Ring Girls   作:宣伝部長

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歴史は動き出す

いつもとは違う控室に絢音は目を瞑って集中していた。

同じ控室に待機しているのは、今回のパートナーであるランブル美星。

2人はとあるタイトルを奪取する為に新日本女子プロレスのリングに殴り込みに来たのだ。

 

 

そのタイトルの名前は、

 

 

『新日本タッグ王座』

 

 

新日本女子プロレスが認定していたタッグマッチのタイトルの名称である。

現在は、マイティ祐希子&菊池 理宇ペアが3度の防衛に成功しており、第72代王者である。

いきなりのタイトルマッチには理由がある・・・・・。

 

 

 

 

 

「タイトル争奪戦・・・ですか?」

 

「そっ♪新女とうちの殴り合い・・・まぁ、友好関係でもあるけどライバル的な面もあるからこの時期はタイトルの変動が多くなるのよ。絢音ちゃんもレス女なら理解出来てるんじゃないかしら?」

 

「そうですね・・・夏休み明けはいつもタイトル戦を観戦しに行ってたのは覚えていますので納得しました」

 

「まぁ・・・新女からしたらWWWGP(World Women's Wrestling Grand Prix)シングル王座のタイトルを是が非でも奪い取りたいんだと思うんだけどねぇ~」

 

 

 

これは数日前のお話。

社長室に呼び出されて絢音は急にタイトル関連の話を聞かされていたのだ。

 

 

 

「えっと・・・それよりも今日呼ばれた理由はなんですか?」

 

「貴女にもベルトを狙ってもらおうと思ってね♪」

 

「わ、私が・・・ですが!?そ、そりゃ・・・ベルトを手にしたいとは思いますが、まだ1年も経ってないんですよ!?」

 

「甘いよ、絢音ちゃん。君は普通の選手よりも優れたモノを持っているんだ。経験は何よりも自分を強くしてくれるんだ・・・どう、チャレンジしてみるかい?」

 

「・・・・・っ、はいっ!!」

 

 

 

 

 

と言う経緯が重なり合って現在に至る。

社長曰く実力があるモノは惜しまず、実戦で学べとの方針らしい。

 

 

 

「絢音ちゃ~ん♪調子はいいカンジ~?」

 

「は、はい!!ちゃんとこの日の為にベストコンディションで迎えられました!!」

 

「上出来、上出来♪初めてのタイトルマッチだけど、緊張はしてる?」

 

「最初は緊張してましたが、今は何も感じないです。と言うか・・・体に力が漲ってくる感じです!!」

 

「オッケ~♪その調子ならやれるねぇ~それじゃあ~行きますか~」

 

「はいっ!!!!」

 

「今日はアイドルじゃなく・・・アタシをパートナーに選んでくれたこの子の為に頑張りますかねぇ~♪」

 

「・・・・・へっ?美星さん、何か言いましたか?」

 

「なんでもないよ~ん♪ほらほら、行きましょ~♪」

 

 

 

 

 

『それではこれより新日本タッグ選手権試合を執り行いますっ!!!!』

 

 

 

そのアナウンスと共に歓声が会場を揺れ動かし、熱気が盛り上がっていくのが伝わってくる。

リング上では4人が睨み合うように対峙していた。

 

 

 

『青コーナー・・・挑戦者、煌めく流れ星(シューティングスター)!ランブルゥゥゥミホォォォシィィィ!!!!』

 

 

美星は大きく手を広げると観客に投げキッスをしてからウィンクをしてみせた。

 

 

『同じく、紅蓮少女!佐倉ぁぁぁあやぁぁぁねぇぇぇっ!!!!』

 

 

もう定番と化してきた絢音の「ファイヤー!!」の叫び声の後に観客が「ファイヤー!!」と叫ぶのはお決まりのようになっており、それを聞いた絢音は礼を込めて4方向にお辞儀をする。

 

 

 

『赤コーナー・・・新日本タッグ王座チャンピオンチーム、炎の戦士!マイティィィィ裕希子ぉぉぉっ!!!!』

 

 

紹介が終わったと同時に紙テープがリングを覆いつくすように飛び交う中でも裕希子は嬉しそうに観客席に向かって拳を突き上げてみせていた。

 

 

『プロレス界の神風ファイター!菊池ぃぃぃりぃぃぃうぅぅぅっ!!!!』

 

 

白きハチマキがトレードマークの理宇は裕希子と同じく拳をあげると大きく深呼吸をしたのであった。

 

 

 

4人は固い握手を交わしてお互いのコーナーに戻ると会場の空気は張りつめていた。

 

 

 

