SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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今回、ラフコフの三人が何故ISを動かせるのか、その答えが出てきます。
ヒントは無人機だと言いましたが、さて予想と合っていた人は挙手!(←する必要ないじゃんw)


第四十話 「白の憎悪、憎しみの因縁」

SAO帰還者のIS

 

第四十話

「白の憎悪、憎しみの因縁」

 

 笑う棺桶(ラフィン・コフィン)、それは嘗てソードアート・オンラインプレイヤーを恐怖に染め上げたアインクラッド最悪の殺人集団。

 ゲーム内での死が現実での死も意味するSAOにて積極的にプレイヤーを殺していた快楽殺人者達、殺しはSAOプレイヤーに与えられた権利だとして人の命を奪う事に何の躊躇いも持たず多くの命を奪った最悪の人種。

 そして、今……一夏達の目の前に居る三人こそ笑う棺桶(ラフィン・コフィン)のボスと、その側近であり、アインクラッドで最も人を殺してきたであろう人物達、リーダーのPoh、赤目のザザ、ジョニー・ブラックだ。

 

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)……っ!」

「Wow! 白の剣士は変わらず俺達に剥き出しの殺意を向けてくるなぁ……サイコーだ!!」

「黙れっ!! よくも、よくもおめおめと、俺の前にその薄汚い面を出せたな!! Poh!!!」

 

 一夏の声、表情、その全てが今までにない、少なくとも和人達SAO生還者組以外の面々は聞いた事も見た事も無いものになった。

 雰囲気も、今までの優しげな好青年というものから、どす黒い、殺伐としていて、見ているだけで震え上がりそうになるほど剣呑な雰囲気に変わっている。

 

「い、一夏……どうしたというのだ?」

「今までの一夏さんとは、まるで別人ですわ」

「あ、アタシもあんな一夏、見たこと無いわよ」

「うん、なんか怖い……」

 

 箒達が一夏の変わり様に驚いていたが、和人達は、ある意味当然というか、仕方が無いと思っていた。

 彼が笑う棺桶(ラフィン・コフィン)を憎んでいる理由を、知っているから。

 

「和人さん、彼らは一体何者なんですの?」

「あいつらは、俺達と同じSAO生還者だ」

「え、じゃあアンタ等も顔見知り?」

「顔見知り、で済めば良いんだけどね……わたしもキリト君もナツ君も、それにユリコちゃんも」

「お義姉ちゃん、それってどういう……?」

 

 今になってよく見てみれば和人も明日奈も百合子も、表情が暗くなっていた。何処か青褪めていて、身体も決して寒さではない別の理由で若干だが震えている。

 

「あの人たち……笑う棺桶(ラフィン・コフィン)っていうギルドのプレイヤーだった」

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)? 随分とゲームにしては薄ら寒い名称だな」

「聞けばもっと薄ら寒くなるさ……笑う棺桶(ラフィン・コフィン)っていうのは、アインクラッドではアスナが副団長を務めていた攻略組最強ギルド、血盟騎士団と並んで最も有名なギルドだったんだ」

「そう、それも悪い意味でね」

 

 その内容を、今この場に居る箒達の中で誰が予想出来ようか、SAOの事は話やニュースで知っているからこそ、到底信じられない内容を。

 

「あの人たちは、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)は、ゲーム内での死が現実での死になるSAOで、積極的に殺人を行い、それを楽しんでいた集団」

「なっ、殺人を、楽しんでいたですって!? ちょっと待ちなさいよ! アンタ等プレイヤーだってSAOで死んだら現実で死ぬって知ってた筈よね!?」

「ああ、それはゲーム開始時に茅場本人に聞かされていた」

「それで尚、彼等は人を殺していたというんですの!?」

「そうだよ、彼等はSAO内での殺人は、プレイヤーに与えられた権利だと主張して、何の罪悪感も躊躇いも無く、当然の様に人を殺していたの」

 

 ゲームクリアまでの間にアインクラッドで笑う棺桶(ラフィン・コフィン)に殺されたプレイヤーの数は100人は確実に超える。

 モンスターやボスに殺されるのではない、同じプレイヤー……同じ人間に、それだけの数の人が殺されたのだ。

 

「では、一夏があれほど怒っているのは、それが原因でか?」

「いや、それだけなら俺達だって同じくらいあいつ等を憎むはずさ……だけど、違う。ナツはこの世の誰よりもあいつ等を憎んでいて、そしてそれだけの理由があるんだ」

「ナツは、SAO時代に一時期だけギルドに所属していたことがあったんだけど」

 

 白の剣士ナツ、彼はSAO時代に黒の剣士に憧れ、黒の剣士と同じくソロプレイヤーとして申し分ないほどの実力を身に付けていた。

 もっとも、その事を黒の剣士キリトは気にかけていて、出来れば何処かギルドに所属して、自分と同じ事はして欲しくないと兄貴分として思っていたのだが。

 そんな中、ある日突然ナツがギルドに所属したと聞いた時は随分と喜んだものだ。

 

「俺もナツが入ったギルド、白夜剣舞のメンバーとは一度だけ会ったことがあるけど、良い奴らだったよ。レベルこそ当時既に攻略組に名を連ねていたナツには及ばなかったけど、それでもいつかレベルが追いついたらナツと一緒にギルドとして攻略組の仲間入りしようって、そう言ってナツと一緒に笑い合っていて、あのときは俺も安心してたんだ……これでナツにこれ以上ソロプレイヤーをさせなくて済むってな」

 

 だけど、悲劇は起きた。

 

