世にも奇妙な鎮守府   作:夜間飛行

4 / 7
男「祝い事で食べるごちそう。ケーキ、ステーキ、寿司。いろいろあります。しかし時にはすき焼きなんてものもいかがでしょうか?」


理想のスキヤキ

まず、牛脂を鍋一面に広げる。

 

 

その上に薄切りの牛肉。そして、肉の上に砂糖。

 

 

肉に甘さが移ったところで醤油、酒を加える。

 

 

関東風の場合はあらかじめ作られた割り下で具を煮ていくが、私がロマンを感じるのはこの関西風。

 

 

具材はネギ、焼き豆腐、しらたき、シイタケ、エノキ。

 

 

しらたきはカルシウムの成分が牛肉を固くするので牛肉から距離を置く。

 

 

配置は肉60度、ネギ70度、豆腐90度、しらたき60度、シイタケ50度、エノキ30度が好ましい。

 

 

この段階で水や酒を加える人もいるが、私の場合は春菊を投入し、ふたを閉じて3分。自然と野菜たちが鍋の中に汁を満たしてくれるのを待つ。この3分間を私は『神の時間』と呼んでいる。

 

 

さてここで卵だ。かき混ぜるのは9往復半。白身が醸し出すどろりとした食感を失わないギリギリのところで止める。

 

 

あとは完成を待つだけ。

 

 

ただ、すき焼きに明確なルールは存在しない。関東風、関西風の違いだけでなく、具材の種類、配置、手順。家庭の数だけ作り方が存在する。これはあくまで私のベスト。私にとって『理想のスキヤキ』だ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

?「………ぎ……かぎ!………おい!赤城!」

 

赤城「え?」

 

提督「大丈夫か?」

 

この人は私、一航戦赤城が所属する鎮守府の提督。そしてこれから私の旦那様になる人です。

 

赤城「あ……いえ!私は大丈夫です!」

提督「あ、もしかして緊張してるのか?大丈夫だって!俺の親父そんな固い人じゃないから!」

 

そうだ。今日のメインイベントは提督のご両親から結婚の許しを得ること。それなのに私ときたらスキヤキのことばかり。何しろ3年ぶりなのだ。金剛さん改二記念パーティー以来一度も食べてない。一人で食べるすき焼きほど虚しいものはない。2人でも物足りない。最低3人は必要。4人なら最高!そして今日。その環境がようやく整ったんです。

 

提督「心配すんなって!きっと家族も気に入ってくれるから!」

赤城「……そうですよね!大丈夫ですよね!」

 

ちなみに私が提督と出会ったのは先ほど出た金剛さん改二記念パーティーのすぐあとのことです。私が秘書艦を務めることになり、私は少しずつ彼に惹かれていったんです。

 

ガラガラ

 

父親「ただいま」

提督「帰ってきたみたいだな」

 

提督の父親の職業は印刷会社の社長。さすがにいい暮らしをしている。かといって成金趣味ではない。スキヤキの雰囲気がじっくりと似合う落ち着いた雰囲気の日本家屋だ。

 

赤城「どうも初めまして。横須賀鎮守府第一航空戦隊所属赤城と申します。本日は突然お邪魔して申し訳ありません」

父親「そんな固い挨拶はいいからくつろいでください。母さん、ビール」

母親「はーい」

父親「赤城さんはいける口ですか?」

赤城「あっ、はい!」

父親「グラス3つな」

赤城「あ、でも、皆さんそろわれてからで……」

母親「先始めててください。こっちも終わりますから」

赤城「あでも、何かお手伝いできるようなことがあれば……」

母親「いいんですよ。そこののんべえの相手してもらうのが一番助かるんですから。龍一、具材持ってくるの手伝って」

提督「わかったよ母さん」

父親「ほら。じゃあ」

赤城「いただきます」

 

非常に好感の持てる家族です。気さくで偉ぶるところのない父親。陰で父親を支える母親。そして提督。

 

父親「ありがとう」

赤城「はい?」

 

父親からの唐突な発言に私はちょっと意外という感じの声が出た。

 

父親「赤城さんが来てくれたおかげですよ。こういう機会じゃないとすき焼きなんて贅沢できないですから」

赤城「はあ……。あ、どうぞ」

 

そしてなにより、すき焼きを贅沢品だと敬い、特別な日に振る舞う庶民的な感覚。すき焼きを囲むパートナーとして申し分ないですね。あ、私としたことが、またすき焼きを中心に。今日はすき焼き2、ご両親へのあいさつ8の割合で行くべきなのに。まさにすき焼きにおける肉と野菜の割合のように。

 

具材がようやく来ましたね。す、すごい!100グラム1000円以上はするであろう牛肉!私は生唾を飲んだ。具材もいい感じですねえ。焼き色鮮やかな豆腐!みずみずしさあふれる長ネギ!しらたき!春菊!シイタケ!エノキ!エリンギ!………え、エリンギ!?な、なぜエリンギが?