「悔いのないように行っておいでぇ~♪」

 

「はいっ!!」

 

 

 

美星の言葉を胸にゴングが鳴れば、リング中央では理宇と絢音が力比べを開始する。

 

 

 

「ふんっ!」「くっ!!」

 

「いけぇぇぇっ!!」

 

 

 

しかし、圧倒的力の差に絢音は優位をつかむとそのままロープへと放り投げる。

返って来た理宇にラリアットを放つ絢音。

 

 

「甘いっ!!」

 

「させないっ!!」

 

 

だが、潜り抜けるように避けた理宇は今度は絢音をロープに振る。

戻って来る絢音に逆水平チョップが迫るが、絢音はその腕を掴むとそのままアームホイップを仕掛けた。

軽々と放り投げられる理宇ではあったが、見事に着地すると歓声があがると2人はかすかに笑ったように見えた。

 

 

理宇は小さく深呼吸し、裕希子にタッチを交わす。

すると大歓声が会場にこだまする。

絢音も美星にタッチをしたのだが、いつもと雰囲気の違う美星に生唾を吞んだ。

 

 

 

「先手必勝~♪」

 

「ぐぅっ!!」

 

「えぇっ!?!?」

 

 

 

電光石火の速さの如く仕掛けた美星の流星レッグラリアットに裕希子は防御する暇もなく鋭い一撃をもらい倒されてしまう。

あまりの速さに共に練習した事のある絢音さえ驚いたように口を開けていた。

 

 

 

「・・・シッ!!」

 

「かはっ!?」

 

 

 

裕希子が膝を付いて起き上がろうとする中でロープの反動をつかって戻ってきた美星は、一瞬の躊躇もなくシャイニングウィザードをお見舞いしたのだ。

それを受けた裕希子はたまらずリング外へと逃げ出す。

 

 

 

「まだまぁぁだぁぁぁぁっ!!!!」

 

「なっ!?」「くっ!?」

 

 

しかし、それを美星は見逃さない。

相手をロックオンするように見据えると低姿勢から走り出し、ノータッチ式トぺ・コンヒーロを繰り出したのだ。

それには傍らにいた理宇も吹っ飛ばされて相手チームは2人共倒れてしまう。

いつもと違うランブル美星の存在に会場は大盛り上がりしていた。

 

 

 

「す、凄い・・・」

 

「絢音ちゃ~ん♪」

 

「は、はいっ!!」

 

 

 

呆気にとられている絢音。

だが、いつの間にかリング中央で裕希子を抱えながら手招きするいつもの美星に絢音は駆け寄る。

 

 

 

「行くよ~♪」「はいっ!!」

 

「「シューティング・バスタァァァ!!!!」」

 

「がはっ!?!?」

 

 

 

流れ星のような高速のツープラトン・ブレーンバスターを受けた裕希子。

立て続けに攻撃を受けている為か苦しそうな表情になっているのが手に取るように解る。

美星がすかさずフォールに入るが、カウント2.5で返されてしまう。

 

 

悔しいと感情的にマットを叩く美星。

しかし、なんだか嬉しそうに絢音とタッチする。

リングに残った絢音は、気合いとばかりに自分の頬をバチンと響くぐらいに叩くと裕希子を立ち上がらせた。

 

 

 

「はあぁぁぁっ!!」

 

「いぃっ!?」

 

 

 

 

逆水平チョップ。

バッシーーーン!という、すさまじい破裂音に客席が沸く。

すると今度は歯を食いしばり絢音が身構える。

 

 

「そう言う訳ね・・・・・やあぁぁぁっ!!」

 

「ぐっ!!」

 

 

 

お返しの逆水平チョップ。

絢音の定番ともなった根性比べのやり取り。

小柄なのにその力強い姿にファンが一番好きだと口をそろえて豪語する名勝負。

未だに負けなしの絢音は、誰であろうと胸を借りるつもりで行う。

それが、このベルトの掛かった試合でも・・・・・。

 

 

 

「うらぁぁぁっ!!!!」

 

「かはっ!?!?」

 

 

 

渾身の一撃。

それを受けた裕希子は崩れ落ちるように倒れてしまう。

それに対して勝ち誇るように拳を突き上げた絢音はそのまま技を仕掛けようとする。

しかし・・・っ。

 

 

 

「はぁっ!!」

 

「なっ!?」

 

 

 

隙を突くような巴投げ。

技を仕掛けようとしてくる絢音をそのまま放り投げたのだ。

虚を突いた技に驚いたような声を出して絢音は仰向けに倒れていた。

ハッとしたように起き上がるが、裕希子はふらつきながらも理宇とタッチしたのであった。

 

