魔法少女リリカルなのは 『やがみけ!! とあるシスコンの話』   作:Arc.

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此処までが別サイトで執筆していた分です。
続きはこちらで執筆させていただきます。改めて、よろしくお願いします。


新しい日々の始まり

 おはようございました。失敬、おはようございます。薄幸の美少女、八神はやてです。

 昨日は今まで生きてきた9年間の中で一番衝撃的な一日でした。まるで漫画やアニメのキャラみたいに波乱万丈な人生を歩まねばならないことになったんです。良い事と悪い事が同時に来るなんて思いもしませんでした。

 良い事は、私に兄ちゃん以外の家族が出来た事とこの世には魔法という物が存在していて、しかも私に魔法の才能が有る事です。

 そして悪い事というのが……。これは思いだしたくもない事ですが、麻痺の原因も魔法関係であり私に残された時間が一年ほどしかないという事です。其れに加えてショックだったのは、家族以外では最も信用していた後見人のグレアムおじさんが私を封印しようとしていた事でした。

 

「ん? 起きたのか? おはよう、はやて」

 

 そうやった、昨日は兄ちゃんと一緒のベッドに寝たんやった。兄ちゃんはすっごく幸せそうな顔をして、私のほっぺをプニプニと突ついています。昨日の出来事が嘘みたいや。兄ちゃんは着替えも終えていて、去年私が作ったエプロンをシャツの上から着ていました。朝ご飯の支度は兄ちゃんの仕事です。呼びに来てくれたんでしょう。

 

 「兄ちゃん、おはよ」

 

 頭は覚醒していますけど、身体の方はまだ睡眠モードだったみたいです。ちょっと舌足らずになってしまいました。其れが兄ちゃんのブラコンスイッチの引き金になってしまったみたいです。

 

 「眠っている時のはやても天使の様に可愛いが、起きたはやてはなおのこと可愛いな。なんて愛らしいんだろう、食べてしまいたい位だ」

 

 兄ちゃんはそう言って抱きつき私の頬にキスをしました。たまにうっとおしくなる事もあるけど、兄ちゃんは私に沢山の愛を注いでくれます。過剰なスキンシップかもしれないけど、愛されてるって実感が持てるから嫌いではないです。

 闇の書の話を聞いた時、どっかの魔法少女みたいに絶望しか残されていないと思いましたが、私には心強い味方が存在していました。そうです、兄ちゃんです。

 兄ちゃんはグレアムおじさん達とは異なったやり方で、私の命を脅かす“闇の書”の問題を解決する方法を考え出しました。更に私の事を封印するつもりだったグレアムおじさんを説得し、あろうことか味方につけてしまったんです。私の兄ちゃんは寺産まれのあの人並みに頼りになるって改めて、そう思いました。

 これから私は闇の書の浸食に対抗するために魔法少女としての訓練を始めていかなくてはいけません。私のリンカーコアを活性化させ、魔導師として身体を適応化させる事により、闇の書を解析する時間を稼ぐんです。ヴォルケンリッターの皆が私の師匠になり鍛えてくれる事となっています。

 先を考えれば逃げ出したくなるような状況ですけど、兄ちゃんやヴォルケンリッターの皆、グレアムおじさんやアリアさんとロッテさん達が私に力を貸してくれます。皆が居るんや。絶対、この死の運命から逃れてみせる!!

 それから私は兄ちゃんに着替えを手伝ってもらい、お馴染みのチュウから車椅子という流れを経て寝室を出ました。今日は兄ちゃんに着替えを手伝ってもらいました。だって私はまだ9歳や。甘えたくなったんやもん。

 

 「おはようございます、主はやて」

 

 リビングに入るとまずソファーに腰掛けるシグナムが目に入りました。服装は昨日の黒いインナーみたいなやつでした。態々立ち上がって私に頭を下げます。シグナムは律義な性格なんやなぁ。

 次に目に入ったのは、初めて見る青みがかった毛並みの大型犬でした。

 

 「え!? 何で家の中に犬が居るん?」

 

 「おはようございます、主はやて」

 

 犬が挨拶してきました。昨日に続き、喋る動物第二弾です。この犬もロッテさん達の仲間なんかな? きっと、二人の仕事を引き継いで派遣されてきたんやろう。はじめまして、ワンちゃん。お勤めごくろうさんて挨拶したら兄ちゃんたちが噴き出しました。って、兄ちゃんもシグナムも何で私見てそんな可笑しそうに笑っとるんよ。

