四葉のもう一人の後継者   作:fallere

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投稿遅れてしまい申し訳ありません。来週にかけてにこれ含め三本投稿する予定です。

失踪する予定はありませんので気長にお待ちください。

本日はあらすじはパスで。いいのが思い浮かばなかった・・・。



九校戦編 二十節

「いやぁ、よく寝た。今なら国一つ吹き飛ばせそうだ」

 

「冗談・・・だよな?」

 

駿に「どうだかな」と答えて食事に向かう。新しい力も試せて邪魔も排除した。

 

そしてその途中、三高の集団に会う。その中には将輝もいた。

 

「よう将輝、調子はどうだ?」

 

「・・・最高だ、今日ならお前を倒せそうだ」

 

いい目だ。殺す気・・・とまではいかないが本気の目だ。

 

「クフ・・・クハハ」

 

不気味な笑い。世界が変わるほどの幻覚を周りに見せるほどの圧力を与える。

 

「よかった、俺の思った通りの意志力だ。

 おかげで本気でやれそうだ。退屈させるなよ?」

 

黒い影が四葉昼夜の後ろで暴れだす。

 

「その余裕、必ず叩き潰してやる。

 もう負けはしない。覚悟しろよ、四葉昼夜」

 

その影を一条将輝の後ろの赤い影が押さえつける。

 

二つの影がぶつかり合い、その幻覚は全て消え去る。

 

「クハハ、いい気だ。その目に嘘はないな。

 安心しろ、もう邪魔者は現れない。全て食い尽くしてやる」

 

最早空気がこの世界のものではない。

 

二人の王子の間には魔界があるとすればそこのものと言える空気が張り詰めていた。

 

誰も動けない。まるで巨大すぎる重力で押しつぶされているような感覚。

 

「さ、じゃあ腹が減ったし飯に行くか」

 

その空気を破ったのはほかならぬ四葉昼夜本人であった。

 

一条将輝以外は皆「何故こんな空気の中余裕でいられるのか?」と言う疑問に襲われた。

 

それほどまでに異様ともいえる雰囲気。それ故に強者であることを知るものは少ない。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「いや~! あれは実に暴れ甲斐ありそうだ!」

 

食事も終わらせ、準決勝の九高の試合の準備をしている。

 

「「・・・・・・」」

 

駿と鋼は何も言わない。あるいは何も言えないのかもしれない。

 

「あれ? もしかして鋼たちビビってる?」

 

エイミィが聞くと二人はびくっとして・・・。

 

「だってさっきの見たら・・・ねぇ・・・」

 

「一条の奴、こいつが起こした圧力の中でそれを気にしてなかったんだぞ・・・」

 

「加重系魔法は使った覚えがないが?」

 

そう言う事じゃねぇ、と言う視線から皆が「あー・・・」という目をする。

 

「なに、ビビるのが悪い事とは言わないさ。危険を理解できてるってことだからな。

 だが、野暮なミスは許さないことだけ頭に入れておけ?」

 

そう。だからこそ恐怖で押さえつけることも可能なのだ。

 

もっと恐れろ。俺と言う存在を恐れ、永遠に禁忌に踏み入るな。

 

俺の家族に、仲間に手を出すことは許さない。四葉の恐怖を忘れるな。

 

「安心しろ、怪物の相手は怪物で事足りる。任せておけ」

 

王子などとは思わない。俺は真正の怪物で、あいつもまた怪物だ。

 

「さて、試合に行くか。お前らは休んでていい、緊張をほぐしておけ」

 

 

 

真由「なんだかんだで気遣い出来るのも昼夜君のいいところよね」

 

克人「だがそれは諸刃の剣だ。時に孤立することを迷わないと言う事だからな」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「じゃあ悪いがこれで終わりだ」

 

渓谷ステージの池から霧を発生。そこに二酸化炭素を溶かして電気を流す。

 

ただでさえ霧と魔法で発生した鏡でモノリスの位置も隠しているため余裕であった。

 

テンションは昨日と違い、最高潮であった。

 

(ようやくだ・・・。本気で暴れる事ができる・・・。)

