竜と桃髪の地獄旅行   作:梵葉豪豪豪

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第4話 ビッグ・マグナム イザベラ先生

 院長室に呼ばれたルイズ・ダイノボット・ギーシュ・他1名は、オスマン学院長から決闘騒ぎについて処罰を言い渡されていた。

そもそも貴族同士の決闘は国の法律で禁止されているのだ。が、ここは学院内で自治を優先し、オスマンの裁量により決められる。

 

「君達には2日間の停学を命ずる。ま、頭を冷やしなされ」

 

 ここで生徒でも何でもないダイノボットが反論する。

 

「オイちょっと待てジジイ。決闘じゃねぇ。ケンカだ」

「同じ事じゃドアホォォォウ!」

 

 飄々としたご老体は豹変してしまった。長身のためビーストモードのダイノボットとほぼ同じ目線で彼を睨み付ける。

 

「ダ~イノボット君じゃったかの? 大体君、いたいけな少年少女を煽り立てるとは何事じゃ? 城壁えぐっちゃって、直す金と人はどっから出ると思っとるんかの? 君は人間よりアホ程強いんだから考えて行動してくれんか?」

「ほーそうかそうかジジィ。俺様とちょっっと二人きりでO☆HA☆NA☆SHI!しようかぁ?」

「ほーそうじゃのそうじゃの。儂もちょっっと二人きりでO☆HA☆NA☆SHI!したいのぅ?」

 

 オスマン老と、ロボットモードに変身したダイノボットが笑顔を突き合わせアゥアゥアゥアゥと吐きながらメンチを切り合っている。その傍らでは杖と剣がお互いに向けられていて、傍目にはヤり合う一歩手前だ。室内の緊張は順調に上がっていく。

 この状態は女性秘書に力づく止められるまで続いた。秘書は美人だが握力は高かった。

 尚いたいけな少年少女達は、部屋の隅でガタガタ、とは言わずとも震えるしかなかった。

 

 異常空間から解放されたルイズとダイノボットは、真っ直ぐに図書館へと向かった。ルイズが停学中も勉強を望み、またダイノボットがより多くの情報を求めたためだ。

 実はこの学院において停学という処分には図書館への出入りにまで制限が付けられていない。授業に出ずとも勉強を怠るなという意図を込めているからだ。とはいえ停学中の四名中約二名の男子は残念ながらその点を察せなかった。

 そんな訳で一人と一匹は堂々と入館していった。竜の巨体が館内を踏み荒らしかねない事に際し司書は、見なかった事にした。人間誰にだって怖い物はある。

 

 ここでルイズはダイノボットに助けられる事になる。まず館内はメイジが空を飛んだり本を浮かばせられる事を前提と前提としているため、書棚がヤケクソに高い。しかしダイノボットならば、足場さえあれば簡単に駆け上がっていける。お陰でルイズは大量の本を手に入れ、頬が緩みっぱなしだ。

 更にダイノボットは読んだ物を全て記憶出来る。ルイズから見れば本を片っ端からただ乱暴にめくり続けている様に見える。そこで彼が投影して見せた物は、取り込んだページの画像を解析し続けている映像だった。ハルケギニアのガリア語と古代語をトランスフォーマーの言語に翻訳しているのだ。同時に意味や考察等も行っている。現代のIT関連用語で言う所の、自炊である。さすがにこれはルイズも予想外であった。

 ストックされた画像の中に、タグが付けられて止まっている物があるのをルイズは見付けた。興味津々で彼に聞いてみた。

 

「あーそこはな、宗教的シンボルに相当する存在の発音が判らねーんで保留にしてるんだわ」

「ふふ。これね、ブリミルって読むの。ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ」

 

教養のあるハルケギニア人ならば誰だって知っている神いわゆるゴッド、もしくは始祖いわゆるプライムを得意げに語るルイズであった。尚ダイノボットはこの時発せられたルイズの音声を丸ごと記録して解析結果に紐付けしており、ずっと後にルイズが恥ずかしさに悶える事になるが、今は関係がない。