 

母親「あ、もしかしてシイタケお嫌いかしら?」

赤城「あ、いえ!」

 

問題はそこじゃないですよ!すき焼きの中に西洋の食材を取り入れるなんて古き良き日本家屋が立ち並ぶ京都の街並みに突如イタリアンジェラートの屋台が出現したようなミスマッチ!しかし、すき焼きには家庭のオリジナリティーというものがありますからね。ここはここを尊重すべきだわ。

 

父親「母さん。アレがないぞ」

 

『アレ』というのは何?これ以上余計な具はいりません!

 

母親「アレは最後に持ってきますから」

父親「頼むよ。アレがないとすき焼き食った気しないからなぁ」

 

締めの話ですか。うどん?いや、おじやというパターンもある。できればうどんがいいです。すき焼きの後のおじやというのは味が濃くなりがちですから。

 

母親「じゃあ、お父さん後はお願いね」

父親「はいはい」

 

これもすき焼きの魅力。普段全く家事をしないような父親でもすき焼きの時だけは腕を振るう。すき焼きが家族団欒の象徴として確固たる地位を築いているのはこの分担にあると言えるでしょう。やはりこの家庭には愛が溢れています。提督を見ればわかります。愛のある教育を受けてきたからこその気立ての良さ。器量の良さ。このスキヤキが終わったらご両親に約束しましょう。提督とともに幸せになりますって。

 

これは!関西風!待ち望んでいた展開です!あっ、しかし!火が強いです!これでは、肉汁が鍋に染み出す前に表面だけが焼けちゃいます!ならばそっと手を伸ばしてコンロの火を……。これで良し。影ですき焼きを操るこの感じ。悪くないですね。あ!お義父さん!まだ醤油はもう一呼吸おいてからです!ここは……。

 

赤城「あっ!時計!素敵なデザインですね!」

父親「ん?これか?部下が誕生日にくれたんだよ」

赤城「すごくお似合いです。あっ、すみません」

父親「ああ」

 

これでタイミングはバッチリ。砂糖の甘さが十分に染み渡ったはずね。そして具材を入れてよしと。雑な部分もあるが最低限のルールはわかっているようね。

 

提督「なあ親父、なんでしらたきと牛肉いつも離してるんだよ?」

父親「何だったっけ?えーっと……」

赤城「確か、しらたきのカルシウムが肉を固くしてしまうからだったかと」

父親「ああ!そうだそうだ!」

提督「赤城、お前結構詳しいんだな」

赤城「あいえ、たまたま知ってただけですよ」

 

裏でしっかりと働いてるんですから、これくらいの評価はいいでしょう。いよいよ春菊の投入ですか。ここまでくれば失敗はない。後はふたを……ふたを……ふたを!……ふたを!!……しないんですか!!こういうところは素人!すき焼きに『神の時間』を与えることの重要さを全く分かっていない!ここはさりげなくふたを……反対側だ!遠い!見つからずに作戦を遂行するのは厳しい距離!どうしましょう!ここは注意するべきでしょうか!あ、いや上機嫌で仕切っているお義父さんの気分を害してしまう可能性も!しかし、この間にも水分が飛んで味が濃くなっていく!どうしよう!どうしよう!どうしよう!だめです!これ以上は!もう強引にでも!

