魔法少女リリカルなのは 『やがみけ!! とあるシスコンの話』   作:Arc.

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他の話もですが、ヴィータの主人公への呼称を変更しました。


明日へと続く日々

 兄ちゃんが何時も優しい顔をするので、どんな顔をすれば良いか分からなくなる事があります。私の兄ちゃんがこんなに可愛い訳ない。

 こんにちは、熱い日が続いていますね。魔女見習いの八神はやてです。

 現在私達は海鳴市の中心部に有るデパートに来ています。ヴォルケンリッター達の日用品や服を買いに来たんです。デパートに着いた時、ヴィータの喜び様は写真に撮りたい位でした。

 

 「うわぁ、ここがデパートか!! スッゲー人がいっぱいいる。なあ、はやて、早く行こう!!」

 

 1Fロビーに着いた途端、走り出してしまいそうなテンションでした。本当にヴィータは可愛ええな。慌てなくてもデパートは逃げへんから。

 私も小さい頃は両親と兄ちゃんとデパートに来た時にこんなんやってたな。車椅子の上ではしゃぐ私を兄ちゃんは困った様に笑いながらも、「僕がついていくさかい、大丈夫や」って言っておもちゃ売り場についていってくれたりしたっけ。喜んでいる私を見てお母さんが「あらあら、はやてってば本当にお兄ちゃんっ娘なんだから」って笑って、お父さんも「お昼までには戻ってくるんやで」とか言って。

 あかん、ちょっとセンチメンタルになってたわ。不意に涙が浮かんでしまいます。

 

 「どうしたんだよ、はやて」

 

 先頭を歩いていたヴィータが心配そうに私の顔を覗き込みます。

 

 「主はやて、如何なさいましたか?」

 

 シグナムを始めとする他の三人のヴォルケンリッター達も心配そうに見つめてきます。

そんな時、私の右手が温かさに包まれました。兄ちゃんです。私の感情の変化を察してくれたんでしょう。

 

 「父さんや母さんが懐かしくなるのは仕方ない。俺だってそうなんだ。時には寂しくなるなんて事は当然だ。でも、今はヴォルケンリッターの皆も居るだろ? 俺と二人っきりの時より寂しさは感じないと思わないか?」

 

 「うん、皆が来てくれてからは寂しくあらへん。ううん、兄ちゃんが居てくれたから寂しくなんて無かったで」

 

 「ありがとう、はやて。でも、今日は泣いちゃダメだろ? はやてが泣いていたら父さんも母さんも安心出来なくなっちゃうんじゃないか?」

 

 そうでした、以前兄ちゃんが言っていた事を思い出しました。両親が死んで私が泣いてばかりいた時に「父さんたちが死んで悲しいのは分かる。でもいつまでも泣いてちゃアカンやろ。父さんたちが安心して天国に行けなくなるんやないか?」って。その時の兄ちゃんは泣きそうな顔をしていましたが、妹の私の前では泣かないって決意が伝わってきていました。そうやった。

 思いだす事は悪い事やあらへん。でもいつまでも思い出に浸っているのはダメや。お父さんたちは私達が覚えている限り思い出の中で生きている。だから生きている私達は今を見つめて、これからを生きていかないとアカンって。そう、兄ちゃんが言ってたな。

 

 「ごめん、兄ちゃん。みんな」

 

 「いいよ。ただ今日は皆が楽しめる様に此処に来たんだから笑わなきゃな。はやては三年生でお姉さんなんだし、周りの小さい子にも笑われちゃうぞ?」

 

 そう言って兄ちゃんはハンカチで私の涙の跡を優しく拭いました。そうや、泣いてちゃアカンな。気付かないうちに周囲の目を集めていたみたいです。兄ちゃんはよく見ると、私の泣き顔が周囲から見えない様な位置に庇う様に立っていました。兄ちゃんの心遣いが嬉しくて私は笑顔を浮かべます。

 

