Ia! Ia! infUCK OFF! 作:宝石をかけたチンパンジー
私の1番好きなくとぅるふ ふ『ざけんな!』くんが主人公です。
色々とツッコミどころはあると思いますが、そうしないと物語が始まんないんですほんと許してくださいなんでもしますから。
君たちが思っている以上に、世の中には不思議なものがゴロゴロと転がっている。
動く石像だの、半分だけの猫だの、2000km〜8000kmくらいの海洋生物だの、古代に地球を支配していた邪神だの… 最後のやつはいるかどうか知らないが、それ以外は確かに存在している。
それらは全て、scp財団により、オブジェクトと纏められて何らかの名前を与えられ、そしてその危険度により警備や取り扱いを変えて収容されている。
まあ、俺の場合は収容、よりかは保護だな。
だから… だから…
「ああ! 偉大なるクトゥルー様! 私の血と愛を受け取ってください!」
「お、おう。 ちょっと落ち着こうぜ? なあ、そんなことをしても誰もハッピーにならないんだ。 わかってくれるだろう?」
「はい! わかっておりますとも! では早速!」
「わかってねえじゃねえか! うわっ、マジでやめてくれ! ああこんちくしょう! シャワーを浴びたばかりなんだよ!」
頼むから、俺に血と愛液を塗りたくってくるこの女を誰か止めてくれ… 頼むよ!
「タウ-9さん! マジで早く助けに来て! ちょっ、おい! マジでやめてくれ!」
「ああ! クトゥルー様が私の愛を…!」
「受け取らねえから! 有難いけどいらねえよ!」
部屋でワーワーと騒いでいると、特殊部隊的な装備を身につけた男達が開け放たれた扉から入って来て女を拘束する。
「待たせたな!」
「マジでありがとう! 本当に感謝してるよまじで!」
「クトゥルー様ァァァァァァ!」
「黙れ! ほら行くぞ!」
機動部隊タウ-9の人がその女に手錠をかけて、部屋の外に連れ出して行く。
…俺の名はSCP-2662、通称『cthulhu f'UCK OFF!』自ら望んでSCP財団に管理されている成人の男だ。
俺を信仰し、頭のおかしい儀式を行おうとするカルト教団から逃げるためにここにいる。 逃げ切れてないけど。
《Ia! Ia! cthulhu! fUCK OFF!》
「やあ、2662。」
「おお、■■博士。 調子はどうだい?」
「上々さ。」
「そいつは良かった。」
私は目の前にいるフレンドリーな怪物と話をしている。
SCP-2662である彼は、H・P・ラヴクラフトの創作の上での神であるクトゥルフに酷似した姿をしている。 実際の30mものとは異なり4mほどの身長だが、それでも十分に巨大と言えるだろう。
身長以外は小説の中に書かれたクトゥルフの姿と一致しており、タコのような頭で、口の周りにはタコの足が蠢く。 緑がかった全身の中で、手足には水かきのような機関が見られる。 背からは10対20本の触手が伸びており、それぞれが完全に手足として機能している。
このような外見上の特徴を持った生物が、特注のワイシャツを着てこれまた特注のジーンズを履いて、普通に新聞を読んで食事をしてテレビを見てゲームをしてシャワーを浴びて睡眠をとって生きているのだから、おかしな話だ。
その上、そこらにいる人間よりもユーモアに富み、さらに親切である。 本来の人間の姿ならばさぞ人気者だっただろう。 いや、今も宗教団体には人気者だが…
「それで博士、要件はなんだい?」
「ああ、そうだった。 テレビで見ただろう? 織斑一夏、という少年と、ISについてだ。」
「ああ、見たよ。 呆れるほどに見た。 どの局もこぞって報道しているようだ。 お陰で見たかった番組が潰れちまったよ。」
タコのような顔を困ったように歪めて、肩を竦めてみせる彼。
彼は手元にあるコーヒーの入ったカップを手に取り、口に運ぼうとした時にこちらに顔を向けて言った。
「ああ、そうだ。 コーヒーはいるかい? 美味いのは淹れられないが。」
「いや、結構。 そもそもこの後は直ぐにこの部屋を出る予定だからね。 君がそのコーヒーを飲み終えるか、手元の新聞を読み終わってから切り出す予定だったんだ。」
「へぇ… 部屋の移動かい? 悪いね、直ぐに飲むよ。 新聞は移動中にでも読もう。」
「いや、違う。 先ほど話だISについてだ。」
IS… インフィニット・ストラトスとは数年前に日本人のとある博士が単独で開発したものだ。
元々は宇宙空間での活動を目的としたマルチフォーム・スーツだが、一度兵器に転用されかけ、アラスカ条約というISの軍事利用を禁ずる条約の締結により、現在は競技用の機械となっている。
