後で描写する予定です。
SAO帰還者のIS
第七十六話
「戦いの後夜祭」
学園祭の戦いが終わった。学園の教師陣は
現在、学園長室に集まった千冬と楯無、それから学園の真の支配者である轡木十蔵は読んでいた資料から目を上げ、それから空間投影したモニターに映る被害状況へ視線を移す。
「校舎自体の損壊は軽微、織斑と宍戸が交戦した地下も2週間あれば修理可能か……」
「人的被害は一般生徒に軽傷者10名、一般来場者及び重役来場者への被害は無し。これは奇跡ですね」
千冬と楯無の言葉の通りだとすれば、学園としての被害は然程大きくはないという事になるが、問題は学園所属の専用機持ちだ。
「オルコットさんと
轡木の言う通り、モニターには医務室で治療を受けている二人の姿と、整備室のハンガーに掛けられた黒鐡及び瞬光が映っている。
「幸い、二機とも修理は可能でしたので、篠ノ之博士が主体となって修理作業が始まっています。博士の見立てでは2週間もあれば完全に修理が完了するとの事ですね」
「そうですか……織斑先生、弟さんの方で保護した少女の様子は如何ですかな?」
「今はまだ全身を拘束した上に薬で眠らせています。使用していたテンペスタと所持していた武装全てを没収しているので、逃げ出す心配は無いと判断し、意識が回復後に事情聴取を行うつもりです……それと、校医の調査で判明した件が一つ」
モニターが切り替わり、3つのDNAグラフが表示される。そのグラフにはそれぞれ束の名前と一夏の名前、それからKの名前が書かれていた。
「校医の話によれば、このKと呼ばれる少女のDNAの遺伝子配列、全体の50%が一夏と、残りの50%が束と一致したそうです」
「先生、それってあの子は一夏君と博士の子供って事ですか?」
「普通に考えれば体外受精で生まれた二人の子供だと思えるが……実際は違った」
校医の診察と、束の調査の結果判明したのは、Kが一夏と束の子供なのではなく、別の存在だという事だった。
「このKという少女は……一夏と束の遺伝子を組み合わせて作られた合成クローンらしい」
「合成……」
「クローンですか」
「それも、束が言うには見た目通りの年齢ではないとの話ですね」
「それって……」
「そこからは私が説明するよー!」
楯無が何かを言う前に、天井の一部が開いて、そこから束が降りてきた。紺を基調としたスーツに白衣を身に纏い、頭にはいつものウサ耳を付けている姿は非常にシュールだ。
「はぁ……まぁいい、束、説明しろ」
「ほいほ~い! このKという少女は生まれてまだ2~3年って所みたいだよ~!」
「2~3年? しかし博士、この少女は見た目で言えば5~6歳ほど」
轡木の疑問に対して、束は一つのモニターを表示して見せる。
「見ての通り、この子の遺伝子は若干だけど負荷が掛けられた痕跡があるんだよ。恐らくだけど強引に成長を早めたんだろうねぇ」
「成長を早めるって、そんなこと可能なんですか?」
「おやおや? 暗部の更識でもそこまで掴んでいないんだ? なら説明しよう!」
どこから取り出したのか、束はホワイトボードにマジックペンで細胞らしき絵と、人間の赤子の絵、それから幼子の絵など様々な絵を描いていった。
「じゃあまず、どうやって成長を早めたのかという疑問だけど……まず、外部からヘイフリック限界を操作して、細胞死の促進をしたんだね。それによって新生細胞を活性化して、尚且つテロメアの強制リライトで成長促進を何度も繰り返せば1年くらいで赤子を小学生くらいまで成長させる事が可能なんだ。それを更に2~3年繰り返せば理論上では成人くらいまで成長させられるけど、それは流石に技術的に無理。ただでさえ強制成長促進技術だから、下手したら細胞が耐え切れず崩壊する可能性もあるから、たぶんこの子もそれが理由でこのくらいの成長で自然成長に切り替えたんだろうねぇ」
技術上の限界年齢まで成長させるのはデメリットが大きいので、その手前で強制成長から自然成長へと切り替えたという事だ。
「たぶん、あの子……生まれて1年くらいで今言った操作を受けたんじゃないかな? 流石に新生児には厳しい技術だし、生まれてから1年くらい経てば行使しても問題が少ないから」
倫理上の問題は別にして、と束が呟いた。それにはこの場の全員が同意する。
「あ、因みにだけど、束さん単体でクローンを作らなかったのは、多分だけど私の細胞があまりにオーバースペック過ぎて唯でさえ難しいヒトクローン作成で、完璧なクローニングが出来なかったからなんだと思うよ」
そこで考えたのが、女である束の細胞に男の細胞を加える事で、擬似的な人工授精のようなクローニングを行う事なのだろう。
