SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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ちょっとオリジナル設定が加わってます。


第五十四話 「アメリカ国家代表」

SAO帰還者のIS

 

第五十四話

「アメリカ国家代表」

 

 SAO事件の語り終わりの翌日、いよいよIS学園一行は学園へと帰る事になった。

 既に殆どの生徒がバスに乗り込み、残るは教員が乗り込むだけとなっている中、千冬は見送りに来た束と話をしている。

 

「じゃあ、一旦ラボに戻って準備してからIS学園に行くね?」

「ああ、こっちもお前が来るまでに学園長に話をしておくさ」

「うん……あ! それと、一人IS学園に転入させたい子が居るんだけど」

「転入だと?」

 

 束が転入させたい子、何かとんでもない秘密でも隠されているのではないかと若干警戒してしまう千冬はたぶん、悪くない。

 

「名前はクロエ・クロニクル、束さんが娘として引き取った子なんだけど……まぁ、戸籍上の娘には未婚だから出来ないんで、保護責任者って立場なんだけど」

「お前の娘か……クロエ、だったか? クラスは恐らく3組になるだろうが、構わんか?」

「うん、大丈夫。それと一応だけど束さんが作った専用機も持ってるから、その辺だけ注意ね? 仕様書は後でちーちゃんの端末に送っておくから」

「トンデモ機体じゃないだろうな?」

「い、一応戦闘用じゃないから、そこまでオーバースペックな機体じゃないよ?」

 

 ただ、相手に幻惑を見せるという程度で、まともな戦闘は出来ないとのことだ。

 ならば大丈夫だろうと一先ず安心した千冬は、ふと視界の隅に見覚えのある金髪が映ったのに気がついた。

 その人物は明らかに日本人ではなく、そしてIS学園の生徒でも教員でもない人物、この旅館に現在居る人物でIS学園関係者以外の外国人となれば一人しか居ない。

 

「来ていたのか、ナターシャ・ファイルス」

「あらブリュンヒルデにドクター・篠ノ之、お久しぶりね」

「おやおや~? 懐かしい金髪が居ると思ったらなっちゃんじゃないか!」

「……あのですね束先輩、いくらIS学園の後輩だからって、この歳でなっちゃんはいい加減にやめてください」

 

 アメリカ国家代表にしてアメリカ空軍中尉、そして銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の専属操縦者、ナターシャ・ファイルス。

 実は彼女、千冬と束、それから真耶とは知り合いなのだ。

 千冬と束がIS学園第一期生で、ナターシャと真耶が二期生、まだ今のIS学園のように校舎や設備も充実していなくて、制服だってセーラー服だった頃に四人は一夏達と同じ学び舎で過ごしていた。

 

「しかし、あの頃はまだ専用機どころか、代表候補生ですらなかったナターシャが、今では国家代表とは、随分と成長したものだな」

「おやぁ? ちーちゃんってば、遠距離では一般生徒でダントツだったなっちゃんの事を認めてた癖に、随分な言い分だな~」

「……近接戦闘では負けん」

「近接戦闘だけ、の間違いでしょ?」

 

 公式戦無敗を誇る千冬だったが、実はIS学園在学時の成績は近接戦闘こそ学年どころか学園トップを誇っていたが、中距離、遠距離では然程良い成績だったとは言えなかった。

 それこそ中距離では真耶に、遠距離ではナターシャに負けていたのだ。

 

「先輩が現役の時はまだようやく代表候補生になったばかりだったけど、国家代表になったのは20過ぎた頃ですね。それで第三世代機のテストパイロットを任せて貰える事になったのに、今回の事件……正直、我が身の不幸を呪うわ」

「……すまんな、恐らく凍結されるであろう福音の事については力になってやれそうにない」

「いえ、構いませんよ。それより……先輩の弟君と、そのお友達に興味があったりしますね」

 

