SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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お待たせしました。
今回から専用機持ち限定タッグマッチトーナメント編です。


専用機持ち限定タッグマッチトーナメント編
第八十六話 「百合子と箒」


SAO帰還者のIS

 

第八十六話

「百合子と箒」

 

 この日、講堂に集められたIS学園全校生徒達の前で生徒会長の楯無がとある宣言をした。それは、今年に入ってからイベント事の度にトラブル続きの中止続きになっている事への挽回イベントとして提案されたものだった。

 

「というわけで、全学年合同専用機持ち限定タッグマッチトーナメントを開催します!」

 

 楯無が提案したのは1年生から3年生まで、全ての専用機持ちが学年の枠を超えてタッグを組み、トーナメントで戦うというものだ。

 勿論、試合に出る専用機持ち以外の一般生徒が楽しめるよう、優勝ペアを予想して見事に的中した生徒には食堂の食券半年分をプレゼントするというギャンブルめいたイベントも用意している辺り、隙の無いイベントだと言えるろう。

 

「このトーナメントで、少しでも落ち込んだ学園イベントのイメージが良くなる事を祈ってるわ」

 

 今年のIS学園のイベントは殆どが中止を余儀なくされているか、トラブルが起こってばかりで、生徒や各国の来賓からも不評が出ているのだ。

 それを、今回のトーナメントで少しでも回復出来たらと、楯無は生徒会長として、学園の長として学園長と協議して、今回のイベントを企画した。

 これで、本当に何も起こらなければ良いのだが……。

 

 

 専用機持ち限定タッグマッチトーナメント開催が決定してから、各学年の専用機持ち達はパートナーを誰にするかある程度決めていた。

 2年のフォルテ・サファイアは3年のダリル・ケイシーと組む事になっており、楯無は妹の簪と組む。残りのペアはセシリアが鈴音と組む事が決まっており、そして意外だったのは……。

 

「私と……?」

「ああ、宍戸……私と、ペアになって欲しい」

 

 あの箒が、百合子にペアを組んで欲しいと頭を下げてきたのだ。最初こそ、何事かと思っていたのだが、真剣そうな箒の表情を見ていて百合子は何故明日奈や和人ではなく自分なのかを問うた。

 

「……一夏に出された宿題の答えが、やっと見つかるかもしれない。そして、その答えは宍戸と組む事で完全に得られると思った」

「そう……ん、いいよ」

「そ、そうか! 感謝する」

 

 これにて、残るペアは箒と百合子ペア、和人と明日奈ペアに決まった。残念ながら合宿に出発しているシャルロットと白式を失った一夏は参加不可能なので、これで全ての参加者がペアを決めたことになる。

 百合子は早速だがペアとなった箒と共に訓練をするため、第一アリーナに来ていた。そこで槍陣と紅椿を展開した二人は現状の実力を図る為に、模擬戦をする事に。

 

「こうして、あなたと模擬戦するのは、あの時以来……」

「そうだな……あの時の私は無様を晒していた。だが、今回はあれから成長した私がお前にどこまで戦えるのかを試したい」

「ん、勝負」

 

 ルー・セタンタを構えた百合子に雨月と空裂を構えた箒が斬り掛かって来た。百合子は冷静に後退しながら避けようとしたのだが、空裂の刀身がレーザーを帯びている事に気づいて後退しながらルー・セタンタを自身の前で回転させる。

 空裂から放たれたレーザーの刃は回転するルー・セタンタによって掻き消されたが、箒が既に動いていた。

 

「っ!」

「はぁっ!!」

 

 雨月で突きを放ちながら拡散レーザーが発射されてルー・セタンタで数発は霧散させられたものの、3発のレーザーが直撃してしまった。

 更に後に続いた雨月の突刺を避けた百合子は反撃とばかりにルー・セタンタの石突で箒の下顎を突き上げる。

 

「ガッ!?」

「……まだ」

 

