SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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風邪がぶり返して危うく肺炎になりかけてました。


学年別タッグマッチトーナメント編
第十七話 「新たな転入生を迎える戦士達」


SAO帰還者のIS

 

第十七話

「新たな転入生を迎える戦士達」

 

 クラス代表決定戦が終わった翌週の中頃、箒も独房から出されて授業に復帰した後になる。

 今まで通りにHRが行われて授業になるはずだったのが、この日だけは違った。何故なら教室に入ってきた真耶と千冬の後ろから、更に二人の少女が一緒に入ってきたのだから。

 片方は小柄な銀髪の少女。ゲルマン系の顔付きからドイツ人なのだろうことは予想出来るが、眼帯をしていて、片方の目しか見えないものの、その目付きの鋭さが印象的な少女だ。

 そして、もう片方は明らかに異色と言える。欧州系……恐らくはフランス辺りの出身だろう。金色の長い髪を一つに束ねた中性的……よりやや女性的な顔の少年(・・)

 

「え~、今日は皆さんに転校生を紹介します」

 

 真耶の言葉の後で一歩前に出たのは少年の方だった。

 姿勢正しく、紳士然とした雰囲気の彼から発せられる声は、この歳でまだ声変わりしていないのかと言いたくなるほど、高い。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。皆さん、どうぞよろしくお願いしますね」

 

 一見すれば男装女子に見えなくも無いが、まさかそんな事をするメリットなんて今のところ思い浮かばず、ただ単に和人と同じで女性に見える男、という事なのだろうと、一夏は納得した。

 

「おいナツ、今不愉快な事考えただろ」

「ま、まさか~……?」

 

 鋭い。でも本人に言えば絶対に怒るので誤魔化した。

 

「お、男、のこ?」

「はい、同じ境遇の方が2名此処に居るという事なので、僕も転校して来ることになりました」

 

 シャルルが男だという事に、教室が割れるほどの歓声が湧いたのは、言うまでも無い。

 一夏も和人も恋人が既に居る男というのもあり、フリーの男が居ないこのIS学園に新たな男の登場で、年頃の女子が騒がない理由など無いだろう。

 それから、もう一人。銀髪のドイツ人少女の自己紹介がまだだ。

 

「自己紹介くらいしろ、ボーデヴィッヒ」

「はい、教官」

「私はもう教官ではない。ここでは織斑先生と呼べ」

 

 ボーデヴィッヒと呼ばれた少女が千冬を教官と呼んだ。その理由に一夏は心当たりなど一つしか思いつかない。

 まだ一夏がSAOに囚われていた頃、千冬はドイツからの要請でSAOに囚われたままの一夏を日本に残し、泣く泣くドイツへ渡って1年間の教官生活をしていたことがあるとのことで、恐らく彼女はその時の千冬の教え子なのだろう。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 名前だけの簡素な自己紹介にクラス中が困惑するが、当のラウラは我、関せずとばかりに目を閉じてクラスメートと視線を合わせる気は無いという態度を貫く。

 しかし、ふと目を開けたとき、丁度一夏と目が合い、千冬と似た目元から間違いなく織斑千冬の弟である織斑一夏だと確信したのか、ずかずかと一夏の前まで歩み寄ってきた。

 

「貴様が織斑一夏だな?」

「そうだけど?」

「っ!」

 

 唐突に平手打ちが飛んできた。だが、寸でのところで一夏がラウラの手首を掴んで止めたことで防ぐ事に成功する。

 

「チッ……認めん、貴様のような出来損ないが教官の弟だなどと、私は絶対に認めん!!」

 

 憤怒の表情で一夏を見下ろしながら叫んだ後、ラウラは手荒く一夏の手を振り払い宛がわれた教室の一番後ろにある席に向かい、その席に座った。

 シャルルもその隣の席に座った事で漸く落ち着いたのか、千冬が教卓の前に立ち、残りのHRを進める。

 

「それでは、1時限目は2組と合同でISの実習だ。着替えてグラウンドに集合しろ」

 

