Ring Girls   作:宣伝部長

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新星(ルーキー)、舞い上がる

『ヴァルキュリア』

 

 

 

 

 

関西では名門とも呼ばれる女子プロレス団体。

技術水準の高い実力派レスラーを多く抱えており、女子プロレスラーが注目する人気団体。

女子プロレスラーを夢見る女は、必ずと言って門を叩く。

そして、春・・・入団を希望する者達がぞろぞろと集まっている。

そう、年に一度しかないと言われている入団テストを受けるべく・・・女達は集ったのだ!!!!

 

 

そんな中現役女子高生でもある・・・佐倉 絢音(さくら あやね)も入団テストを受けるべく会場に辿り着いた1人の女である。

ウォーミングアップをしている女達の中で彼女も上下赤色のジャージ姿で柔軟体操を念入りにしていた。

しかし、今回ココで行われる試験内容すら知らない彼女の心の中では不安が一杯でこの場の空気に押し潰されそうな気もしていた。

 

 

 

「うぅぅ・・・やっぱり凄い人数・・・みんな考えてる事は一緒なんだ。それにしても・・・学生ってもしかして私だけだったりするのかな?」

 

「んっふぅ~♪そうっしょ!若い間は青春しとかないと後々後悔しちゃうぜい♪」

 

「ひぃっ!?!?ど、どちら様ですか、貴女は!?!?」

 

「おいおい・・・そんなに硬くなっちゃってぇ~・・・そんなんじゃこの先の試験で躓いちゃうぜ?」

 

「も、もしかして・・・私の緊張をほぐす為に声を掛けてくれたんですか!?あっ、ありがとうございます!!」

 

「はっ・・・ははっ!くっふふ、お前、気に入った!!アタシは、玖珂 霞(くが かすみ)!!お前は?」

 

「えっと・・・佐倉絢音です!15歳、高校1年生です!!」

 

「わっか!?!?」

 

「そ、そうでしょうか?クルセイダーに在籍されているREINAさんもフェニックスに在籍されている天鳳院ほむらさんも若き頃から腕を磨き強くなったって聞きましたけど、もしかして・・・・・アレは・・・ガセネタ!?!?!?」

 

 

 

挙動不審と言う言葉が似合うぐらいキョロキョロとして彼女に背後からぬるっと現れた玖珂 霞と呼ばれる女性に驚き変な悲鳴をあげてしまった。

しかし、自分の為に声を掛けてくれたと勘違いする絢音は素早くお辞儀をして礼を口にしたのであった。

そんな面白い反応を示した絢音に興味を示したのか霞は自己紹介をしたが、絢音の自己紹介を聞くと今度は霞の口から驚きの声が上がった。

年齢の事に驚かれても自分の知ってる有名選手は自分ぐらいの年齢からデビューしたのを知っていたからか腕を組みぶつぶつと1人で悩んでいた。

 

 

そんな2人をよそになにやら会場内はざわめき始めていた。

しかも、いつの間に現れたのだろうかカメラマンやら記者やらが色んな入団者にインタビューをしているのである。

 

 

 

「どうして取材が行われてるんでしょうか?」

 

「そりゃあ・・・有望なフリー選手とかがヴァルキュリアに入団!!って、なれば大スクープだろ?」

 

「そうですね・・・伊里内 真選手とか甘利 琴羽選手もGaiaに入団する時は大騒ぎでしたもんね」

 

「あぁ・・・ってか、お前って高校生だよな?」

 

「はい!!どうかしましたか?」

 

「いやぁ~・・・すっげぇ詳しいなって思ってよ」

 

「女子プロレスは小さな頃から好きでしたから色々と勉強して来ましたから知ってるんですよ!!」

 

「ははっ!熱心な奴だな!!」

 

「あ、あの!!」

 

 

 

絢音と霞がフリー選手の話題で盛り上がる中一際大きな声が2人に向かって投げ掛けられた。

2人はきょとんとしたように声のした方に視線を向けるとそこにはボサボサ頭の女性がボールペンをマイク変わりのように2人の間に差し出しており、首にはカメラをぶら下げていた。

 

 

 

「んっ?アタシ達になにか用かい?」

 

