2日目のイベント。
『バトルロワイヤル』
主に10人以上で行われる事が多い試合形式である。
敗北、リングアウトしたものから退場して最後に残った者が勝利すると言った感じである。
参加選手が開始時に全員リング上にいる場合や時間差で入場する形式などがあるが、今回は時間差形式である。
順番にリングインするのだが・・・・・。
「久し振りだねぇ~・・・あんた」
「・・・・・ど、どうも」
最初にリング上に立つの絢音と入団テストで一戦交えたシャーク棚岬であった。
前回の件もあり、ビクビクしていた絢音ではあったが試合開始のゴングが鳴ればバンッと頬をはたいた後に走り出した。
最初から自慢の右腕をぐるんぐるんと回すと豪腕のラリアットが迫る。
「おらぁぁぁっ!!」
「・・・ふぁっ!?!?」
威圧感の凄まじい豪腕が迫るが、その腕に手を掛けて滑り込むように潜り抜けるとロープへと逃げる。
躱された棚岬はすぐに振り返ったが、強烈なレッグトマホークが胸に刺さる。
「・・・ったく、ちょこまかと動きやがるな」
「・・・・・もう次の人が来るんですかっ!?」
すばしっこい絢音に苛立ちを見せるが冷静に身構える棚岬。
しかし、急な入場曲に2人が視線を向けるとそこには新たな挑戦者が立っていた。
そのシルエットは昨日会ったばかりの洌崎薫子であった。
「うちが・・・・・きたぁぁぁっ!!!!」
「うがぁっ!?!?」
全速力で走ってきた薫子はその勢いのままトップロープから飛び上がるとかなりの体重差があるはずの棚岬をスワンダイブ式フランケンシュタイナーで投げ飛ばしたのだ。
その光景にぽかんとしていた絢音ではあったが、油断は出来ない。
そのまま次のターゲットとばかりに薫子は向かってくる。
「昨日の友は今日の仇やっ!!」
「ぐぅっ!!」
得意技でもある2回転ローリングソバットを食らう絢音。
ちゃんと防御をしたにも関わらずかなりの衝撃に表情を歪ませる。
しかし、これはバトルロワイアルなにが起きるか予想出来ない。
「言いようにやられて・・・」
「なっ!?」
「・・・・・たまるかいっ!!」
「あぁっ!!」
隙をついたように棚岬が薫子をアルゼンチン・バックブリーカーの体勢で担ぎ上げるとそこから勢い良く前方へ放り投げたのだ。
それには受け身をとった薫子でも衝撃に身を捩らせて声をあげていた。
追撃しようと倒れている薫子に手を掛けるが無防備な背中に痛みが走る。
「ぐうぅっ・・・」
「せやぁっ!!」
「がぁっ!!」
ミドルキックの連発にはさすがの棚岬も追撃を中止すると怒りにも思える叫びと共に振り返る。
目の前には最初のおどおどしていた少女の姿はなく、1人の戦士の目を滾らせていた。
睨み合う両者の空気を裂くように新たな挑戦者が姿を見せる。
「今日は・・・負けない」
颯爽とリングインしてきたのは、神童寺司であった。
昨日の水着姿ではなくちゃんとしたコスチュームでの登場であった。
チラッと絢音に視線を向けたが、ターゲットは棚岬のようだ。
「まずは・・・この人から壊す」
「な、なんだっ・・・!?」
「・・・壊れろ」
「・・・・・っ!?!?」
ランニングからコルバタの要領で相手の首元に両脚で飛びつき、旋回しながら相手の左腕を捉えた司。
小声で囁いたと同時に脇固めの様な形で相手の肩口から勢いよくマットに叩きつける。
その一撃には、仕掛けられた棚岬は苦痛に耐えていた。
技を仕掛けた司は次の相手を探そうとしたが、彼女を狙う人影は空に居た。
「くらえぇぇぇっ!!」
「がっ!?!?」
不意を衝く薫子のスワンダイブ式飛びつきDDT。
それを受けた司はリングの上に大の字に倒れると技を仕掛けた薫子も同じく大の字に倒れていた。
残された絢音はここぞとばかりに棚岬をゆっくりと起こす。
するとあの時のように背後に回り込む。
「せやぁぁぁっ!!」
「ぐあぁっ!?!?」
素早い低空式ジャーマン・スープレックスを見事にお見舞いされた棚岬は転がるように移動すれば、自ら離脱するようにリングから降りて行った。
