SAO帰還者のIS
第七話
「白を纏う戦士」
クラス代表決定戦当日、既に一夏達は第三アリーナのAピットに集まっており、初戦である一夏とセシリアの試合時間まで本日戦う一夏の白式と和人の黒鐡のチェックを行っていた。
ピットには一夏達SAO組4人の他には箒と真耶、千冬も集まっており、自身のISのチェックに余念が無い一夏と和人を見守っている。
「織斑、白式の武装は確認したか?」
「ああ、ちゃんと注文通りにトワイライトフィニッシャーがあった、性能も問題なしだ」
「違う、雪片弐型の方だ」
「あ~…使う事は無いと思ってチェックは簡単にして後は全部後回しにしてる。どうせトワイライトフィニッシャーしか使わないだろうから」
「…雪片を使う気は、無いのか?」
「ああ、万が一の事が無い限りは無いと思う」
躊躇う事も無く頷く一夏に複雑な感情を滲ませる千冬。聞けばトワイライトフィニッシャーは一夏がSAOで使っていた剣を再現した物との事なので、使用を禁止したいところなのだが、白式の第3世代型装備であるソードスキルシステムを使用するにはトワイライトフィニッシャーでなければならないという事実があり、それも出来ない。
ならばソードスキルシステムを禁止させれば良いのかと言われればそれも出来ないのは理解している。態々手札を減らすのは、しかも白式の現状メインシステムと言っても良いシステムを封印するのは愚かだ。
「そろそろ時間だ」
「了解」
カタパルトに移動する一夏はふと止まり和人、明日奈、百合子の方を向いて笑顔を見せながらサムズアップする。
「じゃあ、勝って来ます」
「おう、見せてもらうぜ、鈍ってないかどうかを」
「頑張ってねナツ君」
「はい」
兄貴分の和人と姉貴分の明日奈から激励を貰い、最後に百合子が一歩前に出てきて一夏を見つめた。
「…待ってるから」
「…ああ、待っていてくれ」
数秒間、静かに見つめ合い、やがて前を向いた一夏は発進してアリーナへとその身を投げ出した。
二人の様子を見ていた箒は嫉妬に内心激怒し、千冬は何処か、忌々しそうな表情を浮かべているが、直ぐに気を取り直して管制室に移動するのだった。
アリーナに出た一夏は既にアリーナ中央で浮いているセシリアの前まで移動すると、トワイライトフィニッシャーを取り出して右手に握り締めた。
「ふん、逃げずに良く来ましたわね」
「逃げる理由がねぇからな」
「…まぁ、良いでしょう。チャンスを上げますわ」
セシリアは自身の専用機、イギリス第3世代型ISブルーティアーズの専用武装、大型レーザーライフルであるスターライトmkⅢの銃口を一夏に向けながら優雅に笑う。
「この試合、私の勝利は絶対不変の揺ぎ無きもの。敗者になるあなたに慈悲を差し上げます。今ならまだ土下座をする事で私とイギリスを侮辱した事、恥を掻かせた事を、特別に許して差し上げてもよろしくてよ?」
「はぁ……黙れよ命賭けたことも無い小娘が」
ゆっくりとトワイライトフィニッシャーを構えた一夏から、途方も無いプレッシャーが放たれた。それはセシリアを人間と思っていないのではないかとすら錯覚しそうなほど恐ろしい殺気が含まれており、若干だがセシリアの表情が青くなって怯えが滲み出た。
「な、ならば残念ですがここで…」
【試合】
「お別れですわね!」
【開始】
試合開始の合図と共にスターライトからレーザーが放たれた。しかし、そのレーザーは紙一重どころか余裕を持って一夏にかわされ、ほんの一瞬で懐まで距離を詰められてしまう。
「なっ!?」
「最初から銃口向けてたら狙いがバレバレだアホ」
トワイライトフィニッシャーの刀身がライトエフェクトにより輝きながら振られ、セシリアの前後左右4方向に移動しながらの水平4連撃、片手剣スキルの一つ、ホリゾンタル・スクエアの直撃が決まった。
「きゃあああああ!?」
