、鈴さんの仰っていた……」

「きょ、教官と殆ど見分けられないとは見事だ」

 

 鈴音は前々から知っていたので然程驚かないが、今回初めて見る面々は一様に驚きと好奇心に満ちた表情で一夏(千冬ver)を観察している。

 

「興味を持つのは良いが、そろそろ着替えろよ。次の競技に遅刻でもしてみろ、グラウンド100週を言い渡す」

 

 千冬の声でそう言うと、特にラウラが思いっきり反応した。最早彼女の場合は条件反射なのだろうが、声真似でここまで反応するという事は、それだけ完成度が高い証拠だ。

 

「Zzz……Zzz……Zzz……」

「ちょ、シャルロット……起きて、着替えないと」

「ん~……わっしー、だめだよ~。それはミノさんの醤油ジェラートだよー……Zzz」

「……そのっち、起きなさい。着替えないとそのっちの分の牡丹餅、食べちゃうわよ」

「っ!? わわわっ! お、起きてるよ~!」

 

 一夏達の後ろでそんな愉快なやり取りもあったが、兎に角競技は終わりだ。全員着替えを済ませて自分達のクラスの席に戻った。

 当然だが、一夏はクラスメート達に囲まれたのは言うまでもないだろう。

 

「ねね、織斑君、今度先生の格好で教壇立ってみてよ!」

「うんうん、違和感無いかも!」

「それなら山田先生にあの格好で声掛けて貰って気付くか試してみたいよね~」

「あはは……また今度な。それより次の競技は何だっけ?」

 

 次の競技を確認しようと一夏がプログラム(今時珍しい紙製)を取り出そうとしたら、後ろからプログラムを差し出された。

 振り返ってみれば和人が後ろに明日奈を引っ付けているではないか。

 

「次、俺達のチームリレーだってさ」

「お、なら連続ですね。でもまぁ、俺達にチームプレーなら、これくらいの疲労は丁度良いハンデか」

「そう思うか?」

 

 見てみろと言って和人が指指す先では、2組の鈴音とティナ・ハミルトン、4組の簪、それから3組も専用機持ちではないもののメキシコ代表候補生の生徒が代表としてストレッチを開始していた。

 

「どのクラスもこのリレーの大量得点を狙って本気(ガチ)メンバー揃えてるぜ」

「へぇ……でも、キリトさん」

「ああ」

「「負けるつもりは無いけどな」」

 

 男二人、ニヒルに笑って拳をぶつけ合った。そんな二人の様子を、それぞれの恋人達は、見惚れたように見つめているのは、最早1組ではデフォというべきだろう。

 

 

 クラス対抗チームリレー、各クラスから4人の代表選手を選び、2000mを走るリレー競技だ。一人500m、個人が走る分には大した距離ではないので、注視すべきはやはりバトンパスだろう。

 チームの息が合っていなければバトンパスは上手くいかない。万が一バトンを落としてしまえばそれだけで他チームから大きく引き離されるというロスが発生するのだ。

 

「まぁ、SAOで大体この4人パーティーばっか組んでた俺達なら、チームワークなんて今更だな」

「一番手はわたしが、次にユリコちゃん、ナツ君、そしてキリト君、この編成で良いんだよね?」

「ええ、血盟騎士団同士息の合っているアスナさんとユリコなら確実にバトンパスも上手く行くはず、んで俺とユリコも言わずもがな、キリトさんは」

「何気にナツとパーティー組んだ回数はアスナと同等だからな、それなりに息は合ってる筈だ」

 

 一番手は瞬発力の高い明日奈が勤めて序盤から一気に他クラスとの距離を稼ぎ、二番手の百合子がペースを維持、三番手の一夏で更に引き離してアンカーの和人がそのままゴールする。

 これが今回のリレーにおける1組の作戦だ。バトンパスの事も視野に入れれば、恐らくこれが一番確実で、勝率が最も高い作戦だろうとユイのお墨付きだった。

 

「それでは、これよりリレーの開始ですので、各選手は所定ポイントまでお願いしまーす!」

 

 真耶がスタート台に立ったのを確認して、各々が自身の持ち場へ移動した。

 チラッと一夏が他のクラスのメンバーに目を向けてみれば、2組は1番手にティナを、アンカーに鈴音を入れているのが見えて、4組は意外にも簪が1番手だった。

 

「色々考えてるな……だけど、負けるつもりは無い」

 

 このリレーで1組が勝てば、僅差ではあるが2組が2位になったとしても逆転出来る。何としても、このリレーで負けるわけにはいかないのだ。

 

 

 各クラス代表がそれぞれのスタート位置に立った。右手にバトンを持ち、静かにクラウチングスタートの体勢に入ったのを確認した真耶は右手に持ったピストルを天高く掲げる。

 

「それでは、よーい!」

 

 全員の形の良いヒップが高く上げられ、下半身の爆発力を高めるために全神経を集中……そして。

 

「っ!」

 

 小気味の良い渇いた破裂音と共に1組から4組までの第一走者が一斉にスタートした。

 先ず、先頭を走るのは持ち前の瞬発力を活かして瞬時にトップへと躍り出た明日奈、その後ろにティナが続き、簪、そして3組の選手が続く。

 