 

「緊張はほぐれたか?」

 

二人は頷く。それを見て堂々とステージを後にする。

 

「勝者とはこの俺のための言葉だ」

 

 

 

三位決定戦に興味は無い。ただただ集中して勝つことを考える。

 

「ちゅ、昼夜の奴凄く集中してるな・・・」

 

「気をつけなさい。多分あれに近づくと斬られかねないわよ・・・」

 

「それは酷くないか、レオ、エリカ?」

 

俺の声を聴いて二人は体を震わせる。

 

「安心しろ、俺がいくら狂戦士でも敵味方の区別はつく」

 

集まっているメンバー全員の肩から力が抜ける。

 

「・・・そんなヤバい空気出してたか?」

 

「まぁ・・・動けば仕留めるくらいのな・・・」

 

達也から聞いて「やってしまったか」と声に出す。

 

「皆~、次の試合会場が決まったわよ~」

 

そこに真由美さんがやってくる。会場は平原、水はないから爆裂でごり押しはされない。

 

「要するにエース戦だな。

 障害物がなく、互いのエースを他のメンバーで止めるのは困難だ。

 勿論、エースを有利にするためには他のメンバーが援護するべきだが・・・」

 

委員長が分かる範囲で戦況を予想する。確かにそうなるだろう。

 

「俺は勿論、あいつも相打ちなんて望まないからそうなるでしょうね」

 

「王子ってのはどこもかしこも戦闘狂なのか?」

 

「その理論だと克人さんも戦闘狂になるぞ?」

 

「・・・俺はそんな風に見られていたのか?」

 

「いや克人さん、真に受けなくて大丈夫です」と誰もが思ったが誰も言えなかった。

 

負けないだろうと余裕の表情の者が多数。

 

朝の光景を見て少しひやひやしている者が少数。

 

そうでもなくても警戒している面持ちの者がごく少数。

 

「クフ・・・クハハ・・・」

 

少年の笑いを聞く者はいなかった。ただその表情は一種の狂気に満ちていた。

 

「さぁ行こう。俺の前に勝てる者はないことを思い知れ」

 

試合が始まる。本気で争える相手なんだ、思い切り楽しもう。

 

 

 

会場のモノリスの前まで集合する。相手のモノリスもすでに視界に入っている。

 

「文字通り平原だな・・・」

 

「シンプルでいいだろ? 非常に楽しみだ・・・」

 

もう既に空気は緊張に包まれている。迷いなく立っているのは王子だけである。

 

試合開始の笛が鳴る。俺はまっすぐ相手のモノリスに突っ込み始めた。

 

モノリスを開けてもコードを打つのは一苦労だ。なら叩き潰すのが手っ取り早い。

 

将輝も同じ判断をしたようで正面から向かってくる。

 

「吹き飛べ!」

 

即刻無数の空気弾を発生、加えて歯を削ったナイフを浮遊させ攻撃する。

 

将輝は加速魔法を用いて回避を行う。行動のキレがピラーズの時と全然違う。

 

「いいねぇ! もっと楽しませろよ⁉」

 

障壁魔法を多数生成、それを攻撃に追加する。

 

「チッ! 舐めるなよ!」

 

普通の魔法師であれば回避で精いっぱいの攻撃のはずなのに反撃をしている。

 

やはり将輝は他の魔法師と全然違う。本気でやるつもりなら一等級だ。

 

偏倚解放と言う空気砲だが、その一つ一つが正確で強力な一撃である。

 

こちらも多少回避に意識を向けないといけないか。

 

 

 

鋼side

 

隣で自分たちのエースが行っている戦闘は、自分たちの知るものではなかった。

 

「よそ見している余裕があるのか⁉」

 

自分が相対している敵も気が抜けない相手である。

 

技術相性は有利ではあるが、それだけで勝てるほど甘い敵ではない。

 

カーディナルジョージの代名詞である『不可視の弾丸(インビンジブル・ブリット)』。

 

「そうはさせない!」

 

鋼は鎧を展開する。接触型術式解体(グラムデモリッション)は非常に相性がいい。

 

