SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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ついに、あの男が動きます。


第八十三話 「亡国の破壊神」

SAO帰還者のIS

 

第八十三話

「亡国の破壊神」

 

 攻め込んできたのはMだけではなかった。笑う棺桶(ラフィン・コフィン)こそ来ていないようだが、M以外にも無人機らしき各国の量産型ISが来ている。

 専用機持ち全員が無人機を迎撃する為に武器を構える中、一夏は真っ直ぐMへ向かって行った。

 キャノンボール・ファストの為の設定をした為にソードスキルを封印してしまっているので、ソードスキルこそ使えないが、その分のエネルギーをスラスター類に回しているから速度は今までの比ではない。

 超高速機動で動く白式・聖月の動きを捉えられる者など、それこそモンド・グロッソ上位の者や千冬、束くらいだろう。

 

「チィッ! ちょこまかと!!」

「甘いんだよ!!」

 

 青い余剰エネルギーを放出して動く白式は幻想的で、残像まで残しているから余計にBT兵器で捉えられない。

 偏向射撃(フレキシブル)を使った所でそれは同じで、接近してきた一夏にナイフで迎え撃っても、そもそも近接戦闘ではMは一夏に圧倒的に劣る。

 

「くっ!?」

「剣の腕はあるみたいだが、荒削りだな!」

「っ!」

 

 一夏の目から見て、Mの剣は荒削りもいいところだった。何故かは知らないが千冬の太刀筋を真似ているようだが、本格的な剣術を学んだ事が無いのだろう、完全に猿真似にしかなっていない。

 ただ、その猿真似でも実践で磨き上げているから何とか形になっているのだが、そんな荒削りの刃では一夏には届かないのだ。

 

「援護しますわ!」

「セシリア!」

 

 メイルシュトロームを破壊したセシリアが一夏の援護に入った。これで2対1、確実にMに勝ち目は無い状況になった。

 流石にMも状況の悪さに焦りを見せ始めたのだが、そんなMに一夏が瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一気に距離を詰めようとしたその時だった。

 

「ぶぅるぁあああああああああ!!!!」

「っ!? がぁああああっ!!!」

「一夏さん!!?」

 

 突如、一夏の真上から何者かが落下してきて、その勢いのまま一夏を叩き落してしまった。

 

「何者ですの!?」

「ふぅういぃ……おじさんかぁ? おじさんは亡国機業(ファントム・タスク)首領のスカイってんだ」

「首領……ですって!?」

 

 現れたのは、漆黒の装甲に包まれ、所々に黄金の装飾が施された悪魔的なフォルムのISに乗る初老の男だった。

 その男……スカイは両手に銃剣らしき武装を握り、くるくると回しながらタバコを加えてサングラス越しにセシリアではなく、落とした一夏を見下ろしている。

 

「どうしたぃ? テメェはそんなもんかぁ?」

「ぐっ……突然、降って来て……何を言っているんだか」

 

 何とか持ち直してセシリアの横に浮かび上がってきた一夏だが、今の一撃で随分とシールドエネルギーを消失し、装甲も所々が罅割れてしまっている。

 

「マドっち、おじさんが織斑一夏とやっからよ? マドっちはあっちのお嬢ちゃんとダンスしてな」

「……わかった」

 

 Mがセシリアに突っ込み、そのまま一夏達から引き離してしまった。残された一夏とスカイは、互いに剣と銃剣を構えてにらみ合っている。

 

「改めて自己紹介しようかぁ? おじさんはスカイ、亡国機業(ファントム・タスク)の首領やってる。この機体は先日完成したばかりのおじさん専用機で、トーデストリープってんだ」

「随分と、お喋りだな」

「ガキ相手すんだ、大人のおじさんが出来るせめてもの情けさぁ……殺す前のな」

「っ!」

 

 気がついた時には、目の前にスカイが迫っていた。

 慌ててリベレイターⅡで防御しようと銃剣を受け止めたのだが、スカイは構わず刃がリベレイターⅡに受け止められたまま引き金を引く。

 

「エェイメェン!!!」

「ぐっ!?」

「ぶるぁああああああ!!!!」

「がはっ!?」

 

 銃口から放たれた銃弾がリベレイターⅡの表面に当たった瞬間、物凄い衝撃が走り、それに怯んだ隙に脇腹へ回し蹴りを入れられてしまった。

 大きく吹き飛ばされた一夏を追ってスカイは更に銃剣の刃を一閃するが、今度は一夏も反応してトワイライトフィニッシャーで弾き、もう一撃をリベレイターⅡで受け流してタックルを入れる。

 

「ぬぅっ!?」

「せぁ!!」

 

 タックルを入れた瞬間にトワイライトフィニッシャーとリベレイターⅡを格納し、スカイの腕を掴んで背負い投げをする。

 

「ぬぉおおおおお!!」

「バレット!!」

 