 

「おいお前ら図書館は静かにな」

 

 二人してあーだこーだと騒いでいた所に釘を刺され、振り向いてみれば、本の積まれたテーブルに足を投げ出してふんぞり返りながら読書する女生徒がいた。青髪デコのイザベラである。ルイズにしてみればつい先程の決闘騒ぎの際、キュルケの隣にいた誰か程度しか接点がない。誰? としか言い様がない。

 ルイズはつい彼女の手前にある本を手に取り、めくってみた。ポルノ小説だった。顔から湯気が立つ程うろたえてどもりまくる。極太の杖などというアホウな表現は理解出来なくとも、そんなシーンを克明に再現した挿絵があっては嫌でも理解せざるを得ない。

 

「な、なななななななななぬぅあ!?」

「おーいおいおい、若いモンがエロ本くらいでうろたえるな。つーか静かにしろつっただろ」

 

 尚、ここに積まれているポルノは元々はオスマン学院長の私物だった代物だ。執務中に読みふけっていた御老体を見咎めた秘書に取り上げられ、図書館に寄贈された。以後、オスマンがかつてのコレクションを読むには公的に貸出記録を残さざるを得なくなった。新手のマゾプレイに勤しむ老人の誕生である。

 などという様相の中、ダイノボットはイザベラが積んでいた本を片っ端からめくりめくって記録していた。

 

 さて夕食の時間である。ルイズは食堂にダイノボットを連れて行こうとしたが、良識あるクラスメイトの面々に止められた。実は「ルイズの韻竜が生徒を食った」という目撃談が広まっていたためだ。誰だって、お食事の場に自分がお食事にされかねない相手を入れたくはなかろう。尚食われた生徒は吐き戻されて無事だった事までは伝わっていない。

 

 こうして竜と桃髪娘にとって怒濤の一日は過ぎていった。ルイズは寝る際、ダイノボットに顎と前肢をベッドに乗せる様頼んだ。抱き枕にしたかったのだ。

 ルイズは、学院に来て初めて安らかな夜を迎えた。

 

 翌朝、ダイノボットはルイズに単独行動を告げた。願い出たでは無い。使い魔の連中 纏めて団体を組みたいという。既に昨晩は使い魔達の食性を聞き取り、纏めて使用人に伝えてある。そこを足がかりに学院に食い込むつもりだ。奴らにイイ思いをさせたいねぇ、とオッサン竜はルイズに語る。

 ルイズは止めなかった。本音では今日一日一緒にいたかった。が、この韻竜が何をしでかすかこっそり見てみたくなった。

 

「そんじゃコネ作ってくるわー!」

 

 

 昨日の時点で、既に使い魔達の間で「つるもうぜ!」と話は付けている。オスマン学院長の使い魔である鼠のモートソグニルをリーダー、というかパイプ役に据えている。当のダイノボットは現場の実行部隊に納まった。突撃隊長とも言う。

 そして今朝ダイノボットが真っ先に話を付けに行ったのは、使用人の実質的リーダーであるコック長マルトーであった。そういう訳で、学院長・使い魔軍団・使用人の3大コミュニティがここに繋がった。

 尚、マルトーらの間でダイノボットはやけに歓迎ムードで囲まれた。昨日貴族をヘコませた事に、よくやってくれた! と評判になってしまっているのだ。

 ダイノボットにしてみれば、ハハハ手前ェら溜飲下がれば何でもいーんだな程度の感慨だった。が、こっそり後を付けてしっかり覗いていたルイズにしてみれば、自分の中の平民像と実像との間に多大なギャップを覚えるものである。少なからずもショックを受けざるをえない。

 

 さてダイノボットはいかにして他の使い魔達とのコミュニケーションに成功したか。答えはビーストモード時の右足甲、ロボットモード時の右手甲に出現した紋章、ルーン、プログラム、寧ろコンピューターウィルスにある。