 「ほら、これで可愛い可愛いレディーに元通りだ。やっぱり、はやてには笑顔が一番似合うな」

 

 「兄ちゃん、恥ずかしい事言うの禁止!!」

 

 照れ隠しに少し語気を強めてしまいました。そんな私を見て兄ちゃんもヴォルケンリッターも頬笑みを浮かべていました。

 それから私達は初めに雑貨屋へと移動しました。ヴィータは兄ちゃんの代わりに私と手を繋いで店内を見て回っています。

 

 「なあ、はやて。このカップ見てくれよ。ギガカワだぜ!!」

 

 「本当やな、ウサギさんのカップか。私も同じの買おうかな。今使ってるヤツは古くなってるし」

 

 「はやてとおそろいか。良いな、そういうの」

 

 「せやね、姉妹みたいや」

 

 私とヴィータは互いに顔を合わせて笑い合います。良いなぁ、こういうの。妹が出来たみたいや。

 

 「ペアカップかぁ、良いわね。へぇ、夫婦茶碗なんて物が有るんだ。これを私と嵐さんで……。嵐さん、お茶碗を新調しません?」

 

 「いや、俺の茶碗は別に欠けていないし」

 

 「でも、このお茶碗はペアで買うと安くなるみたいですよ」

 

 「止めておけ、シャマル。主はやてからの視線が突き刺さっているぞ」

 

 ほう、夫婦茶碗とな。私の前で良い度胸や。すぐ目を離すと兄ちゃんにちょっかい掛けようとするんやから。本当に困った騎士や。これは教育やろなぁ。

 

 「ペアなら私と一緒で良いだろう。ほらそれを籠に入れろ、シャマル。箸はこれで良いか」

 

 「ええぇ、シグナムとペアなんて。そんなの夫婦茶碗じゃないわぁ」

 

 シグナムはシャマルの言葉を無視してどんどん選んでいきます。シャマルはシグナムに腕を掴まれ引きずられていきました。シグナム、あんたは私の第一の騎士や。

 

 「どうした、ザフィーラ。気に入る物は無いのか?」

 

 「いや、こういう物を選ぶのはどうも苦手でな」

 

 シャマルから逃れた兄ちゃんは食器の前にたたずむザフィーラに声をかけていました。ザフィーラはワンちゃんモードが有るから要らないって言ってたんですけど、やっぱりみんなで食卓を囲みたいからな。

 ちなみにザフィーラにはデパートに入る前に人間モードになってもらいました。流石に介護犬以外は入店させられんみたいでしたので。

 

 「シンプルなもので良いだろう。これなんかどうだ? 俺も使っているが良い物だぞ」

 

 「嵐のお勧めか。なら信頼できるものだろう。それにするよ」

 

 「ふふ、俺達もはやてやヴィータみたいにお揃いだな」

 

 「そうだな。でも良いのか? 主がじっとこっちを見ているぞ」

 

 動物の感か、ザフィーラは私の視線に気付いたみたいです。此処で邪魔するのは良くないな。兄ちゃんだってザフィーラが来た時に兄弟が出来たみたいって言ってたもんな。

 

 「何でもないで、兄ちゃん。ザフィーラは兄ちゃんに選んでもらったんか? 兄ちゃんの選ぶ物って良い物が多いからお勧めやで。丈夫で使いやすくて便利ってのを見極めてるはずやから」

 

 そうです、兄ちゃんは凄いんです。私に良い物を使って欲しいからって、店員さんとかに聞いて良い物を選ぶ審美眼も鍛えているんです。

 

 「確かにこれは良さそうですね。ありがとう、嵐」

 

 「気にするな、俺達は家族なんだから」

 

