追憶編 一節
今日からしばらくの家族旅行。飛行機で沖縄まで。今はその移動中だ。
それも去年までとは違いお兄様が私の隣に座っている。
「深雪、そんなにニコニコしてどうしたんだ」
「いえ、お兄様が私の隣に座ってくれるのがうれしくて」
そう、今私はとてもうれしいのだ。
ただ、
従弟さえいなければもっと嬉しいのに。
四葉 昼夜、私の従弟。
ものすごい魔法力を持ち、
それだけのはずだ。なのに妙にお母様や叔母様と仲がいい。
今もお母様と話している。あんな従弟の何が面白いのだろう?
お兄様への待遇も少しずつ良くなってきているのに、息子よりも甥の方が大事なのだろうか?
そんなことを考えている間に飛行機は沖縄についた。
私たちは荷物を預かって買ったばかりの別荘に向かった。
「いらっしゃいませ、奥様。深雪さんに昼夜君に達也君もよく来てくれたわね」
別荘で迎えてくれたのはお母様のガーディアンの桜井穂波さんだ。
あげてもらってまずは冷やしておいたという麦茶をいただいた。
しばらくして外に出ることにした。折角来たのに引き篭もっているのは勿体ない。
「お母様、少し歩いてきます」
「そうね、深雪、昼夜と達也を連れて行きなさい」
まただ、私か何か行動をとろうとすると従弟を連れて行かせようとする。
お兄様と二人で行きたいが、多分前のようにしつこく説得させられるだろう。
「——わかりました」
私は声をとがらせないように、内心嫌々承諾した。
本人が断ったら、とは思ったけどそう上手くはいかず従弟は散歩に付いてきた。
昼夜side
「ねぇ、達兄ぃ?」
「どうした?」
俺は達也兄さんに深雪姉さんが日焼け止めを塗ってる間に質問をする。
「俺って深雪姉ぇに嫌われてるのかな?」
「いや、そんなことはないと思うが・・・ただ羨ましいんじゃないか?」
「羨ましい?う~ん・・・」
しばらく深雪姉さんに羨ましがられる理由を探すが・・・。
「だめだ、なんで俺が羨ましいのかがわかんない」
全く思い当たらない。達兄ぃに疑問の目を向けてみる。
「お前がお母様や叔母様と仲良くしているのが羨ましいのだろう。
お二人とも中々人に優しくしたりしないからな」
「ふ~ん、なんだか思ってたより小さな理由だね」
「それを小さなって思えるお前はホントに何様なんだって驚いているぞ」
お母様たちに認められることがそんなにすごいことなんだ。
そう考えていると深雪姉さんがやって来たので散歩に行くことにした。
深雪side
「深雪!危ない」
散歩してしばらくすると、お兄様が私の腕を引っ張って抱き寄せた。
私は一瞬何が起こったか分かりませんでしたが目の前に大男が立っているのに気付い
た。
「どこ見て歩いてるんだ?あ?」
その大男は軍服をだらしなく着崩した黒い肌の軍人だった。
彼らは恐らく20年戦争が激化した際に沖縄に駐留していた米軍ハワイに撤退して置き
去りにした
「詫びを求めるつもりはない、来た道を引き返せ」
お兄様が私を庇うように前に立ち、およそ少年とは思えない落ち着いた声で言い放っ
た。
私の不注意にお兄様を巻きこんでしまった事に罪悪感を抱きながらも、守ってくれる兄に嬉しさを抱いた。
そして次の瞬間、何の前触れもなく大男が殴りかかって来た。
私は反射的に目をつぶった。
しかしそんな必要はなかった。お兄様はその攻撃を両手で防いだのだ。
しかし男は腕を引いて、さらに後ろにいた三人もお兄様に殴りかかってきた。
それをお兄様はあっという間に三人をしとめたのだ‼
・・・三人?
お兄様の影から見てみると、倒れているのは四人。
でもお兄様が倒したのは確かに三人だった。
と言うことは・・・・・・
「達兄ぃ、手伝い要らなかった?」
「いや、助かった」
また従弟(お前)か・・・!お兄様一人で充分だったのに。
「しかし『疑似瞬間移動』で蹴りを入れるのはやり過ぎじゃないか?」
「・・・まぁ、死なない程度にやったから気にしない!」
「良い訳ありますか!早く治療しないと・・・ここなら証拠は残りません、『再生』
を・・・」
「それこそ良い訳ないからね、俺がやるよ」
は?何言っているのうちの従弟は?治癒魔法でも使えるのだろうか?
昼夜は指を銃の形にして自分の遣った一人に向ける。
指先から一つの魔法式が生み出され、それが軍人崩れに吸い込まれる。
「⁉」
すると見る見るうちに頬にあった痣が消えていく。
今のは・・・何?効果はお兄様の『再生』に似ているけど過程が違う?
「これで大丈夫、達也兄さん、深雪姉さん、こいつ等が起きないうち帰ろう?」
昼夜にそう言われたのでとりあえずこの場は放置して帰ることにした。