 当初このルーンはダイノボットの中枢を侵食しようと試みた。当然彼はきっちりシャットアウトを施した。が、「是非使ってください」とのメッセージをのべつくまなく送信され続けたため、一部の機能を許可する事で妥協してもらった。それが使い魔との翻訳機構である。

 しかしトランスフォーマーは、異生体コミュニケーションが日常茶飯事の宇宙駆ける種族である。あらゆる生物のコミュニケーション方法を解析する程度は当たり前に出来る。つまりルーンがなくとも、そのうち自力で何とか出来てしまうのだ。ルーンがそれを知ってヘコむのはちょっと先の話である。

 

 そんなヴェロキラプトルおじさんは、サラマンダーのフレイムと会う。キュルケの使い魔である。ダイノボットほどではないが、ガタイは大柄でスマートだ。翻訳されてダイノボットに届く声色は、かつての仲間であるチーター野郎のそれであった。自身の記憶から再現されたようだ。

 

「よぅダンナ! 今度一緒に森へ行かねぇか? 鹿食おうぜ鹿!」

 

 後にその森において、彼ら2匹が食物連鎖の頂点に君臨した。

 

 次に会ったのは、ジャイアントモールのヴェルダンテだ。主人はギーシュ。巨大モグラなので縦横に広いボディを持つ。だからといってかつての仲間のサイおじさんを充てられた事に、ダイノボットはプログラムのセンスを疑った。

 

「ダイノボットちゃ~ん、ここに地底王国建てるんだけどさ、出来たら遊びに来るぅ?」

「ダァー。いいけどヨォ、建物の真下は掘るんじゃねーぞ?」

 

 この学園の建物に基礎なんてものはなかったからだ。尚、お茶目なおっさんボイスではあるが、奴はメスだ。

 

 そして、鼠のモートソグニルである。オスマンの所の使い魔であり、使い魔連合のリーダーと言う名の使い走り担当を拝している。声はこれまたかつての仲間である陽気なお笑い鼠野郎がそのまんま充てがわれた。

 

「やぁ縞々竜の大将! なかなか面白い事始めたねぇ。何せホラ、あいつら生徒と一緒でさぁ、出たり入ったりだからオイラ達って烏合の衆だったんだよねー。ところで大将、上に乗っていい? 乗っていいよね? ……ヘヘヘッ大将一番乗……ぅをっ!?」

 

 背後から強烈な殺気、というか禍々しいオーラを感じ取ったモートソグニルだった。一瞬、自身の脳内に死のイメージが呼び起こされるほどである。具体的には爆死が。

 

 後に彼ら四匹は、学園内の人間から四天王呼ばわりされる。彼らも調子に乗って、オ~レタ~チ四天王! などと獣の声で唄う始末だ。流石にオートボットとかサイバトロンなどとは呼ばれない。

 

 

 そうして昼下がりのテラス。ダイノボットとルイズは午後のティータイムを楽しんでいる。ルイズはテーブルに着いているが、巨体のダイノボットはそうもいかない。ロボットモードで地面に胡座を掻いていた。学院内で滅多に見られない光景に、つい生徒達が注目してしまう。遠巻きにではあるが。

 そして二人してバナナを頬ばっていた。子安観音ゴリラが大好きなあのフルーツである。

 隣で給仕するシエスタ嬢の説明によると、彼女の故郷ではワイン用の葡萄を栽培しているが、最近はバナナも栽培しているとの事。葡萄が育つような涼しい気候に熱帯植物が育つかぁ? とダイノボットは訝しんだが、今食ってるこれが、自分の知識通りの植物と同じとは限らないと思い直した。思い直したので皮ごと丸かじりする。

 

「うぅ~ん、バナナァ」

「ダァ、どっから見ても見事にバナナだァ」

 

