ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~番外編(横浜アリーナ編) 作:マーケン
千歌ちゃんが私達の活躍を描いた作品“ラブライブ!サンシャイン!!”を見ている間に、私は前日に行われた1stライブ初日の映像を見ていた。
そこには私達がこれまでに見たことの無い形式のライブがあった。
メインステージに設置されている大型スクリーンの前でシュカさん達がパフォーマンスをするのだが、その大型スクリーンにはアニメーションで描かれた私達のパフォーマンスもまた映し出されているのだ。
それを正面から見ると、まるでシュカさん達がアニメーションの世界から飛び出してきたかのような錯覚をする。それ程にシュカさん達のパフォーマンスは私達のそれとリンクしているのだ。
「驚いた、曜ちゃん?」
「うん。一曲目の青ジャンから度肝抜かされたよ。あの正面のアングルで遠くからズームするところなんて鳥肌たっちゃった」
「ははっ、自分でやってたのに私もそうなんだよ。なんかね、お衣装を着て、ステージに立つと、あー、私今、曜ちゃんなんだって、強く思えるんだ」
「大変じゃないですか?動きを合わせようとするのって」
思い出すのは“想いよひとつになれ”のパフォーマンスだ。
あの曲は当初、千歌ちゃんと梨子ちゃんのダブルセンターだったが梨子ちゃんがピアノコンクールに出場することになったため、千歌ちゃんと私のダブルセンターになったのだ。けれど、千歌ちゃんも梨子ちゃんとの動きに慣れていたためか全然動きを合わせられなくてとても苦労した。
「それがね、最初はそうだったんだけど段々そうじゃなくなったっていうか・・・自分の動きが勝手に曜ちゃんの動きになった、みたいな?」
「ああ、それ、なんとなく分かるかも」
千歌ちゃんと組んで最初は梨子ちゃんのステップを真似て上手く回そうと誤魔化した。でも私は私のステップで良いのだと千歌ちゃんが励ましてくれて一緒にこれでもかってくらいに練習した。そしたら合わせようとか変な意識をしなくても自然と息が合うようになった。そうすることが自然になった。
シュカさんの言っていることはきっとそんな感覚なんだと思う。
「曜ちゃんは自分のステップで練習したほうがいいって言葉。あれね、そんなことないのに私にも言ってくれているような気がしたんだ。だから練習で全然うまく行かないときも、私は、ううん。私達は自分達らしさを失わないでいようって、そう思えるんだ。そしたらね、不思議なんだけど私らしさが曜ちゃんらしくなってったんだ」
自分らしさが憬れや目標そのものになるなんて両想いみたいでなんだか恥ずかしくなりそうだ。
「だからね、曜ちゃん。曜ちゃん達は思うままステージを楽しめばいいと思うよ」
「流石に私も緊張するからね。楽しめればいいんだけど」
「やっぱりこんなに大勢の人の前は緊張する?」
「うん。やっぱり大勢の人から評価されるんだなって思うとプレッシャーは感じるから」
下手に強がっても目の前に迫るライブはなくなりはしない。なら少しでも良いものになるようアドバイスの一つも欲しいところだ。なんせ昨日同じ会場でライブをこなしたのだ。これ以上のアドバイザーは居ない。
「それなら大丈夫。みんな優しいから」
あっけらかんとそう答えるシュカさんに、私は既視感を覚えた。そう、それはAqoursが始動して間もない頃、千歌ちゃんと私と梨子ちゃんの三人で学校の体育館でライブをすることとなった時のことだ。
その時は練習やら準備やらで忙しく、終バスの時間を過ぎてしまった時のことだ。千歌ちゃんのお姉さんが車で自宅まで送ってくれることとなり、世間話しながら車に乗っていた時に今のシュカさんと同じ様な事を言っていた。
その時は聞き流していたけれど、お姉さんの言う通り、ライブに足を運んでくれた街のみんなはとても暖かく私達を受け入れてくれた。
「確かに、ここに来てくれるみんなが純粋に私達を見たいと思って来てくれている訳ではないよ」
ラブライブ=μ'sのイメージを持つ人、μ'sの影を追い掛けている人など、所謂μ'sロスの人も多くいるのも事実だという。
「でもね、その人達が見たいものって必ずしも特定の形のあるものじゃないんだと思うんだ。何って言われると表現が難しいんだけどさ」
ラブライブが人を惹きつける何か。それをμ'sがやっていたように、私達がすることができればμ'sを追い掛けている人達にも楽しんで貰える。
昨日のライブを終え、シュカさんはそう実感したという。
「だから精一杯、一っっっ杯、汗かいて、全力を見せよう。きっとそれが今私達にできる輝くって事と繫がってるんだよ」
輝くってなんだろう、といつからか私達は自問し続けていた。その答えの一端をシュカさんは感覚的に掴んだのだ。
このライブのサブタイトル“STEP ZERO TO ONE”の名の通り、シュカさんは昨日のライブを乗り越え一歩先に進んだのだ。
楽しげに、自信ありげに語るシュカさんに、私は追い付きたい、知りたいという気持ちが芽生えた。
「私、輝きたい」
「うん!」
溢れ出した感情は言葉となり、口を通して出ていた。それをシュカさんは全力で肯定してくれる。
私は段々とプレッシャーよりも好奇心と高揚感が体の内から湧いて来るのを感じた。
気付いたときには早くライブがしたい、と純粋に思えるようになっていた。