ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~番外編(横浜アリーナ編) 作:マーケン
1 この物語は実在の人物とは関係ありません。
(モチーフにはしていますが性格、趣向、その他は架空の要素です)
2 この物語は作者の妄想です。
自分ではない誰かになりたいと思ったことはないか?そう問われたら恥ずかしながら私、
頭が良くて、運動も出来て、お金もあって、超能力を使えたりもして、そんな居もしない誰かになりたいと私は思ったことがある。でも、大半の人と同じように、今の自分も捨てたもんじゃ無いと割り切って、日々そんなけったいな夢を頭の片隅に追いやって過ごしている。
だから、まさか本当に自分が自分ではない誰かに成り代わるなんて思っても見なかった。
やけに固い寝心地に腰が痛み、のそりと私は体を起こした。
寝ぼけ眼に映るのは楽器のない、見慣れない殺風景な部屋。
ベッドと机と天井まで届く本棚とテレビ台をコの字に並べ四畳半程の少ないスペースを上手く組み立てた部屋は明らかに私の部屋では無かった。
記憶を辿り、誰かの家に泊まったかとも考えたが昨日は確実に部屋で寝たのを覚えている。夜中までスマホでFGOのイベント周回していたのだから確実だ。
ではここは?と当然の疑問を浮かべながら布団から這い出すと、妙に体が重く、動かし辛く感じた。
風邪でも拗らせたかとも思ったが、別に頭痛や寒気もなく、変だなと思いつつ部屋から出る。
どうやらこの家はマンションの一室のようで、どこのマンションも似た間取りのため、リビングがどこにあるのかすぐに分かった。
リビングならば誰かしら居るだろうと当たりを付けたが、その前に、と何部屋か探してトイレに入り、ズボンを下ろした時、私の時は五秒止まった。
パンツが無いのだ。本来そこにあってしかるべきパンツが。私はいつからノーパン族になったのだ、と想定外のことに一瞬尿意が引っ込んだが、仕方なしにお花を摘むと、私は急いで洗面台へと向かって鏡を見た。
そこに映っていたのは果たして、冴えない20歳代後半の女性だった。これ、なんて君の名は?
私は急いで状況を整理しようと、リビングに行き、この女性の母親らしき人への挨拶もそこそこに新聞を見て日付を確認した。私の認識では今夏真っ盛り。だが、新聞に書かれた日付は約半年後のものだった。(和暦ではなく西暦で表記されねいるのも気になったが)
「今日って平成28年7月25日であってる?」
「平成?何言ってんのか分からないけど、Aqoursのライブに行くって張り切ってたのに日付も忘れたの?」
私は念のため二重確認しようと母親らしき人に聴くと、思いもよらない返答があった。
Aqoursのライブ予定なんてまだ未定だった筈だからだ。
「どこで?単独?」
「横浜で単独って言ってたじゃない。多分横浜アリーナのことでしょ?スタジアムじゃやんないでしょうし」
私の混乱は加速度的に高まっていく。
まず私は昨日までは夏真っ盛りの自宅に居た。だから半年、未来に向けて時間のズレがある。そして、横浜アリーナでAqoursがライブをやるというのも俄には信じられない。
私は混乱する頭を整理するため、この体の人の部屋にあったノートパソコンを開き、Aqoursについて調べた。
すると、その結果はまた私を混乱させるものだった。
果たして私は頭がおかしくなってしまったのかとも思ったが、兎に角情報を集めた結果、分かったことがある。
この世界は私達の住む世界とは地続きではない。所謂パラレルワールドだと思われる。
平成という年号は存在せず、漢字はあるが、人の名前は基本的にカタカナだそうだ。常識の違いもあることながら、この世界には私達の知るスクールアイドルという概念が無い。スクールアイドルという言葉はあるにはあるが、それはラブライブというメディアミックスコンテンツの設定としての概念だ。
この世界ではラブライブは架空のアニメーション作品として扱われている。その内容は主にμ’sの物語、Aqoursの物語を描いており、その声優が現実世界でμ’sとして、Aqoursとしてパフォーマンスをしている。
そのため、この世界には千歌先輩達は存在しない。そして今日、横浜アリーナではAqours声優によるファーストライブが行われることとなっているのだ。
そう考えると、本来の私達は、私達が知らないだけで誰かの作品の世界の登場人物なのかとも思ったがそれを証明する手立ては無い。胡蝶の夢という言葉もあるように、どっちが現実でどっちが夢か、など判断できない以上考えても無駄だろう。
とにかく、この世界はスクールアイドルの無い世界という以外は恐らく私の住む世界とそれ程に違いは無いようだ。ついでに調べた地理情報や歴史の事件、カルチャーの話題はほぼ共通していたからだ。
そこで私は考えなければならない。何故私がこの世界の人物に憑依したのか?そして私はどう行動すべきなのかを。
ふと私は自分の体が今どのようになっているのか気になった。私が憑依している間、この人も私に憑依しているのではないかと。つまり、入れ替わっているのではないかと。
私は駄目元で自分のスマホに電話を掛けたが、繫がらなかった。そもそも扱われていない番号らしい。
入れ替わりか、憑依か現状で判断できない以上、これも考えるだけ無駄だ。
何故こんな事態になっているのかも同じ理由で考えるだけ無駄なので、私は自分が何をすべきか考えた。そして、直ぐにその答えは出た。
「お母さん、さん?私、ライブ行って来る」
「はいはい。気を付けて」
私は簡単に身支度を整え、チケットを持って家を出た。
私はスクールアイドルでは無いけれど、Aqoursと共に歩んできた。だから、この世界でも私は彼女達を見なければならない。そう思ったのだ。
そう言えばみんなはどうしているのだろう、と思い駅までの道中でスマホを取り出すが自分のスマホではないため、電話番号が分からないことに気が付いた。電話帳の機能は便利だが、誰かの番号を覚える気を無くさせる弊害があるため、こういう時に不便だ。
インターネットで試しに浦の星のホームページを検索したが、私の知るものとは違った。
念のためと思い私は動画サイトのジェミニのアカリのページを検索すると、何故かわからないがそこは私の知るものだった。
試してみたところログインすることも出来た。
この世界で唯一、私の世界と繫がる場所があったことに心底ホッとすると共に、そこに表示されていた最新のメッセージに私はまた沼に足を踏み入れたような不安感に襲われた。
そこにはみんなからのメッセージが届いていた。それにはこう書かれていた。
私達みんな知らない人になっちゃった、と。