 そう言うと兄ちゃんは足早にレジの方へと向かいました。私に褒められた事と、ザフィーラに面と向かって感謝された事に照れてるんやないかな。

 レジには選び終えたヴォルケンリッターの三人が居ます。相変わらずシャマルは兄ちゃんにベタベタ引っ付いていて、それをシグナムに窘められています。

 次に私達はおもちゃ屋さんへと足を向けました。デパートに入って歩いている時に、ヴィータが興味を示したようでしたので。本人は「そんなんじゃない」って否定しましたけど、隠しても無駄やで。

 

 「へぇ、色々あるんだな!!」

 

 ヴィータが特に興味を示したのはぬいぐるみでした。その中でも口を縫われた白い兎のぬいぐるみが気になっているようです。でもぶっちゃけさせてもらうと、工場で作られた既成品よりも兄ちゃんの作ったぬいぐるみの方が間違いなく質は上です。

 

 「ヴィータ、それ欲しいん?」

 

 「ふぇっ? 別にそんな事ないよ」

 

 「なら、買わんでもええな」

 

 「えっ!?」

 

 私の言葉にヴィータは明らかに残念そうな声を上げます。心配せんでもええよ。家にはマエストロが居るんやから。

 

 「兄ちゃん、ヴィータがこのぬいぐるみ欲しいんやて」

 

 「ほう、呪いうさぎか。フェルト製で、作りは結構簡単だな。これ位なら作れるぞ」

 

 私達の後ろから兄ちゃんの手が伸びてきます。兄ちゃんはぬいぐるみを手に持って呟きました。

 

 「本当かよ、嵐にいちゃん!?」

 

 「兄ちゃんならこれよりももっと綺麗に作れる筈やえ、ヴィータ。私の部屋に熊のぬいぐるみあったやろ? あれって兄ちゃんのお手製や」

 

 「ヴィータが欲しいなら帰ってから早速取りかかろうかな。材料は布地も型も綿も全部揃っているから」

 

 「はやても、嵐にいちゃんもありがとう!!」

 

 ヴィータすっごく嬉しそうです。手作りのぬいぐるみって、作った人の気持ちが伝わってくる様で良い物やからなぁ。これは沢山作らなアカンかもねって私が言ったら、兄ちゃんはどんと来いって胸を叩いていました。

 

 「次は皆の服を選びに行こうか。全員で行くのも時間の無駄だし、男女で別れて選びにいくか?」

 

 「せやね、兄ちゃんの言う通りそれが時間を無駄にせん方法や。でも、兄ちゃん。逃げたらアカンで」

 

 「なっ何だ、はやて? おっ俺は、べっべべ別に逃げたりはしないぞ?」

 

 キョドりながら何言ってるん。目が泳いどるよ。別行動にしてそのまま逃げられるとでも思うたんか? ぬぁんたる愚かしさぁぁぁぁぁぁぁ。

 

「服を選び終えたらすぐ私達の所に来てな、兄ちゃん。ザフィーラ、何が有っても兄ちゃんを連れて()いよ」

 

 「イエス、ユアマジェスティ」

 

 私の気迫にザフィーラは服従モードみたいです。この様子なら大丈夫やろう。それにしても楽しみやな。早く兄ちゃんも女性服売り場に来て欲しいわ。久しぶりに、んふふふ。

 

 「ああん、私も嵐さんと一緒が良いです」

 

 「はぁ、腹をくくるか……。後でそっちと合流するから。良い子だから少しの間だけ我慢してくれ、シャマル」

 

 ため息交じりですが、兄ちゃんはごねるシャマルの頭を撫でて、それから額を人差し指で「トン」と触れました。イ○チや。兄ちゃん、イ○チも大好きなんです。

 

 「はーい、分かりました。さあ、はやてちゃん達行きましょう」

 

 シャマルェ……。あんた、私の騎士やろ。兄ちゃんに撫でてもらったシャマルは機嫌が良さそうです。ルンルンと言った感じで歩き出しました。この女、私の命令よりも兄ちゃんの方を優先させそうとか思うのは間違ってるやろうか。 

 

 「こっちだ、ザフィーラ。ちゃんと付いてこいよ」

 

