SAO帰還者のIS
第二十三話
「黒兎と白の剣士、激突する戦士」
セシリアの最後の意地、クロス・エッジを放った所を見届けた一夏は、ようやく白式を展開して、トワイライトフィニッシャーを握った。
その隣では百合子とシャルロットも槍陣とラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡを展開して、それぞれ武器を構えていつでも飛び出せる準備を整えている。
「行くぜ」
「ええ」
「うん」
ラウラがレールカノンの発射口をセシリアに向けているのを見て、一気に一夏たちは飛び出した。
この場で最も最適なソードスキル、セシリアを助ける上に、ユイに調べて貰ったシュヴァルツェア・レーゲンのスペック、武装データなどから算出される最適なスキルを選択した一夏はまずラウラが振り返った瞬間に一撃目を叩き込んだ。
「がぁっ!? こ、この劣等がっ!」
だが、ラウラが一夏の動きをAIC……アクティブ・イナーシャル・キャンセラー、慣性停止結界によって止めようとした瞬間、一夏の姿はラウラの視界から消えて、その真横を通り過ぎ様に斬り裂く。
更に一夏の姿を追おうとするラウラだが、今度は背後に移動した一夏に再び斬られ、再び真横へ移動されて斬られる。
計4回の斬撃、水平4連撃ソードスキル、ホリゾンタル・スクェアが決まり、シュヴァルツェア・レーゲンに大きなダメージを与えた。
「オルコットさん、大丈夫?」
「デュノアさん……ええ、ですが、ちょっとだけ疲れましたわ」
「ピットまで運ぶから、もう少しだけ我慢してね」
「お願い致しますわ」
セシリアをシャルロットが、鈴音を百合子がピットへ運ぶ。
その間も一夏はラウラと対峙しており、レールカノンの砲弾を切り裂き、レーザー手刀を弾き返し、AICなど使わせる間も無く動き続けた。
「くっ、このっ……! ちょこまかと動き回って、それが貴様のゲームで得た力だとでも言うのか! そのような臆病者の手段が!」
「臆病? なんだ、近接戦闘型は愚直に真正面から攻めないといけないのか? これは立派な戦闘手段だぜ」
「愚かな! 教官であれば真正面からぶつかって勝利を得てきた!」
「そうかい、残念ながら俺は千冬姉じゃないからな。SAOで戦ってきた戦闘法が、俺の戦い方なんだよ」
アインクラッドのボスは、真正面からぶつかって勝てる相手ではなかった。
だからこそ、一夏達の戦闘方法は動き回って相手を翻弄しながら隙を見て攻撃するというヒットアンドアウェイを基本としている。
「ボーデヴィッヒ、お前がやった行動は千冬姉がお前に教えた力を正確に表しているとでも思ってるのか?」
「当たり前だ。力とは何者をも寄せ付けない、己が前に立つあらゆるを悉く叩き潰す絶対的なものだ!」
「……やっぱお前、千冬姉の教えを全然理解してねぇわ。千冬姉がんなこと、教えるわけがない。千冬姉は力というものをちゃんと理解してるはずなんだからな……そうじゃなきゃ、俺が千冬姉を尊敬するわけがない」
そう言って一夏はラウラとの距離を取って、トワイライトフィニッシャーを構えた。
それは明らかな突きの構えだが、そこから放たれるソードスキルは、嘗てアインクラッドにて白の剣士と名高きナツが最も得意とし、他のプレイヤーの追随を許さなかった絶対の信頼を寄せるスキルだ。
「見せてやるよボーデヴィッヒ、お前に本当の力が何なのか……セシリアが、何故お前にその傷を付けられたのか、力というものを理解出来てないお前に、俺が最も信頼するスキルで、叩き込んでやる」
「ふん、ならば私は貴様を真正面から受け止めて叩き潰してやろう。ゲームの技が、この私に通じるなどと思うな!!」
一夏が近づいた瞬間、AICで止めようとしているのだろうが、一夏にはこのスキルへの絶対の自信がある。
例え何者であろうと、今まで一夏が……ナツがこのスキルを使った時、ナツを止められた者は居なかったのだから。
「うぉおおおおおあああああああっ!!!!」
一夏の咆哮と共に、まるでジェットエンジンの如き爆音が発せられ、赤い光芒を輝かせながら一気にラウラ目掛けて突進する。
片手剣上位スキルにして、白の剣士の代名詞、ヴォーパルストライク。このスキルだけは、キリトにすら負けないと嘗て、ナツが言葉にしたこともあるくらい、信頼し、多用してきた。
たとえAICがあろうと、このスキルだけは、止められやしないと、一夏は一気にトワイライトフィニッシャーの剣先を突き出し、ラウラがAICを発動するより早くその突き出された右手を、突き破った。
