JAPAN TEAM QUEENS CUP 準々決勝
洌崎 薫子とのタッグ戦。
しかし、対戦カードとリング中央で対峙すると絢音は震えていた。
そんな彼女を横目に大きな溜息をつくと薫子が口を開く。
「こりゃまたえげつない組み合わせやな、お二人さん」
目の前に立ちはだかるのは、パンサー理沙子と豊田 美咲のペアであった。
「そんな事ないんじゃないかしら?」
「どの口がそないな事言うとんねん!ベルセルクと新女のトップレスラーが揃ってなに抜かしとんねんっ!!」
「そんなに吠えてると子供っぽく見えるわよ」
「だ~れ~がぁ~!!子供じゃい!!えぇ加減にせぇよ!!」
バチンッ!!と乾いた音が3人のやり取りを止めるように鳴り響く。
音がした方に視線を向けると両頬を勢い良く叩いたのか手の跡がくっきりと残った絢音が涙目ながらに立っていた。
「本日はっ!!よろしくっ!!お願いしますっ!!!!」
大声と共に深々とお辞儀した絢音はそそくさと自陣コーナーへと走って行く。
「・・・ったく、ホンマおもろいやっちゃなぁ~」
頭をくしゃくしゃと掻くと薫子も会釈をすれば、絢音の待つコーナーへと向かう。
「あの子が最年少王者なのね」
「えぇ・・・しかも、実力は未知数なの」
「それは・・・侮れないわね」
美咲の言葉にギュッと拳を握りしめた理沙子は対面でストレッチをする2人を見据えていた。
ゴングが鳴って試合が開始すれば、リング中央で組み合うのは絢音と美咲であった。
「交流戦・・・以来じゃない」
「・・・・・はいっ!!」
「今日は負けないわ」
「負けませんっ!!」
「・・・ぐぅっ!?」
組み合っていた2人ではあったが、先に仕掛けたのは絢音。
相手を突き放したと同時に逆水平チョップを豪快に決めたのだ。
その全力の一振りに美咲は胸を押さえ蹲る。
「まだまだぁぁぁっ!!」
「うっ・・・がはっ!?!?」
「逃がさないっ!!」
「くぅ・・・うぅっ!!」
小柄なんて関係ないと思わせるように軽々と相手を逆さまに抱え上げると後方へ投げ、相手の背面をマットへ叩き付けたのだ。
見事なブレーンバスターに美咲はダメージを受ける。
しかし、絢音の攻めは終わる素振りはなく倒れた相手に対して逆エビ固めを繰り出したのだ。
流れるような連携技に美咲は苦痛な声を漏らす。
中央辺りでの攻防ではあるが、美咲は力任せに匍匐前進でロープに逃げ延びる。
ロープブレイクで解放された美咲ではあったが、絢音はそんな彼女を無理矢理起こしたのだ。
「次ぃぃぃっ!!!!」
「させないわよ!!」
「・・・・・がぁっ!?」
「思い通りに・・・させないわ!!」
「・・・・・ぐぅっ!!」
優勢な絢音ではあったが、美咲も半身を捻るとキレのあるローリング・エルボーをお見舞いする。
この不意を突く一撃で絢音の体勢を崩した美咲はすかさずノーザンライト・スープレックスを見舞った。
見事な連続技に翻弄される絢音だが、すぐに起き上がると2人はじっと睨み合う。
「佐倉ちゃ~ん♪交代しよかぁ~!!」
「は、はい!!」
不意に聞こえる明るい声に反応した絢音はすかさず薫子とタッチを交わす。
すると美咲もチラッと理沙子を見ると頷く彼女とタッチを交わす。
交代した2人は何も言わずにリング中央にて対峙する。
組み合う訳でもなく言葉を交わす訳でもない2人の空気に会場は固唾を呑んで眺める事しか出来ずにいた。
「シッ!!」
「・・・・・っ!?!?」
「遅過ぎるでぇぇぇ!!!!」
「・・・ぐっ!!」
目にも止まらない縦回転式ドロップキック。
受けた理沙子は驚いているのも束の間最速のリバース・フランケンシュタイナーに後頭部を叩きつけられたのである。
速過ぎる連携技に翻弄される理沙子だが、まだ浪速のスピードスターは止まらない。
「シューティングブレェェェド!!!!」
「・・・がぁっ!?!?」
「どないやっ!!」
起き上がろうと片膝を付いたタイミング。
そこを狙いすましていたかのようにその片脚を踏み台にして相手の膝上に乗り上がり、すぐさま相手の頭部に膝蹴りを繰り出したのだ。
その鋭い一撃にはリングの女王と呼ばれた彼女もダメージを受けてしまった様子である。
渾身の一撃を見舞った薫子はグッと親指を立てて自慢げである。