 

 「はやて、それはザフィーラだぞ。盾の守護獣とか言ってただろ? あの犬耳の自前だったらしい」

 

 「ふふふっ。はっ、とんだ御無礼を!!」

 

 「ええよ、シグナム。そうなんや、何か聞いた事のある声やと思ったけどザフィーラやったんか。朝ご飯はどうする? ドッグフードの方が良いんかな?」

 

 「あっ、主!! 私は犬ではありません、狼です!!」

 

 ザフィーラと私のやり取りが再びツボに入ったのか、兄ちゃんとシグナムはお腹を抱えていました。

 

 「楽しそうですね。おはようございます、はやてちゃん」

 

 キッチンの方からシャマルがやってきました。手にはミルクの入ったコップを載せたお盆が持たれています。兄ちゃんのスペアのエプロンを纏ったその姿は、まさに新妻って感じでした。

 どうやらミルクは私の為に持ってきてくれたみたいです。気が効きます。おっとりな若奥様然とした姿に脅威を感じます。でも兄ちゃんを誘惑する事は許さんえ。

 

 「目覚ましにどうぞ。キャッ!?」

 

 「大丈夫か、シャマル」

 

 「あっ、ありがとうございます。お兄さん」

 

 私がそんな事を考えているとシャマルが足をもつらせたのでしょうか。何も無い所で転びそうになっていました。お前は、どんがら閣下かとツッコミそうになった私は悪くないでしょう。

 ですが……、ですがそんなシャマルを兄ちゃんが受け止めたんです。お盆に手を添え、肩に手を伸ばして後ろから抱き支えているよう見えます。ミルクがこぼれなかった事は良しとしましょう。でも兄ちゃん、はたから見るとカップルにしか見えない姿勢やで!! って、こらシャマル。アンタも兄ちゃんの顔をじっと見つめて頬を赤らめんな!! ポッとかそういう効果音もいらんねん!! ほんわかした雰囲気にドジっ娘属性まで持っとるとか、あざとい。あざと過ぎる。

 

 「ふああ、おはよう。どうしたんだよ、はやて。そんなおっかない顔して」

 

 ドアの方からヴィータが入ってきました。首にタオルを掛け、前髪が少し濡れている事から顔を洗っていたんでしょう。

 

 「おはよう、ヴィータ。これでみんな揃ったか。それじゃあ朝ご飯にしよう。シャマル、次から気を付けろよ」

 

 兄ちゃんはイケメンスマイルそう言うと、シャマルの頭をポンポンと叩いてキッチンへ向かいました。シャマルは小さい声で「はい」と答えます。アンタは“り○ん”か“マー○レット”の憧れの先輩を前にしたヒロインか!? 

 それにしてもこの天然タラシは……、普段のそういう行動がアカンねん。 

 兄ちゃんは学校でもこないやそうです。ベタですが、大量のプリント運んでる同級生の娘の荷物を持ってやったり、体育で足を捻った娘をお姫様だっこで保健室に運んだりとかやってるらしいです。翠屋に行った時に美由希さんに聞きました(優秀な隠密って言ったら苦笑いされましたけど)。秘密裏に結成されたファンクラブ内では何て呼ばれてるか分かるます? “皇子”ですよ。兄ちゃんをそう呼びたい気持ちは確かに分かりますが。

 見た目からして“美人”な兄ちゃんの事です。そんなんやって知らないうちにファンを増やしているみたいです。何も意識してないんよな、これ。本人曰く「女性に優しくするのは当然の事」だそうです。タチ悪いわ……。

 でも、本当に兄ちゃんが鈍感で良かったって思います。そうでなければ今頃恋人が二桁なんて笑えない状況にもなっていたかもしれませんから。

 それから私達は席に着き食事を始めました。今日は洋風か。目玉焼きにトーストとサラダ、グリルソーセージに野菜のたっぷり入ったコンソメスープってオーソドックスな物です。

 そうそう、朝食の前にこんな事が有りました。

 

 「我々の食事もあるのですか!? 其れに席まで用意していただくなんて」

 