「イ、インタビューさせてもらって・・・・・良いですか?」

 

「わ、わわ、私達をですか!?!?」

 

「は、はい!!あっ・・・も、申し送れました!わ、わわ、私、ビーナスの高嶺です!!」

 

「ビーナス・・・って、あぁっ!!女子プロレスの事を専門に発行されてるあのビーナスですよね!?!?」

 

「えっ、は、はい!!も、もしかして・・・ご愛読者様ですか!?!?」

 

「むっかしから毎回欠かさずに読ませて貰っています!!前回の特集記事にはテンションが上がりました!!」

 

「で、ですよね!ですよね!!アレは先輩が取材されて来られた内容でして私も色々と話を聞きたかったんですけど・・・「高嶺ぇぇぇ!!!!」ひょわぁぁぁぁ!!せ、先輩!!」

 

 

 

鬼のような怒鳴り声が聞こえたかと思えば、本当に鬼のような形相をした女性が腕を組んで仁王立ちしているのが見えた。

そんな彼女はふらふらっと近付いて来ると高嶺と名乗った女性の耳を引っ張り、2人の元から少し離れた位置まで引き離した。

 

 

 

「なんであんな無名そうなヤツらに声掛けてんだ!!」

 

「い、いや、あの・・・妙に気になったんで・・・・・つい」

 

「つい・・・じゃないでしょう!?他に有名選手はいるのよ!わかってる?」

 

「・・・・・ひぃぃぃぃ」

 

 

 

 

 

「大丈夫ですかね・・・あの人。それにしても・・・・・賑わってますね」

 

「アタシも気になってんだけどなぁ~、こう人だかりがあり過ぎてよくわかんねぇんだよな」

 

「気にしなくていいわ、今から面白い事をしますから♪」

 

「面白い事・・・・・えっ!?!?」

 

「んんっ!?!?」

 

 

 

隅に居た2人の間から割って入るように声が聞こえ人が通り過ぎるの確認すると2人は驚きを隠せずに道をすぐに開けた。

そう・・・姿を現したのは、ヴァルキリアの社長・・・宮永 沙織(みやなが さおり)であった。

まさかの登場に取材班も選手達から離れ今度は沙織の元に集まる。

すると右手に持っていたマイクを口元に当てるとニィッと笑った。

 

 

 

 

 

「これよりぃぃぃぃヴァルキリア入団テストを開催するぅぅぅ!!!!」

 

 

 

 

 

大きな声で宣言したと同時にリングがライトアップされるとそこに目掛けて沙織は嬉しそうに走り出すと勢い良くリングインを成して力強く拳を突き上げて「うおぉぉぉぉ!!!!」と雄叫びをあげた。

 

 

 

「入団テストはいたって簡単!!このリングの上でバトルロイヤルをしてもらいまぁぁぁぁす!!」

 

「えっ・・・ええっ!?い、いきなりの実戦ですか!?!?」

 

「勝ち残った人だけが合格!!って訳じゃないから安心してね!ちゃんと評価はしちゃうから~でもでも!すぐに脱落しちゃったら~アピールポイントがなくなっちゃうから気をつけること!トップロープ越しに転落し場外に足をついた時点でも脱落になるから~入団者のみんなは精一杯頑張ってね♪」

 

「上等だぜぃ・・・絢音も燃えてくるよ・・・なぁ??」

 

「いきなり実戦・・・いきなり実戦・・・いきなり実戦・・・・・」

 

「おいおい、そんな初心者がびびったような顔でそんな事ずっと呟くなよぉ~」

 

「・・・・・初心者です」

 

「・・・へっ?」

 

「・・・・・プロレスは好きですけど、するのは初めてなんです!!」

 

「・・・・・はぁ!?!?」

 

 

 

この世の終わりを悟ったような表情をする絢音。

まさかの展開に鳩が豆鉄砲を受けたような表情をする霞。

その間にも名前を呼ばれる入団者は、リングへと上がって行く。

 

 

 

「玖珂 霞!佐倉 絢音!」

 

「チッ!!おい、名前呼ばれたぞ!諦めてやるしかねぇよ!!」

 

「そんなぁ~・・・・・」

 

 

 