 これにてHRは終わり、生徒達は急ぎ更衣室まで行かなければならない。IS実習は千冬が担当する授業、遅れれば待っているのは鉄拳制裁だ。

 

「織斑、桐ヶ谷、デュノアの面倒を見てやれ、同じ男子だ」

 

 千冬の指示を受けるまでもなく、そのつもりだった。

 この学園で今まで一夏と和人の二人しか居なかった男子という肩身狭い思いをしていたのだから、ここに来て三人目の男子というなら、是非も無い。

 

「君達が織斑君と桐ヶ谷君? よろしくね、僕は……」

「あ~デュノア、それは後にしろ」

「ですね、千冬姉の授業なら遅刻はマズイ、急いで更衣室行かないと」

 

 シャルルを連れて教室を出ると更衣室に向かって急ぐ。

 一夏と和人専用に用意された男子更衣室は教室から遠く、少しでも無駄話をしていれば確実に遅刻してしまうほどの距離なので、話をするのなら歩きながらの方が良いのだ。

 

「さて、んじゃあ歩きながらになるけど自己紹介な……俺が」

「あ! 織斑君と桐ヶ谷君みっけ!」

「噂の転校生男子も一緒よ!」

 

 最悪だった。一夏が自己紹介しようとした矢先に別のクラスの女子に見つかってしまい、このままでは囲まれて身動き出来なくなってしまう。

 それはつまり、1時限目の授業……千冬の授業に遅刻してしまう事を意味するのだ。一夏と和人の顔色が真っ青に染まるのも無理は無い。

 

「シャルル、悪いけど」

「ちょっと無茶するぜ」

「え、え? 一体何を、おおおおおおお!? ちょ、きゃあああああああああああ!!!?」

 

 一夏と和人がシャルルを両脇から持ち上げると開放されてる窓の枠に足を掛けて、そのまま外に飛び出す。

 因みに、現在一夏達が居るのは2階であり、窓から外に飛び出れば待っているのは落下という結果なのだが、一夏と和人は冷静に部分展開した白式と黒鐡の腕に持ったトワイライトフィニッシャーとエリュシデータを校舎の壁に突き刺しながら減速したため、無事に着地する事が出来た。

 

「ふ、二人とも……無茶苦茶だよぉ」

「ああでもしないと撒けないからなぁ」

「あれくらいしか思いつかないしな」

 

 前後を挟まれたのだから、出来るのは窓からの脱出しか無かった。こんな時に専用機を持っていて良かったと思うのは不謹慎かもしれないが。

 

「さて、急ごう。ショートカットしたとは言え、それでも結構ギリギリだし」

「あ、うん」

 

 和人に諭され、シャルルも気持ちを切り替えたのか一夏と和人に続いた。

 漸く更衣室に着いた頃には授業開始5分前になっており、着替えも急がねばならないので、一夏はシャルルに好きなロッカーを使うよう指示してから制服を脱ぎだす。

 

「わぁ!?」

「ん?」

「どうした?」

 

 制服の上着を脱いで上半身裸になった一夏と和人を前にして、何故かシャルルの顔が赤くなった。

 細身なのに引き締まった身体、リハビリと筋トレのお陰で得た美しいとさえ言える肉体美に、整った顔立ちの一夏と女性的な顔の和人だ。女性なら見惚れるほどだろう。

 

「あ、あの! 着替えるから、こっち見ないでね?」

「いや、別に男の着替え除く趣味は無いからいいけどさ」

「キリトさんなら覗かれる側ですしね」

「うるさい」

 

 軽口を叩きながらISスーツに着替え終えると、丁度シャルルも着替え終えたらしく、振り向いた一夏に何故か引き攣った笑みを浮かべていた。

 

「えと、行こうか?」

「だな、キリトさんはもう良いですか?」

「ああ、行こう」

 

 三人揃って更衣室を出ると、グラウンドに向かう。

 既にグラウンドにはISスーツを着た女子生徒が集まっており、走り寄ってきた一夏達に歓声を挙げている者も何名か。

 

「相変わらず、目のやり場に困る光景だな」

「ですよねぇ……まぁ、ユリコ以外に興味ありませんが」

「同じく、アスナ以外に目を向けたら風穴開く」

 