1人が減って安堵する中で新たなレスラーが登場していた。
「レインボォォォォォ!!!!」
会場に響き渡る聞き覚えのある大きな声に絢音は固まってしまう。
まさかの覆面レスラーレインボーミカの登場に会場が盛り上がっていた。
出演選手の情報も教えられていなかった絢音には衝撃的であった。
しかし、今は試合中であり、誰も待ってはくれないのだ。
「チェイサァァァ!!」
「にゃぁっ!?」
鋭いスワンダイブ式ドロップキックが背中に突き刺さるとリング外に飛び出そうになるがギリギリでロープを掴むと危機一髪耐えることが出来ていた。
このチャンスを逃す手はないと司が追い打ちを仕掛けようとした。
「行かせないッス!!」
「かはっ!!」
阻止するように放たれたフライングピーチを受けた司は軽々と吹っ飛ばされてしまう。
するとリング中央に立つレインボーミカは拳を突き上げてアピールをすると会場はまた一段と盛り上がりをみせた。
と同時に即座に動いたのは薫子。
「とりゃぁぁぁっ!!」
「はあぁぁぁっ!!」
「・・・っ!逃がさないッス!!」
「くっ!!」
2人のローリングソバットが相殺し合うようにぶつかると反応が早かったのは、レインボーミカ。
側転しながら相手に近づいて脚で挟み、地面に叩きつけるパラダイスホールドを放ったのだ。
薫子はあまりの流れの速さに驚きつつもすぐに起き上がると呼吸を整えようとしていた。
「・・・・・させない」
「お前っ!!」
「・・・飛べっ!!」
「ぐあぁぁぁ!?!?」
急に飛びついて来た司に怒鳴り散らす薫子。
しかし、勢い良く後方へ倒れ込みながら相手を巴投げのように薫子を放り投げたのだ。
その衝撃には流石に我慢出来ないのかじたばたと痛みを紛らわせるように騒いでいた。
そんな激しい闘いが繰り広げられている中でもまだ選手はやって来る。
「私の美技をとくとご覧いただきましょう!!」
一輪の薔薇と共にコーナートップに降臨したのは、ミシェール滝。
優雅な姿に観客からは黄色い声援が飛び交っていた。
「油断大敵ッス!!」
「かはっ!!」
登場シーンに見とれていた絢音は強引にレインボーミカにブレーンバスターをお見舞いされた。
その一撃を受けて苦痛に表情を歪ませていたが、休ませないのか今度は司がゆっくりと起こす。
「・・・終わらせます」
「まだまだぁぁぁっ!!」
「がぁっ!?そん・・・な・・・・・」
ここぞとばかりに仕掛けようとした司だったが、絢音は強引に司をバックドロップで放り投げたのだ。
あまりにも急角度で落とされてしまった司は、昨日のように目を見開いてぐったりとしてしまったのだ。
試合続行不能とされたのか外に居た係員が司をリング外に出していた。
次々に挑戦者がやって来るが最初からリングに居る絢音の表情には疲労が見え隠れしていた。
それでも気合を入れるように頬を叩くとそれと同時にまた新たな選手が姿を見せる。
だが、先程とは違った感じで会場は盛り上がっていた。
『零』と書かれた日の丸の上着を羽織った女性は走り出す。
その名は・・・日ノ本零子。
「なんで日本のトップスターがこんな所にっ!?!?」
「それは・・・試合が終わってから教えてあげるっ!!」
「こんな所で会えて光栄ッス!!」
「私もよ、ミカっ!!」
絢音の問い掛けにウィンクで答える零子。
しかし、言い終わると同時にレインボーミカとの力比べが始まる。
とそんな最中に薫子がなにやら悪そうな笑みを浮かべながら絢音に声をかけていた。
「スーパースターがこんだけおるんやっ!!ココが勝負所やでっ!!」
「ど、どう言う事・・・ですか?」
「あの2人に勝つってわけやっ!!」
「また面白い事・・・考えてるみたいね」
「災厄のねぇちゃんか!ちょいと手貸してくれへんか?」
「滝を相手すればいいんでしょ?お安い御用よ」
「おっしゃぁぁぁ!!こっからは共同戦線やっ!いくでぇぇぇ!!」
「はいっ!!!!」