 あんな嬉しそうにパクついて、まるで小動物だなー、可愛いなー、などとシエスタはルイズを眺めて思う。しかしお貴族様を前に口に出したら怖いので黙っている。あとダイノボットさん真っ昼間からラガーもりもり飲んで、人としてどうなんですかそれ、瓶齧るんですか、あ、人じゃなかった、と自己完結で終わった。口にすれば彼なら付き合ったかもしれない。

 

「やァ君達、何だか楽しそうじゃないか。あぁそこの君、僕にも彼らと同じフルーツを」

 

 などとルイズ達の傍に寄って来たのは、ギーシュである。お近づきの印にと、ダイノボットにひき肉を腸詰めして燻した太ましい棒を差し上げた。つまりはサラミである。ソーセージである。低所得者階級にもたらされた有難い加工肉である。ついでにグラモン家の紋章が焼印されていた。

 ふふ、これ元々は実家では領民の雇用対策で始めたのさ。そしたら領民の男衆がマッチョづくしになってね。そうしてグラモン印のひき肉が随分と評判になってしまって、王軍にも納入されたり外国にも売り始めたりしたよ。そういえばハシバミ味を売り始めたら、ガリアから箱買いに来た貴族もいたり……などと死ぬ程どうでもいいグラモン家の事情を聞かされたダイノボットは、「お前腹筋割れてんなぁ」と適当に流してみた。サラミを齧りながら。うん、僕も領民の手前、負けられないからね。と返される。ヤブヘビだった。

 しかしここでテーブルを叩く音が響いた。ルイズである。テーブルから身を乗り出し、ダイノボットの眼前に食いかけのバナナを突き出した。

 

「食べさせて」

「あ?」

「食べさせて!」

 

 要はダイノボットに構って欲しいのだ。彼がギーシュにかまけていた事に、嫉妬心を舞い上がらせてしまった。さすがのダイノボットもそんなルイズの心情を察した。同時にギーシュも察したので一歩身を引く。直後の光景を想像して期待したからでもある。

 バナナを受け取ったダイノボットは、よーしよしほーれほれとそれをルイズの唇へ撫でるように挿入し、戻しては突き入れるを繰り返した。当人達にとっては単にちょっとハメを外したプレイ程度の行為だったが、周りのよく猛る男子には些か刺激が強過ぎたようだ。特に片方が「黙ってさえいればストロベリーブロンドのすげぇ美少女」だけに。君ら馬鹿ですか、馬鹿ですね? とシエスタ嬢は突っ込みたかった。しかし口にしないだけの分別はあった。

 

「ヴァリエエエエルゥゥ! 馬鹿ですか馬鹿ですね? 僕も混ぜ、あ、いや、んばかーん!」

 

 しかして、分別と決別していた男・魔法少年ブラスターマリコルヌは吠えた。何時いたのか誰も知らない。吠えられた側のルイズは嫌そうにバナナを口から離す。しかし涎の糸で繋がれていたままだった。ブラ☆マリにとってはつい腰を引いてしまったビジュアルである。恐らくこれから2日は使える。何にとは言わない。

 諸々を全然判っていないルイズにしてみれば、チン☆ピラじみた態度で馬鹿にされたように見えてしまう。

 

「で、何? 何かしたいの?」

「昨日の件! 僕は納得出来ないからな! 大体アンタ何もしてないだろ!」

「……あっそ」

 

 確かに昨日の決闘において、ルイズはダイノボットに守られていた。しかし使い魔もメイジの実力に勘定されるものであるし、彼女は真正面から突貫した。度胸と結果は認めるべきであろう。というのが周囲の見解だ。

 ちなみに、丸き男はルイズを指差しかつ睨みはするものの、ダイノボットを極力視界に入れないようにしている。という点はしっかり周囲に看破されていた。

 

「あーあー、お前ら何やってんだ。ケンカか?」

 

 赤髪さん青髪さん、いわゆるキュルケとイザベラが通りがかる。問いかけたのはイザベラだ。直前の竜と桃髪のプレイを目撃していたため、痴情の縺れか? と訝しんだが、空気を読んで口にはしなかった。キュルケは、笑いを堪えていた。この状況がツボに入ったらしい。