「まだまだぁあああああっ!」
吹き飛ばされたセシリアを追って一夏が飛ぶ。追いついて直ぐに斬撃を繰り返しセシリアのシールドエネルギーを奪い、一気にアリーナ地面まで叩き落す。
再びセシリアを追おうとした一夏だったが、嫌な予感が脳裏を駆け抜けその場を即離脱。一夏が居た場所をセシリアとは全く別方向からのレーザーが通り抜けた。
「あれは…?」
そこにあったのは蒼いビット、しかも1基だけではなく、別の場所にも計4基が一夏に銃口を向けている。
「これが私のブルーティアーズが第3世代型ISを冠する由縁、イギリスが開発した第3世代兵器、ブルーティアーズですわ!」
再び飛び上がってきたセシリアが少しボロボロのブルーティアーズの装甲を纏いつつ、一夏を憎悪の視線で睨んでいた。
どうやら男にあそこまでボロボロにされたのが気に入らないようだが、戦いに男も女も関係無いというのがSAO時代を生き抜いた一夏の考えであり、女尊男卑など戦いの場には何の意味も成さないという事を知っている。
「お行きなさい! ブルーティアーズ!!」
4基のブルーティアーズが縦横無尽に動きながら一夏にレーザーを連射してきた。流石に当たってやる訳にもいかないので、一夏もALOでの飛行によって慣らされた空中機動を駆使して飛び交うレーザーを避ける。
しかし、完全に全てを避けるというのは些か難しいものがあり、少しずつだが一夏の被弾も増え始めていた。
その事に気を良くしたのか、セシリアは再び余裕の表情を浮かべながらブルーティアーズを操作して、どんどん一夏を追い詰めていく。
「ふん、所詮は男、私の足元にも及びませんわ! この私相手に剣一本で挑もうとしたその愚かさを、敗北という結末を持ってして後悔なさい!!」
もう一発、直撃軌道に居るブルーティアーズに指示を出し、一夏に向けてレーザーを放とうとする。しかし、その瞬間レーザーを撃とうとしていたブルーティアーズが突然爆発して落ちてしまった。
「な、何が起きましたの!?」
「悪いな、俺が近距離しか攻撃手段を持っていないと思ったお前のミスだ」
「なっ!?」
2基目、3機目、4基目と次々爆発して、全てのブルーティアーズが落とされてしまった。
一体何事かと思った次の瞬間だった、ブルーティアーズにある右側の
「これは…っ!?」
見れば、爆発を起こした場所には一本の投擲用ピックが刺さっていた。
一夏の方を見れば左手に同じピックを持ってセシリアにも見えるようヒラヒラと振りながら、これだよとでも言いたげに主張している。
「し、しかし…ただの投擲でここまでの威力が、出るわけがありませんわ!?」
「それが出るんだわ…投剣のソードスキル、シングルシュート…これも立派なソードスキルの一つだぜ」
「くっ! ゲームの技ですか…馬鹿にして…! ゲームの技なんかが現実で何の役に立つと言うんですの!?」
「今、こうしてお前を追い詰める事が出来るぜ」
事実、セシリアを序盤で追い詰め、ブルーティアーズ4基全てを落としたのはソードスキルあっての事だ。
「さぁ、これでお前の攻撃手段はそのライフルだけか? なら、そろそろ決めさせてもらう!」
トワイライトフィニッシャーを構え、一直線にセシリアに突っ込んできた一夏だったが、対するセシリアはニヤリと一夏の行動のミスに嘲笑った。
「残念ですが…」
不味い、そう思った時一夏は慌ててソードスキルを発動させる。
トワイライトフィニッシャーがライトエフェクトによって輝くの同時にブルーティアーズのリアスカートアーマーの下から、2基のミサイルが発射された。
「ブルーティアーズは6基ありましてよ!」
「2基は弾頭型か! クソッタレ!!」
高速で飛行し突っ込む一夏に、同じくミサイルが高速で迫ってきた。
だが、土壇場で一夏が発動したソードスキルの選択は、運よくこの場を切り抜けるのに適している。
