SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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何かね、リターンが進まなくなった。
次の話はスカル・リーパーとの戦い直前なのに。


第六話 「生身の戦士達」

SAO帰還者のIS

 

第六話

「生身の戦士達」

 

 クラス代表決定戦を4日後に控えた入学三日目の放課後、一夏達は何故か剣道場に来ていた。

 そもそも何故、こんな所に居るのかというと、一夏の幼馴染である箒が一夏に決闘の為に稽古を付けてやると言ってきたのが始まりだ。

 当初は断るつもりでいた一夏だが、あまりの気迫につい断りきれず、ジト目で睨んでくる百合子に後ほど頭を下げたのは記憶に新しい。

 そして現在、大勢の観客が道場の入り口にたむろして、道場内の隅には和人と明日奈、百合子が見学している中、中央には道着を着こんで防具を付けた一夏と箒が竹刀を構えて向かい合っていた。

 

「ゲームで2年間眠っていたという話だ、その軟弱な腕を此処で鍛えてやる」

「へいへい」

 

 箒の言葉に思うところはあるが、正直な話、技術はともかくとしても肉体的にはまだまだ衰えが抜け切れていない現状、軟弱という言葉に反論できないのも事実だ。

 故に、たいした反論をする事も無く構える一夏の態度が、箒としては気に入らない。

 

「手加減せんぞ! めぇえええん!!」

「っ! ふっ!!」

 

 もっとも、いくら衰えが抜けていないとは言っても、それでも目覚めてからリハビリして、それ以降もジムで身体を鍛えている一夏はSAO時代に培った洞察眼と反射神経、反応速度を駆使して上段からの振り下ろしを紙一重で避けると、逆に竹刀を右手一本持ちに持ち直しながら胴目掛けて一閃する。

 しかし、その一閃は箒が瞬時に反応して竹刀を交差させる事で受け止められてしまった。

 受け止められて鍔迫り合いをする気など無い一夏は直に後ろに飛び退くと改めて構えた。今度は両手持ちの剣道の構えではない、右手に竹刀を持ったまま、その右手だけで正眼に竹刀を構え、左半身を半歩後ろに下がらせて半身の状態になる。SAO時代の白の剣士ナツが常に使っていた構えだ。

 

「一夏、なんだその構えは! 剣道をする気があるのか!?」

「悪いな箒、流石にもう剣道は覚えてねぇわ。今の俺に使える剣技はSAO時代の名残、白の剣士ナツとしての俺の技術が、今の俺の剣の全てだ」

「くっ…どこまでも馬鹿にするか……あの頃の思い出も全て捨てて、ゲームの技でも使って格好良いとでも自己陶酔したいのか貴様は!?」

「何とでも言え…この剣技は、俺を2年間支えてきた、2年間を生かしてくれた技術だ……殆ど覚えてない剣道よりは、絶大な信頼を寄せているぜ」

 

 話しながら駆け出した一夏は上体を低くしながら箒の懐まで飛び込む。

 話の途中で動いた一夏に慌てた箒も直にルール無視を平然と行う一夏に怒りを覚え、その腐った性根を叩き直してやるとばかりにもう一度上段から竹刀を振り下ろした。

 だが、やはり鍛え上げられた一夏の洞察眼からは見え見えの太刀筋はまたも紙一重で避けられ、逆に竹刀に一夏の竹刀が叩きつけられる。

 危うく弾き飛ばされるところだった箒の竹刀だが、両手持ちの箒の竹刀が片手持ちの一夏の竹刀に弾かれはしても弾き飛ばされるまではいかず、だけども明らかな隙が生まれた。

 

「そこだ!」

「くっ!? 舐めるなぁ!!」

 

 現状、生身でいくつか再現出来るソードスキルの一つ、ホリゾンタル・スクエアを使おうとした一夏だったが、半身を反らす事で箒に避けられ最初の一撃が空振りに終わる。

 更に半身を反らしながら右手を竹刀から放した箒はそのまま左手一本による片手面を一夏に叩きつける事で勝負有りとなった。

 

「あっちゃ~…やっぱあそこで竹刀弾き飛ばせなかったのが痛いなぁ、システムアシスト無しだと筋力まで落ちてるからあんなものかぁ」

 

 SAOでのナツと、生身の一夏では筋力が違う。ナツならあそこで竹刀を弾き飛ばすか破壊する事は出来ただろうが、一夏では弾くのが精一杯で、それが勝敗の分かれ目となってしまったようだ。

 

「お疲れナツ、やっぱ筋力の問題か?」

「です、もう少し筋トレ続けて筋力アップが課題ですよ」

「なら俺も同じだろうなぁ」

 

 アク○リアス片手に近づいてきた和人はそのままそれを一夏に手渡すと、面を外した一夏は一気飲みする。

 二人の様子を見ていた箒は相変わらずゲームの話を現実に持ち込む一夏と和人に嫌悪感を隠せない。

 