 

「ケンカじゃないぞ。けっ……」

「んー、ケンカでも決闘でもないわ。これからちょっと自主練よ自主練」

「そかそか。まー頑張れよ、自主練」

 

 デブラス星人に何かを言わせる間もなく、ルイズは目先の言い訳を制した。

 

「よしルイズ、ケツの穴かっぽじって奥歯ガタガタ言わせたれ」

 

 ダイノボットがそう応援した瞬間、マリ子デラックスプレの尻が爆発した。下手人はルイズである。

 

「何その下ネタ。変なとこに錬金掛けちゃったじゃない」

「ハハッ悪ィなァ」

 

 その掛けられた側は文字通り豚のような悲鳴を上げて転がり回っていた。ようやく立ち上がった彼の心は折れるを通り越して明後日までちぎり飛んでいた。

 そしてトドメを刺すべく、ルイズはマリンコーの杖を服丸ごと吹き飛ばした。更に爆発によるビンタを右左右と3回、トドメに後頭部近辺を爆発させ地面へめり込ませた。2文で片が付いた。椅子に座ったままで。

 ルイズとダイノボットは、親指を立てた拳を突き合わせた。徹底的に叩き潰せば相手も立ち向かいはすまい。

 

「あら、タイマン強いのね」

 

 などとキュルケは呟いてみた。よくよく考えると笑えない気がしないでもないが、笑うしかない状況もあるものだ。それは見ていた群衆でも概ね似た見解を持つに至っていた。一方イザベラは、

 

「こりゃ同類だ。親父と同類がいやがったよ」

 

 と左手を顔に被せて天を仰いでいた。

 

 ところでギーシュにとってカラコリヌは友人である。友人であるが、出来れば無関係でいたい、というか助け起こしに行くのは躊躇われた。尻から煙を吐きながらうつ伏せで幸せそうににへら笑っている全裸ーマンに近付くには、彼の勇気が足りなかった。

 

 

 天を仰いでいたイザベラの目が一瞬鋭くなり、庇うように左腕を掲げた。瞬間、左腕に空気の槍が数本刺さり貫通した。避けるという選択肢は、直線上にキュルケがいたために取らなかった。

 背後のルイズから悲鳴が上がる中。男衆5人組が上空から勢い良く降りて、イザベラと正対した。周囲にいた群衆は一瞬何が起きたか把握しきれず硬直したままだ。

 

「チッ」

 

 舌打ちをしたリーダー格の生徒ヴィリエ・ド・ロレーヌは、自分達の奇襲が失敗に終わったものの片腕を潰しただけマシと思う事にした。

 

「おいイザベラさんよォ、いい加減泣いてみろや」

「またお前らか。周りの被害は……考えないんだろうな。……それで?」

 

 イザベラはそう返しつつ、袖を千切って左腕を縛る事で止血の処置を行っていた。いやに手馴れている。

 

「何なの、何なのあいつら!?」

「去年彼女にドツカレて泣いたバカ5人が今頃仕返しにきたってところね。全く……!」

 

 ルイズの疑問にキュルケが怨嗟を込めて簡潔に応えていた。イザベラが庇わなかったら自分が危なかった事の自覚はある。

 

「確かに全くだ」

 

 背中に右腕を廻し、イザベラは青光りする自身の得物を抜き放った。銃である。5人組からは下卑た嘲笑が上がった。トリステインにおいては銃は魔法を使えない平民の使う武器だからだ。更に言えば、かつてイザベラを襲撃して返り討ちに遭った際、その銃でやられた事を覚えていなかった。

 

「あ? コレは杖だよ杖。銃でも杖に出来るんだよ。判ったかクソガキ共。さてお前ら、ケンカは買ってやる。で、お○ん○ん吹っ飛ばされる覚悟は出来たか? さぁ、戦いだ」

 

 嘲笑は止まった。

 