 丁度、明日奈と百合子も来ていたらしく、こちらに向かって手を振っていたので、そちらへシャルルと共に向かうと、セシリアも一緒に居た。

 

「随分早かったねキリト君、もう少し遅れると思ったのに」

「いや、そこまで時間掛けられないしな。それより、足は大丈夫か?」

「うん、もう殆どリハビリは終わってるし、長時間の激しい運動をしなければ問題無いって診断されてるもん」

 

 最近になって漸く杖を使わずに歩けるくらいにまでリハビリが進んだ明日奈は、既に杖無し歩行に切り替えていた。

 それでも長時間は歩けないので、時々歩けなくなれば和人が抱き上げて移動しているのだが、本人達はそれが幸せのようで、一夏と百合子も呆れる事がしばしばある。

 

「あ、シャルル君だったよね? わたしは結城明日奈、こちらのキリト君……和人君とお付き合いしてます」

「宍戸百合子、ナツ……一夏と付き合ってます」

「あ、よろしくね。僕はシャルル・デュノア、シャルルでいいよ。ところで、キリトとか、ナツって和人と一夏の事だよね? 渾名か何か?」

 

 ずっとシャルルが気になっていたのは、和人がキリト、一夏がナツと呼ばれている理由だ。

 まだこの4人がALOをやっている事を知らない彼からして見れば不思議に思うのも無理は無いだろう。

 

「渾名というか、ALOでの俺達のプレイヤーネームかな。癖でつい呼んじゃうんだよ」

「俺はキリトの名を出すなって何度も言ってるんだけど、ナツをナツって呼んでる時点で人の事は言えないんだよなぁ」

「へぇ、ALOって確か今流行りのVRMMOゲームだっけ? 皆やってるの?」

「ああ、俺もキリトさんも、アスナさんもユリコも、それにセシリアもやってる」

 

 その他にも最近はIS学園内でもALOブームが到来したのか、何名かプレイしているという声が聞こえてくる。

 

「やっほ~一夏!」

「お、鈴!」

 

 話をしていると、2組の鈴音が輪に加わってきた。

 因みにだが、鈴音もついこの前にアミュスフィアを購入してALOを始めたらしい。プレイヤーネーム“スズ”として猫妖精族(ケットシー)を選択している。

 

「そうだ一夏、今晩もINするんでしょ?」

「そのつもりだけど?」

「ならさ、アタシとセシリアのクエスト手伝ってくれない? アタシとセシリアの武器を新しくするのに、そのクエストで出るアイテムが欲しいのよ」

「じゃあセシリアもINするのか?」

「ええ、世界樹の枝が欲しくて、お願い出来ますでしょうか?」

「んじゃ、ユリコと一緒に手伝うよ。今晩、イグドラシルシティに集合な」

 

 見れば百合子も頷いていたので、今晩のALOは一夏と百合子、鈴音、セシリアの4人でパーティーを組む事になりそうだ。

 

「武器作る時はリズベットに頼めば良いのよね?」

「ああ、リズさんなら最高の武器を作ってくれるからな」

 

 今晩の事を話し合っている内に、チャイムが鳴った。

 グラウンドには既に1組と2組の生徒全員が揃っており、千冬がジャージ姿でグラウンドに入ってくる。

 ただ、気になるのは、ALOの話をしている間、ずっとこちらを睨んでいた箒と、もう一人……ラウラの事が気になった一夏だが、ラウラが千冬を教官と呼んでいた事を踏まえると、少しだけ考えねばならない事が出来たと、予想するのだった。




鈴のALOデータ

キャラ名:スズ
種族:猫妖精族(ケットシー)
武器:戟(スキル的には槍扱い)


セシリアのALOデータ

キャラ名:ティア
種族:水妖精族(ウンディーネ)
武器:杖

鈴は一夏や和人と同じ脳筋ビルドで、殆ど魔法は使いません。逆にセシリアは魔法メインで近接戦闘は殆どしません。予備で短剣は持ってますが、ほぼ魔法職メインの後方支援型です。
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