「一夏、桐ヶ谷、ゲームでの話を現実にまで持ち込むな。此処はゲームの世界じゃない」

「いや、判ってるんだけどな、やっぱ生身では限界があるし…でも、ISを使えば別だ」

「な、何?」

「俺達の専用機はソードスキルシステムが搭載されている。SAO時代の戦い方が出来る様になってるんだ…しかもISなら生身では出来なかった動きや力すら行使可能になる、俺達にとってはSAOでの戦い方は既にゲームだけの話じゃないって事だ」

「そういうこと。それにしても篠ノ之さんって剣道強いけど、大会に出た事があるのか?」

「む、去年は全国優勝している」

 

 去年の全中女子剣道全国大会と言えば和人の妹の直葉も参加した大会だ。直葉はその大会でベスト8に輝いている。

 

「へぇ、じゃあ桐ヶ谷直葉って知ってるか?」

「桐ヶ谷直葉…ああ、大会で戦った相手だ」

「あ、じゃあスグが負けた相手って篠ノ之さんだったのか」

「む? そういえば苗字が同じだが…親戚か?」

「ああ、兄だ」

 

 そう言えばクラスメートにも言っていない事があった。なので、一夏は明日奈も呼んで改めて箒に和人と明日奈の事を紹介する事にした。

 

「桐ヶ谷和人さん、箒が去年の全国大会で戦った直葉の兄で、俺達より一つ年上なんだよ」

「と、年上だったのか? いや、それはすまん。あ、いや…すいません」

「いいよ普通で、俺もそこまで気にしないし…ってかナツもいい加減に敬語止めろっての」

「いや、俺はまぁ…キリトさんはいつまでも尊敬するべき対象ですんで……んで、キリトさんの恋人の結城明日奈さんは俺達より二つ年上で今年18歳になる」

「改めてよろしくねー」

「は、はいっ」

 

 流石の箒も本物のお嬢様として気品ある雰囲気を持った明日奈を前にして少し緊張している様だ。

 それも仕方が無いだろう、大抵の人間は明日奈を前にすると、その気品ある雰囲気に年齢不相応の美貌、柔らかい笑顔と包容力のある優しい声に誰もが緊張してしまうのだから。

 

「んで、百合子は俺達と同い年だ」

「む…」

 

 そして、百合子を改めて紹介すると、箒の表情は明日奈を前にした時の緊張した面持ちから一変、難しい表情というか、普段の不機嫌そうな表情に早変わりする。

 一夏と、和人は気付かないが、その表情は完全に恋敵を見る嫉妬に溢れた表情で、明日奈も百合子もそれで何もかもを悟っていた。

 

「篠ノ之箒だ…宍戸、百合子だったか」

「はい、ナツ君とお付き合いさせてもらってる、宍戸百合子です」

「…ナツ…とは一夏のあだ名か?」

「いえ、SAO時代から使っているアバターのキャラネームです。SAO時代はずっとナツ君と呼んでましたから、癖で今でもナツ君と呼んでしまうんです」

 

 2年もナツ君と呼び続けていれば今更呼び方を変えるのも難しい。実際、明日奈も和人の事を未だにキリト君と呼んでいるし、一夏もキリトさんと呼んでいる。

 

「クッ……私は、認めない、諦めないぞ」

「どうぞ、お好きに。これくらいの苦労はSAO時代から当たり前にありましたし」

 

 何故か思い出して疲れた様な深い溜息を溢す百合子に事情を知る明日奈だけが苦笑する。可愛い弟分は相変わらず兄同様にモテている様で、妹分の苦労が痛ましい。

 

「よし、紹介も終わったし、キリトさん、一戦やりませんか?」

「俺も? まぁ、良いけど・・・じゃあちょっと着替えてくるわ」

 

 折角剣道場に居るのだからと、一夏は和人と試合する事にした。

 着替えてきた和人に壁に掛かっていた竹刀を二本、投げ渡すと、和人も心得たとばかりに二本の竹刀を構えて一夏と向き合う。

 

「待て一夏! 桐ヶ谷は二刀流なのか? なら二刀流用の小刀を用意するぞ」

「いや、これで良いんだよキリトさんは」

「だが、剣道のルール上…」

「箒、俺達がやるのは剣道じゃない、見ておけ…アインクラッドをソロで戦い続けた俺達の戦い方を」

 

 向かい合った一夏と和人の間に冷たい空気が流れた。

 様子を見守っていたギャラリーも息を呑んで二人が動き出すのを待っているのだが、一向に動く気配が無い。

 

「やっぱりナツ君、キリト君に攻め入る隙が見つからないみたいだね」

「え?」

「お義兄さんが二刀流使うと、ナツ君は勝った試しがありませんからね」

「な、なに!?」

 