 テーブルに料理が並んだ時、ヴォルケンリッターの皆は驚いていたんです。

 聞いた所、今までの主達は食事を用意する事も無かったそうです。自分達はプログラムだから気にしていなかったそうですが、私達みたいに家族として扱う主人は初めてなんだそうです。食事はみんなでする方が美味しいやろって私が言うと、兄ちゃんは頬笑みながら頷いて同意してくれました。

 

 「美味い!! はやての兄ちゃんのご飯、ギガ美味だ!!」

 

 食事が始まるとヴィータの歓喜の声が上がりました。兄ちゃんは手の込んだものは作っていないのにと、居心地悪そうにしていました。でも内心喜んでいるのは妹である私にはお見通しや。

 卵の黄身で口の周りを汚してしまっているヴィータを、兄ちゃんは苦笑しながらナプキンできれいに拭いてあげています。やっぱ小さい子には甘いな。ってこら、シャマル!! 何自分から汚しにいっとんねん。私が睨むとシャマルは目を逸らしつつ汚れを拭います。これが目で語る闘いや、シャマルェ……。

 

 「確かに、兄上の料理は美味い。食事とは良い物なのだな」

 

 「うむ……」

 

 シグナムの言葉にザフィーラも頷いて答えていました。ザフィーラは現在人型になって席についています。流石にワンちゃんモードで一人だけ床で食べさせるのは気が引けましたから。ザフィーラは構わないと言ってましたけど、私と兄ちゃんで説得して無理やり席に座らせています。でも、そうして正解やったって思います。

 

 「口に合ったのなら良かった。食事はこういう風に皆で食べるのが一番美味しく感じる瞬間なんだと思う」

 

 「せやね。今までよりもおいしく感じるわ。今までは二人だけやったからこんなに賑やかなんは初めてや」

 

 私が笑顔でそう言うと兄ちゃんは優しく頭を撫でてくれました。

 

「皆で賑やかに食卓を囲む。些細な事かも知れないが、それが人が生きる上でのささやかな幸せって奴なんだ」

 

 「胸のあたりが暖かくなった気がします。これが幸せですか……」

 

 シグナムは世界系アニメのヒロインみたいな事を言ってます。他の三人も彼女の言葉に頷いて同意を示していました。私も兄ちゃんもそんなヴォルケンリッター達の姿を微笑みながら眺めました。私も幸せな気持ちでいっぱいです。

 ちなみに席順ですが、私と兄ちゃんが向かい合って座り、シグナムとヴィータがお誕生日席(ヴィータは私達と近い方)、シャマルが兄ちゃんの隣で、ザフィーラが私の隣って感じです。シグナムは私に席を譲ろうとしましたが、断りました。ここが何時もの定位置やし一番兄ちゃんの顔が見れるんやもん。

 

 「でも、本当美味いよな。はやての兄ちゃん、他にも色々作れるのかよ? いや、作れるんですか?」

 

 「勿論だとも。それにはやてが作った料理もおいしいぞ」

 

 「マジか!? はやての料理も楽しみ!!」

 

 ヴィータが私の方へキラキラとした視線を向けてきます。ならば、その期待に答えてあげるのが主としての役目やな。

 

 「なあ、ヴィータ。俺に対してもはやてに対する態度のように砕けた感じで良いぞ。シグナムとザフィーラもな」

 

 ここでナチュラルにシャマルを除く所が流石やな。シャマルの態度から察するに私がまだ眠ってる時に、家事かなんかの手伝いをして兄ちゃんと打ち解けたんやと思います。

 ヴィータとは同世代(実際は向こうがうんと年上やけど)っぽく接しようって、昨日寝る前から試みているんです。ヴィータもそんな私の気持ちを察してくれているのかフランクな態度で接してくれています。シグナムとザフィーラは実直な騎士って感じやから、兄ちゃんの言った事は難しいかもしれんな。

 

 「そうよ、嵐さんの言う通り。騎士でもあるけど私達は家族なんだから」

 

 シャマルは兄ちゃんの腕に抱きつき言います。いきなり名前呼びか。しかも腕に抱きつくとか……。この女、恋愛脳か? でも其処は兄ちゃんです。食べにくいって言ってすぐに振りほどきました。シャマル、あとで屋上な。

 

