序盤の箒って、どうしても扱いが悪くなってしまう。話が進めば良い扱いも出来るんですが、どうしても序盤の箒は自分勝手というかなんというか、そんな印象が強く、扱いは最悪と言えるかもしれません。
ただ、後々に千冬と同様に和解イベントは用意してますので、その辺で納得してくれればと思います。
SAO帰還者のIS
第十一話
「白と連れ添う戦士」
放課後、一夏が千冬に頼んで箒のこの日の放課後だけで良いので訓練機を優遇してもらう事に成功した為、早速だが練習にと第三アリーナを貸切にして一夏達4人とセシリア、箒は第三アリーナに来ていた。
既に箒は貸し出し用の訓練機、純日本製第2世代型量産IS“打鉄”を纏ってアリーナに出ており、百合子もアリーナに出て待機状態にしていた専用機、槍陣を展開する。
「行きましょうか、ルー・セタンタ」
展開した真紅の槍、その穂先を箒に向けると、近接戦闘用ブレードを構えた箒は剣道の時と同様、正眼に構えて百合子を睨んだ。
「貴様など、ただゲームで強くなった事が現実でも強くなったと勘違いしている馬鹿者だという事を、証明してやる」
「現実で強くなったなどとは、思ってませんよ。ただ、ISに乗る事でSAOの動きを再現出来るから、生身よりは強いという自信はありますが」
未だ、百合子も含めて一夏達は生身で満足な戦闘を行えない。SAOの動きを再現するなどそれこそ持っての外だ。
だけど、SAOの動きを再現出来るISに乗っているのなら、自分達はSAO攻略組としてのプライドもある、そう簡単に負けるつもりは無い。
「それでは、よろしいですか? 始め!」
セシリアの合図と共に先手必勝とばかりに箒が動いた。
ブレードを上段から振り下ろし、反応も出来ずに百合子に大ダメージを与える事を予想して口元を歪めるが、それは大いに間違いだ。
振り下ろされたブレードに槍をぶつけて絡め取り、箒の手からブレードを大きく弾き飛ばして素手状態にする。
「ナツの得意とした
夫が得意としたシステム外スキル、妻である百合子に使えないはずが無い。
武器を落とした箒は慌ててブレードを拾いに行こうとしたのだが、そんな事を許す百合子でも無く、一瞬で箒の背後に移動して強烈な刺突を一発入れると、面白いように箒が地面に激突した。
「グッ!?」
「ソードスキル、リヴォーブ・アーツ」
ルー・セタンタがライトエフェクトによって輝き、そこから5連続の刺突技が放たれた。
倒れていた箒は避けようにも回避行動を取る前に神速の如き槍が襲い掛かり、5連撃全てを受けてしまう。
唯でさえ威力の高いソードスキルを、専用機ではなく訓練機で受けて、しかも5連撃全てを受けてしまった結果、打鉄のシールドエネルギーは残り僅か、最後に心臓部目掛けて放たれた一発が、絶対防御を発動してシールドエネルギーを0にしてしまった。
「そ、んな…私が、何も出来ずに」
「剣道の腕は確かだと思う。でも、圧倒的に実戦経験が不足しているから勝てない」
「くっ、何が実戦経験だ…たかがゲームの経験が」
「たかがゲームでも、命を賭けた戦いという時点で実戦と何も変わらない」
ルー・セタンタを量子化した百合子は後ろを向いて既にセシリアに空中軌道について教わっている一夏達に合流した。
残された箒は悔しさに涙を流し、もはや自分を見ていない百合子を睨みながら怒りで震える拳を地面に叩きつけ、怨叉の声を呟く。
「許さん…絶対に、どんな手段を使おうと、絶対に貴様を超えてやる…絶対に、貴様の存在など、認めないっ!」
だから、箒は専用機を求めた。それも、誰にも負けない絶対の力となる最強の専用機を。そしてそれを作れるだけの人間が、彼女の身内には居る。
「姉さん…に、電話するか」
姉に頼んで百合子をISに乗れなくする事も可能だろうが、それでは箒の気がすまない。百合子だけは自身の手で下さなければ意味が無い。
だから、姉に求めるのは敵の無効化ではなく、自身の力だ。最強無敵、絶対無比、全てのISの頂点に立てるだけの力を、姉に求める。