2人のリングインが最後だったのかリングの中には約30人くらいが集まっていた。

動けばすぐに相手とぶつかるぐらいの間合いで全員の緊張感がリング内に張り巡らされていた。

いつの間にか沙織はリングから降りており、嬉しそうにハンマーを持ってはしゃいでいた。

 

 

 

 

 

「それじゃぁぁぁ!!レディィィィ、ファイトォォォ!!!!」

 

 

 

 

 

大声と共に鳴ったゴングに入団者は一気に動き出す。

 

 

 

「先に潰すのは・・・・・!!」

 

「弱そうなヤツからだぁぁぁ!!!!」

 

「えええええっ!?!?な、なんでぇぇぇぇ!?!?」

 

 

 

2人の側に居た入団者がすぐさまジャージ姿である絢音を最初に脱落させようと襲い掛かる。

迫り来る気迫に震えながら頭を押さえしゃがみ込んだ絢音はもう脱落させられると諦めて目を瞑った。

しかし、その考えは次の一瞬で掻き消される。

 

 

 

「チェストォォォォ!!!!」

 

「・・・ぐあっ!?な、なんで・・・この・・・私が・・・・・」

 

 

 

巨体の女性のこめかみに鋭い蹴りが勢いある掛け声と共に放たれ、巨体の女性は一瞬白目を向いたかと思うと膝をついて崩れ落ちた。

絢音は、恐る恐る顔を上げるとそこには先程まで一緒に騒いでいた霞の後姿があった。

 

 

 

「仕方ねぇ・・・これも何かの縁だ・・・アタシがココはなんとしてやるよ」

 

「・・・・・玖珂・・・さん?」

 

「しかぁぁぁし!絶対に離れるな・・・絶対だからな!!」

 

「はいっ!!!!」

 

 

 

長い白髪をゴムで一纏めにすると霞は呼吸を整えてから絢音の手を引き立たせた。

今日会ったばかりの自分にここまでしてくれる目の前の人に涙ぐみそうになるが、霞が再度ファイティングポーズを構えたのを確認すると絢音も心の中でなにかの覚悟を決めた。

 

 

2人は囲まれたら不利だと理解し、コーナーポストを背に1列に並んで陣取った。

先程の一撃を目の当たりにしたからだろうか周りに居た入団者は警戒していた。

しかし、その人混みを掻き分けると言うよりも邪魔者は投げ飛ばしながら1人の女が2人の前に立ちはだかった。

 

 

 

「こそこそとしてないでいっちょ派手にやらないかい!!」

 

「くそっ・・・ガチなヤツに目を付けられたな・・・・・」

 

「シャーク棚岬・・・フリーの選手ではありますが、数々の試合で新人狩りとも言われるぐらい新人を倒している実力者です」

 

「ハンッ!弱いから狩られるんだよ!!アタシに勝ちたいなら掛かって来な!!!!」

 

「へっ、上等!!」

 

「あっ、玖珂さん!あ、あの・・・・・」

 

「んぁ?・・・うんうん・・・・・へぇ~・・・よっしゃ!!」

 

 

 

まさかの現役フリーレスラーとの対峙に霞は軽くジャンプをしてみせる。

対するシャーク棚岬は、自慢の右手をグルングルンと回しエンジンは温まっている様子。

そんな2人を目の前にしてビクビクしていた絢音だったが、そっと霞に耳打ちをする。

その内容を聞いてかニヤッと不敵な笑みを見せたかと思えば、勢い良く走り出した。

シャーク棚岬に目掛けて・・・・・。

 

 

 

「アタシに正面から挑もうなんてとんだ間抜けだなっ!!」

 

「なんの策も無しに普通に正面から挑む訳ねぇだろう・・・がっ!!!!」

 

「うがっ?!?!」

 

 

 

突っ込んでくる目標を掴む為に両手を広げて待ち受けるシャーク棚岬。

しかし、急ブレーキを踏んだ霞は軽やかな跳躍を見せると顔面に目掛けて飛び蹴りをぶっ放す。

機敏な動きに翻弄されてか身動きも取れずにまともに一撃を受けたシャーク棚岬の顔面にはくっきりと靴裏が刻印されている。

 

 

 