 暴走していたとは言え、アメリカとイスラエルが持てる最高の技術を使って開発された最新鋭の軍用ISである福音を撃破して見せた一夏達に、ナターシャは興味を持っているらしい。

 彼女がアメリカに居る時に入ってきた情報では素人ながら剣の腕前が高いけど、IS操縦はまだまだ未熟、という程度だったが、それがまさか福音を倒して見せたのだから、興味を持たない方が無理というもの。

 

「ああ、会っていくか? ……と言いたいが、今日は勘弁してやってくれ」

「あら?」

「どうやら寝てるらしい」

 

 バスの窓から見えた一夏や和人の姿を見て、呆れる千冬と笑みを浮かべるナターシャ及び束、どうやら随分と疲れているらしいので、このまま寝かせておく事にした。

 

「ねぇなっちゃん」

「何ですか?」

「良かったら福音、凍結されないように手を打とうか?」

「良いんですか?」

「うん、今回の事件の裏を調べてるとね……下手に凍結するのは不味いかもしれないから」

「詳しく、聞かせて貰えますか?」

 

 後輩としての表情から一変して、軍人としての表情になったナターシャに、束も先輩としての表情ではなく、科学者としての表情でナターシャと向き合う。

 

「今回の事件の裏には、亡国機業(ファントム・タスク)が絡んでる。この名前はなっちゃんも聞いたことがあるよね?」

「ええ、裏世界の更に裏……所謂、第三世界に根を下ろす最大のテロリスト組織だとか」

「そう、その組織が絡んでるっていう確証を得たのは、福音を倒した地点に都合良く亡国機業(ファントム・タスク)の人間が現れた事」

「なるほど……」

「更に、福音が暴走した理由はハッキングを受けたからだっていうのは調べて直ぐに判明したよ」

「あの……一応機密扱いされてる機体なんですが?」

 

 その辺を束に突っ込んでも無駄なのは理解してるので、一応は言葉にしても半ばスルーして続きを促す。

 

「奴らの狙いは多分、福音の強奪だと思う。手順としては先ず福音を暴走させて、その後は暴走した危険な機体という事で凍結された福音を……持ち主の手から離れる事になった福音を強奪する。持ち主が持ってるISより、持ち主の手から離れたISの方が強奪はし易いからね」

「強奪……その為にあの子を暴走させたという事ですか」

 

 ギリィッ! っと、ナターシャが歯を食い縛った。これから愛機になる予定だった大切な機体、製作の段階から関わって、人一倍愛情を注いでいた銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)を、強奪しようとしているというのも勿論だが、その為の手段として暴走させられたという事に怒りを感じているらしい。

 

「となると、確かに凍結は不味いですね……自分で言うのもアレですが、あの子は軍用機として最新鋭の名に相応しい性能を持っているわ。当然だけど亡国機業(ファントム・タスク)に渡ったりした場合、悪用されれば並の競技用として調整されてるISでは歯が立たない可能性が高いもの」

「そうならない為に、この束さんが手を打とうと思ってるんだよ~。てわけで、これ」

 

 束がナターシャに差し出したのは一本のUSBメモリーだった。

 

「この中に今回調べられる限りの裏付けとなる証拠全てを保存しておいたから、福音が凍結される前にこれを軍に見せてね。これで福音凍結は防げる筈だから」

「……では、確かに受け取らせていただきました」

 

 メモリーを受け取って着ていたスーツのポケットに仕舞ったナターシャがようやく軍人としての表情から後輩としての表情に戻る。

 堅苦しい話はこれで終わりだと、改めて千冬と束に頭を下げた。

 

「お世話になりました、千冬先輩、束先輩」

「ああ、元気でな」

「また会おうね~」

「はい、それでは」

 

 踵を返してバスから遠ざかったナターシャはすれ違った嘗てのクラスメートである真耶に一言二言挨拶を交わしてから去っていった。

 残された千冬と束も、そろそろ時間だと向き合う。

 

