SAO帰還者のIS
第八十九話
「第一試合と第二試合」
ついにタッグマッチトーナメント当日を迎えた。既に朝から全校生徒の寮の部屋にトーナメント表が配られているらしく、全員がそれを見て優勝チームを予想していた。
学園最強である楯無と簪の姉妹ペアはシード扱いされているらしく、残る四組で試合をする事になるのだが、その組み合わせというのが、第一試合で和人・明日奈ペアVS鈴音・セシリアペア、第二試合が百合子・箒ペアVSダリル・フォルテペアの試合だ。
試合は第一試合を第一アリーナで、第二試合を第二アリーナで同時に行う事になっている。
「セシリアとは戦った事があるけど、鈴とは初めてだったな」
「わたしは両方とも初めてだねー」
「あれから進化したわたくしとティアーズの力、特とご覧頂きますわ」
「アタシだって、簡単に負けるつもりは無いわよ」
ここ、第一アリーナでは既にアリーナに四人が出てきて向かい合っていた。方やアインクラッドにおいて最強のペアと謡われた黒の剣士こと桐ヶ谷和人と、閃光のアスナこと結城明日奈。
対するはISに関わって僅か一年で中国代表候補生に上り詰めた才能溢れる鳳鈴音と、イギリス代表候補生にして、その弛まぬ努力の末に専用機の
「俺もアスナも、最初から本気で行く」
「二刀流と閃光、わたし達に追い付いてきてね」
すると、和人と明日奈が展開した剣は、いつものエリュシデータとダークリパルサー、ランベントライトではなかった。
和人が両手に握るのはユナイティウォークスとフェイトリレイター、明日奈が右手に握るのはレイグレイス、二人がALOでメインウェポンとしている片手剣と細剣だ。
「アタシだって、今日まで遊んできた訳じゃないわ」
「わたくしの銃が、剣が、お二人にどれ程届くのか、どれ程追い付けたのか、ご覧に入れますわ!」
双天牙月を構えた鈴音とスターライトMk-Ⅲの銃口を二人に向けたセシリアは、実力が圧倒的に上の二人を前にして臆することなく真っ直ぐな戦意を向けている。
第一アリーナの試合は、もう間もなく始まろうとしていた。
第二アリーナでは今まで考えられなかった百合子と箒という異色のペアがそれぞれの専用機を纏ってアリーナに飛び出してきた。
そして、それに相対するように、既にアリーナにて待機していた二人の少女の姿がある。このIS学園においてペアを組ませれば最強とも謡われる通称『無敵の防壁“イージス”』と呼ばれている二人、二年生のギリシャ代表候補生フォルテ・サファイアと、三年のアメリカ代表候補生ダリル・ケイシーだ。
フォルテの専用機であるコールド・ブラッドは装甲が少ない代わりに氷の結晶をあしらったかのような大型シールドが左右に展開されているギリシャの第3世代型機。
そしてダリルの機体はアメリカのファング・クェイクと
「お、来たな一年小娘二人」
「ようこそっス、私とダリル先輩のお相手は噂の第4世代と男子の片割れの恋人っスか」
既にダリルは双刃剣、パドル・ブレードと呼ばれる風変わりの剣、
フォルテもまた、その周囲を冷気で覆い、いつでも氷を精製出来るようにスタンバイしているので、二人とも試合が始まる前から既に戦う準備を整えていた。
「あの顔、随分と舐められているようだ」
「……そう」
箒がダリルとフォルテの余裕綽々といった表情を見て、随分と舐められていると断じた。そして、それは正解で、百合子にとっては付け入る絶好の隙に他ならない。
「先輩方……」
「あん?」
「なんっスか?」
「……5分です」
そう言って、百合子はルー・セタンタ……ではなく、別の蒼い槍を展開した。それはALOにて百合子がメインウェポンとして使用している長槍パラディン・スピーアだ。