「なっ!? 馬鹿なっ!?」
完全に右腕を破壊され、AICを発動出来なくなったラウラは慌てて一夏へ一撃入れようと左手のレーザー手刀を展開し、叩き込もうとしたが、それは無理な相談だ。
何故なら……。
「スイッチ!」
「せぇええええええい!!」
いつの間にか戻ってきた百合子がルー・セタンタをライトエフェクトによって輝かせ、その左腕を破壊するためにソードスキルを放っていたのだから。
「グッ!? 貴様、いつの間にっがぁ!?」
一撃目で安心してはいけない。槍のソードスキルは基本連撃技が多いのだ。
百合子がこの場で使用したスキルはツイン・スラストという2連撃ソードスキル、一撃目で左腕を破壊し、二撃目で胸の装甲、丁度セシリアが与えた十字傷の中心を射抜いた。
「お前には無い力、それが理解出来ないなら……お前はその程度だってことだ」
倒れ伏すラウラに、一夏の冷たい言葉が浴びせられた。
いつの間にか、百合子だけではなく、シャルロットも戻ってきており、黒鐡を纏った和人と瞬光を纏った明日奈も駆けつけてそれぞれエリュシデータとランベントライトを構えている。
ラウラには無い力、それは何かを守ろうとする意思、仲間を信頼する心、それこそが一夏達が持つ力であり、ラウラが未だ理解していない力の本質だ。
「ぐっ……ふざけるな。私が、貴様等のような劣等に見下されるなど、あってはならない……力を理解していない? 馬鹿が、理解していないのは、貴様等だというのに! 力とは、あらゆる全てを叩き潰し、破壊し、屈服させ、滅ぼすものだ!! 貴様の言う力とは弱者の馴れ合い、お遊びというものだ! そのようなものに、私が敗れるなど、あるわけがない!!!」
その瞬間、シュヴァルツェア・レーゲンに異変が起きた。
装甲がまるで粘土の如く変質し始め、全身から紫電を奔らせながらラウラ自身をも飲み込み、その姿を変えていく。
「う、ぐっ、ああああああああああああ!!!!」
ラウラの苦痛に満ちた叫びが木霊しながら、ラウラを飲み込んだシュヴァルツェア・レーゲンは完全に原型を失い、再構築を始めた。
「何が、起きてるんだ……?」
「ナツ……あれ、危険な気がする」
「シャルロットちゃん、ちょっと……先生を呼んできて」
「え?」
「ああ、その方が良いな……多分、不味い事態になる」
明日奈と和人の言葉に、シャルロットは急いでピットへ向かい、恐らくは事態収拾が可能であろう千冬を呼びに行った。
その間に、シュヴァルツェア・レーゲンは完全に姿を変えて、とあるISの姿と、それに搭乗する人型を作り上げる。
「あ、うそだろ……あれって」
その姿を、一夏は見たことがある。
忘れもしない。SAO事件の前年、第2回モンド・グロッソの際に誘拐された自分を助けに来た姉が乗っていた機体。
嘗て、ブリュンヒルデが搭乗し、世界最強へと輝いた彼女の愛機、暮桜。シュヴァルツェア・レーゲンは姿こそ真っ黒だが、暮桜と、それに搭乗する千冬の形を完全に模した姿へと変貌したのだ。
「雪片まで再現してんのかよ!」
突然襲い掛かってきた黒暮桜が右手に握る雪片を一夏へと振り下ろしてきた。
トワイライトフィニッシャーでそれを受け止めた一夏は黒暮桜の後ろからルー・セタンタを突き刺そうとした百合子に目線を合わせ、次の行動へと移ろうとしたのだが。
「あ、きゃああああ!?」
「百合子!」
後ろ手にルー・セタンタの穂先を掴んだ黒暮桜はそのまま彼女を振り回し、一夏へと叩きつけて来た。
何とか受け止めた一夏だったが、そのお陰で動きを止めてしまい、黒暮桜に吹き飛ばされてしまうも、まだこの場には戦える者が二人いる。
「アスナ!」
「うん!」
横薙ぎに振るわれた雪片をランベントライトで弾いた明日奈は前屈みになりながら足払いをして、黒暮桜のバランスを崩すと、一気にその場を離脱する。
「スイッチ!」
すかさず明日奈の後ろからエリュシデータを構えた和人が追い討ちを掛けようとした黒暮桜の雪片をエリュシデータで受け止め、同時に展開したダークリパルサーを鞘から抜き放ちながら、その刃を叩き付ける。
「久しぶりの二刀流だ。手加減は期待するなよ、ボーデヴィッヒ」
ようやくここに、アインクラッド最強の黒の剣士が降臨した。
右手に黒の片手剣エリュシデータを、左手に白の片手剣ダークリパルサーを構え、アインクラッド最強は、世界最強を模した存在と相対する。
次回はついに解禁された二刀流VS世界最強モドキ。