先程の一撃がまだ残っているのかふらつきながら起き上がった理沙子。
畳み掛けるチャンスと薫子はロープに走り出す。
「こいつもおまけやっ!!」
「・・・ぐぅっ!?」
「喰らっと・・・けっ!!」
「かはっ!?」
一回転してからのレッグラリアットが理沙子に突き刺さりロープに飛ばされると薫子はすぐに態勢を整える。
ロープの勢いをそのままに戻って来た理沙子にジャンピング・ネックブリーカー・ドロップが炸裂。
見事な技のコンビネーションにガッツポーズを決めると薫子は調子に乗ってコーナー最上段に駆け登る。
「このまま仕舞いやでぇぇぇっ!!!!」
「・・・・・っ!!」
「ぎゃんっ!?」
かなり高いフライング・ボディ・プレスであったが、理沙子が素早く転がって回避すると薫子は潰されたカエルのようにリング上に無惨な姿を晒してしまったのであった。
そんな薫子を起こすと側面から相手の脇下へ頭を潜り込ませるようにして組み付き、片腕で首の付け根あたりを、もう片方の腕で腰を抱えた。
「反撃・・・開始っ!!」
「・・・なぁぁぁっ!?!?」
見事な裏投げが薫子を襲う。
あまりの衝撃に叫ぶ相手を尻目に理沙子はまた薫子をゆっくりと起こす。
「まだ終わらないわよ」
「いぎぃぃぃっ!!!!!」
「洌崎さんっ!!」
巻きつくように絡みつくコブラツイストに薫子は目を見開き悲鳴をあげる。
ギチギチと締め付けられていく姿にカットに入ろうとした絢音。
しかし、薫子は人差し指を振りまだ自分が大丈夫だとアピールをしたのだ。
薫子と絢音の目が合った・・・次の瞬間・・・。
「ウチを舐めたらアカンでぇぇぇぇ!!」
「なっ!?・・・くぅっ」
素早い対応で相手の足のフックを外し、そのままアームホイップで理沙子を前方に投げ捨てたのだ。
その見事な対応力に驚きながらも返された事に悔しそうにマットを叩く理沙子。
「えげつないやっちゃなぁ~・・・一歩判断ミスしとったら危なかったわ」
「初めてのタイプね。・・・やりにくいわ」
「それは褒め言葉として・・・受け取っといたるわっ!!」
「ぐぅっ!?嫌味で言ったつもりだったのに・・・・・」
鋭いフライング・ニールキックだが理沙子はなんなくガードをするとそのまま距離を取ると交代をする。
薫子は軽いステップを踏み、臨戦態勢に入っていた。
「先手必勝っ!!」
「・・・っ!甘いわっ!!」
「甘いのは・・・アンタやでぇぇぇ!!」
「・・・がぁっ!?!?」
素早い水面蹴り。
しかし、それに反応をして回避した美咲は攻撃の態勢に入ろうとしていた。
次の瞬間・・・美咲の側面に見事な後ろ回し蹴りが突き刺さったのだ。
このトリッキーな一撃には想定外だったのか吹っ飛ばされると痛みに脇腹を押さえていた。
「決めるっ!!」
「・・・・・・・・・・っ!?!?」
ウラカン・ラナ・インベルティダ。
目にも止まらぬ早業に美咲は2.5のカウントで返す事に成功する。
だが、薫子はまだ止まらない。
すぐさま美咲を起き上がらせると自陣のコーナーへと連れて行く。
「絢音ちゃ~ん♪」
「は、はい!!」
「よっしゃー!!邪魔者は退散じゃ~!!」
「うっ!!??」
美咲を絢音に託した薫子は飛び出すように相手のパートナー理沙子を吹っ飛ばした。
その間にも絢音は美咲をパワーボムの体勢で身構えていた。
すると帰って来た薫子は美咲の頭を掴んで2人は大きく叫ぶ。
「「ツイン・パワーボム!!!!」」
2人の力が合わさった一撃が炸裂。
それを受けた美咲に対してフォールする絢音。
しかし、2.8で返される展開に会場の歓声が響き渡る。
絢音はすぐに美咲を起き上がらせると自分の得意技に移行する。
さっきとは違い高らかに持ち上げた・・・次の瞬間。
「りゃぁぁぁっ!!」
「・・・・・えっ!?!?」
投げようとしていた絢音が逆に返し技のヘッドシザーズ・ホイップで放り投げられたのであった。
まさかの返しに呆気にとられた絢音。
そんな展開に美咲は攻勢に転じた。
「まだ終わらないわっ!!」
「・・・がぁっ!?!?」
見事なタイガー・スープレックスが絢音を襲う。
あまりの衝撃に苦痛の表情を浮かべたが、2.5で返す事に成功する。