だが、普通の男では束のオーバースペックな細胞に負けてしまうのは明白、ならばと目を付けられたのが、束と同等クラスの身体能力を持つブリュンヒルデ、その弟である一夏の細胞なのだ。
「私の細胞は実家に行けば手に入るし、いっくんの細胞は第2回モンド・グロッソの時いっくんが誘拐された時に入手した物かな」
束の細胞に関しては実家だけではなく、過去に何度か占拠された事のある隠れ家がいくつかあるので、そこで入手した可能性もありえる。
とにかく、そうして手に入れた束と一夏の細胞を使ってクローニングされたのが、あのKという少女なのだ。
「今後、彼女の身柄はどうするのですか?」
轡木の問いに返って来た意見は、日本政府もしくはIS委員会への引渡し、もしくは学園内での保護だ。
「引渡しはやめた方が良いかなぁ。何せ半分とはいえ、この天災束さんのクローンでもあるんだから、確実に人体実験に使われるか、量産の研究に使われると思うよ」
「ならば、学園での保護か……だが、誰が世話をする?」
「あ、織斑先生……それでしたら一夏君と百合子ちゃんにお世話させてはどうでしょう?」
「何?」
「実は、あの子が運び込まれてからずっと、二人が看病しているんです」
命を狙われたのにも関わらず、その命を狙ってきた相手の看病をするというのは、随分と肝が据わっているのか、それともただの鈍感なのか……恐らく両方だろう。
所変わってIS学園の医務室、そのベッドの上にはKが眠っていて、そのベッドサイドでは一夏と百合子が椅子に座って眠っている少女の寝顔を見つめていた。
「束さんから、聞いたんだ……」
「ん……?」
「この子、俺と束さんの遺伝子を組み合わせた合成クローンなんだとさ」
「クローン……」
「ああ、確かにクローンだって言われれば俺や束さんに似ているのにも納得出来るよな」
Kの寝顔を見ていると、なるほど一夏や束に似通っている点が多々見受けられる。黒い髪は一夏譲りだろうか、垂れ目なのは束だろう、それ以外にも口元や輪郭、色々な所が二人に似ていた。
「どうなるのかな……この子」
「多分、
千冬が考えているプランとして聞いたのは二通り。一つは尋問後に国際IS委員会へと身柄を預けるというもの、もう一つはIS学園内で保護するというものだ。
「正直、IS委員会に預けるのは、反対だな」
「良くて委員会で教育を受けて直属のIS操縦者として使われるか、最悪は人体実験?」
「ああ、何せこの子は世界で二人しか居ない男性IS操縦者の片割れと、天災・篠ノ之束の遺伝子を持っているんだからな」
IS委員会や各国政府の人間にとって、これほど上質な実験材料は中々無いだろう。織斑一夏と篠ノ之束の遺伝子を持つクローンなど、研究材料として特級の価値を持つのだから。
「この子はさ……眠りながら無意識に『パパ』って呟いたんだ」
「クローン故に、親の愛情を知らない?」
「温もりもな……だから、俺が抱き上げた時に無意識に求めたんじゃないかな、親ってのを」
クローンとはいえ、一夏の遺伝子を半分受け継いだという時点でクローンというよりは娘に近い存在だ。
ならば、この先どうするのか、そんなものKを抱き上げた時から、パパと呟く少女の寝顔を見た時から、一夏の中では既に決まっている。
「俺が、この子の面倒を見ようと思うんだ……出来れば、父親役として」
「そう……なら、私は母親役だね」
まるで和人と明日奈、そしてその娘であるユイみたいだと笑い合う。
いつの間にか、Kの小さな手を下から一夏が、上から百合子がそっと握り締めていて、眠り続けている少女が無意識に握り返していたのに、気がついた。
「名前、考えないとな」
「うん」
「守るべきものが、増えたよ」
「私も、同じ」
少女が目を覚ましたら、きっと最初警戒されるだろう。だから、父親として、母親として、目一杯の愛情を与えよう、沢山の事を教えて、
「きっと、この子はこれから|亡国機業にすら狙われるだろうな……俺は、もっと強くならないといけない」
「
「ああ、キリトさんとアスナさんが、負けこそしなかったけど、大怪我を負ったらしいからな。今の俺じゃ、奴等に勝てないかもしれない」
臨海学校の時は
「でも、守るものがある白の剣士に、負けは無い……どんな相手だろうと、どんな不可能な状況だろうと、守るべきものを背にした白の剣士はいつだって不可能を可能にしてきた」
「その通りだ……だから、その不可能を可能にする為に、俺はもっと強くなるよ」
愛する恋人と、そして今この手に握り締める小さな手を、守る為に。一夏は更なるレベルアップを決意するのだった。
Kの正体、ついに判明。
彼女が後の夏奈子です。