SAO帰還者のIS
第百十八話
「事前調査」
京都へは東京駅から新幹線で2時間弱程で着く。その道中である新幹線の中では既に班毎に席割りが決められており、一夏と百合子、和人、明日奈は4人で一班なので、席を向かい合わせにして互いに恋人を隣に座っていた。
因みに、京都へは明日奈も百合子も何度となく行った経験があるが、一夏と和人は初めてなので男子二人、密かに京都を楽しみにしている事は明日奈も百合子も実は気づいている。
「なぁナツ、先ずは二日目の自由行動、何処に行く?」
「ん~、一日目で清水寺には行くみたいだから……定番なのは金閣寺とかですけど、俺個人の希望を言うなら西本願寺とか壬生屯所旧跡とか行ってみたいです」
「お、新選組か」
「ええ! やっぱ日本男児たるもの、侍には憧れますし、侍といえば幕末、幕末と言えば……」
「「新選組!!」」
こうして見てると、一夏も和人も普通の男の子なのだなぁと感じてしまう。
「なら池田屋跡とか外せないよな?」
「蛤御門の銃痕は絶対に見ておきたいですね」
「それから油小路の天満屋跡地や京都御所にも行かなきゃだな」
この二人、絶対に事前調査をしてる。明日奈と百合子はそう思いながら苦笑しつつ持って来ていた京都観光のパンフレットを開いた。
「百合子ちゃんは京都に行ったらいつも何処行ってるー?」
「ん~……祇園、です」
「祇園かぁ、祇園祭は子供の頃とか行ってたねー」
「私も、祇園祭の時期になると毎年行ってました」
因みに、明日奈も百合子も、祭と言えば祇園祭、天神祭、神田祭が基本で、この三つは毎年行っていたが、地元の祭といったものには行った事が無い。
「そうだ、鞍馬寺には久しぶりに行きたいかなー」
「良いですね、私は伏見稲荷大社が好きなので、また行きたいです」
流石はお嬢様二人、行き着けの観光スポットはあるらしく、小さい頃から何度も行っているらしい場所の名前を挙げてくる。
「わたくし、シンセングミに興味がありますわ! ジャパニーズサムライの代表! チェルシーにシンセングミの隊服をお土産にしますわ」
「お、セシリアわかってんな!」
「え~、アタシは新選組より舞妓かなぁ、あの着物着たいし」
「僕も舞妓に興味あるよ、日本に来たら一度は着物を着ておきたいって思ってたんだ」
「ふむ、私はセシリアと同じでシンセングミに興味があるぞ、日本刀を土産に買いたい」
海外出身組は和人や一夏に同意するのがセシリアとラウラだけのようで、他はみんな明日奈と百合子に同意するか、もしくは自分達それぞれに興味のある物を楽しみにしている様子。
「あはは、みんなホントに京都を色々調べてるみたいだねー……」
「……ん?」
クラスメート達の様子を微笑まし気に眺める明日奈を見て、和人が違和感を覚えた。やはり少し前から様子が変だと感じていたのは気の所為では無さそうだ。
「……ユイ」
『はい、何ですか? パパ』
「京都では、なるべくママから離れないようにしてくれるか?」
『……了解です』
「ありがとう。ママの事、頼むな」
『はい』
もし何かあればユイが直ぐに和人へ知らせてくれる。考えてみれば京都と言えば明日奈の実家、結城家の本家がある地だった筈で、もしかしたらその関係で何か悩んでいるのかもしれない。
「……アスナ」
「キリト君?」
「あ~、えっと……楽しもうな? 一緒に」
「あ……」
「考えたらさ、二人きりじゃないけど……こうして一緒に旅行するなんて初めてだろ? だから、さ」
「キリト君……」
不器用なりに、自分を元気付けようとしてくれているのが明日奈には分かった。だからだろうか、現金なもので、少し気落ちしていた気分が良くなった気がする。
「うん、そうだね……一緒に楽しもうね、キリト君」
「ああ」
『パパ! ママ! わたしも一緒ですよ!』
「勿論! ユイちゃんも一緒に楽しもうねー」
『はい!』
こうして、IS学園1年生一同を乗せた新幹線は京都へ向かってまだまだ進む。その間、生徒達は間もなく到着する京都の地へと思いを馳せるのだった。