 「分かった、嵐にいちゃんって呼ぶよ よろしくな、嵐にいちゃん!!」

 

 「そうだな。改めて、よろしく頼む。嵐」

 

 ヴィータもシグナムも速効で名前呼びです。でも、今の所シャマルみたいな感情は持っていないようですので許しましょう。兄ちゃんは笑顔を浮かべます。

 

 「女所帯の中の数少ない同性だ。これからも世話になる、嵐」

 

 「ああ、こちらこそ。何か、兄貴が出来た気分だ」

 

 兄ちゃん的にはザフィーラからのリアクションが一番嬉しい様です。やっぱ男同士やから異性とは距離感が違うのでしょうか。でも昨日の前科が有りますので私はちょっとだけ目を細めてしまいました。仲良くすることは良いけど、必要以上なのはな……。不健全やし。

 私以外にもザフィーラに視線を向ける人が居ました。はい、勿論シャマルです。

 そう言えばシャマルって“湖の騎士”なんよな。やっぱりヴォルケンリッターの中で一番強いんやろうか? 気になったので聞いてみました。

 

 「なあ、シャマル。シャマルってランスロット卿と同じ“湖の騎士”なんよね? やっぱヴォルケンリッターで一番強いん?」

 

 “湖の騎士”なんやからアロンダイトとか持ってるんかな。それとも、“闇の書”の性質がアレに似てたから、もしかすると触れた物を全て宝具に出来たりとか。いや、大穴でヴァ○スとかMVSとか持ってるかも。期待に胸を膨らませていましたが……。

 

 「えっと、ごめんなさい。私はヴォルケンリッターの中でも後方支援とか参謀的役割がメインなんです。 アロンダイトって名前からして剣なんでしょうけど、それも持ってないわ」

 

 あっ、兄ちゃんも少し残念そうやわ。兄ちゃん好きやもんね、ランスロット。トランプ眺めながら「クラブのJのモデルはランスロットなんだ」って小さい頃言ってたしな。

 ちなみにヴォルケンリッター最強はシグナムだそうです。シグナムとヴィータが前衛で、シャマルとザフィーラが後衛って感じだそうです。途中で兄ちゃんはザフィーラに盾の守護獣なら全方向バリアを張れるか聞いていました。バリア自体は皆はれるそうで、ザフィーラの物は特に強力なんだとのこと。

 其れを聞いて兄ちゃんは目を輝かせていました。兄ちゃんの中でザフィーラの株が上昇しているみたいです。

 シャマルは自分と同じ称号のランスロットについて気になっているようでしたので、今度一緒に図書館に行って“アーサー王伝説”関連の本を借りてきても良いかもしれません。

 そんな感じで、取りとめの無い事を話したりしながら箸を進めます。今日は土曜日だったのでゆっくりと朝食を取る事が出来ました。

 

「今日はちょうど休みだし、皆の服や生活用品を買いにいきたいんやけど」

 

 朝食の後、兄ちゃんと洗い物をしている時にそう提案してみました。シグナムは再びソファに腰掛け、新聞を読んでいます。

 ザフィーラは食事が終わるとすぐにワンちゃんモードに変身し、リビングのカーペットの上に移動していました。

 シャマルは初めのうちは兄ちゃんの手伝いをしていましたが、手つきが危うかったので私が交代しました。私に不器用と言われたのがショックだったのか、「蒐集の時は一番繊細な部分を扱ってたのに」って呟きながらシグナムの隣で凹んでいます。

 

 「確かにな。いつまでもあの格好だと不憫だろう。それにシグナムやシャマルの姿は目のやり場に困る。今日は予定もないし、これから買いにいくか?」

 

 兄ちゃんはリビングに目を移し、少し恥ずかしそうに答えます。兄ちゃんも健全な高校生やし、やっぱそう思ってたんやな。あまりにも普段女性に対して興味なさげやったから心配やったんです。少しホッとしました。

 それから私達はみんなで買い物に行く事にしました。シグナムとシャマルはお母さんの服を、ヴィータには私のお下がりのワンピースを貸しました。

 兄ちゃんはザフィーラに服を貸そうとしましたが、男性としては細身の兄ちゃんとマッシヴなザフィーラではサイズが合わなかったようです。お父さんの服も試しましたがダメでした。仕方なくザフィーラはワンちゃんモードで付いて来てもらう事となりました。