「このぉぉぉ・・・もう容赦しない・・・よっ、おっおぉ」

 

「ふぎぃぃぃぃっ!!!!」

 

「なっ!?絢音!!お前、初心者がそんな無茶・・・・・な・・・・・」

 

 

 

一瞬怯んだシャーク棚岬であったが、怒りを全身に纏わせて倍返しにしようとしたが自分の身体が軽く浮いている事に驚いている。

原因は、背後から絢音が強引に持ち上げようと抱きかかえていたからである。

さっきとは正反対の行動をしている相手に歩み寄ろうとするが、徐々にシャーク棚岬の身体が上がっていくのに言葉を失ってしまう。

 

 

 

「・・・やってますね」

 

「ありゃん?VWQ(ヴァルキリア・レスリング・クイーン)王者自らルーキーの偵察?」

 

「・・・それは、そうですね。次期挑戦者が居るかもしれませんから」

 

 

 

スッと沙織の横に現れた女性は、真剣な眼差しでリングの中で戦う入団者を見守っていた。

そんな彼女ににやにやとした様子で声を掛ける沙織だが、女性もフッと鼻で笑うと微笑した。

 

 

リング内の光景に夢中になっていた報道陣だが、沙織の横に現れた選手に気付くとざわざわと騒ぎ始めた。

 

 

 

「先輩・・・どうしたんですか?リングの方はいいんですか?」

 

「御堂選手だ」

 

「えっ!?げ、現在VWQ王者の御堂ヒカル(みどう)選手ですか!?!?」

 

「お前は一々声がデカいんだよっ!!」

 

「ふぎゃっ!!!!」

 

 

 

 

 

「アレは・・・棚岬ですね」

 

「そだねぇ~」

 

「・・・しかし、あの背後に居る女の子はなにを・・・?」

 

「う~ん・・・もしかして・・・投げようとしてるんじゃない?」

 

「・・・あんな小柄な身体で100キロを超える棚岬を投げれるはずは・・・・・っ!?!?」

 

「おっほ~・・・・・ふふ~ん・・・佐倉絢音ちゃんねぇ~♪」

 

 

 

2人もリング上で起きている出来事に釘付けになっていた。

なんと言っても小柄な女の子が必死に倍以上ある身体の相手を持ち上げようとしているのだ。

ヒカルは見てられないと視線を伏せる。

しかし、周りからのどよめく声に顔を上げるとそこには思いもがけない姿があった。

 

 

 

そう・・・シャーク棚岬の身体が完全に浮き上がったのだ。

 

 

 

「んがぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「がっはぁぁ!?!?!?」

 

 

 

それは、一瞬だった。

完全にシャーク棚岬の身体が浮き上がったと思った途端にがくんっと後ろに重力が綺麗に弧を描き後頭部はマットに叩きつけられた。

見事な高速ジャーマンスープレックスがリング上で決まった一瞬である。

物凄い勢いの為に不意の一撃を受けたシャーク棚岬はそのままリングに沈み、絢音はふらふらではあるがなんとか立ち上がっている状態である。

 

 

 

「おいおいおい!!お前、初心者じゃねぇのかよ!?!?」

 

「はぁ・・・っ・・・はぁ・・・実践は初めてですよ?リ、リング上・・・では・・・・・ですけどね」

 

「ははっ・・・頼もしいヤツだなぁ~お前!!」

 

「・・・・・えへへっ・・・で、でも、もう立ってるのも・・・限界・・・・・で・・・す」

 

「よっと、まだまだ止まるんじゃねぇぞ?試合は終わっちゃねぇかんな!!」

 

「・・・・・は、はいぃぃぃ」

 

 

 

倒れそうな絢音に肩を貸してリタイヤさせないようにする霞。

そんな2人を目の前にした他の入団者ではあったが、あまりの気迫の強さに攻めあぐねていた。

 

 

 

「・・・・・今年のルーキーは楽しめそうですね」

 

「んふふっ♪同感♪」

 

 

 

気合を入れられたように引き締まった顔のヒカル。

これからの事を想像をして嬉しそうに笑顔を見せる沙織。

2人は、これからのヴァルキリアに新たな風が吹く事を確信したのであった。

 

 

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