 ルー・セタンタがライトエフェクトを纏った。脳を揺さぶられ一瞬だけ意識が飛んでいた箒は即座に距離を取ろうとしたのだが、本当に数瞬だけだが身動きすら出来なかった。その数瞬が命取りで、何とか距離を取り始めた箒にルー・セタンタの穂先が迫る。

 高速の突刺が4発、紅椿の四肢を穿つ。槍のソードスキル、ヴェント・フォースによる高速4連撃は紅椿のシールドエネルギーを大幅に奪い去ったものの、箒とてそれで負けはしていない。

 

「はぁあああああ!!!」

「っ!? その構え……!」

 

 ライトエフェクトこそ無かったが、雨月を格納して空裂だけを構えた箒が百合子の上半身と下半身に横薙ぎの斬撃を放ち、最後に脳天からの振り下ろしを行った。

 それは、SAOを知る者とALOプレイヤーならばよく知っている刀のソードスキルの一つ、パワー重視の3連撃である羅刹だ。

 

「ぐっ……うぅ」

「今のは、師匠から初めて筋が良いと褒められたソードスキルだ」

「クラインさんから……なるほど」

 

 クラインの弟子としてALOで鍛えている箒が、刀スキルを現実で再現出来るまで動きを反復していない訳が無い。

 クラインはあれで、ソードスキルについての指導は中々に厳しいらしいのだ。箒もクラインの弟子になってからは随分と成長している。

 

「でも、ソードスキルの扱いは私に一日の長がある」

「っ!?」

 

 ルー・セタンタがライトエフェクトを纏ったのを見て、箒はすかさず斬り掛かったのだが、それは百合子の軽やかなステップによって避けられてしまう。

 まるで舞いでも踊っているかのうような華麗な動きをしながら、高速の突刺を5発、槍の上位ソードスキルであるダンシング・スピアが箒の手から空裂を弾き飛ばし、全身に突き刺さった。

 

「まだだぁ!!」

「え……っ!」

 

 終わらないと、終わらせないとばかりに雨月を展開した箒が刃を振り下ろしてきたので、何とか展開したヴェガルダ・ボウで受け止めるが、短槍では受け止め切れず、弾き飛ばされた。

 振り下ろされた雨月の刃を肩で受け止めた百合子はダメージを受けたのもお構いなしに雨月を握る箒の腕を取って背負い投げの要領で真下へ投げる。

 同時に、ルー・セタンタをライトエフェクトによって輝かせながら投擲の構えを取った。

 

「不味いっ!?」

 

 今から回避行動を取ろうとしても、直撃こそ避けられるだろうが、ダメージは否めない。このままでは百合子のオリジナルソードスキルであるクレーティネの大ダメージを受けてしまう。

 そう思って何とか回避しようと少しでもダメージを減らせる方法は無いかと模索した時だった。

 

【Limiter removal】

「っ!?」

 

 突如、紅椿の出力が上がった。ウインドウに表示された【Limiter removal】の文字と共に閂の絵が一つ、開錠されたのを見るに、紅椿に掛かっていたリミッターの一つが解除されたのだと悟った。

 

「いっけぇええええええ!!!」

 

 全力で出力の上がったブースターを吹かすと、投擲されたルー・セタンタを何とか完全回避する事に成功したが、地面にルー・セタンタが突き刺さった瞬間に大爆発を起こした地面から吹き上がってきた噴煙と爆風に箒は流されてしまう。

 

「……へぇ」

 

 まさか、今のタイミングでクレーティネを避けられるとは思っていなかった百合子は驚きはしたものの、箒の成長を確実に感じ取れて感心していた。

 言い方は悪いが、入学当時は取るに足らない存在だった箒が、ここまで成長を遂げ、切り札をギリギリではあるが回避出来るまでに成長したのだと思うと、最早油断など出来ない。手加減すら、していられない。

 

「これを貴女に使うことになるとは、思わなかった」

 

 百合子が地上に降り立つのと同時に、その周囲に多くのヴェガルダ・ボウが突き刺さった。それは、百合子が己の真の切り札である無限槍を使うという合図に他ならない。

 