「えーと、幾らなんでもあれだけで勝てるようには……」

「あら余裕よ彼女にとっては」

「マジで……?」

 

 再度のルイズの疑問にキュルケが今度は余裕で返す。ルイズは実家で衛兵や漁師の得物として銃を見た事がある。彼女の知る限り、銃とは1回撃てば何段階もの手順を得てようやく2射目が撃てるかなり面倒な代物なのだ。

 

「ルイズ、ありゃー連発出来るわ」

「マジで!?」

 

 この場で止める力量がある筈のダイノボットがただ見ているだけのは訳がある。イザベラの持つ銃に驚き、興味が注がれたためだ。スキャンし、自分の記憶と照らし合わせた結果、その銃は地球の銃器メーカー、トーラス社のリボルバー型拳銃「レイジング・ブル」そのものである。メーカーの刻印が無いものの、表面にステンレスを使用したマグナム銃の8インチモデルそのものだ。21世紀の地球で作られた銃器は精密機器でもある。だがそんな精度と素材など少なくともこの土地ではあり得ない事は既に調査済みだ。

 こんなオーパーツががどこからもたらされたのか。イザベラの母国か、はたまた地球の物が流れ着いたのか。判断するには情報が少ない。

 

 5人組が構えて呪文を唱え始めたその瞬間、イザベラのレイジング・ブルが吠えた。横向きに5連撃。狙った箇所は言うまでもない。

 

「うわ、わ、おうわー!」

 

 あまりの轟音をすぐ側で聞いてしまったルイズは一瞬耳が馬鹿になってしまった。

 一方、撃たれた馬鹿5人はまさに予告通り股間に銃弾を食らい、泡を吹いてうずくまっていた。撃たれた部位が部位故に周囲の男性諸氏股間まで押さえてしまう有様だ。

 傍目にも勝敗は決したようなものであったが、当事者であるリーダーのヴィリオだけは認めなかった。杖を向け、立ち上がろうとする。

 が、彼の足元が泥に変化した。足を滑らせ、顎に自分の杖が突き刺さり更に拳で強打し、彼は伸びた。イザベラが変化させたのだ。抱えていたレイジング・ブルを振って見せる。本当に銃を杖として契約していたのだ。

 

「だから杖だっつったろォー?」

 

 あまりの惨状に、周囲はもうどうリアクションしていいのかよく判らない。とりあえずルイズは一言呟いてみた。

 

「最低な、何てゆーかサイテーな喧嘩だと思うわ」

 

 ルイズの心に棚はあるらしい。

 

 そしていい加減これだけ騒げば教師も気付く。

 

「おーいそこのナンブコダマさんやー!」

「ミスターダイノボット、何ですかそれ。と言いますか、何が起きたのですか!?」

 

 その頭と芸風を知ったら間違いなく怒るであろう芸人の名前を引き合いに出しつつ、ダイノボットはコルベールを呼んだ。

 コルベールは、まずは重症を負っているイザベラ以下多数を医務室に運ばせた。当事者らにはあとで聞くとして、ここは第三者のダイノボットに事の顛末を聞く事にした。尚、ダイノボットはルイズの喧嘩の件については一言も言及していない。

 ふと学園長室のある塔を振り返ってみた。見えないはずの怒気が漏れているように幻視した。

 

「ジジィを誤魔化せてる気がしねぇ」

「え? やっぱりまた説教地獄?」

 

 バナナを頬張りながら嫌そうにするルイズだった。

 

 

 次回予告

 

「シエスタ嬢のSとモットのM! それはSM! あぁ我が師ハナマルキ・ド・ドドドドゥ・サドよ、あなたの生み出したその言葉「SM」を私が塗り替える時代が! 来たやも知れませね! ジェ・エンヴィ・デ・トア、ジェ・ヴェソアン・デ・ヴー(I want you, I need you.)。シエスタ嬢に打たれ打たれて、私の心は開放されるでしょう!」

 