 背中が煤けた様な哀愁オーラを漂わせた兄ちゃんがザフィーラと行動を開始します。

 

 「イエス、ユアハイネスとでも言えば良いのか?」

 

 「ふっ、それは此処では止めろよ」

 

 「ああ、そうだな。ちょっとした冗談だよ」

 

 何はともあれ、兄ちゃんとザフィーラは大分仲良くなったみたいやな。私もヴィータだけやなく、シグナムとシャマルとも、もっと仲良くならな。

 

 「待ちって、シャマル。さあ、一緒に行こうな」

 

 「ごめんなさい、はやてちゃん」 

 

 「はい、主はやて」

 

 「おうよ、はやて」

 

 私はシグナムに車椅子を押してもらい、シャマルとヴィータにそれぞれ手を繋いでもらって女性服売り場に向かうのでした。

 それから二十分後、兄ちゃんたちが合流しました。はやてちゃんのお楽しみタイムの始まりや。

 

 「もう、お二人ともお似合いですよ!! ですよね、お客様!!」

 

 「そうやね、兄ちゃんもシグナムもとっても綺麗やよ」

 

 「はぁ……、何故此処に来るたびに俺がこんな恰好をせねばならんのだ」

 

 「わっ私は騎士なのに……。このような華美な衣装は」

 

 兄ちゃんとシグナムが服屋の店員さんに捕まって着せ替え人形にされています。そうです、此処の店員さんは兄ちゃんに女性服を着せる事が大好きなんです。

 それは以前このお店に兄ちゃんに連れて来てもらった時の事。

 兄ちゃんは店員さんに「モデルをお願いできませんか」って頼まれて、一度モデルをやったんです。人の良い兄ちゃんですから熱心に頼まれたら嫌とは言えません。結局女装させられる事になりました。

 その時の写真はレジ裏の壁に飾られています。なんでも、兄ちゃんが女装した時に着た服が写真を飾って以来、とぶように売れるようになったらしいです。

 それからです。兄ちゃんがこのお店に来る度に新作の服を着せられ写真を取られる事になったのは。その代わり、全品30%OFFで買い物出来るって特権を与えられているんですけどね。

 一応子供服も取り扱っているお店ですので、私やヴィータの分も心配ありません。安く買い物が出来て兄ちゃんの女装も見れて私には良い事尽くめのお店です。当然、常連になっています。私が喜ぶし、安くなるからって兄ちゃんは毎回渋々ながら女装する事になっています。

 私的には兄ちゃんが女装に目覚めてくれれば、この楽しみを得る機会が増えるのにって思うんですけどね。でも、兄ちゃんは女装する事を頑なに拒否します。まぁ、抵抗する兄ちゃんを押さえつけて着替えさせるのも、また一興。

 

 「次はコレとか如何でしょう?」

 

 「良いですね。兄ちゃん、シグナム。今度はこれに着替えてや」

 

 「これは着用するのが難しいですのでお手伝いいたしますね」

 

 「ほわぁ!? 女性が、男の試着室に入るなんて。そんな、はしたない」

 

 「はしたないですって。キャー、可愛い!!」

 

 此処の店員さん達もそれが楽しみっていう人が中には居る様で、兄ちゃんを着替えさせるためにここで働きたいっていう人もいるとか何とか噂で聞いた事が有ります。

 なんや? 何でシャマルの時みたいに妨害せんのかって? 此処の店員さん達は兄ちゃんに襲いかかる心配がないんです。もし変な事をした場合、二度とモデルにはさせへんって契約を結ばせていますから。もし兄ちゃんに危険が及びそうになっても……。

 

 「其処までよ!! あなたは別のお客さんの方へ行って接客しなさい」

 

 「そんなぁ、主任!!」

 

 一人の店員さんが退場しました。そうです、此処の主任さんがきっちり監視してくれているんです。ちなみに主任さんが最初に兄ちゃんを女装させた店員さんです。ある意味私の盟友と言えるような人です。