 

パッ

 

赤城「?」

 

蓋を取りに立ち上がろうと手を机の角に置くと何か温かいものが手に当たった。見ると提督が手を握っています。

 

提督「落ち着け赤城。その話はスキヤキを食べてからだ」

赤城「……ええ、そうですね」

 

そうでした。今日の目的はすき焼きをベストな状態で食べることではありません。危ない危ない。この和やかな雰囲気を台無しにしてしまうところでした。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

父親「そろそろかな」

提督「うまそうだな」

母親「さすがお父さん」

 

いい。遠回りはしましたけどすき焼きはすき焼き。その輝きが失われることはありません。今はあんなに憎んでいたエリンギでさえ愛おしく感じちゃいます。

 

父親「さあ、赤城さん。遠慮なく食べてください」

赤城「ありがとうございます」

 

普段の私なら真っ先にいただくところですが、ここは大事な場。遠慮なくというわけにはいきません。食べ物の中で一番人間性が現れるのがすき焼き。ここは主が手を出すまでは待機。そして私が最初に食べるのは一番人気のないエノキ。それだけでは人間が小さいと思われかねないのでネギを添える。豆腐は崩れる危険性があるので最初はパス。これが私が一週間にわたるシミュレーションで導き出した最高の一手。初対面の人の前でいきなり肉から行くのは愚の骨頂です。

 

さて、まずはエノキを……ってお義母さん!?しょ、正気ですか!?今まで裏方に徹していたお義母さんが一番最初に肉を!!しかも一枚どころではない!場にある3分の2を!!

 

母親「みんなどんどん食べてね」

 

主役を奪っといてどんどんも何もないでしょ!!野菜だけをどんどん食べろっていうんですか!?なんて横暴な!一家の主として注意すべきですここはお義父さん!!

 

豆腐を取る父親

 

のんきに豆腐を食ってる場合じゃ、ああ!豆腐が崩れたぁぁぁ!豆腐が……豆腐が……豆腐がぁぁぁぁ!!

 

食べ続ける父親

 

残りは放置ですって!?鍋の中に豆腐のかけらが散乱してしまいますよ!!責任を取ってください!責任を!!

 

父親「どうしました?赤城さん。そんな怖い顔して」

 

え?あっ、しまった。感情がつい顔に出てしまいました。

 

赤城「あっ、いえ……」

提督「緊張してんだよ。そんなんじゃせっかくのスキヤキも美味くないだろ?楽しく食べようぜ」

赤城「はい」

 

楽しく食べよう。そうですよね。その通りですよね。私としたことが自分の思い通りいかないからってピリピリしていました。さすが提督いつも絶妙のタイミングで私を、そしてみんなを救ってくれる。

 

赤城「すみません。いただきます」

 

美味しい!上質な肉のエキスを程よく吸っていますね!ネギもいい仕上がりです!

 

ニュルン

 

ウッ!熱ぅぅぅぅぅ!ネギの芯がにゅるっと喉に!耐えるのよ!元に戻すなんてできません!耐えて!一航戦の誇りにかけてネギなんかに負けてはだめよ!!

 

父親「赤城さんは鎮守府のどこの所属でしたっけ?」

 

このタイミングで質問ですかお義父さん!!まずい!ネギの熱さを計算に入れずに口に入れた無計画な娘だと思われちゃいます!飲み込んで!飲み込むのよ!

 

ゴクン

 

赤城「……第一航空戦隊です」

父親「第一航空戦隊ね」

 

危なかった。卵のコーティングがなかったら、のどに大やけどを負うところでした。そもそもすき焼きの卵は熱い食材を冷ますために考案されたもの。今回はそんな先人たちの知恵に救われました。さて、このあたりでエリンギ(ヤツ)を試してみることにしましょう。郷に入っては郷に従えです。

 

うん、悪くない。いえむしろだいぶいい!この歯ごたえ!絶妙です!

 

父親「いい顔して食べますねぇ」

母親「食べ方がとても上品だわ」

父親「いい娘を捕まえたな」

提督「やめろよ親父」

全員「はっはっはっはっは」

 

よし。つかんでます。すき焼きという人間性が現れる料理に対してここまで完璧なパフォーマンスをすれば誰もが私を気に入るはず。これだけの評価を得たんでしたら、肉に手を出しても……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えっ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肉がない!どこに行った?提督じゃない。お義父さんでもないですし……お義母さん!!また肉を!この女見境なしですか!?

 

父親「母さん」

 

そうですお義父さん!今度こそビシッと言ってやるべきです!

 

父親「ここからは日本酒にしようかな」

 

何っ!?

 

母親「ハイハイ。赤城さんいるんですからあまり飲みすぎないようにね」

父親「わかってるよ」

 

何が飲みすぎないようにですか!肉を食いすぎてる人間が偉そうに!