「5分で、私達が勝ちます」
「へぇ……随分と思い上がりが過ぎるんでねぇの? ゲームオタクの小娘」
「私らに舐めた口を利く一年は初めてっスね」
「お、おい宍戸……!」
「……弱い犬ほど良く吼える。その肩のワンちゃん、よくお似合いですね」
「……ぶっ潰す!!」
ダリルのターゲットが完全に百合子に固定された。挑発に乗せられたダリルに、ペアであるフォルテは呆れつつも、自分に向けて刀の刃を構える箒に笑みを浮かべる。
「私の相方は専用機同様に熱い人間っスから、まぁしゃあないっス」
「先輩は、違うと?」
「私はどっちかって言うと、氷タイプっス」
「クールには見えませんが」
「冷静って言って欲しかったっス」
相手は代表候補生を少なくとも2年は勤めているであろうベテラン、今の箒がどこまで通用するのかはわからないが、それでも無様な戦いをするつもりはない。
今の箒には、箒が握る刀には、篠ノ之流の剣だけではない、クラインに教わったソードスキルの教えも込められているのだ。故に、師である父とクラインの顔に泥を塗るような真似だけは、しないと心に誓った。
「いくぞ一年小娘ぇ!!」
「……勝負」
「いくっスよ!」
「篠ノ之流アインクラッド剣技……篠ノ之 箒、参る!!」
かくして、一回戦、第一試合と第二試合が始まった。一回戦から、怒涛の組み合わせに観客達のテンションも沸き上がり、そしてそれは……水を差す者達にとって絶好のチャンスとなる。
第一アリーナでの試合は、開始早々に激しいぶつかり合いとなっていた。
鈴音の双天牙月と和人のフェイトリレイター及びユナイティウォークスがぶつかり、甲高い金属音と共に火花を散らす。
そして、和人の背後から飛び出した明日奈がレイグレイスで和人の頭上を払えば、その先にあったディープブルーから放たれたレーザーを斬り裂き、一気にセシリアへと距離を詰めるも四方八方から
「……っ! ここ!!」
だが、明日奈にはそんな大量のレーザーも役には立たなかった。何故なら明日奈はレーザー全てを偏向軌道すら読み切って持ち前の瞬発力を活かし回避してしまったのだから。
勿論、いくら明日奈でも全てを回避するのは不可能なので、何発かは掠ったものもあるが、大半は回避したか、もしくはレイグレイスで切り払っている。
「せぇあああっ!!」
「くっ! インターセプター!!」
急接近してきてレイグレイスによる突刺を放ってきた明日奈に対してセシリアもスターライトMk-Ⅲを格納、インターセプターを展開して迎え撃つ。
「スイッチ!」
「ま、まさか!? 鈴さん!」
「駄目! 追いつけない!!」
「アスナ!」
「了解!」
明日奈がスイッチする事で、鈴音を振り切って明日奈の背後からセシリアに突っ込んで来た和人と選手交代、今度は和人を追い掛けて来た鈴音と激突した。
和人と明日奈の作戦はこうだ。まず明日奈がセシリアと、和人が鈴音と戦う状況を作り出し、和人が鈴音を抑えている間にセシリアの武器をライフルからインターセプターに持ち替えさせて近接戦闘に切り替えさせる。
そして上手くセシリアが近接戦闘に切り替わった瞬間に明日奈がスイッチして和人がセシリアと、明日奈が鈴音と戦う状況に交代するというものだ。
セシリアの短剣だけでは和人の二刀流を捌ききるのは至難の業、鈴音のパワー戦闘では明日奈の速度を捉えきるのは不可能に近い、そんな状況を見事に作り上げた和人と明日奈のペアは、正しく最強ペアの称号を持つに相応しいだろう。
第二アリーナの試合は方や文字通り炎と風の如きぶつかり合い、方や氷と炎の如きぶつかり合いの試合となっていた。
ダリルと戦うのは百合子、フォルテと戦うのは箒が勤め、ダリルと百合子は互角に見える試合運びをしているが、箒はフォルテ相手に苦戦を強いられている。