「これは人伝に聞いた話だけど、ある日……白夜剣舞のメンバーがナツを除いて全滅したんだ」

「全滅!? 人数ってどれだけ居たの?」

「キリト君が言うには、ナツ君を入れて9人くらい、だったかな……?」

「じゃあ、8人全員が死んだってわけ?」

「ああ、それも……モンスターに殺されたんじゃない、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)に、ナツの目の前で殺されたらしい」

 

 言葉が出なかった。

 一緒にゲーム攻略を目指そうと笑い合っていた仲間が、目の前で無残に殺される光景を、一夏は見せられていたという事実に。

 

「ナツは、大勢で押し寄せてきた笑う棺桶(ラフィン・コフィン)のメンバーと交戦していて、数の多さに手間取っている間に殺されたって話……私も、これについては人伝に聞いただけだけど」

「そっか、そういえばユリコはその頃はまだナツとは知り合ってなかったな」

「その後だったもんね、ユリコちゃんとナツ君が出会ったのは」

 

 SAO時代の一夏……ナツと最も付き合いが古いのはキリトとアスナだった。

 だからナツの本当に昔の話となるとユリコでも又聞きの話になってしまうのは無理も無い。

 

「ちょっとお待ちください。彼等がその最悪のギルドの人間だとして、何故……此処に、それもISに乗っているんですの?」

「っ! そうよ! 確かSAOで積極的殺人歴のある人はカウンセリングと政府の監視があるんじゃなかった!?」

 

 そうだ。セシリアと鈴音の指摘は尤もだった。

 Poh達みたいな積極的殺人歴のあるプレイヤーはSAOクリア後、政府によってカウンセリングを義務付けられ、更にしばらくは監視が付けられている筈なのに、何故こんな所にいるのか、しかも男であれば一夏と和人にしか動かせず、基本は女性のみが動かす事の出来るISに乗っているのか。

 

「簡、単……だ。俺、達……今は、日本に、いない」

「そういうこった! 俺達は政府の監視を掻い潜ってとある組織にスカウトされたんだぜ!」

「組織、だと……?」

「亡国機業……白の剣士、てめぇが昔誘拐されたときの実行犯たる組織らしい」

「っ!」

 

 Pohの言葉で脳裏に蘇るのは、第2回モンド・グロッソの時の記憶。

 決勝戦に出場する事になった姉の応援に行って、誘拐され、そして暮桜を駆る姉に救出された日の出来事だ。

 

「Year! そして! 俺達がISに乗れるのは簡単だ。IS学園に先日襲撃してきた無人機、それがヒントさ」

 

 無人機。シャルロットはまだ転校してくる前の事なので知らないが、その他のメンバーは皆が当事者なので当然だが覚えている。

 そして、無人機がヒントという事から導かれる答えは……。

 

「まさか……そういう事ですの?」

「せ、セシリア……どういう事だ?」

「あのですね箒さん、そもそもISを起動させるという事がどういう意味なのか知っていますか?」

「む……いや」

「はぁ……まぁ、まだ授業でやってる範囲ではありませんので、仕方ないですわね。そもそも、ISを起動するというのは、正確にはISコアを起動させている、という意味ですわ」

「コアを……?」

 

 そう、IS操縦者はISに乗り込む事でコアを起動させている。

 それはつまり、自動車に運転手が乗り込んでエンジンを掛けるという事と同じであり、自動車に乗り込んでもエンジンを掛けなければ自動車が動かないのと同じで、コアを起動させなければISは動かない。

 

「男性がISを操縦出来ないのは、男性が乗ってもコアが起動しないからなんだ。まぁ一夏と和人は例外だけど」

「つまり、ISってのはコアを起動させて始めて動かせる代物って事よ」

「な、なるほど……だが、それと奴らがISを動かせる事と何が関係あるんだ?」

「簡単な話ですわ。無人機とはつまり、本来なら人間が乗らなければ起動しないコアを無人で起動させるシステムを搭載しているから無人機なのです。つまり……」

「っ! そうか! コアを無人機のシステムと同じ方法で起動させてしまえば……!」

 

 そう、無人機であれば専用システムによってコアを起動させ、戦闘用AIが機体を動かしているが、機体を動かす事だけを人が代わりに行えば……。

 

「Wow! 正解だぜ、お嬢ちゃん。無人機と同じシステムでコアさえ起動させてしまえば、別に動かすのは女だろうが男だろうが関係無い」

「なんて事を……! そんなシステムが、もし世界中に広まったら!!」

「最高だね! 世界中で混乱が起きる!! ヘッド、上に上申してみましょうぜ?」

 

 今まで、ISを動かせるのは女性だけだったからこそ、今の女尊男卑の風潮が生まれ、随分と多くの男性が虐げられてきた。

 だが、もし笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の乗るISのように、男でもISに乗れる方法があると知られ、その方法、システムの制作方法が世界中に広まれば、間違いなく混乱が起こる。

 最悪の場合、世界中で男と女の戦争が起きるかもしれないのだ。

 

「話は、もう終わりか……?」

「ナツ……?」

「Ho……ああ、終わりだ」

「ならもう御託はいらねぇ……さっさと来いよ」

 

 今まで黙っていた一夏が、俯いていた顔を上げて姉譲りの鋭い眼光に危険な光を灯しながらトワイライトフィニッシャーの切っ先をPoh達に向けた。

 

「今この場で……お前等全員……殺してやる!!!」




憎しみに染まった瞳、向けられる刃は憎悪の刃。
仲間の制止を振り切った剣士は笑いを携えた棺桶達に挑む。
次回! SAO帰還者のIS!
「憎悪の刃、落ちた白の剣」
悲しき暴走の果てに、涙が流れる。

次回予告風に締めてみました。
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