 

 「シグナムさんでしたかしら。此方の御召物をどうぞ」

 

 「いや、私にこのようなヒラヒラした物は似合わないかと……」

 

 「そんな事ございませんわ。嫉妬してしまう程の抜群のプロポーションに凛としたその美貌。この服を着こなせるのは貴女か嵐様位の物ですわ」

 

 それから兄ちゃんとシグナムはゴスロリ調のドレスや背中の空いたロングドレスなど色々と着替えさせられていました。

 でも、さっきから静かやな。振り返ってみるとヴィータとザフィーラが呆然としていました。

 

 「嵐にいちゃん、産まれてくる性別を間違ったんじゃないのか? 女より綺麗ってどういうことだよ」

 

 せやね、ヴィータ。私もたまにそう思う事が有るよ。兄ちゃんは女装する時は店側が用意したウイッグを着用します。大体はロングの黒髪で、ストレートやウェーブのかかった物が多いです。大和撫子って感じやわぁ。

 内緒ですが、私が兄ちゃんの女装を見るのが好きなんは、死んだお母さんにそっくりっていうのもちょっとあります。

 

 「確かに嵐の女装姿は美しいな。それにシグナムも普段はそうでもないが、着飾るとまるで別人の様だ」

 

 ザフィーラも唸る位、今の二人は綺麗です。アレ? シャマルは? ははは、シャマルは色々と天元突破してしまったみたいです。物凄い幸せそうな顔をして兄ちゃんの眺めていました。兄ちゃんの美しさに当てられたんやろうな。

 

 「これで最後です。すみませんが、お願いします」

 

 「これを着ろと……。しかもこのカツラは」

 

 ほう、その衣装は。何でそんなもんまで置いてるんやろう? でも面白いしええか。私も主任さんに協力しよう。

 

 「シグナムはポニーテールを解いてくれんか? サイドの三つ編みはそのままでな。前髪はセンター分けで頼むえ」

 

 「はぁ。分かりました、主はやて」

 

 それから暫らくして試着室から出てきた兄ちゃんとシグナムは完全にあのキャラでした。兄ちゃんが大好きなアレの……。

 

 「うわぁ、凄い似合ってるよ。二人とも!! ユ○ィと二期のネ○ねえさんや!!」

 

 主任は満足と言った表情でした。兄ちゃんは桃色のウイッグに白とピンクのドレス姿、シグナムは紫と白を基調にしたパンツルックとマントって装いでした。

 

 「これは今までの物より動きやすくて良いですね」

 

 シグナムは割とその服装を気に入ったみたいです。うん、凛々しい雰囲気のシグナムにこの格好はむっちゃ似合ってる。ヴォルケンリッターの将と帝国の女将軍やからなぁ。それに胸の方も豊かやしな。あと、脇がエロい!!

 

 「虐殺です!! どうだ、これで満足か? はやて」

 

 兄ちゃんは投げやりに言いました。胸元から覗く鎖骨がエロいわ。男のくせに反則やよ、本当に。

 どうやら今回の写真はこのコスプレに決まった様です。主任さんは店員さん達を使ってその場で写真を取っていきました。今更やけど店の方向性、大丈夫なんかな?

 

 それから私達はデパートを出て、昼食を摂りにあるお店へと向かいました。デパートを出てから兄ちゃんはどっと疲れた様子です。本当にごめんな、兄ちゃん。でも安く買い物出来たんやから許してや。

 兄ちゃんは同じく着せ替え人形にされたシグナムと並んで歩いています。私の車椅子は買った服を着て帰っているザフィーラが押してくれています。

 ちなみにザフィーラは黒いワイシャツとスラックスとブーツ、シャマルはノースリーブの白いサマーセーターにグリーンのロングスカートとパンプス。ヴィータは赤に黒のフリルのついたワンピースとサンダルって感じの服装です。シグナムは店員さん達の希望で黒のキャミと白い七分丈のローライズにヒールの付いたサンダルを着用しています。