不可視の弾丸は視認した相手にしか当てられず、かつ標的の表面が対象。

 

自分の身の回りに展開する術式解体は表面に張り付く弾丸を無効化した。

 

ただ、魔法技能自体の相性はよかったとしても・・・。

 

「十三束鋼、君の鎧は確かに僕の不可視の弾丸の天敵だけど、

 君には有効な攻撃手段がないだろう?」

 

確かに鋼はその防御力から駿とペアで攻撃するときは盾に、

あるいはモノリスのコードの打ち込みをしていた。

 

レンジゼロの異名も合わせて攻撃手段がないと見てもおかしくはないだろう。

 

だが、うちのエースが防御力だけで採用するはずがない。

 

攻撃手段も教えてもらい、鍛錬も怠らなかった。

 

ポーチに入れているナイフを抜く。加速魔法をかけて発射する。

 

「別に手元のものを放つなら僕の欠点は関係ない!」

 

しかし、これでは昼夜の操作と違い使い捨てなため手元のものが無くなれば負ける。

 

仕掛けるなら予想外の攻撃に動揺している今しかない。

 

加速魔法を使い接近する。そして掌に障壁魔法を生成し掌底打ちを行う。

 

当たる直前に、障壁を発射して吹き飛ばす。それは加重魔法などでいなされたが。

 

「これでモノリスでもレンジゼロの戦い方ができる!」

 

ゼロ距離に接近し、直前で障壁を放つことで質量体を魔法で放つルールに準拠する。

 

これで攻撃できないとは言わせない。

 

(ここで勝って、出来損ないではないと証明する!)

 

それはある意味甘い蜜。昼夜が与えた打ち破るべき壁。

 

 

 

駿side

 

鋼の掌底打ちでジョージの体勢が崩れたところに空気弾やスパークを打つ。

 

相手の最後の一人がモノリスの前から動かないのはもしもの時のためだろう。

 

いままでこちらが行った戦法は疑似瞬間移動を用いた奇襲ばかりだ。

 

故にモノリスを警戒せざるを得ない。

 

だが、昼夜が一条との戦いに夢中になるのであれば・・・。

 

「ッ! 鋼、三人目が来た! 俺が引き受ける!」

 

当初の予定通りである。相性のいい鋼とジョージを戦わせるために時間を稼ぐ。

 

このメンバーの中では一番平凡だが、他のメンバーが尖り過ぎているせいだと思う。

 

自分も悪くない実力だと思うし、仲間も自分の実力を買ってくれている。

 

初めに司波達也や他の二科生にやられたせいで弱いと思われがちだが、

一科生でもトップクラスの実力を持っている・・・深雪さんや昼夜は例外として。

 

自分でもプライドが高いのは認める。だからそのプライドのために戦う。

 

多分自分はそれが一番性に合うと思うから。

 

 

 

昼夜side

 

「やるじゃねぇかやるじゃねぇか! だがまだ足りんぞ!」

 

空気砲をよけながら次々と攻撃を繰り返す。

 

現状は攻撃数ではこちらが有利、にもかかわらず仕留めきれない。

 

「本当にお前はやりがいがある!」

 

「くッ! 簡単にやられるわけにはいかないッ!」

 

攻撃が変わる。空気砲ではなく氷の弾丸・・・ドライブリザードの用法だ。

 

「こんな程度で俺が倒せると・・・?」

 

氷に何やら魔法がかけられている。

 

「いやこれは・・・ッ!」

 

氷を障壁で押し返す。その後氷が蕾のように花開き、破片が飛び散った。

 

「お前どんな勘してやがんだ⁉」

 

・・・なるほど、爆裂の対象を水に限定することでレギュレーションを通過。

 

内部に水のある氷を生成、それを射出後爆裂で発破したわけか。

 

「成程、いい腕だ。だがその程度ではまだ足りてないぞ。

 万策尽きた・・・なんてことはないよなぁ?」

 

「・・・もちろんだ。どんな手を使ってもお前を負けさせてやる!」

 

 


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