2人が密談をしているといつの間にかリングインしていたのか十六夜美響が背後に立っていた。
美響は話の内容を理解していたのか邪魔が入らないように駆け出す。
その後ろ姿を見送りながらも2人は気合を入れるとスーパースターに挑みに向かった。
「うあぁぁぁっ!!」
「なっ!?」
「ぐっ!!」
不意を突いた絢音のスピアー。
零子とミカの間に割って入るように刺さった一撃に2人は見事に体制を崩してしまう。
2人が倒れている間に絢音は次の行動に移る。
「覚悟ぉぉぉっ!!」
「かはっ!?」
薫子の決め技とも言えるダブルスピンサルトが炸裂したのだ。
空中で見事2回転してからの一撃には、さすがのミカも苦痛に表情を歪ませる。
「やあぁぁぁっ!!」
「遅いっ!!」
「かはっ!?!?」
続こうとフロッグスプラッシュを放つ絢音。
しかし、待ち受けていたのは零子の折りたたまれた脚であった。
腹部に突き刺さる膝には崩れ落ちるように動けなくなってしまった。
「佐倉ちゃ~んっ!!げぇ・・・」
「よそ見は・・・いけないッス!!」
「がぁぁっ!?!?」
ヤバいと思って助けに行こうとした薫子だったが、その一瞬にミカが背後から両手を掴んだのだ。
そのまま強引に引き寄せると両腕をロックをして勢い良くタイガー・スープレックスを放ったのだ。
受け身をとれなくされている衝撃をまともに受けてしまいこちらも動けずにいた。
意識が遠のく中で絢音は薫子と同時にリングアウトさせられるのが理解出来た。
しかし、絢音は満足そうに笑みを浮かべるとそのまま気を失ったのである。
最終的に優勝を飾ったのは、十六夜美響であった。
漁夫の利で勝てたと本人は口にしていたが、本当かどうかはリング上に居た選手しかわからないことである。
「・・・・・んんっ」
「お、起きたかい?」
「へっ?ライオネルさん?」
目の前に居る見知った顔に驚きもしたが、ライオネルの膝枕から上体を起こして辺りを見渡す。
いつの間にか2日目の日程もすべて終わったのだろう他のメンバーもくつろいでいた。
しかし、その中にはまさかの人物も集まっていた。
「えっと・・・ここって何処ですか?」
「大広間さ、今から明日の決勝の組み合わせとエキシビジョンの組み合わせ発表さね」
「それと・・・私はどうしてライオネルさんの膝の上に居たんでしょうか?」
「アンタが爆睡してたから連れて来たんだよ!気持ち良さそうに寝ていたからねぇ~」
「は、はうぅ~・・・・・」
と話していると役員の人達が大きな紙を貼り出したのだ。
そこには明日のスケジュールも書いていたが、気になったのは組み合わせである。
『SummerVenusWest本戦 決勝戦』
ライオネル神威 天鳳院ほむら
VS
伊里内 真 セイレーン
『SummerVenusWest エキシビジョンマッチ』
ランブル美星 ナイトメアガール
佐倉 絢音 VS フレイア鏡
近藤 真琴 キャシィ・ワイルド
「選ばれてしまいました・・・・・」
「良かったじゃないかい?」
「本当に人気投票上位なんでしょうか・・・・・」
「今回からは抽選で選出されたみたいよ?あやちゃん♪」
「ひょえっ!?!?て、てて、天鳳院選手っ!?!?」
不意に後ろから抱きつかれたのに驚いていたが、聞き覚えのない声に口をパクパクとさせてしまう絢音。
反応に面白がって頬擦りをすると絢音はカチンと固まるがほむらは気にせずに話を進めた。
「まこちゃんが怒っていたわ。この子と対戦出来ないから・・・・・もう明日はセイちゃんにすべて任せようかな・・・」
「それこそアイツの機嫌が悪くなるからちゃんとやるんだねぇ~・・・」
「・・・わかってるわよ。今日はこの子に会いに来ただけだからまた明日頼んだわ」
「あいよ~」
そう言って去り際に絢音の頬にキスをすると優しく頭を撫でた後にほむらは会場を後にした。
残されたライオネルは念の為に絢音の前で手を振ってみたが完全に反応がないのに苦笑いを浮かべていた。
こうして、2日目が終わりを迎えたのであった。