 

 「はぁ……。本当に酷い目に合った。今回は遂にコスプレまでさせられるとは。だから、あの店に行くのは嫌だったんだ」

 

 「そうか? 私はだんだん楽しくなってきたのだが……」

 

 「俺は女装だぞ? そのうち、次元を司る魔女の服なんて着せられるかもしれん」

 

 ああ、それは似合いそうや。今度主任さんに言ってみるのもええかな。

 

 「そうだったな、すまない」

 

 「いや、良いよ。それよりもシグナムはドレスが似合うんだな。一体何処のお姫様かと思ったよ」

 

 「言い過ぎだ、私は騎士なんだ。美しく着飾る機会など今回だけだろう」

 

 「それは残念だな、さっきのシグナムは本当に美しかったから。日本にはこういう言葉が有る。“立てば芍薬、座れば牡丹。歩く姿は百合の花”って。美しい女性を花に例えるんだ。立ち振る舞いの美しいシグナムに相応しい言葉だなって思ってしまったよ」

 

 「そんなに煽てても何も出ないぞ?」

 

 「いや、本心からそう思っただけさ。一枚の絵画を切り取った様な美しさだった」

 

 「そっそうか。あっ、ありがとうと言っておこう」

 

 兄ちゃんのキザな言葉の数々にとうとうシグナムも頬を赤らめてしまいました。容姿を褒められて喜ばない女性がいるでしょうか? いえ、居ません。口説き文句の様に聞こえますが、兄ちゃんの場合純粋に誉めているだけだから始末が悪いです。下心なく本当に思った事を言っているんですから、言われた方はたまった物じゃないやん。

 シャマルだけかと思ったらシグナムまで兄ちゃんに堕とされるなんて事にはならんで欲しいわ。

 

 「嵐さん!! 私はどうですか!? 似合います?」

 

 シャマル、始めていわせてもらう。よくやった!! 強引に二人の間に割り込みます。

 

 「シャマルもよく似合っているぞ。清潔感のある白いセーターが金糸の様なその髪にマッチしている。優しそうなシャマルの雰囲気も相まって女性らしさが引き立っているようだ」

 

 「そっそうですか?」

 

「ああ。シャマルはその金髪が良いな。まるで月の光を写し取った様だ。差し詰め、シャマルは月から舞い降りた美しい妖精さんってところかな? 月の光の様なふわりとした優しさと、花も恥じらうその整った美貌で心を盗んでしまう悪戯好きの妖精さんかもしれないな? なよ竹のかぐや姫の様に、その美しさを惜しんだ月の使者が連れ去ってしまうかもしれない」

 

 「はぅぅぅ」

 

 シャマル撃沈。うん、何となくそうなりそうだとは思って居たわ。ヴィータ、あんたは行かんでええよ。たぶん、天真爛漫な姿の中に小悪魔チックな云々とか言われそうやから。シャマルの事なら兄ちゃんとシグナムが何とかするやろ。ほらな? うん、確かにシグナムは乱暴やな。でもシャマルもちゃんと気がついたみたいやから。

 それから間もなく私達は目的の店へと到着しました。

 

 「ここが喫茶翠屋。俺のバイト先だ」

 

 「翠屋はコーヒーとケーキも美味しいんやけど、ランチも絶品なんや」

 

 今日はお休みやしあの娘も居るかもしれんな。翠屋は兄ちゃんの同級生の美由希さんの御両親がやっているお店なんやけど、何と私と同じ年の娘さんも居るんです。兄ちゃんとケーキを食べに言った時に会って、それから仲良くさせてもらってるんですよ。

 

 「いらっしゃいませ」

 

 やった、今日は居た!!

 

 「こんにちは!! 久しぶりやね、なのはちゃん!!」




5話目にしてやっと原作ヒロインの登場です。
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