「……っ! ここ!!」

 

 順位をそのままにコーナーへと差し掛かった時、簪が仕掛けた。比較的小柄な体型を活かして身体を屈めながらコーナー内角へと入り、そのままティナを抜かして明日奈へと迫る。

 だが、明日奈も当然だが内角側を走っているので、簪が明日奈を抜くには外角へと出る必要があるが、コーナーで外角から内角側の人間を抜くのは容易ではない。

 

「んっ! 明日奈さん、流石……っ!」

 

 簪は明日奈を抜く事を諦めて、このまま2位で次のクラスメートにバトンを託す選択をした。兎に角、後ろから追い上げてくるティナに抜かれない事を意識しながらストレートを走る。

 

「ユリコちゃん!」

「……」

 

 第一走者が第二走者に近づいた。最初にゆっくり走り出したのは百合子で、左手を後ろ手に明日奈へ顔を向ける。

 

「スイッチ!!」

「っ!」

 

 掛け声と共に、百合子の左手にバトンが当たった瞬間、百合子がバトンを握り、明日奈が手放す。完璧なタイミングで行われたそれは、二人の速度を落とす事無く、一切のロス無しで百合子へとバトンが送られた。

 

「っ! 行って」

「任せたわ!」

「GO!」

 

 続いて簪、ティナ、3組の生徒がバトンパスを終えて第二走者が走り出した。

 第2走者達のレースは、簡単に言えば第一走者の延長線といった所だろう。順位は変わらず、百合子が一位のままコーナーを走りきってストレートへ入ると、そのまま一夏の背中が見えてくる。

 

「ナツ!」

「ああ……っ」

 

 一夏がゆっくり走り出して右手を後ろ手に差し出した。百合子は左手のバトンをそのまま一夏の右手へと差し出し……。

 

「スイッチ!」

「行くぜ!!」

 

 明日奈と百合子の時と同様、完璧なタイミングで行われたバトンパスによってロス無く右手にバトンを持った一夏が全力で走り出した。

 ALOにおいて、高速戦闘の貴公子と呼ばれる程、速度に秀でた戦闘を得意とする一夏は、当然だがリアルでも足の速さには相当意識して鍛えている。

 速度を重視した戦いをする自分がリアルでは、ISを降りたら足が遅いなど笑い話にもならないからと、それこそ陸上のスプリンター並の練習量を自身に課して鍛えてきた。

 いや、お前もうそれリハビリじゃないだろ、などと言われながらも鍛え抜いた一夏の脚力は、今正に、ここで発揮される。

 

「このまま……っ!」

 

 一気に後方の選手達との距離を引き離し、トップを独走する一夏は、コーナーを素早く駆け抜けてストレートへと躍り出る。

 視線の先には既に和人が構えていて、左手を後ろ手に差し出しているのが見えた。

 

「キリトさん!!」

「ああ」

 

 和人がゆっくり走り出した。それを見て一夏も右手のバトンを差出ながら速度を上げて和人の背中に追いつくと、バトンを和人の左手に当てる。

 

「スイッチ!!」

「っ!」

 

 言うまでも無いが、完璧なタイミングでバトンパスが行われ、和人が一気にトップスピードへとギアを上げた。

 このまま行けば間違いなく1組が一位のままゴール出来る。そう思って安心して和人の背中を見送った一夏だったが、いつの間にか4組を抜いて2位になっていた2組の第三走者からアンカーの鈴音へとバトンが渡り、彼女が走り出した事で驚愕する事となった。

 

「ぬぅおおおおりゃあああああああああ!!!!!」

「なっ!?」

 

 女子としてそれはどうなんだ。という雄叫びと共に鈴音が物凄い速度で走り出してどんどん和人との距離を縮めているではないか。

 和人もそれに気付いて更に速度を上げるが、距離が縮む方が圧倒的に早い。

 

「くっ!」

「まぁけるかぁあああああああ!!!」

 

 コーナーを出て、最後のストレートに差し掛かった時には二人は並走状態、追い付く為にスタミナを使いすぎた鈴音はこれ以上速度が上がる事は無かったが、それでも油断すればゴール直前で逆転される。

 

「負けないわよ和人!」

「……ああ、だけど」

 

 フッと、和人が意味深に笑う。

 

「スタミナを使いすぎたな、鈴」

「なっ!?」

 

 最後の最後で、スタミナを残していた和人がゴール直前、身体一つ分だけ鈴音より前に出てゴールテープを切った。

 

『やったー!! パパが勝ちました!! パパー!! 格好良いですーー!!』

「ああもう、ユイさん落ち着いてくださいまし!」

 

 呼吸を整える和人の耳に愛娘の声が聞こえて、そちらに目を向けてみれば束からユイの投影用端末を預かったセシリアの傍で愛する娘がチアガール姿で和人に手を振っているのが見えた。

 折角の愛娘の声援だ、これに応えるのが父親というものだろうと、和人もユイに向かって手を振れば、彼女は愛らしい満面の笑みを浮かべてくれる。

 

『やっぱり、ユイのパパは世界一格好良いです!』

「はいはい、全くもう……馬鹿親子ですわね」




次回はまた未定です。
一先ず出張で宮古島へ行きますので、暫くは無理ですね。
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