ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~番外編(横浜アリーナ編)   作:マーケン

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次回は10/27更新予定


第十六話

 ユキコさんが病院に行くのを見送ると同時に、私達もまた横浜アリーナに向かおうと、地下の駐車場に足を運び、送迎用に用意されたハイエースに乗り込んだ。

 ハイエースは運用の幅が非常に広いことで有名で、素体車、万能車の異名を持つ程だ。どれくらい万能かといえば救急車としても使えるといえば凄さが伝わりやすいだろう。

 ハイエースはカタログスペックの水準もさることながら、カスタマイズ性の高さからここまで普及することとなった。更に普及することでオプションパーツの種類が増えたり、パーツが手に入りやすくなったりと、相乗効果で今の地位を確立したのだ。

 私達が乗りこんだものは外観こそ普通の黒塗りハイエースだが、内装のレイアウトがカスタマイズされている。

 移動中も映像チェックできるよう座席にモニターを取り付けたり、長距離移動でも耐えられるようシートを程よい堅さのものにしたり、更に言えば各キャラクターのモチーフが各シートにあしらったりとAqours仕様に変えてある。こういったAqoursメンバーやそれに近い関係者にしか伝わらない拘りからも如何にAqoursが、ラブライブが愛されているかが窺える。

 

「流石は丸ちゃん、物知りだね」

 

「地方では愛車兼仕事車として愛用する人が多いずら。沼津でも乗ってる人をよく見るから一度調べたことがあるの」

 

「丸ちゃんは本当に好奇心旺盛だよね。流石ズラペディア」

 

「それ褒めてるずら?それとも馬鹿にしてるずら?」

 

「褒めてるの」

 

 カナコさんは心底関心した様子で言うので疑ったこっちが何だか馬鹿らしい。

 しかしズラペディアはネーミングとしてどうなのだろう?ウィキペディアに掛けているのだろうけれどせめてマルペディアとかはどうだろう?

 

「ズラ丸、何で車から降りるの?出発するんだから早くしなさい」

 

「了解ずら」

 

 そうこうカナコさんと話していたらついつい夢中になり車の観察を始めていた。それを善子ちゃんに窘められてしまった。いつもは私が善子ちゃんを窘めるので立場が逆転してしまった。

 私は慌てて車にハイエースに乗り込むと、すぐに運転をしてくれるスタッフの方が運転席に乗り込んだ。

 

「鞠莉ちゃんと梨子ちゃんは先行っちゃったけど、これで全員集合だね」

 

「それじゃあ横浜アリーナに向かって全速前進ーーーー」

 

「ヨーソローーーっ!!!」

 

 千歌ちゃんと曜ちゃんが中心となり意気揚々と私達は掛け声を出し、ハイエースは私達と夢を乗せてホテルを出発ーーーーーすることは出来なかった。

 

「あれ?」

 

「エンジンが」

 

「掛からない、ずら?」

 

 鍵を捻れども捻れども、エンジンがうんともすんとも言わない。

 スタッフの方か慌てて車から降り、車体の確認をするけれども素人には外観の確認くらいしかできない。異常の有無が分からない以上、エンジンが点くことはない。

 

「直ぐに別の車を用意します」

 

「あ、そんなに気にしなくていいですよ。目と鼻の先ですし車なんて贅沢ですよ。歩いて行きます」

 

「Aqoursの皆さんは今日の新横浜での知名度は相当なものですよ!?歩いて会場入りなんて無茶ですよ」

 

「うーん、直ぐそこなんだけどね」

 

 千歌ちゃんが難しい顔で唸る。

 私はカナコさんに確認しながら駐車場にある他の車を見て回るけれど、スタッフさん達が使っている車両は出払っているようだった。

 

「ちょっと善子ちゃん。トラブル起こさないでよ」

 

「リリーッ!?私のせいじゃないんだけど!?」

 

「だって善子ちゃん運ないし」

 

「何よぅ、リリーだって大概じゃない」

 

「やめるずら。でも、新しい車を手配する時間も勿体ないのも確かずら。やっぱり直接行くのがいいと思う」

 

「じゃあひとっ走り行こうか」

 

「それなら“スクフェス”ジャージが良いかと。丁度駅伝部のユニフォームみたいなデザインですし、固まってランニングしていれば逆に目立たないのではないかと」

 

 因みにスクフェスとはこの世界の音ゲー系のソーシャルゲームであり、オールメディアで展開しているラブライブのゲームの一つだ。スクフェスジャージほそのゲームのリアルイベントの際に販売された各メンバーカラーが施されたジャージだ。

 丁度今、みんなが着ているジャージがそうなのだけれど、そう言われると段々とそれらしく見えてくる。特にダイヤさんの着ている白地に赤が入っているジャージはかなりぽく見える。

 

「それにしても細かいトラブルが続くね」

 

 誰が言ったことなのか、その言葉は不思議と私の胸に響いた。

 ヘアメイクさんの重鎮がベッドの角に指をぶつけ、送迎用のハイエースのエンジンが入らない・・・なんだか字面だけ見ると大したことの無いように思えるけれど、なんだか何かの前触れなのではないかと邪推してしまう。

 

「でもそれってライブにはつきものなんじゃない?無い方が良いのは勿論そうなんだけど、全部順調なライブなんて今まで一度だって無かったよ」

 

 思えば初めてAqoursが始動したライブなんてその最たるものだった。千歌ちゃん達はそれでも歌うことを止めなかったけれど、私ならきっとライブ中に停電なんてなったら手も足もでなくなってしまう。

 

「だから心配ばかりしてもしょうがないし、このままライブまで突っ走ろう!浦の星駅伝部行くぞー」

 

 千歌ちゃんが真っ先に走り出し、私達も一緒に走り出した。

 そうだ。千歌ちゃんの言うように心配ばかりして前に進むことを忘れてはいけないのだ。

 やってみて、問題があったらその時に対応するしかない。色んな事が違うこの世界で私達が出来ることはそれくらいなのだから。

 

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