SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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今回はオリジナルの話です。


第十九話 「未来の為に動き出す戦士達」

SAO帰還者のIS

 

第十九話

「未来の為に動き出す戦士達」

 

 シャルルとラウラが転入してきた日の昼休み、一夏達SAO生還者組は屋上に集まって共に弁当を食べていた。

 和人と明日奈の弁当は明日奈が、一夏と百合子の弁当は一夏がそれぞれ手作りした物で、その味は嘗てアインクラッド2大シェフの名を欲しいがままにしていただけあり、現実でも相当な腕前だ。

 

「そうだ、ナツ」

「何ですか?」

「確かこの学園って部活への入部は強制だったよな?」

「学園特記事項にはそう書いてありますね」

 

 学園特記事項の一つに、学園生徒は必ず部活動に参加するものとする。という項目が書かれているのだ。

 これは普通の学校と同じように部活動を通じて青春を謳歌してもらう事もあるが、IS学園らしく様々な人脈を築いて将来に繋げられるようにするという目的もある。

 この部活動という学年クラスを超越した集まりだからこそ手に入る人脈というのも存在しているので、生徒達も楽しむだけではなく、将来の為に色々と画策しているわけだ。

 

「でも俺たち4人ってまだ部活入ってないよな」

「まぁ……そうですね」

「わたしは料理部とか興味あるけどねー」

「私は、茶道部に興味ある」

 

 明日奈は料理部に興味があるらしい。それも当然だろう、彼女の趣味は半ば料理になっているのだから。

 そして、百合子もまた茶道部に興味があるのは簡単、SAOに囚われる前まで彼女は茶道を習っていたのだ。

 

「まぁ、アスナ達が興味あるものが他にあるなら無理強いはしないんだけどさ……俺達で部活を作らないか? って相談しようと思ったんだ」

「部活を、ですか?」

「そうだ。学園の特記事項を見ると、最低5人以上の部員候補者を集めて、顧問となってくれる先生に了承を取り、生徒会に申請すれば部活動として認められるし、部室や部費も貰えるようになるんだ」

 

 人数については現在和人と一夏、明日奈、百合子の四人しか居ないが、他に部員を最低一人集めて、顧問になってくれる先生を見つければ条件をクリア出来る。

 問題は、何の部活を作ろうとしているのか、だが。

 

「キリト君、何の部活にするか決めてるの?」

「ああ、VR研究部って名づけようかと思ってさ……ほら、俺達って元々はSAO生還者の為の専修学校に通う筈だっただろ? 俺はそこで本来は学びたかった事があるんだけど、IS学園に来たことでそれも無理だからさ……ならせめて部活にしてしまえば堂々と勉強出来ると思ったんだ。部費があれば設備も揃えられるし」

 

 本来、和人は専修学校でメカトロニクスコース専行の授業を受ける予定だったのだが、IS学園に入学したことでそれも出来なくなり、和人が後々に考えていることが出来なくなってしまった。

 勿論、個人的に勉強することも考えたが、設備が圧倒的に不足しており、資金も足りない現状ではそれも不可能。

 ならば部活動という形にして設備と資金の問題をクリアしてしまえば存分に勉強出来るのではないかと考えたのだ。

 

「ナツもさ、専修学校でやろうとしてたこと、あるんだろ?」

「まぁ、確かにあります」

 

 一夏もまた、専修学校ではインフォメーションコースを専行し、情報工学を学ぼうと思っていた。

 もし、VR研究部が設立され、その勉強を思いっきり出来るのであれば一夏にとってもそれは大変ありがたい話だ。

 

「でも、部を設立しても、最初の部費は少ないです」

「ユリコの言いたいことは分かるよ。でも、じゃあ実績を出せればどうだ?」

「実績……?」

「ああ、俺達でひとつ……VRゲームを作っちまえば良いんだよ」

 

 和人の計画、それは部を作り、最初の部費で揃えられるだけの設備を揃えて実績作りの一環としてVRゲームを作成、その成果でもって部費を増やそうというものだ。

 

