「で、次は雫とエイミィのエンジニアだな」
戻ってきてそう言うと、二人は首をかしげていた。
「ん? 何か顔についてたりするか?」
「うんうん、ただなんか無感動だなって」
「もう少し勝利の余韻に浸ったままでも罰は当たらないんじゃないの?」
なんだ、そんなこと。
「だって拍子抜けだったんだぞ。
将輝とやるまで飽きないためにいろいろ用意したのに・・・。
モノリスではもっと血沸き肉躍る闘いをしたいものだ」
雫とエイミィは思った。『やっぱり昼夜ってどこかおかしい』と・・・。
「まあ魔法を自由に使って競える場所なんてほとんどないんだからお前たちは手を抜くなよ」
夏休みは帰省して訓練しなくてはと考えつつ、二人の試合のことを考える。
「雫の相手は油断さえしなければまず負けない。
問題はエイミィだ。十七夜選手の攻撃は振動系魔法の波の合成。
パワー型のエイミィに対して制御型だから向こうの出方次第だな」
「え~、何かいい作戦とかないの?」
駄々をこねるかのように聞いてくる。作戦も何もなんだが・・・。
「いいか。今までの相手にも制御型はいたが、エイミィのペースで倒せただろう?
だからペースさえ奪わせなければ負けることはない。
それから、制御面で張り合おうとするなよ。それはエイミィの持ち味を殺す」
言えるアドバイスはそれだけだろう。最後に蓋を開けるかは本人次第だし。
「ねえ、私にはアドバイスないの?」
なんだか拗ねたように雫は聞いてくる。
「雫は深雪に勝つつもりだろ?」
「え? まあそれはその通りだけど」
「じゃあアドバイスは決勝まで持ち越しだな。
と言うか、決勝まで負けるようなことはないように!」
そういうと、雫は渋々と言った感じではあるが頷いた。
さて、ここからピラーズ女子はどう動くのやら・・・。
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達也がエンジニアを務める深雪は当然、雫も難なく準決勝に駒を進めた。
そして問題のエイミィの試合が今から始まる。
エイミィがCADを係員に渡すところで眼を使ってみる。
特に怪しいことはない。CADに細工もされていないだろう。
こういうことに関しては達也の精霊の眼が上回る。
CADに関しても情報を改変されたという情報を感知できるのだから。
兎に角、CADに問題はなくエイミィもいい感じに集中できている。
これならば問題ない。少なくとも一方的に負けることはあり得ない。
「エイミィ、勝って来いよ?」
「モチロンッ!」
ステージに立つエイミィと十七夜選手。
パワー型同士ならよりパワーに優れた方が、
制御型同士ならより巧く制御した方に軍配が上がる。
ならパワー型と制御型なら? 答えは簡単。
押し通し、上回った方の勝ち。
(エイミィは蓋を開けるか? その中はどれくらい大きいのか?)
思考してる間にも時間は進み、エイミィの戦いが始まった。
まずエイミィが自分の氷柱を横倒しにして、それを相手の氷柱に突撃させる。
エイミィ得意の『砲撃魔法』を応用した形だ。
それに対し十七夜選手は振動魔法で対抗しようとするが、それは届かない。
「ピラーズブレイクでエイミィに用意した魔法は『柱を動かす』と定義されている。
形状の固定をしているため、生半可な攻撃じゃ崩せないぞ」
エイミィの氷柱はそのまま転がっていき最左列全てを倒すことに成功した。
その勢いで、エイミィは次の列の氷柱を一つ倒し転がしていく。
しかし、それが当たる度同時十七夜選手の氷柱はカーリングのように滑り、
前から2列目も同じように滑り3列目で綺麗に止まったかと思うと、
エイミィの氷柱を受け止めた。
「・・・なるほど。摩擦係数をゼロにして1、2列目は受け流し、
3列目にその二本が当たる時その三つを一つの構造体といて摩擦係数を上げたのか」
そこにエイミィの氷柱が当たっても、
一体となった質量と増幅された摩擦によって受け止められたわけだ。
「流石の計算能力。確かにこれは綺麗に受けられた形になったが・・・」
そこから始まる十七夜選手の反撃。波の合成により次々とエイミィの盤面は制圧されていく。
エイミィは手を打とうと考えるあまり後手に回り続け、氷柱は気づけば残り四本。
(手を打とうと考えるのは制御型のすることだ。
エイミィ、お前の持ち味はなんだ? まだ四本もあるんだ。しっかり自分の技で決めろよ)
一瞬、諦めのが目によぎったが・・・むしろそれが発破剤になったのか?