「イ~~ヤァーーーこの眉毛ェェェ!」

 

「ヘーイ、バンブルバンブルゥ」

 

 

 次回! 第5話 とらわれシエスタ




あとがき

 申し訳ありません。死ぬほど遅くなりました。
 思うところあって筆(キーボード)を置きましたが、また色々思うところあって再開します。執筆環境どころか住む所まで変わったり色々と。しかし仕事の多さは変わらない。


○トランスフォーム

 あの連中の、サイズや質量を無視したかのような変形はどうなっているか? 実はボディを構成する素材の分子間を詰める事により細胞が圧縮され、見かけ上小さくなる。等身大のサイズが拳銃サイズに、トレーラーの荷台が背中に収納出来るレベルに。
 しかし見かけ上なので自重は変わらない。とはいえトランスフォーマーは自分以上の質量を持ち上げられる昆虫レベルの筋力の持ち主なので問題はない。という理屈を今考えた。


○人物メモ。忘れないように。


ダイノボット
おっさん。世のおじさんの好物ラガービールが好き。鷲鼻。宇宙人野原ひろし。個人的に好きなひろしの演技は劇場版アイアンマンの「奥さん! 落ち着いて!」
トランスフォーマーは種族的に虚無の魔法と使い魔を網羅出来る。ズルイ。


ルイズ
小動物。好きな釘宮の演技はネーナの最期だと釘宮ファンの知り合いに言うと微妙な顔をされた。


キュルケ
おかーさん。傍観者とも言う。


イザベラ
「マグナム銃振り回す」という設定付けたら筋肉も付いた。地元の若い衆と組んで、元素の兄妹ぶち殺した。尚、レイジング・ブルはトーラス社製の実在する拳銃。マルシンのエアガンはもう入手出来ない。ちくしょう。


ギーシュ
第一次大戦後のドイツの某肉屋みたいにソーセージの原料:人肉なんてオチはさすがにない。


フレイム
何かの間違いで読者の脳内ビジュアルが赤いチータスに差し替わったら作者冥利に尽きる。


マリコルヌ
某タイバニで言うロックバイソンのポジション。そして仮面ライダーデブルという呼び名だけは理性が邪魔して使えなかった。
 ザ
デブ
スター


オスマン
ジジイ。ネオスコットランドの元ガンダムファイター。今はスイカバーに刺されたヒモ。


ジャン・コルベール
ダチョウ倶楽部の元リーダー。人に言えない事をやらかして脱退した。現在は太陽の使者アステカイザー。頭が。後の恵まれし子らの学園長。頭が。


シエスタ
現時点ではしゃべるモブ。ボブカットなのにモブい。モブティマス・プライム。


マルトー
カカカカ笑う人相の悪い弟子と手癖の悪い弟子と巨乳の弟子を飼ってる、かもしれない。筋肉が重量挙げ選手のような全身くまなくのタイプ。


スカロン
ロン・ウィトウィッキー。筋肉がボディビルダーのようなカットアップタイプ。彼は突く側か突かれる側か、それが問題だ。


モット
アニメオリジナルで、数多あるSSでは極悪人扱いされるお貴族様。実際の描写は良い人。本当はシエスタは普通に良い暮らしが迎えられてたんじゃないかって気がしないでもないが多分そうでもない。
現在、当SSでは彼の表記を眉毛にするかマユゲにするか水玉ブーメランパンツにするかお稲荷様お元気ですかにするか迷っている。


アンリエッタ
表記するとHenriettaなので、アンアンはHenHenとなるのだろうか。キンキンとTinTin(タンタン)との関係やいかに。


サイト
予定では最終回に登場。使い魔ではなく。ちなみに当SSの時系列においては地球人は滅亡しているので地球人ですらない。
そこまで書けるかどうかがまず問題だ。


無茶ゴリラ
このSSにおいてイボンコという素敵ワードはいつ使えるのだろう。


カニ野郎
全然違う形で出ると今決めた。
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