 

飲みかけの酒をかける父親

 

赤城「あ……今、何を……?」

提督「親父、何してんだよ」

父親「こうすると味にコクが出るんだよ」

 

そんな話聞いたことないですよ!?ドイツ人じゃあるまいし!!

 

提督「ふーん。そうなんだ」

 

そんな説明で納得しないでください!

 

父親「肉も柔らかくなるしな」

 

そんなバカな!その前に味はどうなる?しかも飲みかけのものを入れるなんて!モラルがないんですかこの両親は!!

 

母親「そろそろ第二弾行きますか」

父親「お!いいねぇ!」

 

ま、待ってください!まだ野菜が残ってます!第二弾はすべての具材を片付けてからでしょう!?ああ!しかもそんな無造作に!ん?この肉、さっきのと色が違います。まさか先ほどのよりも安い肉!?この女!肉が劣化する展開を知ってて先行逃げ切り型で肉を食べましたね!?

 

父親「赤城さん箸が進んでないみたいじゃないですか。遠慮はいりませんよ」

 

な、なにをするんですか!?勝手に具材を取らないでください!私には私のペースがあるのに!

 

父親「さ、熱いうちに」

赤城「ありがとうございます」

 

素人が勝手なことを。しかもこのねぎはまだ食べごろじゃない!しかも肉が一つもない!

 

父親「母さん、卵おかわり」

母親「じゃ、私も」

 

卵は一つまででしょう!?ペース配分がめちゃくちゃですからこんなことになるんです!!

 

 

数十分後

 

 

父親「結構食ったな。赤城さんも満足してくれましたかな?」

赤城「ええ」

 

満足できるわけがないでしょう。ここまでレベルの低いすき焼き素人に場を荒らされたら。

 

母親「きれいに食べてくださったのね」

赤城「ハハ……」

 

卵の量を計算し、計画を立てて具を消化していけば、卵一つですき焼きを堪能することができます。私とあなたたちとはすき焼きレベルが違うんです。

 

父親「しかし……残念ですね」

 

え?何が?

 

父親「卵がないと、これができないじゃないですか」

 

鍋に卵を入れる

 

母親「そうよ。この卵がおいしいのよ」

 

こ、こいつらぁぁぁぁ!自分たちが何をしているのかわかってるんですか!?皿のものを公共の場に放つなんてすき焼きを冒とくしています!!もう限界です!!こんな人たちと家族なんかになれるわけがありません!!この結婚は……

 

いや……提督だけは卵を投入することもせず、マナーを守って食べていますね。提督に非はありません。そうか!2度と両親とすき焼きを食べなければいいだけの話じゃないですか。何年後になるかわかりませんけど、提督との間に2人の子を作り新たな家庭ですき焼きを食べればいい。豆腐を冷ます姿もなかなか愛らしいじゃないですか。提督ってこんなに猫舌だった……ん?これは……卵!?この人、まさか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

た、卵をつけずにそのままいってる!そんな馬鹿な!卵を鍋に入れる行為ももちろん許せません!ですが、それ以前に卵を使わないなんてすき焼き自体を根本から否定してます!卵をつけることを端折ったすき焼きなどもはやすき焼きではありません!!ただの、ただの!牛の甘辛鍋です!!だめです!こんな人と一生添い遂げるなんてありえません!

 

提督「やっぱすき焼きって最高だよな」

 

あなたがすき焼きを語らないでください!あなたが食べたのはすき焼きじゃありません!もう終わりです!やはり提督との結婚はなかったことに!

 

父親「母さん、そろそろ」

母親「ハイハイ、今用意しますからね」

 

そうでした。まだシメが残ってました。よし、最後に彼らにチャンスをあげましょう。もしうどんが出てきたらもう少しここに残る。おじやだったら、黙ってここから出ていき、鎮守府からも姿を消し、永遠に彼らの前から姿を消す。鎮守府の戦力だなんて知ったことじゃありませんね。さあ、どっちですか!?

 

母親「はい。お待たせしました」

 

出てきたのは真っ黒な何か。何コレ!?

 

父親「おお、待ってました待ってました」

提督「おやじ本当にソレ好きだよな」

父親「お前だって小さいときこれがないと泣きじゃくってたじゃないか」

 

小さい頃からこれが?

 

母親「でも危なかったわ!スーパーで残り一つだったのよ?」

 

スーパーにこれが!?