エイミィの想子が活性化し、氷柱の一本がロケットのように飛び相手の一列を粉砕する。
「よし、蓋を開けたな」
エイミィには無意識に力を抜いてしまう癖がある。
その癖は恐らく自分より弱い相手ばかりと戦ってついてしまったもの。
自分の実力に
しかし、魔法師は嘘を現実にするもの。
その優しい嘘さえ、今となっては実力を縛る枷か封じる蓋にしかなりやしない。
「容赦できる相手なんかじゃないぞ。思い切りやってやれ!」
もう一本飛ばして残りの本数は3対2。
そして最後の三本は先ほどエイミィの攻撃を受け止めた三本の塊。
今のエイミィなら十分チャンスはある・・・が。
『おっと! 明智選手膝をついた⁉ 大丈夫でしょうか・・・⁉』
「ッ! もう想子切れ⁉ 消耗が早すぎる⁉」
これは想定外だった。蓋の中身が大き過ぎたのだ。
俺は才能を見る事が出来ても、それはあくまで遺伝子から推測される範囲に限る。
この短時間で動けないほど消耗が大きいとは思っていなかったのだ。
(・・・いや、まだエイミィは諦めていない)
そこにとどめを刺そうと十七夜選手が合成波で攻撃を仕掛けるが、
エイミィは移動魔法で辛うじてそれを避けている。
「時間切れに持ち込んでも相手の方が氷柱が多いのでは負けだ。
発射しただけでも物理的に考えれば三本並んだあの氷柱は破壊できない。
後はエイミィがどれだけ魔法で現実をねじ伏せるか」
エイミィが攻撃しないなど考えることはない。そんなことはあり得ない。
だって、そんな奴なら俺がCADを用意してやるはずがない。
「この前の食事ではあんなこと言ったが、
実力だけで渡せるほど六連装式CAD開発の親お手製のCADは安くないぞ」
エイミィside
氷柱は波の余波で少しずつ崩れている。もう猶予はなかった。
一本を残る力をもって発射する。
「これが・・・これが最後・・・いっけ―――――ッ‼」
(魔法師にとってイメージは現実。そうだね、グランマ)
エイミィは何度も何度も相手の氷を破壊するビジョンを脳裏に描いた。
「届いて! 最後の一撃・・・‼」
昼夜side
「これは⁉」
想像以上、その一言に尽きる。
十七夜選手の氷柱にものすごく強度な・・・言うなれば情報圧とも言うべきものがかかる。
何度か自分も経験もがあるこれは、物理的な現象をはるかに超える改変が起こる予兆。
魔法にかける想子の量などではなく、意志によってもたらされる強力な改変。
それを感じたのか、十七夜選手も防御に全ての想子を回して受けようとする。
それもまた、強力な情報圧を発生させていた。
二人の強固な意志がぶつかる。
エイミィの放った氷柱は、正面から当たって砕けてしまった・・・が、
その三本は、亀裂が入り上半分が割れてずれた。
これを審判は大破と判定した。つまり結果は・・・
『明智選手1本、十七夜選手0本で明智選手の勝利です!』
そしてその戦いをした二人は、想子の枯渇で倒れていた。
「これは・・・将輝ともこういう勝負が出来ればよかったのに・・・」
そう思ってしまうほどに、白熱した試合だった。
二人は医務室に運び込まれ、次の試合まで様子を見ることになるだろう。
(あれほど強力な情報圧を見れる機会は滅多にない。
それこそ、九校戦でさえ情報圧が発生するのは年に一回二回あるかどうか。
ここで二回・・・まだまだ見れるかもしれない・・・)
「まあその前に、エイミィに労いの言葉をかけてやらんとな」
俺は個人に用意された待機室から出て、医務室に向かった。
GW投稿できんかった許してください・・・。
これからも頑張りますから・・・お願いです・・・。