 

最初の雰囲気とは違う空気に絢音は深呼吸する。

理宇も感じ取ったの同じように深呼吸すると間合いを詰めて来た。

 

 

 

「はっ!!」

 

「なんのっ!!」

 

「まだっ!!」

 

「ぐふっ!?」

 

 

 

刈り取るように繰り出されたラリアットをしゃがむように回避する絢音。

しかし、それはフェイクであり、理宇はそのままの勢いで背後に回り込み投げっぱなしジャーマンを仕掛けたのだ。

いきなりの衝撃に表情を歪ませる絢音。

だが、理宇はもう次の動きに転じていた。

 

 

 

「行きますっ!!」

 

「ぐぅっ!!!!」

 

「・・・嘘」

 

「えっ!?」

 

「うそ~ん♪」

 

 

 

ふらつきながら起き上がろうとしている絢音にスワンダイブ式フランケンシュタイナーが見事に捉えた。

・・・かに見えたのだが、絢音は瞬時に相手の両太ももをがっしりと掴むと耐えたのだ。

それには技を仕掛けた理宇、そしてペアの2人も驚きの声をあげていた。

 

 

 

「へやぁっ!!」

 

「ぐっ!?!?」

 

 

 

渾身の倒れ込み式ジャンピング・パワーボムが炸裂。

まさかのパワーのごり押しに理宇もまともに受けてしまう。

絢音はすかさずフォールに入るのだが、カウント2で裕希子がカットに入った。

 

 

 

「邪魔はさせない・・・よっと♪」

 

「・・・・・んんっ!?」

 

 

 

しかし、そのカットを済ませた裕希子を追い出すように美星がリングに入ればヒップアタックでリング外に吹き飛ばしたのであった。

すると美星は耳打ちで絢音になにかを伝えるとタッチをした絢音は、「行くぞぉぉぉっ!!」と叫ぶと理宇を起き上がらせるとそのまま肩車をしてとある瞬間を待つのであった。

 

 

 

「見せてあげる~♪アタシの一番星♪ランブルゥゥゥヒップスタァァァダストッ!!!!」

 

「・・・・・ぶぅっ!?!?」

 

 

 

軽々とコーナートップに陣取るといつものように人差し指を掲げると空高く舞い上がり相手の顔面に目掛けてヒップアタックを直撃させた。

続けざまの大技に理宇も動けずにいた。

そして、美星は滑り込むようにフォールに入る。

 

 

1、2、3!!!

3カウントと同時にゴングが鳴り響くと美星は嬉しそうにガッツポーズをしていた。

絢音はと言うと・・・・・。

 

 

 

「へぇっ?私達・・・勝ったの?」

 

「勝った!勝ったぁ~♪大勝利だよ~ん♪」

 

 

 

キョトンとしている絢音に勝利を喜ぶように絢音の手を掴んで高々と挙げる美星。

そんな2人の姿に大歓声が送られた。

そして、ベルトを手渡された2人はお互いの腰に巻き合った。

すると美星はマイクを受け取るとリング中央に立った。

 

 

 

「本日は後輩である絢音ちゃんにベルトをプレゼント出来てほんっっとうにサイコーで~す♪」

 

 

 

本当に嬉しそうに笑顔で叫ぶ美星に観客からはたくさんの拍手が送られた。

一礼した美星は、そのままニィッと笑い絢音にマイクを手渡す。

いきなりの事にあたふたしてしまうが、大きな深呼吸をして絢音は落ち着こうとした。

 

 

 

「み、皆さんの応援のおかげで勝つ事が出来ました!!本当に・・・あ、ありがとうございました!!」

 

 

 

そう言って深々とお辞儀をすると会場のお客様が立ち上がり、絢音に対してお褒めの言葉とたくさんの拍手が浴びせられた。

 

 

 

『新日本タッグ王座』

 

 

 

佐倉絢音        マイティ裕希子

 

         VS

 

〇ランブル美星     菊池理宇×

 

 

 

24分41秒   ランブルヒップスターダスト  

 

 

 

こうして第73代王者となった2人は、『AngelStars』と言うタッグ名で今後活躍して行こうと約束を交わしたのであった。

その内容は、次の日の新聞やメディアで取り上げられる程に全国に報道された。

とある大きな出来事と共に・・・・・。

 

 

 

 

 

それは、女子プロレス界の歴史に佐倉絢音は偉業を成し遂げたのだ・・・。

 

 

 

女子プロレスラーで

 

 

最年少の

 

 

王者だと言う事に・・・・・。

 

 

 

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