 

父親「お中元にもらったのももうなくなったのか?」

 

お中元にこれが!!?

 

父親「今日のは養殖じゃないだろうな」

母親「天然ものよ」

 

天然物のこれって何ですか!?いや、これが養殖されてるのも相当気味が悪いですね。ていうかこれは何ですか!?

 

父親「少し火を弱めようかな」

提督「ああ」

母親「あんまり強火だとカリカリになっちゃうもんね」

 

これがカリカリに?

 

母親「赤城さんはカリカリ派だったかしら?」

赤城「いえ、カリカリ派というより……う、うどん派……」

全員「うどん?」

赤城「え?」

父親「すき焼きに……うどん?」

 

何?

 

母親「すき焼きに……うどんを?」

 

何?何なのこの空気!?

 

赤城「……なんちゃって」

全員「ハハハハハ」

父親「冗談やめてくださいよ。すき焼きにうどんなんて気持ち悪いですよ」

赤城「ですよね!」

 

これのほうがよっぽど気持ち悪いでしょう!?

 

父親「赤城さんはどっちでいく?」

赤城「え?どっちというのは?」

父親「まさか、このままでいくなんてことはないですよね?」

赤城「……ええ!も、もちろん!私は……しょう……?」

全員「しょう?」

赤城「あ、いえ!……ケチャ……?」

全員「ケチャ?」

赤城「…………塩で!」

父親「塩!母さん塩とマスタード」

母親「はーい」

 

正解だったんでしょうか?

 

父親「塩とはなかなか通な食べ方ですねぇ」

 

セーフ。これは一体……

 

父親「すき焼きって幸せだよなぁ」

提督「そうだな」

母親「幸せよねぇ」

 

これをすき焼きと呼ばないでください!これはすき焼きではありません!私が信じていたすき焼きっていうのはこんなのじゃ……こんなのじゃない……

 

父親「火が通りすぎないうちに早く」

赤城「いや私は……」

母親「はい、お塩。ゲストなんですからお先に!」

赤城「いえ……」

父親「本番前に腹がいっぱいになったなんて言わせませんよ?」

 

これが本番?ちがう!すき焼きというのは

 

提督「早くしないと固くなるぞ?」

 

すき焼きというのは……

 

父親「赤城さん」

 

すき焼きというのは……

 

母親「さっ!赤城さん!」

 

すき焼きというのは……

 

提督「いつものお前みたいにガブッて!」

 

すき焼きというのは……すき焼きというのは……すき焼きというのは…………

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

すき焼きというのはまず、牛脂を鍋一面に広げる。その上に薄切りの牛肉。火が通るまで鍋の上で炒める。そして、肉の上に砂糖。具材はネギ、焼き豆腐、しらたき、シイタケ、エノキ、最後に春菊を投入し、ふたを閉じて3分。その間に卵をかき混ぜ、準備を整える。

 

提督「さあみんな!今日は文月改二記念パーティーだ!無礼講だ!存分にご馳走を食ってくれ!乾杯!」

艦娘「かんぱーい!」

 

そして、煮えた具材をとっとと平らげて、

 

赤城「鳳翔さん!『アレ』あります?」

鳳翔「ええ!もちろん!今日は天然ものですよ!」

赤城「養殖じゃないんですね!皆さん!もう全員食べましたか?」

艦娘「はーい!」

赤城「じゃあお願いします!」

鳳翔「ちょっと待っててくださいね」

 

数分後

 

鳳翔「皆さーん!準備できましたよ!」

艦娘「おおーっ!」

 

初月「姉さんは何にする?」

秋月「私は断然ソースよ!」

 

長門「私は豆板醤だな」

陸奥「たまにはバルサミコ酢にしようかしら」

 

飛竜「蒼龍。何かけてるの?」

蒼龍「え?マヨネーズ。最強よ!」

飛竜「へー。後で私にも貸して!」

 

那智「ポーラは何かけてるんだ?」

ポーラ「え?オリーブオイルよ~?」

那智「うまいのか?」

ポーラ「ええ!とっても!イタリアンな感じになるわぁ~」

 

みんなも私同様アレの虜になってしまったようです。

 




男「あなたが信じている真実というのは正しいのでしょうか?今体験している日常、たとえば今あなたが見ているものも。しかし、アレはおいしいですよねぇ。」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。