「改めて、貴女には名乗らなければ失礼かな……私は織斑一夏の恋人、宍戸百合子。そして……白の剣士ナツの妻、無限槍のユリコ!!」

 

 煙が晴れて箒の姿が見えた瞬間、百合子は手元にルー・セタンタをクイックチェンジにて回収して周囲のヴェガルダ・ボウを上空に跳ね上げた後に自身も飛び上がった。

 

「インフィニティ……モーメント!!!!」

 

 次の瞬間、煙が晴れた事で視界が明瞭になった箒の目に飛び込んできたのは、上空からライトエフェクトを纏いながら降り注ぐ、無限とも思える程の大量の槍の穂先だった。

 

 

 模擬戦が終わった後、紅椿と槍陣を修理していた箒と百合子はお互いに無言だった。何も話す事が無い、のではなく……ただ単純にインフィニティ・モーメントによってトラウマを刻まれた箒が百合子に怯えているのが原因なのだが。

 

「あの、ごめんね?」

「お、怯えてないぞ!?」

「……」

「うぅ……な、何なのだ、あのスキルは……空を見たら絶望とか、ありえん」

「そ、そういうスキルだから」

 

 そういえば、一夏もインフィニティ・モーメントにはトラウマを持っている事を思い出して百合子は冷や汗をかいた。

 まさか、あの無限槍の最上位ソードスキルは人に使うには危険過ぎるのではないかと、今更ながら思ってしまったのだ。

 

「でも、篠ノ之さんも強くなった……リミッター、一つ外れたね」

「ああ、やっと今の私が認められた気がする……でも、まだリミッターは残っているな」

「ん……でも、この調子で成長したらきっと全部外れる日も近い」

「そう、かな」

「きっとそう」

 

 だからこそ、今の箒ならば百合子はパートナーとして申し分ないと思った。

 

「な、なんだ?」

「これからよろしく、パートナーさん」

 

 握手をしようと百合子が手を差し出したのを見て、箒は困惑よりも先に何とも言い知れぬ感覚を覚える。

 最初は、一夏の事で憎悪の感情を向けていて、臨海学校以来は憎悪ではなくなったものの、それでも恋敵として嫉妬こそしていた相手だが、それと同時にALOプレイヤーとしても、女としても、あの一夏の隣に並び立つ姿に憧れを抱いていた。

 そんな相手に、こうして握手を求められて、戸惑ってしまった箒だが、一度だけ深呼吸をした後、真っ直ぐ百合子と視線を合わせて差し出された手を握る。

 

「ああ、足を引っ張るかもしれないが……よろしく頼む」

 

 手を取り合う二人の少女が、互いにパートナーとして認め合った瞬間だった。

 そして、その後ろでは自動修理中の紅椿が二人には見えない角度でウインドウを表示させていたのだが、それに気づく者は誰も居ない。

 

【Limiter removal】




~合宿中のシャルロットちゃん~

教官「良いか!! 貴様らは人間ではない! 今の貴様らは蛆虫以下のクソ虫共だ!! 俺の仕事は、この合宿で貴様らクソ虫を一端の兵隊に鍛えぬく事だ!! どうだ! 嬉しいか!!!」

候補生達「さ、さー・いえっさー」

教官「声が小さいぞ!! 男のモノを咥えるように大きな口を開けクソ虫共がぁ!!」

候補生達「Sir! Yes Sir!!」

教官「ふん、ではこれから合宿生活はこの無人島でサバイバル生活をしてもらう! いいか! 逃げたい奴は今の内だ!! この合宿は根性の無い奴に用は無い!! そして、生き残れなかった奴にも用は無い!!」

候補生達「Sir! Yes Sir!!」

シャルロット(ひ、ヒェ~!? な、何なのこの合宿は~!?)

頑張れシャルロット! 君の冒険はこれからだ!!

教官「そこのフランス人!! ちんたらケツ振って走るな!!! 俺を誘っているのか!!!!」

シャルロット「ひぇ~ん! 誰か助けてー!!」
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