 

 ご飯の時もそうやったけど、皆で行動するって楽しいな。何時もより私のテンションは上がってしまいますが、仕方ないやろ。

 

 「おーい、嵐、はやてちゃん!!」

 

 「おっ、ドラゴンか」

 

 「ああ、辰矢さん。こんにちわ」

 

 私達がデパートへ向かっている時、後ろから声が掛かりました。振り返ると、それは兄ちゃんの同級生の辰矢さんでした。普段着って事は、野球部の練習はお休みなんでしょう。

 

 「ドラゴン言うなし。其れに比べて、はやてちゃんはいい子だな。ちゃんと名前呼んでくれるから」

 

 辰矢さんは私の頭をガシガシと撫でてくれます。野球部だけあってその手は兄ちゃんと違い硬いんですけど、撫でてもらうのは嫌いじゃないです。

 辰矢さんは兄ちゃんの中学校の頃からの友達で、部活が無い時はよく遊びに来てくれるんです。特に夏休みの終わり近くは入り浸ってるって言って良い程です。兄ちゃんが課題を渋々手伝う姿は、ここ数年我が家の夏の風物詩になっています。

 

 「なあ、嵐。何時の間にお前んち犬を飼ったんだ? それにそちらのポニテと金髪の美人のお姉さんはどなただ?」

 

 大介さんの目は見慣れない人物たちへと向かいます。とくにシグナムとシャマルに釘付けです。

 

 「ん? ああ、俺の婚約者だ」

 

 兄ちゃんは辰矢さんをからかうの好きやからな……、何か冗談を言うとは思っとったよ。

 

 「嵐のフィアンセのシグナムだ。よろしく頼む」

 

 「初めまして、婚約者のシャマルです」

 

 兄ちゃんの発言からしてシャマルも乗っかるのは予想できた。

 でも、何でシグナムも!? ああ、そう言えば朝から意気投合してたな。シグナムって結構人をからかうのが好きな性格っぽいわ。弄りがいが有りそうな辰矢さんを見て冗談にのったんか。

 

 「皆、ダメやろ。辰矢さん、この人たちはうちみたいに後見人のグレアムおじさんにお世話になってる、シグナムさんとシャマルさんとその妹のヴィータちゃんっていうんです。ワンちゃんはザフィーラっていって皆で家にホームステイに来てるんですよ。もう一人ザフィーラさんってお兄さんも居ますけど、お留守番してもらってるんです」

 

 私は知り合いに会った時の為に用意したシグナム達の説明を兄ちゃんに代わって行いました。変な誤解が残ったら大変な事になりますから。主にファンクラブ関係で。

 

 「へえ、グレアムさんって名前は何度か聞いたけど本当に大した人だな。お前ら以外の後見までやってるなんて」

 

 グレアムおじさんの名だけは私達の周辺では結構知られています。お父さんの友人で海外に住んでる後見人って。

 

「俺は藤波辰矢っていって、コイツの親友やらせてもらってます。どうぞお見知り置きを」

 

 辰矢さん、いつの間にかシグナム達の前に移動していました。縮地か!? 二人の手を握って挨拶しています。

 

 「あたしの事は無視か!!」

 

 スルーされた事に腹が立ったのか、ヴィータが辰矢さんに抗議します。そうやね、見た目は幼いけど二人と同い年やもんな。

 

 「ごめんな、お嬢ちゃん。許してくれ。でも君も可愛いな。10年後にはお姉さん達みたいに美人になるんだろうね。よろしく」

 

 「ふん、嵐にいちゃんの友達なら仲良くしてやるよ。よろしくな、ドラゴン」

 

 面と向かって可愛いって言われた事に照れてるんでしょうか。ちょっとぶっきらぼうな態度のヴィータです。

 

 「これにあともう一人もいるのか。無駄に広い家だったんだから賑やかだろ?」

 

 「ああ。だから今年の夏はお前の居場所は無いかもな」

 

 「ひっでえ、それが親友に言う言葉かよ?」

 

 「そういうなら、たまには自分で課題を片付けてみろ。何年続いてんだよ。だからお前はドラゴンなんだ。自力でやれよ、自力で」

 

 「頼む、今年だけ。来年は頑張るから」

 