放課後の訓練を終えて、一夏達が寮に戻ってくると食堂で一夏のクラス代表就任パーティーが開かれた。
最初こそALO趣味でオタクと思われていた一夏だったが、SAO帰還者だという事が判明してからは同情的な視線で見られていたりしたものの、それでも好意的な感情を向けられて、更にはセシリアとの試合で圧倒的な実力を見せた時点で一夏や和人に対する1組の反応は既に好評の一言だ。
『織斑君! クラス代表就任おめでとう!!』
クラッカーの音と共にパーティーが始まった。
沢山のお菓子やジュースが並べられ、一夏達も思い思いのお菓子を食べながら話しかけてくるクラスメートの対応を行っているのだが、一夏と和人に寄って来る女子が多すぎる。
元々、一夏はイケメン、和人は女顔という女子としてはアイドルみたいな存在、当然だが寄って来るのは当たり前だ。
「ねぇねぇ織斑君ってALOをやってるんだよね?」
「ああ、結構楽しいよ。空も飛べるからISの飛行イメージなんかには丁度良いし」
「そうなの!? ならあたしもALOやってみようかなぁ」
「アミュスフィア持ってたら出来るから、先ずはアミュスフィア入手からだな」
「うわ、高いんだよねぇアレ」
一般家庭で買えない事は無いが、それでも購入するには躊躇するくらいの値段はする。今では製造も販売もしていないナーヴギアだって同じだったのだから、彼女達の反応も当然か。
「桐ケ谷君! もしALO始めたら色々と教えてくれる?」
「え、と…そ、その時は、ね」
「買ったら教えてよ、キリト君と一緒にわたしも教えるから」
一方、和人は元来のコミュ障が災いして四苦八苦していた。隣で明日奈が色々とフォローしていなければ会話は成り立たなかっただろう。
「あら百合子さん、一夏さんの隣に行かなくてよろしいんですの?」
「ちょっと、飲み物のおかわり」
「あら、そうでしたの…そういえば私、昨日の夜に通販でアミュスフィアとALOのソフトを注文しましたわ」
「あ、買ったんだ」
「ええ、今度色々と教えてくださいな」
「うん」
百合子は先ほどまで一夏の隣に居たのだが、飲み物の御代わりを取りに席を立ったところをセシリアに捕まり、彼女がALOを購入したという事で話が弾んだ。
「それで、ALOは始める時はどうするんですの?」
「先ずは種族を選ばないといけないの、9種類の種族が居て、その中から一つを選ぶ。
「あら、御伽噺に登場する妖精の名前ですわ…なるほど、自分が妖精になるとは浪漫がありますわね」
「因みに私とナツは
「むむむ…私は、どうしましょう」
それからキャラネームというVR世界での自身の名前となるものを決める必要がある事も百合子は説明していた。
一夏ならナツ、和人ならキリト、明日奈と百合子は自身の名前にしてしまっているが、基本的には一夏や和人の様に自分の名前とは違う名前を考えなければならない旨も忘れずに。
「お、セシリアもALO始めるのか?」
「あら一夏さん。ええ、購入しましたので、届き次第始めようかと」
「そっか、なら最初は俺達のパーティーに入れるから、一緒にスキル上げとかしないとだな」
「スキル、ですの?」
「そう、魔法や剣、斧や槍、弓などといった攻撃手段や、料理や釣り、鍛冶などの戦闘に直接関係の無い趣味のスキルなど色々ある、それに今のALOはSAOで導入されていたソードスキルも使える様になってるから、それを覚えるのも有りだし、自分でオリジナルのソードスキルを開発するのも面白い」
「まぁ」
いつの間にかセシリアにしていた筈のALO講義はクラス全員が聞いていた。
皆、一夏や和人の強さの秘密であるVRMMOに興味を示しているらしく、教えている一夏としては大変嬉しい事だ。
「ねぇねぇ織斑君、RPGゲームって事はレベルなんかあるの?」
「ALOはレベル制じゃなくて完全スキル制だからレベルの概念は存在しない。スキル熟練度や本人の腕が全ての世界だ。勿論、魔法なんかは腕よりスキル頼りだから魔法に特化した人も居るな」