「うぉおおおおああああああああ!!!!!」
「っ!?」
発動したソードスキルは片手剣ソードスキル、バーチカル・スクエア。垂直4連撃のスキルで、迫り来るミサイル2基を正方形を描く様にトワイライトフィニッシャーを振る事で斬り裂き、爆炎の中に一夏の姿が消えた。
「ふ、ふん! ミサイルに反応出来たのは評価しますが、これで終わりですわね…全く、無駄な時間でしたわ」
「無駄か如何かは、これで判断してもらおうか!!」
「っ!? まさか!?」
黒煙の中から、ジェットエンジンのような爆音と共にトワイライトフィニッシャーの切っ先をセシリアに向けたまま一夏が飛び出してきた。
「おおおおおおおおおっ!!!!」
「な、い、インターセプター!!」
一夏が発動しているソードスキルは、白の剣士ナツが最も得意とし、SAO時代は白の剣士の代名詞とまで呼ばれたソードスキル、ヴォーパル・ストライク。
ジェットエンジンの様な音を響かせながら赤い光芒を剣に纏わせて放つ強力な突進刺突技、それは一直線にセシリアの懐に入り、防ごうとしたブルーティアーズ唯一の近接武装であるインターセプターというナイフの刃を砕きながら胴体に直撃した。
「きゃあああっ!!? あああああ!!」
「終わりだぁああああ!!」
ライトエフェクトによって輝くトワイライトフィニッシャーと白式の左拳から放たれる斬撃と打撃が次々とブルーティアーズに決まり、装甲をボロボロに砕いていき、タックルによって吹き飛ばされたセシリアに更に剣と拳の嵐が襲い掛かる。。
片手剣と体術の複合ソードスキル、メテオブレイク。その連続技によって遂にブルーティアーズのシールドエネルギーが0になった。
【試合終了。勝者、織斑一夏】
「ふぅ…」
試合終了の合図が出たので攻撃を止めると、目の前のブルーティアーズとセシリアの惨状を見て少しヤバイと思った。
「(キリトさんの試合、できねぇんじゃないかこれ…?)だ、大丈夫か?」
「くっ…わ、私の、負けですわ」
「お、おう…どうだった? 男だってやるもんだろ?」
「ええ…まさか、ゲームの技と侮って負けるとは思いませんでした」
「そりゃ、ゲームの技とは言ってもSAOでの命懸けの2年間を生き抜くのに、ずっと俺を支えてくれた技術だ、絶対の自信を持つのも当然だろ? お前が代表候補生としてそれまでの努力に誇りと自信を持つのと、何も変わらない」
「そうですわね…ええ、本当に、そうですわ、あなたは、あなた方はその技術で、2年を生きてきたのですから、侮辱するのはあなた方の2年の戦いを侮辱するも同じという事ですか」
実際に戦って理解出来た。一夏達の、一夏の使うソードスキルは、例えゲームの技、技術と言えど、そこに込められた魂は、本物だという事が。2年という短いようで長い時間を支えてきた技術だからこそ、その2年間の想いと言うものが、込められているのが、戦う事で感じ取る事が出来た。
「申し訳ありませんでしたわ、たかがゲームだと、男だからと、あなた方と、あなた方の愛する物を侮辱してしまって」
「いや、今度は油断も何も無いお前と、もう一度戦えるのを楽しみにしてるぜ」
「ええ、その時は今度こそ、勝たせて貰いますわ」
「言ってろ」
軽く笑って、一夏はAピットに戻っていった。
その後姿を見つめながらセシリアは、右手にある刃の砕けたインターセプターに視線を下ろし、フッと薄く微笑みを浮かべる。
「重い、とても重たい一撃でしたわね」
ボロボロのブルーティアーズを待機状態に戻し、歩きでBピットに戻るセシリアは次の和人との試合を如何するのか、ピットに戻ってきてシャワールームでシャワーを浴びている最中に漸く気付いて頭を抱えるのだった。
次回はキリトとセシリアの試合になります。ただ、キリトは方針として二刀流を必要にならない限りは使わない予定。