「オラオラオラオラァ!! どうした一年小娘! 5分でオレ達を倒すんだろぉ!? 残り2分だぜぇ!!」
「……」
ダリルの炎を纏った
それ以外にもダリルの両肩にあるハウンドヘッドから発生した炎がそのまま百合子に襲い掛かるものの、それは百合子が槍を回転させる事で盾とし、自身に向かってくる炎をかき消していた。
「はっ! 埒が開かねぇな!! 一年小娘! テメェいつまで手の内隠してるつもりだ!? 噂に聞く大量の槍を使ってみろよ!!」
「……図に乗らないでください。確かに強いですが、あなた如きに、無限槍を使う必要は、無い」
「んだと……?」
「だって……未だに気づいてないのに互角のつもりだなんて」
すると、突如ヘル・ハウンドVer2,5のハウンドヘッドが爆発したのだ。
「な、にぃ!?」
ダリルが慌ててチェックすると、ヘッドの口部分、つまり炎を出す為の開口部に異物が入り込んでいたことが判明した。
百合子の方を見れば、パラディン・スピーアを握る右手とは逆、つまり左手に小さなピック……投剣を持ってクルクル回しながら遊んでいたのだ。
「じゃあ、そろそろかな」
百合子がフォルテと戦っている箒に目を向ければ、箒も百合子と目を合わせて小さく頷いた。
「っ!」
「なっ速い、だと!?」
投げ飛ばされたダリルは慌てて体制を整えようとしたのだが、丁度その真上を箒が通過して、何事かと考えるよりも先に何かと激突した衝撃によって思考を停止させてしまう。
「あいたたたた……って、ダリル先輩っスか」
「フォルテ、お前何してんだよ!」
「いやぁ、篠ノ之追い掛けてたらダリル先輩に気づかずにぶつかったっス」
「いや、それより!」
この状況は不味いと思ったダリルが動こうとしたのだが、もう遅い。既に二人の上空ではパラディン・スピーアをライトエフェクトで輝かせながら投擲の構えを取る百合子と、両手の刀にレーザーを纏わせて、いつでも発射可能な状態にしている箒が、その照準をダリルとフォルテに合わせていたのだから。
「フォルテ! アレやるぞ!!」
「ええ!? こんな観衆の前でっスか!? ハズいっス……」
「んな事、言ってる場合かぁ! いいからやるぞ!!」
百合子のオリジナルソードスキル、クレーティネによる超強力な投擲槍と、箒の二刀からのレーザーが放たれたのと同時に、ダリルはフォルテを抱き寄せて、その唇に己の唇を重ねた。
「いくぞ……
次の瞬間、炎を内包する氷のアーマーに包まれた二人に、投擲されたパラディン・スピーアとレーザーが襲い掛かるのだった。
~合宿中のシャルロットちゃん~
教官「今日で合宿も終了だ。いいか! 今日この時をもって貴様らは糞虫を卒業する!! 貴様らはラガーウーマンだ!!」
全員(シャル含む)「Sir yes sir!!」
教官「貴様らは、これから日本国が誇る代表候補生として、常に自分と、そして周りという最大の敵と戦う!! 全てを得るか、地獄に落ちるか、その瀬戸際だ!! どうだ、楽しいか!!」
全員(シャル含む)「Sir yes sir!!」
教官「良い面構えだ……ならば問おう! 貴様らの特技は何だ!!」
全員(シャル含む)「殺せ! 殺せ!! 殺せ!!!」
教官「代表候補生になった後の目標は何だ!!!」
全員(シャル含む)「殺せ! 殺せ!! 殺せ!!!」
教官「俺達は日本を愛しているか!! ISを愛しているかぁ!!!!」
全員(シャル含む)「ガンホー! ガンホー!! ガンホー!!!」
教官「よし、これを持って、貴様らは日本代表候補生だ!! 合宿終了!!!」
全員(シャル含む)「うぉおおおおおおおおおお!!!!!」