「それじゃあね」

「ああ、来る時は連絡の一つでも入れろ。迎えにくらいは行ってやる……校門で、だがな」

「ありがと……それじゃあ、最後に一つだけ」

 

 立ち去ろうと踵を返す束だったが、頭だけ千冬の方へ振り向いて笑みを浮かべた。

 

「いっくんとの試合までに剣の鍛錬、しておいた方が良いよ……正直、今のいっくんの剣の腕はちーちゃんより上だから」

「それは、篠ノ之流師範代としての言葉か?」

「そうなるかな~? ちーちゃんは確かに競技者としての腕前は超一流だし、才能もピカイチだけど、実践的な剣の才能は皆無だからね。実践だって競技用の剣の腕でカバーしてるだけでしょ?」

「……」 

 

 事実だった。

 嘗て、千冬は剣の師であり、目の前に居る親友の父親でもある篠ノ之流師範、篠ノ之龍韻に指摘された事があるのだ。

 曰く、千冬の剣道の才能は正しく天賦の才と言って過言ではない。このまま修練を続ければ剣道の世界で確実に名を残す名選手になれるだろうが……残念ながら実践的な剣術の才能は皆無である、と……。

 その証拠として、何年か前のとある人物との戦いの後、暮桜の封印凍結を余儀なくされた。千冬はその戦いで、負けたのだ。

 

「いっくんは凄いよ……剣道の才能はちーちゃんにこそ劣るけど、高いものがあるのに、その上で実践的な剣術の才能が異常なんだもん。多分、剣術という分野でならいっくんは間違いなく私を超えるよ」

「お前をもか……」

 

 目の前に居る束も、一夏と同じタイプだった。

 束も競技である剣道の才能は確かに高いが、それは妹である箒の方が確実に高い。しかし剣術の才能は鬼才と呼べるだけのものなのだ。

 その束すらも上回れるほどの才能を、一夏は持っていると、束は断言している。

 

「今はまだ束さんが勝てるけど……、後一年くらいいっくんが実践を経験したなら……もう勝てないね」

 

 今の一夏は確実に千冬より剣の腕が上だと束は見ている。つまり、千冬が一夏に勝つにはISの操縦技術でカバーしなければならないという事だ。

 ISの操縦技術という点で言えば、確かに千冬は世界一で、彼女以上のIS操縦技術を持つ者など、束以外に存在しない。

 

「それじゃ、今度こそ帰るね」

「ああ、気をつけて帰れ」

「うん、じゃあね~」

 

 一瞬の風が吹いた。

 顔を打ち付ける風に目を閉じた一瞬で、千冬の目の前から束の姿は消えており、もう近くに束の気配は無い。

 

「あの、織斑先生?」

「ん、ああ……いや。それより山田先生、生徒達の点呼は終わりましたか?」

「あ、はい。もういつでも出発出来ますよ」

「わかりました、では我々もバスに乗り込みましょう」

「はい!」

 

 千冬と真耶が一組のバスに乗り込むと、バスの扉は閉じられてエンジンが作動する。

 

「では、これよりIS学園へと帰る。一同、お世話になった旅館へ礼!」

『ありがとうございました!』

 

 こうして、臨海学校は終了した。

 この後に待ち受ける期末テストの事を思うと、憂鬱になる生徒達だったが、今だけは疲れを癒す為に多くが睡眠を取っていく。

 千冬と真耶も、学園に着くまで交代で睡眠を取って疲れを癒しながら、生徒達が騒がないように見張るも、それほどの元気は流石に無いらしい。

 バスに揺られながら、IS学園一行はゆっくりと、学園への帰路へと着くのだった。




ようやく臨海学校編が終わったぁ!

次回は期末テスト通り越して直ぐに夏休み突入! と同時に束がIS学園へと引っ越してきて、暮桜の封印解除が行われ、いよいよ始まります最後の姉弟喧嘩! 一夏VS千冬の戦い!!
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