世にも奇妙な鎮守府   作:夜間飛行

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男「ある艦娘が連れられてきます。彼女がもし何もしなければ、奇妙な世界に迷い込まなくて済むのですが……」


そのボタンを押すな

ガングートが1人の男に連れられて暗い廊下を進んでいた。

 

ガングート「おい、私をどこに連れて行くんだ?」

男「行けばわかります」

 

何を聞いても帰ってくるのは同じ返答ばかり。ガングートはもう諦めて黙ってついて行くことにした。

 

しばらく進むと一つのドアの前についた。鉄の錆びたドアを開けるとそこにはコンクリート製の部屋があり、椅子が一脚置いてあるだけだった。

 

男「入ってください」

 

ガングートは言われた通り部屋に入った。するとドアを閉められてしまった。

 

ガングート「おい!おい!何も聞いてないぞ!おい!おい!」

 

ドアをガンガン叩くがびくともしない。ガングートは無駄なことはやめようと椅子に座ることにした。

 

ガングート(何なんだこれは?提督から給料を上げるからって受けた仕事だが、全く意味がわからん)

 

ガングートはそんなことを考えながら部屋をしばらく見回すと、あるものに気がついた。

 

ガングート「何だコレは?」

 

そこには1つのボタンがあり、その下にはこう書かれていた。

 

『押すな』

 

ガングート「『押すな』?何か大事なボタンなのか?まぁ、押さない方が得策だろうな」

 

ガングートは椅子に戻った。そこからボタンのことは考えないことにした。

 

数時間後

 

ガングート「おーい。いつまで待たせる気だ?」

 

その瞬間、少しボタンを押してみたいと思ってしまった。

 

ガングート(だめだ。何かあったらどうする。いやぁ、しかし……)

 

そこからガングートの葛藤が始まった。部屋中を動き回り、ボタンに近づいては離れ、手を差し出せばその手を抑え、押したいという欲望と押してはいけないという理性がぶつかり合い奇怪な行動を繰り返す。ガングートはドアを思いっきり叩きながら叫ぶ。

 

ガングート「お願いだ!開けてくれ!いいのか!?押してしまうぞあのボタン!!いいのか!?押すぞ!?」

 

 

十数分後

 

 

ガングートは結局押さなかった。元の椅子に座ってただ待っているようにも見えるが、足は貧乏ゆすりをしていた。やはりあのボタンが何なのか気になってしょうがないのだ。そこからまたガングートの葛藤が始まる。同じように奇怪な行動をするガングート。そして十数分後……

 

ガングート「……押してやる」

 

ボタンに向かってずんずんと歩いていくガングート。まだ理性が残っているのか非常にゆっくりと震えながら手を差し出す。息をするのもままならない状態で指先がボタンへと近づいていく。ついに覚悟を決めボタンを押した。

 

その刹那、サイレンが鳴り響き、先ほどの男が入ってくる。

 

男「ちょっと!押さないでくださいって書いてあるでしょ!?」

ガングート「いやいや!だがあれは……」

 

その男に連れられてガングートは部屋を出ていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

その様子をマジックミラー越しに見ている白衣の男たち。ガングートが部屋を出ていくと拍手が巻き起こった。

 

教授「今の戦艦艦娘はこれが実験であったことを全く聞かされておりません。御覧のように人間は禁じられたことほどやりたくなるという動物なのです。これを『カリギュラ効果』と呼びます。これはかつてアメリカで公開された過激映画『カリギュラ』から取られております。内容が余りにも過激で上映禁止になると、さらに注目を集めるという結果が出た為です。これについては来週また再び詳しくやりましょう。では次の実験の準備を」

 

教授がそういうと先ほどの部屋の隣のカーテンが払われ同じ部屋が出現する。そして一方の部屋に研究員2人と双子の艦娘が入ってきた。

 

教授「双子のシンパシー実験です。双子の一方が受けた苦痛は果たしてもう一方の双子に伝わるかどうか」

 

一方が研究員に連れられて隣の部屋に入る。そしてそれぞれが部屋にある椅子に座ると研究員が実験道具を持って入ってきた。

 

教授「この美しい一卵性双生児の潜水艦娘。名前は伊13と伊14といいます。まず隔絶された別々の部屋に置きます。2人はお互いに相手の状況を知りません」

 

ヒトミの右腕に電気コードをはりつける研究員。ヒトミはそれを不安げな表情で見つめる。

 

教授「電気ショックを与えてみましょう。お願いします」

 

教授がそういうと指示通りに研究員は機械のスイッチを入れた。

 

ビリッ

 

ヒトミ「痛い!」

 

それを見た研究員たちはいっせいにイヨのほうを見た。イヨにはなにもしていない。普通に考えれば、なにも起こることはないはずだ。

 

イヨ「痛っ!」

研究員たち「おお~~~っ!」

 

イヨはヒトミがコードを貼り付けられた場所と同じ場所を押さえた。実験は見事に成功。研究員たちは割れんばかりの拍手を教授に対して送った。

 

教授「双子特有のテレパシー現象を説明することができるというわけでございます」

 

その時、1人の研究員が手を挙げた。

 

研究員「あの、質問があります」

教授「ん~?」

 

話の腰を折られた教授は若干不機嫌そうに答える。

 

研究員「先ほどの戦艦艦娘も双子でしょうか?」

 

どんな質問が来るのかと思えばあまりにも的外れな質問だったのでさらに不機嫌になる教授。

 

教授「そうじゃないんだよ。さっきはさっき!実験は全然別のもん……」

 

教授が研究員に対し文句を言いながら手元の資料を見ると教授は驚いた。

 

教授「あら?ハハッ双子だ。被験者はロシア海軍に艦娘として所属しており、現在日本に留学に来ていますが、双子のもう一人のほうは同じロシア軍に所属しているが全く違った役職に所属している」

 

 

ロシア

 

 

突然白煙が上がり、天へ向かって伸びていく。

 

ロシア戦略ロケット軍の司令部ではサイレンが鳴り響き、隊員が駆けずり回っていた。

 

部下「将軍!どうしてあのボタンを押したんですか!!これじゃもう第三次世界大戦は免れません!!」

 

そう、ガングートの双子の姉はロシア戦略ロケット軍の最高司令官だったのだ。

 

姉「私にもわからん!!急にどうしても押したくなって押してしまったんだ!!」

 

ガングートの双子の姉が指さす方向には確かにボタンはあった。ただ下にこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『核ミサイル発射ボタン 

司令官命令以外には

押すべからず』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どんどん飛んでいく核ミサイル。

 

姉「どうして押したくなったんだろう?」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ガングート「やっぱり押さないほうがよかったのか?」

 

ガングートはなぜか急にそんなことを思った。そんなことを思いながらガングートは鎮守府へと帰る。この世界のどこかでキノコ雲が上がっているとは知らないままで。

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