「で、でもキリト君……VRゲームなんてそんな簡単に」

「出来るさ……俺達にはオリジナルのザ・シードがある。それに此処はIS学園だぜ? 中小企業や大企業も吃驚な超大型サーバーだってあるんだ」

 

 流石にそれだけでは和人や一夏たち個人で作るのは難しいが、彼らには頼もしいコネがあるし、VRについてこの世で最も詳しい娘が居るのだ。出来ないはずが無い。

 

「やれるだけやってみようぜ、駄目だったらまた別のアイデアを考えれば良いさ」

「……そうですね、面白そうだし、上手くいけば堂々と勉強出来るんだから、俺は乗りますよ」

「ナツがやるなら私もやる」

「じゃ、じゃあ……わたしもやろうかな、キリト君は目を光らせないとすぐに無茶するし」

 

 後は最低一人、仲間を作り、顧問を見つけるだけだ。

 早速昼休みが終了してから、四人は動き出すことになる。部活を作り、それぞれが思い描く未来へと歩みを進めるために。

 

 

 放課後、一夏たちは早速だが動きだした。

 まずは親しい友人……ALO仲間であるセシリアや鈴音に声を掛けたのだが、彼女達は既に部活に入部しているらしく、セシリアはテニス、鈴音はラクロス部に、ということで時々顔を出すくらいは出来るだろうが、入部は難しいとの事だ。

 勿論、掛け持ちも彼女達は考えてくれたが、そこまで迷惑を掛けるのは申し訳ないと断り、他を当たることになった。

 

「ごめんね~織斑君、桐ヶ谷君、アタシもう華道部に入部してるから」

「あたしは水泳部に」

「文芸部」

「手芸部」

 

 とまぁ、手当たり次第に聞いてみたのだが、やはり特記事項のこともあり、既に何かしらの部活動に入部している者が大半で、どうするか悩んでいた所に以外な人物からOKを貰えた。

 

「いいよ~、おりむーとき~りんがやるなら楽しそ~だもん」

「ほ、ほんとか!? のほほんさん!」

「うん~」

 

 OKしてくれたのは、一夏達のクラスメイトであるのほほんさんこと布仏本音だ。

 制服のダボダボになった袖をブンブンと振りながら、彼女はほんわかとした笑顔で了承してくれたので、思わず一夏と和人、本音の三人で小躍りしてしまった。

 

「あ~、そうだ~かんちゃんも誘って良い~?」

「かんちゃん?」

「うん~、友達のかんちゃん~。4組なんだけど~」

「勿論だよ! 一人でも多い方が良いですよね、キリトさん」

「ああ、そうだな」

 

 後は顧問を探している明日奈と百合子が上手く見つけてくれれば生徒会に申請を出すだけだ。

 と、そのとき丁度後ろから明日奈と百合子がやってきて、指で小さく丸を作ってみせた。それはつまり……。

 

「山田先生が顧問になってくれるって」

「山田先生……まだどこの顧問もやってない」

「よっしゃ! こっちも丁度一人……いや、二人確保したところだ」

「二人? あ、本音ちゃんじゃない!」

「お~、あーちゃんとゆ~りんだ~」

 

 早速だが、本音にもう一人の部員候補となるかんちゃんとやらに会いに行くこととなった。

 放課後は基本、そのかんちゃんという人物は整備室に居るらしいので、一同は整備室に向かう。そして整備室に入ると、中は殆ど人が居らず、ただ一箇所の整備用ハンガーにISが一機固定され、その前で作業をしている生徒が一人だけ居る。

 青いボブカットの髪の先が癖毛なのか内側を向いていて、眼鏡を掛けている少女……彼女が恐らく本音の言うかんちゃんなのだろう。

 

「お~い、かんちゃ~ん!」

「本音……何しに来た、の……」

 

