セッシーはどこまで行くのか……。
SAO帰還者のIS
第七十一話
「
更衣室で一夏とオータムの戦いが始まった頃、校舎の方でも動きがあった。
国際指名手配中の筈の須郷が恐らく偽名を使っているのだろうが、それでも顔を隠すこと無く堂々と1年1組の教室に客として入り、我が物顔で紅茶を飲んでいるのだから、教室に入った和人と明日奈は驚くしかない。
「お久しぶりですねぇ明日奈さん、相変わらずお綺麗だ」
「ええ、本当にリアルではお久しぶりですね。私が目を覚ました時にはもう、貴方は逮捕されてましたから」
「おや、婚約者に対して随分と冷たいですな」
「そのお話でしたら、貴方が逮捕された時点で白紙になっています。誰が好き好んで犯罪者の妻になりたいものですか!」
「やれやれ、聡明な貴女なら理解出来ると思っていたのですがね。こんな小僧を選ぶより、僕を選んだ方が良いという事を」
一度和人に痛い目に合っているというのに、相変わらず須郷は和人を思いっきり見下していた。この自身に満ち溢れた態度、どうせ
「それで須郷、お前の目的は……いや、お前たちの目的は、ナツや俺、それに箒の専用機って事で良いのか?」
「ふん、お前のような小僧が僕に口を利くなどおこがましいにも程があるが、まぁ教えてやるか。組織としては確かにその通りだが、僕の目的は単純明快さ……君に奪われた婚約者を取り戻す事と、そしてその婚約者を奪った君を、この場で殺す事だ!!」
次の瞬間、教室の窓が何者かによって打ち破られた。幸いにして偶然にも窓側の席に座る客は居なかったのと、クラスメートも近くに居なかったので人的被害は無かったが、入ってきたモノが最悪だ。
「赤目のザザ……っ!」
「Pohも……」
入ってきたのは海の時と同じISを纏ったザザとPohの二人。更にその向こうにはサイレント・ゼフィルスを纏ったMの姿もある。
「シャルロット! ラウラ!」
「うん!」
「任せろ!」
客や生徒達の事は二人に任せて、和人と明日奈、それから騒ぎを聞きつけて出てきたセシリアはそれぞれ専用機を展開する。
「本当は僕が小僧の相手をしようと思ってたけど、僕の専用機はまだ未完成でね。ならば君が死ぬところをじっくり見学する事にしたよ」
須郷はザザに抱えられて外の地面に降ろされ、その周囲を
そして外に出たPoh、ザザ、Mを追って和人、明日奈、セシリアも外へ飛び出す。
「俺がPohの相手をする。アスナはザザを、セシリアはサイレント・ゼフィルスを頼む!」
「わかった!」
「了解しましたわ!」
エリュシデータとダークリパルサーを構えた和人、ランベントライトを構えた明日菜、スターライトMK-Ⅲを構えたセシリアがそれぞれの相手へ向かっていく。
学園校舎から少し離れた所で戦うのは、互いに同じイギリス製の第3世代機同士、ブルー・ティアーズとサイレント・ゼフィルスだ。
それぞれ姉妹機というだけあり、お互い同種の武装であるビット兵器、ブルーティアーズとエネルギーアンブレラによる多方向射撃と、メインアームであるスターライトMK-Ⅲとスターブレイカーによる通常射撃の応酬が始まっている。
「ふん、データにあったより射撃の腕は上達しているようだが、まだまだ私の足元にも及ばんな。何より……!」
「っ!? くっ!」
一基のエネルギーアンブレラから放たれたレーザーは、セシリアの居る所とは全く正反対の方向に向かったのだが、その途中で折れ曲がり、セシリアに直撃する。
「
「そう、貴様がイギリスで最もBT適正値が高かったのにも関わらず、未だに習得出来ていない
一斉に
だが、相殺しようとブルーティアーズから放たれたレーザーをエネルギーアンブレラのレーザーが偏向する事で避けたのを、ブルーティアーズのレーザーが……
「な、に……?」
「私が
次々と、ブルーティアーズから放たれたレーザーが折れ曲がり、今度はサイレント・ゼフィルスにレーザーが襲い掛かった。
「馬鹿な!? 貴様が
「ですから、いつのお話ですの? それ……そもそも」
今度はブルーティアーズとスターライトMK-Ⅲのレーザーが何度も折れ曲がってサイレント・ゼフィルスに直撃する。
「後方支援は
確かに、セシリアは夏休み前までは