 真下に投げ飛ばしたスカイにファイヤーバレットの銃口を向けて引き金を引いた。

 ISサイズの対物ライフルの銃弾は真っ直ぐスカイに向かうが、流石に一夏に銃の才能は無かった様で、トーデストリープの左の非固定浮遊部位(アンロックユニット)を貫通して爆破するに留まる。

 

「やるじゃねぇか! ならこれならどうだぁ!!」

 

 銃剣を格納したスカイは一振りの斧を取り出した。巨大な大小両刃の刃に中央の紫色の宝玉が特徴的な凶暴なフォルムは、一振りで万物を薙ぎ払わんとする印象を受ける形をしている。

 

「こいつを取り出したからには、テメェは死ぬ! おじさんを本気にさせた事を後悔しながら死ねぇい!!!」

 

 片方のスラスターが使えなくなったというのに、それでも相当な速度でトーデストリープを動かしたスカイは一気に一夏に肉薄する。

 一夏はファイヤーバレットを格納してトワイライトフィニッシャーとブレイブハートの二刀流で迎え撃とうとしたのだが。

 

「今死ね! 直ぐ死ね!! 骨まで砕けろぉい!!!」

「っ!!」

「ジェノサイド!!! ぶるぁあああああああああああ!!!!!!」

「グゥッ!? ああああああああっ!!!」

 

 剣をクロスして受け止めたが、そのあまりの重さに両腕の筋肉が悲鳴を上げる。前身の展開装甲とブースターを最大出力で吹かして押し返そうとするのだが、それでも力負けしてしまっていた。

 

「っ!?」

 

 その時だった。これまで、一夏を支えてきたトワイライトフィニッシャーと、そして新たな刃として一夏とともに歩く事になるであろう筈のブレイブハートの刃に、罅が入ったのだ。

 そのままスカイの斧の刃が食い込み、甲高い音と共に剣が両方とも半ばから折れてしまった。

 

「カハッ!?」

 

 袈裟から斧が叩き込まれ、地面に叩き付けられた一夏にトドメを刺そうとスカイは右手を向けた。次の瞬間、トーデストリープの右腕は巨大な砲身となり、膨大なエネルギーが収束する。

 

「ボルメテウス!! 発射ぁあああああ!!!!!」

 

 収束型超高エネルギー速射砲ボルメテウス、トーデストリープ最大最強の武装であり、その一撃は一夏の意識を刈り取り、白式を完全大破させてしまった。

 

「ふん、んじゃあ白式を回収して……っとぉ!?」

「はぁああああ!!!」

 

 スカイが白式を回収しようとしたとき、背後から斬り掛かってくる存在に気づいて回避した。

 そこには、暮桜を纏った千冬が雪片を構えて鋭い目付きでスカイを睨み付けている。大切な弟を落とした男に対する憎しみに染まった瞳で。

 

「ふぅん、ブリュンヒルデか……」

「貴様……よくも一夏を!」

「……あ~あ、なんか白けちゃったなぁ。おめぇさんは殺す価値も無ぇし、回収するのも面倒になっちまったなぁあ……帰るか」

「逃げられると思っているのか?」

「ふん! てめぇみてぇな雑魚が、おじさんを止められるとでも思ってるのか? 小娘が」

 

 小娘、そう呼ばれたとき、千冬の脳裏には一瞬で己が殺される光景が過ぎった。雪片を握る手がガタガタと震え、悪寒で背筋が冷え込む。

 

「ふん、殺し合いもした事が無ぇような小便臭ぇ生娘にゃあ用は無ぇんだよ。殺しの処女(ヴァージン)捨ててから出直して来い」

 

 そう言い捨てて、スカイはセシリアと戦っていたMと、残存する無人機を引き連れて去って行った。

 直ぐ様、千冬は医療班を手配して一夏を集中治療室へ搬送するよう指示を出すと、束をこの場に呼び、その間に一夏の所へ向かう。

 既に和人達が一夏の周りに集まっており、百合子が一夏に縋り付いて泣いていた。

 

「織斑先生……」

「桐ヶ谷か……遅くなってすまんな」

「いえ……」

 

 見れば、簪が白式のチェックを行っており、ダメージレベルがどの程度なのか簡易的にだが計測している。

 千冬は今にも百合子同様一夏に縋り付きたいのを我慢して簪に歩み寄ると、チェックの結果を尋ねた。

 

「ダメージレベルF……修復不可能レベルです」

「そんなに、か……」

「コアは、無事でした……でも、機体はもう」

 

 一から作り直した方が良いというレベルだという話だ。

 

「……最悪の状況だな」

 

 キャノンボール・ファスト。そして一夏の誕生日であるこの日、一夏が落とされ、白式が修理不能レベルで大破してしまった。

 この事態は、今後のIS学園での行事に大きな影響を及ぼす事になるのは、間違い無いだろう。

 




トーデストリープの詳細は機体設定に載せますね。
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