「ほうほう、魔法かぁ…子供の頃は魔法少女に憧れてたなぁ」
「ただし、呪文は暗記しないといけないから大変だぞ?」
「うへぇ」
頭の良い明日奈と百合子は呪文なんかは暗記しているが、一夏と和人は使う魔法だけ暗記して、それ以外は全く覚えていない。
そもそも剣で戦うのがメインの脳筋系だから魔法は殆ど使わないので覚える必要が無いとも言える。
「はいは~い! 失礼するよ!」
一夏がALO講義をしている最中、突然2年生の女子が割り込んできた。手にはカメラとメモ用紙、それからペンが握られていて、見るからに新聞部辺りの人間だというのが解る。
「私は新聞部の黛 薫子、今話題の男性IS操縦者である織斑君と桐ヶ谷君にインタビューに来ました~!」
「インタビュー?」
「そそ、君が織斑君だよね? 早速だけど良いかな?」
インタビューくらいなら構わないと、了承の意を示すと、何処から取り出したのか薫子はマイクを一夏に向けた。
「じゃあ先ず、代表候補生であるオルコットさんを倒してクラス代表に就任したわけだけど、その意気込みなんかを聞かせて頂戴」
「意気込みねぇ……クラスを背負った以上、無様な戦いはしない! で、どうでしょう?」
「おお! 良いねぇ。それじゃあ次! ALOが趣味って聞いたけど、強さの秘訣はやっぱりそれ?」
「ええ、飛行に関してなんかは特に、ALOは実際に空中戦闘なんかも行いますし、移動なんかでも飛ぶことが多いので、ISで飛ぶ時はALOで飛んでる時のイメージで飛ぶと結構イメージ通りに飛べます」
「おお、これは記事にしたら学園でALOブームが来るかも!?」
来たら来たでALOをこよなく愛する一人としては嬉しい事だ。
「じゃあ、最後に織斑君と宍戸さんが付き合ってるなんて噂があるけど、本当かな?」
「はい、間違いなく俺と百合子は付き合ってます」
「わお!? これは記事にしても構わないのかな?」
「良いですよ、特に隠してるわけでもないので」
「やったね! それじゃあ次は桐ヶ谷君!」
続いて薫子は和人の所へ向かい、和人にマイクを向けた。
少し困った顔をする和人だが、明日奈が発破をかけた事で仕方がないとばかりにインタビューに答える事に。
「桐ヶ谷君は何でクラス代表にならなかったの?」
「元々、俺自身がコミュ障で、人の上に立つとか苦手だから」
「へぇ、それじゃあ次は織斑君と同じでALOをやってる訳だけど、やっぱり織斑君と同じ感想なのかな?」
「ああ、飛行については随分とIS操縦の上で助かる」
「本当にブーム来るかもねーこれは……、それじゃあ次は、桐ヶ谷君と結城さんが付き合ってるって噂と、二人が実は1年生より年上だって噂、これについて!」
「事実だ。俺と明日奈は付き合ってるし、俺は今年で17になる」
「わたしは今年で18だよー」
食堂に驚愕の声が響き渡った。
そういえば言ってなかったねー、と笑う明日奈は大物なのか、天然なのか。和人もまた、言ってなかったなー、などと明日奈同様に笑っているので、似た者夫婦とは彼等の事を言うのだろう。
「え~と……取りあえず、記事には出来るね、うん。それじゃあ最後に専用機持ち全員で写真を撮りたいから織斑君と宍戸さん、桐ヶ谷君と結城さん、オルコットさん集まってくれる?」
言われた通りに集まり、薫子がカメラを構えた。
5人全員が中央で手を重ねた格好になり、シャッターが押されるのを待つ。
「じゃあ、いくよー! 49+56÷6×4は?」
暗算しろとでも言うのだろうか。
微妙の表情になった一同に薫子がシャッターを切った瞬間、一夏達の後ろにクラスメート全員が集まって写真に収まった。
何気に箒も一夏の後ろに立っているので、これでクラスの集合写真と化したのは言うまでもない。
「あ~、まぁ良いか」
これはこれで記念になると、強引に納得する事にした薫子であった。
次回は遂に中華娘が襲来!