夏休み中、一度もALOにログインする事無く、セシリアはイギリスで努力を続けてきた。社交界やコンクール、オルコット家当主としての仕事に代表候補生としての仕事、訓練以外の全ての時間をブルー・ティアーズに搭乗して過ごし、寝るのですらブルー・ティアーズに乗ったまま寝るという生活を自らに課していた。
結果として、セシリアはISへの搭乗時間だけで言えば並の国家代表よりも多くなり、その分ブルー・ティアーズが己の身体の一部だと言えるほどに馴染んだのだ。
セシリア・オルコットとブルー・ティアーズは常に一心同体、その絆は他のどのIS操縦者にも負けないという自負が、今のセシリアにはある。
「さあ共に参りましょうブルー・ティアーズ! 私達の奏でる
次の瞬間だった。セシリアと、纏っているブルー・ティアーズが突如眩いばかりの光に包み込まれたのは。
「な、なんだっ!?」
「これは……」
【Second Sift Stand by Ready Set up】
セシリアの目の前に表示された画面に映る文字は
「そうですか、あなたは私と共に、どこまでも踊り続けてくださるのですわね……ならば、今度こそ本当に、参りましょう! ブルー・ティアーズ・アンダイン!!」
光の中から飛び出したセシリアが纏うのは、進化して新しくなったブルー・ティアーズの姿。スターライトMK-Ⅲには変化が無いが、装甲がよりスマートに、空気抵抗を減らした作りに変わり、ビットは発射口が縦に二重となり一基につき二つのレーザーが撃てるようになった。
更に特筆すべきなのは
「
「いつまでも驚いている余裕はありませんわよ!!」
4基の射撃型ビット「アンディーン」から放たれた8本のレーザーの光が何重にも偏向してサイレント・ゼフィルスに襲い掛かる。
舌打ちしながらMはレーザーを避けるものの、やはり数が多すぎて避け切れない。装甲の所々にレーザーが直撃し、エネルギーアンブレラも大半が落とされ、残った物も中破寸前だった。
「お行きなさい! ディープブルー!!」
更に
他のレーザーを避けながら突撃してくるディープブルーの対処をするのは流石のMでも難しかったのか、一つは避けたものの、もう一つがサイレント・ゼフィルスの左の
爆散した左の
「なるほど、認識を改めようかイギリス代表候補生セシリア・オルコット……貴様は少し力を持っただけのお嬢様だとばかり思っていたが、その実……その腹の底にあるのは戦士の魂だということを」
「光栄ですわ。本物の戦士をいつも間近で見てきて、私も鍛えられましたから……自分も戦士であろうと鍛えた甲斐があるというものでしてよ」
「だからこそ、私も本気を出させてもらおうか。この私に本気を出させたのは、貴様が3人目だ!!」
エネルギーアンブレラを失って、残る武器はスターブレイカーというロングライフルとナイフのみになったというのに、Mにはまだ余裕があった。
何故ならサイレント・ゼフィルスには
「目覚めろ、スターブレイク!!」
スターブレイカーの銃身が縦に割れて巨大なレーザー刃が伸びる。銃の持ち手とトリガーが付いたレーザーの剣……所謂ガンブレードとなったスターブレイカー改めスターブレイクを構えたMは、そのレーザーの切っ先をセシリアに向けた。
「私は元々射撃も得意だったが、それ以上に剣が得意でな……剣で貴様に負けるつもりは無い」
「あら、お生憎ですが」
剣での勝負なら、セシリアとて負けるつもりは無い。
インターセプターを展開したセシリアはALOで短剣を使う時の構えになって意識を切り替える。このインターセプターを上手く使う上で参考にしたのはALOでの自分自身。故に、このインターセプターを使う時に限って己はセシリア・オルコットではなく、
「ふん、付け焼刃の短剣が、私に通じると思うな」
「付け焼刃かどうか、嫌というほど思い知らせて差し上げますわ」
インターセプターがレーザーを纏った所で、両者同時に動き出す。イギリス製第3世代機同士の戦いは、まだまだ終わりを見せそうになかった。
ぶつかり合うは互いに細剣の担い手。
片や己が信念と守るべきものを守るための剣。
片や己が欲望と殺すための剣。
血の盟約を結びし騎士団の副団長は今、硝煙を燻らせる殺人者に裁きの閃光を放つ。
次回、SAO帰還者のIS。
「閃光VS赤目」
閃く光は栗色の残像と共にヘイゼルの瞳に映る敵を討つ。