 革命は成らずか……。辰矢さんは兄ちゃんと軽口を叩き合えるような数少ない存在です。兄ちゃんは他にも友人は居ますけど、やっぱり辰矢さんが一番の友達みたいです。

 

「俺が肉体労働でお前が頭脳労働。バランス良いじゃん。それにしても、あと一人って犬と同じ名前なんだろ? 変わった人だな」

 

 「親父さんと同じ名前らしいんだが、よくあるだろ? 外人でJrって。ザフィーラさんはJrって呼ばれるのが嫌いで犬の名前を通称にしてるんだと」

 

 「なるほど。ああ、アレと一緒か!! インディ・ジョー○ズ。アレの本名は確かヘンリーだよな」

 

 流石、兄ちゃんの親友だけの事はあります。兄ちゃんがザフィーラの名前をどうするか考えていた時に参考にした物を一発で言い当ててます。

 

 「ザフィーラさんは元英国空軍の退役軍人だ。シグナム達に手を出すと半殺しじゃ済まないぞ」

 

 勝手にザフィーラの設定を追加してます。確かにあのガタイなら退役軍人って言っても通用しそうです。自分の人物設定を追加されたザフィーラはというと、私に「元軍人とはどういう事ですか?」と困った様子で念話を送ってきます。

 念話っていうのは昨日ロッテさん達がグレアムおじさんと使っていた魔法です。初歩的な魔法らしいので、出発前に教えてもらったんです。魔法少女としての第一歩や!!

 ザフィーラには兄ちゃんの意図を伝えました。恐らく兄ちゃんは辰矢さんがシグナムやシャマルにちょっかい掛ける事に対して牽制しようとしているのだと。

 シグナムからは「色恋に現をぬかすような事はありません」って念話が飛んできます。

 シャマルからは「ご心配なく。私には運命の人が居ますから」とか戯言が……。私が「いてこますぞ」と念話を送ると笑顔が引きつっていました。

 

 「そりゃあ怖そうだな。でも恋には障害が付きもんだ」

 

 いっその事、シャマルを辰矢さんに貰ってもらおうか。そんな事を考えていると、シャマルから「私を捨てないでくださいはやてちゃん」って念話が入ります。私から兄ちゃんを取ろうとするなんて、それこそアーサー王からグィネヴィア王妃を奪ったランスロットです。おのれ“湖の騎士”め。要チェックや。

 

 「嵐にいちゃん、そろそろ行こうぜ」

 

 「ああ、そうだな。すまん、アマゾン。これから皆の日用品を揃えに行くんだ」

 

 「そうなのか? 羨ましいぜ。俺はこれから野球部の後輩たちとゲーセンだぞ。野郎ばっかでむさ苦しいってりゃありゃしない。じゃあ、また学校でな。はやてちゃんもヴィータちゃんもまたね。シグナムさんもシャマルさんもまたお会いしましょう。今度はお二人に合う花でも用意しときます。何か困った事があったら行ってくださいね」

 

 辰矢さんは言うだけ言うと去って行きました。兄ちゃんの友達なだけあって台風の様な人です。

 

 「ふふ、嵐さんのお友達って愉快な人ですね」

 

 「花か。私は女である前に騎士なのだが……。だがシャマルの言う通り愉快な男だったな」

 

 シャマルもシグナムもちょっと困った様に笑っていました。

 

 「ちぇっ、私の事は最後まで子供扱いだったけどな」

 

 「悪いなヴィータ。でもアイツは良い奴なんだ。たまに家に顔を出すかも知れないからその時は仲良くしてくれ」

 

 「分かったよ、嵐にいちゃん。それより、早くデパートって奴に行こうぜ!!」

 

 ヴィータにはデパートがどういう物か、着替えの支度をしている時に少し話していたんです。本人は子供扱いされるのが嫌みたいですが、私が話した内容を見た目通りの子供の様に目をキラキラさせて聞いていました。楽しみでしかたないようです。ヴィータは可愛いな。

 兄ちゃんも其れは分かっているみいたで、普段私にする様にヴィータの頭を撫でていました。それ、気持ち良いやろ? ヴィータは子供扱いすんなって膨れていますが、口元に笑みが浮かんでるのを私は見逃しませんでした。

 それから私達は10分程歩き、本日の目的のデパートに到着するのでした。

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