 かんちゃんと呼ばれた少女が本音の声に反応してこちらを向いた瞬間、その表情が凍りついた。

 正確には本音の後方から歩いてくる一夏達の姿を見て、だ。

 

「紹介するね~、この子がかんちゃんで~、私のご主人様~」

「ご主人様!?」

「ちょっ……本音、誤解を生むような事、言わないで」

「え~、だって本当のことだよ~?」

 

 そっちの趣味があるのか、と懐疑的な視線を向ける一夏達に気がついたのか、かんちゃんは若干涙目で首をブンブンと横に振り、否定した。

 

「ち、ちがう……本音は、その、家のメイドだから」

「メイド?」

「そそ~、私は~、かんちゃん付きのメイドなのです」

 

 なるほど、それはつまり彼女はお嬢様ということになる。

 

「あ、自己紹介まだだったねー、わたしは1組の結城明日奈、よろしくねー」

「同じく1組の宍戸百合子です」

「俺は織斑一夏、よろしく」

「桐ヶ谷和人だ、よろしくな」

「更識簪……4組、代表です」

 

 かんちゃん改め簪は、口でこそ友好的な自己紹介をしたが、その視線に含まれているのは、若干の敵意だった。

 嫉妬、とも言えるかもしれない視線に何事なのかと思い本音に視線を向ける四人に対し、本音はやはりのほほんとした口調でその疑問に答えた。

 

「えっとね~、かんちゃんは日本の代表候補生で~、専用機も持ってるんだけど」

「あなた達の……正確には織斑君の白式の所為で開発が遅れて、未だ未完成」

「お、俺の!? ってことは簪の専用機ってレクト社の?」

「違う……倉持技研」

「え……それって開発元違わね?」

「あ~、えっとねナツ君、ナツ君の専用機って実はベースが倉持技研で開発凍結になった機体を、レクトが買い取った物なの」

 

 つまりこうだ。倉持で開発凍結されていたISをレクトが買い取り、それを一夏の専用機として作り直す過程で、倉持からデータ取りがしたいという申し出があり、それをレクトが了承した結果、簪の専用機開発のメンバーまでもがレクトへ来てしまい、簪の専用機開発を行う人員が居なくなってしまったのだ。

 それを聞いて一夏と和人は何とも言えない表情になり、倉持技研の考え無しな行動に呆れてしまった。

 

「普通、開発途中の……それも自国の代表候補生の専用機を放り出すか?」

「うわ、俺罪悪感が……」

 

 この後、一夏が頭を下げて謝罪し、簪も別に一夏が悪いという訳ではないのを理解しているので気にしないことにしてくれて何とか和解出来た。

 倉持技研の方には明日奈から父である彰三に伝えておいてくれるとのことで、簪の専用機開発は再度スタートであろう旨を伝えると、簪は自分で開発を続けたいと言い出した。

 

「でも、それだと時間掛かりすぎるよ? 倉持の方は何とかなるし、いつまでもこの子を未完成にしておくのも可哀想だよ」

 

 明日奈の言いたいことも理解出来るが、簪としては半ば意地になっているらしく、仕方がないので暫くは様子見、という事になった。

 

「所で、何で此処に?」

「あ、忘れてた……実は、俺達新しく部活を作るんだけど、布仏を誘ったら君も一緒にって言ってね」

「部活?」

「そ~、かんちゃん部活入ってないでしょ~?」

「……忘れてた」

 

 学園の特記事項がある以上、簪も何か部活に入らなければならない。となれば今、誘われたのは幸いかもしれないと考え、そしてその部活が興味を持っていたVRゲームに関する物だと聞かされれば断る理由も無かった。

 

「入る……本音とALO始めようと思ってたから、VRは興味がある」

 

 こうして、6人目の仲間をゲットし、ついでに新しいALOの仲間も増えた一夏たちは、早速忙しい簪を除く5人で生徒会室へ向かう事になった。




次回は生徒会長とのお話と、VR研究部設立のお話。
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