 暫く睨み合いが続き、そして誰かが睨み合う二人の気迫に気圧されて一歩足を後ろに逸らした瞬間、遂に二人が動いた。

 

「せぇえええあああああっ!!!」

「ぜぁああああああああっ!!!」

 

 本当に筋力が衰えているのかと疑いたくなる速度で互いに近づき、一夏の竹刀と和人の左の竹刀が交差する。

 同時に、和人が左の竹刀を振りきり、一夏の竹刀を弾きながら右の竹刀で横一閃に薙ぎ払ってきたのを後ろに飛び退く事で回避し、着地と同時に追って来た和人の右の竹刀を振り払いながら柄尻で左の竹刀を叩いて弾くと空いている左手を拳にしてアッパーカットを叩き込もうとした。

 

「おっと! 良い一撃くれようとするなナツ!」

「あなた相手に、手加減する訳にいきませんからね!」

 

 アッパーカットを避けられた一夏は、左から右から、連続で振られる和人の竹刀を何度も弾き、時に避けながら再び反撃の隙を窺った。

 互いにソードスキルを熟知している以上、再現しただけのソードスキルは役に立たないのは理解している。だからこそ、己の力量だけの、己の技術だけの勝負になるのだが、やはり和人の二刀流は生身でも反則気味の凄まじさだ。

 

「くっ! (不味い、防戦一方だ! このままだといつも通りの展開になる!)」

 

 元々、一刀対二刀の対決である以上、こうなるのは仕方が無い事だが、何としても一夏は己の土俵に持って行きたいと考え、今まで試した事の無い策を此処で使う事にした。

 それは、アインクラッドで和人…キリトが対人戦で主に使用していたシステム外スキル、武器破壊(アームブラスト)を参考に一夏…ナツがモンスターだけでなく、プレイヤーでも使用可能に出来るよう考案したスキル、武器落とし(ディスアーム)だ。

 

「うぉっ!?」

 

 実際、和人の左の竹刀の鍔元に力一杯竹刀を叩きつける事で、見事和人の左手から竹刀を手放させる事に成功した。

 和人が武器の何処を攻撃すれば武器を破壊出来るのかを考案して武器破壊(アームブラスト)を開発した様に、一夏もまた、武器の何処を攻撃すれば相手の武器を落とす事が出来るのかを考案した結果、本来であれば武器落とし(ディスアーム)属性持ちのMobしか使えなかった武器落とし(ディスアーム)をプレイヤーでも使用出来る様にしたのだから、その考案者たる一夏に、和人の竹刀を落とす事が出来ない筈が無い。

 

「やるなナツ…まさか白の剣士お得意の武器落とし(ディスアーム)を俺が受ける事になる事になるなんて思わなかったぜ」

「いえ、二刀流のスピード相手には結構賭けに近い選択でしたけどね」

「よく言うよ、動体視力なら俺より上の癖に」

 

 和人は落とした竹刀を拾う事無く、右手の竹刀を後ろに持って行き、右半身を後ろに逸らしながら左手を開いて身体の前に持ってくる。黒の剣士キリトの一刀流時代の構えだ。

 対する一夏もまた、白の剣士ナツの構えで相対し、二人同時に動いた。

 互いに一刀、故に互角となった剣戟は次第に激しさを増していき、そろそろお互いに体力が限界を迎えようとしている。

 

「生身って、これだから不便だな」

「ホント、SAO時代ならまだまだ戦えたんですけど」

 

 これが最後の一撃になりそうだと、一夏も和人も、そして見守る明日奈と百合子、箒が考えていた。

 そして、それは確かで、最後の一撃を決める為、二人が接近して竹刀を振りぬこうとしたその時だった。和人の右足が何かを蹴り上げ、その何かを左手でキャッチするのと同時に一夏の竹刀を弾き返し、右の竹刀で一夏の胴を叩く。

 

「あ…落ちた竹刀を…」

「注意力散漫だぜ、ナツ」

 

 そう、あの一瞬で和人は床に落ちていた竹刀を右足で蹴り上げて左手に持ち直し、再び二刀流となって勝負を決めたのだ。

 

「やっぱ、キリトさんってチートですよ」

「そりゃ、元ビーターだからな」

 

 互いに礼をして、一夏と和人は笑い合う。

 あの頃とは違い、生身ではあるが、嘗て何度も模擬戦をした黒の剣士と白の剣士の試合は、今日もまた、白の剣士の黒星で終わるのだった。




次回、遂にセッシーVSワンサマー。

そういえば、一夏のキャラネームはナツですが、実は案が幾つかありました。
一つはイチ、もう一つはワンサマー。
ワンサマーは流石にギャグだろと思い、即ボツにしたので、イチとナツで迷った挙句、ナツの方が好みだったので決めたという裏話が。
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