だが、美咲はゆっくりと絢音の頭を掴んで起こすと自分のオリジナル技を仕掛ける。
「これで・・・決めるっ!!!!」
「・・・あぁぁっ!?!?」
会心のミサキスペシャルが絢音を捉えた。
連続での大技に絢音は大の字になって身動きを取れずにいた。
美咲もダメージがあるのかふらつきながらもフォールに入るが、今度は薫子のカットで邪魔が入る。
その薫子を追い出す為に理沙子もリングに入り込む。
「貴女の出番は・・・」
「・・・もうないわっ!!」
2人のクロス・ボンバーが薫子を襲う。
「遅過ぎるんじゃっ!!」
「「・・・・・・・・・・っ!?!?」」
とっさにしゃがみ込んで避けた薫子はロープに向かって走り出してエプロンサイドに移動するとトップロープに飛び乗り2人目掛けて飛びついた。
「ボケがぁぁぁっ!!!!」
「なぁっ!?」「かはっ!?」
こちらを向いた2人の首を手慣れた様に小脇に挟み込んでの浪速式DDT。
まさかの一撃に2人は大ダメージなのか起き上がれないのか理沙子はリング外へと落ちていく。
その間に大の字だった絢音は起き上がっていた。
「いっちょデカいのかましたりっ!!」
「・・・・・はぁ”い!!」
リング外に戻る薫子に言われた一言に苦しそうな声ながらも絢音は力強く返事をした。
ゆっくりとだがコーナートップに立つとグッと拳を突き上げた後に飛び込んだ。
「だあぁぁぁぁっ!!!!」
「・・・・・・・・・・っ!?!?!?」
小柄なりにも気合のこもったボディ・プレスが美咲のボディに突き刺さる。
攻勢に転じて勝機を掴み取る作戦は若き戦士によって打ち砕かれたのである。
勝負が決まったのを確認したと同時に絢音の意識はプツンと消えてしまった。
JAPAN TEAM QUEENS CUP 準々決勝
タッグマッチ
『StrongGirls』 『God of destruction』
洌崎 薫子 ●豊田 美咲
VS
〇佐倉 絢音 パンサー理沙子
38分22秒 ダイビング・ボディ・プレス
「「「「「「乾杯っ!!!!」」」」」」
場所は・・・浪速や。
JAPAN TEAM QUEENS CUPを終わり、チーム:StrongGirlsのメンバーが集まって反省会兼お疲れ様会を開催していた。
たくさんの料理が並び、絢音以外はお酒を片手に談笑しているのであった。
「いやぁ~なんやかんやでベスト16まで行けたんは凄いこっちゃなぁ~♪」
「でも、でも!!あのオールスターチームは何だったんデース!?!?」
「ジャッカル東条、ジェナ・メガライト、豊田 美咲、パンサー理沙子、クリス・モーガン、真田 朱里・・・・・ふふっ、タイトル戦でなきゃ中々お目にかかれないメンバーね」
「ジャッカルの奴がエンターテイメントが必要とかぬかしよってあの2人をそそのかして連れて来たみたいなんやっ!!ホンマけったいな話やでっ!!」
「う~ん・・・でも~久し振りに全力で闘えたから私は満足したかなぁ~・・・・・」
「大空選手とクリス選手のパワー対決は迫力ありましたもんねっ!!」
「NonNon!!アレはT-REXとT-REXのバトルだったデース!!!!」
などと盛り上がっていたのだが、薫子が急に絢音に肩を組むととある話題に変わった。
「・・・・・にしても、佐倉ちゃんだけやないか全勝しとるんわ。ホンマにヴァルキュリアは今後安泰やなぁ~♪」
「えっ!?!?そ、そんな皆さんのサポートもあったおかげですし、私はまだ1年も経っていない新人ですから・・・・・」
「What!?アヤネェェェ!!それは本当デスか!?!?」
「うぇっ!?な、なにがですか!?!?」
「まだ1年も経っていないと言う事です」
「あっ・・・・・はい」
「Oh!!VeryGood!!」
「великолепный(素晴らしい)。そうなればボク達のベルトも狙いに来るかい?」
「えええええっ!?!?!?」
「おぉっ!?面白い話になって来たなぁ~!?佐倉ちゃんは早くも世界進出かぁ~???」
「それも良いじゃないかしら?」
「ふぇ~・・・十六夜さんまでぇ~・・・・・」
大きな笑い声が浪速やに響き渡る。
しかし、この出会いがこの先なにを生み出すのかなど誰も知りもしないのであった。