一度は財団内でISをSCPとするかの会議が行われ、可決された。 しかし、とある事件によりISの存在は世界中に知れ渡り、もはや秘密裏の確保は不可能と結論付けられ、ISを一機のみSCPとして、そして研究サンプルとして収容している。
「さて、君も知っての通りISは女性にしか動かせない。」
「そりゃそうだな。 世界の常識だ… 俺が外に出ることはまずあり得ないけどな。 しかしそんな俺でも知ってる事実だ。」
「しかし、その常識を織斑一夏が壊してみせた。」
「…要領を得ないな、つまりなんと言いたいんだ?」
「いやなに、彼のIS起動と共に、世界中で男性のIS起動検査が行われているんだ。 そして我々はSCPの中で、ISを起動できるものがいないか、というのを調べることになったのだよ。 ISは我々がSCPとして保管しているものを使う。」
彼はタコの瞳をほんの少しだけ細め、ほんの少しのコーヒーを飲みきった後、カップをゆっくりと机に置いた。
「つまりあんたは俺がISに乗れるか、を調べたいわけだ。 そのためにこれから部屋を移動するってわけだ。 まあ喜んで協力するさ。 できればもう一杯飲んで行きたかったが。」
「それなら構わない。 一杯くらい待つよ。」
「ああいや、気にしないでくれ。 どうせ乗れやしないんだ。 帰ってきてから落ち着いて飲めばいい。」
「そうか。 ならばついて来てくれ。」
ああ、と返事をしながら2662が私の後をついてくる。
彼の収容されている部屋を出ると、外には彼の護衛のために結成された
「お疲れさん。」
「いやいや、月一くらいでキチガイ供の相手してるからな。 こんくらいなら楽なもんだぜ?」
軽口を叩き合う2662とカウ-9の隊員たち。
そのまま暫く歩くと、少し大きく作られた部屋に出た。
SCP-514-JP『
「んで、俺はこれを動かせるか試せばいいってことかい?」
「ああ。 動かせる人間なら触れば起動するそうだ。」
「んじゃ、失礼して。」
2662はそのISをジロジロと眺めた後、ソッと手を触れた。
その瞬間、部屋の中が青白い光に包まれた。
確かこれはISの初起動時に現れる現象の筈だ。 つまり今…
「…なあ博士。 なんか乗れてるんだが…」
「…ああ、乗れているな。」
目の前で、身長4mほどのクトゥルフが人間サイズに作られたISに乗り込んでいた。
《Ia! Ia! cthulhu! fUCK OFF!》
あの日、俺がISを動かしてしまった日から3日ほど経ち、一度狂信者のゲリラ儀式を受けた俺は部屋の補修中、別の部屋に移動して過ごしていた。
「2662、少しいいかな?」
「ああ、博士か… なんのようだい? まあ座りなよ。」
部屋に入って来た博士に椅子に座るように促し、ティーカップを傾けて紅茶を一口飲む。
うん、まあまあ上手く淹れられたな。
博士は俺の座っている椅子のテーブルを挟んで向かいの椅子に座り、真面目な顔でこう切り出す。
「2662… IS学園に行く気はないか?」
IS学園… ハイスクール、高等学校であり通常ハイスクールで習う内容と共にIS操縦者としての知識や実技の授業を行う、全世界からエリート中のエリートが集まる場所だと記憶している。
「まさか。 またあのキチガイ共が押し寄せてくるに決まっているじゃないか。 それに俺の特性を知っているだろう?」
「ああ、知っているとも。 しかしお前の特性によりおかしくなる人間は全世界に5%だ。 そして我々の調査の結果、暫定だがIS学園にその5%に含まれる人間はいない。」
だが、と反論しようとすると、博士が途中で口を挟む。
「いいか、よく聞くんだ。 IS学園は元々警備が厚い。 織斑一夏の登場により、さらに警備は強化されることになる。 狂信者共も、恐らくは侵入できないほどの施設だ。」
「…だが、そこの生徒さんたちに俺の姿をみせるわけにはいかないだろ。 俺みたいなやつを隠すのが、財団の仕事だ。」
「君は自ら望んでここに来たじゃないか。 だからと言って、望んで外に出られる訳ではない。 だが… 君は高校へは行けていないんだろう?」
「…ああ、このナリと、特性のせいでだ。」
「行きたいだろう? IS学園に。 いいか、良く考えてくれ。 他人にかかる迷惑なんてものを捨て置いてだ。 君が望めば、ほとんど99%、君はIS学園で学生として生活を送れるんだ。 そしてそこは、恐らくここよりも警備が厚く、狂信者も迂闊に近寄れない。 君はどうしたい? 良く、良く考えてくれ。」
身を乗り出して、妙に饒舌に語る博士。
もう一口、紅茶を飲んだ。
「…行かせてくれ、そのIS学園に。」