1年生が修学旅行に行って不在となったIS学園、その生徒会室に生徒会長である楯無の他に2年生のフォルテ・サファイア、サラ・ウェルキン、3年生のダリル・ケイシーといった上級生の代表候補生が集められていた。
「んで? 俺達を集めたのは何でだよ」
「1年生が現在、修学旅行で京都に行っているのは、知っての通りよね……実は、
「マジっすか?」
「ええ、日本政府からの正確な情報よ」
「それが事実だとすると、不味いわね……」
1年生には専用機持ちが多数存在するが、1年生全員を合わせて100人以上の人間を10人に満たない人数で守りきるのは不可能だ。
勿論、千冬という世界最強も専用機、暮桜を復活させて所持しているとは言え、それでも彼女一人に出来る事など限られている。
「つまり、私達は増援というわけ?」
「そうよ、専用機を持つあなた達なら直ぐに動けるでしょ?」
「ん? 待つっす、サラは代表候補生でも専用機は持っていないんじゃ」
「ああ、そういえばそうだ」
そう、サラ・ウェルキンはイギリス代表候補生ではあるが、専用機を与えられていない。つまり、その点で言えば一般生徒と変わらない筈なのだが。
「大丈夫よ、私も専用機を受け取ったから」
そう言ってサラは藍いペンダントトップのネックレスを見せる。
「イギリス製第3世代型ISの試作量産機、そのテストパイロットに選ばれたの」
「なるほど、それなら安心っす」
「ええ、怪我で動けない私に代わってサラに急遽、お願いしたのよ。ついでに、山田先生への贈り物を届けて貰う役目もね」
その届け物についてはサラと楯無にしか知らされていない。つまり、いくら味方でもダリルとフォルテには教えられないらしい。
「とにかく、三人はこれから京都へ向かって頂戴。滞在するホテルについては1年生が泊まるホテルの別館に部屋を取ってあるから、そこを使って」
「お、随分と気前が良いじゃねぇの……因みに、動きがあるまでは自由にして良いんだな?」
「ええ、京都観光するなり、なんなり、ご自由にね」
そうさせて貰うと、ダリルはフォルテを連れて生徒会室を出て行く。
残されたサラは楯無と向き合い、ずっと黙っていた虚が差し出したブローチを受け取ると、それを眺めた。
「これが……」
「ええ、山田先生の為に用意した専用機……“ラファール・リヴァイヴ・スペシャル『
「完成したのは今朝?」
「そうなの、だから山田先生の出発には間に合わなかったわ」
「成る程ね……了解、必ず届けるわ」
「サラ」
受け取る物は受け取ったので、サラも生徒会室を出ようとしたのだが、それを楯無が呼び止める。
「ストライク・ティアーズ、整備は万全?」
「ええ、大丈夫だけど……」
「そう、なら良いわ」
何だったのだろうか、そう思いつつもサラは今度こそ生徒会室を出て、旅支度をする為に寮へと向かう。
「さてと、貴女も行くんでしょ?」
「……ああ」
校舎を出た所で何者かに声を掛ける。すると、校舎の影から一人の女性が出てきた。
「まさか、織斑先生に負けたからって理由でIS学園の傭兵になるなんてねぇ」
「敗者は勝者に従うまで、それだけだ」
彼女は以前、IS学園に潜入して千冬に敗れたファング・クェイク使い、アメリカの特殊部隊隊長だった女性だ。
あの後、捕虜となっていたのだが、釈放されてからはIS学園に留まって学園を守護する為の傭兵として雇われたらしい。
「お互い大変ね、人使いの荒い人の下働きなんて」
「まぁ……慣れっ子だ」
違いないと笑い合いながら、二人は寮へと向かう。そして、この後IS学園から3人の増援と、密かにプラス1名が京都へと送られるのだった。
京都タワー、京都でも有名な観光名所の一つ、そのタワーの上に一人の女性が立っていた。美しい黒髪をポニーテールにして、桜色の着物の腰には一本の日本刀が差してある。
「もう直ぐね……千冬、そして……
次回は京都観光、やっと京都ですねぇ。