ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~番外編(横浜アリーナ編)   作:マーケン

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次回は11/10更新予定


第十九話

 最初にダイヤから連絡を貰った時はもう慌てに慌てた。もしダイヤ達が外に居るということが外のファンにバレたら大混乱になることは必死。望もうが望まざるが関係なく怪我する事だって十分考えられる。

 私はそうきたか、と独り言ちた。今回の憑依事件はきっとこういったトラブルを解決し、ライブを成功させるために起こったことなのだろうと確信した。

 私は一旦行っていた作業を中断し、出入管理しているスタッフと警備の元に足を運び事情を説明した。

 

「その作戦大丈夫なの?」

 

 入り口を開くのは一瞬。本人確認云々はみんなメンバーの顔を嫌というほど見知っているので省略。後は万が一ファンに動きを察知された時の対策だが、梨子と私で別々の場所から会場の外に顔を出して注意を逸らし、その間にスタッフが強引に引っ張り込む作戦だ。

 アイナは心配そうにするけれど、この短時間で考えた中では最善だと思う。それにだ。

 

「星が居るから何とかなるよ」

 

 あの子もこの世界に来ているとは聴いていた。けれどこうして一つの目的のために一緒に動くこととなって初めて同じ世界に居るという実感が湧いた。

 

「さっき言ってた子のことね。そんなに凄いの?」

 

「凄いよ。きっと本人は否定するだろうけど」

 

 アイナによると星はこの世界でアニメに描かれるAqoursの活躍の中には存在が確認できないらしい。だからアイナには私達か繋いだものや積み重ねたものが分からない。いきなり信用しろなんて言えない。けど、

 

「No problem.私が保証する」

 

「なら安心。やりましょ」

 

 私のことは信頼してくれている。だから、私の一言でアイナは安心してくれる。それが凄く嬉しくて、どからこそ今日という日を成功させたいと思った。

 私は時計を何度も確認して、3階部分の開閉可能な窓に配置した。

 窓は開けずに外を覗き込みメンバーの潜伏場所を確認し、一安心した。

 

「ファンのみんなは直ぐ後ろにAqoursメンバーが居るって知ったらどんな顔するかな?」

 

 悪戯っぽくアイナは言うけれど私は中々そこまで余裕が出なかった。作戦の決行場所に星が来ないからだ。

 残り10分前になり、5分前になりまだ来ない。

 

「鞠莉。大丈夫。信じなさい。貴方が信じた子のことを」

 

「ーーーーうん」

 

 焦りはしかしアイナには筒抜けで、逆に私を励ましてくれた。

 本当に、私達の関係は不思議だ。今日出逢ったばかりだというのに、早くもお互いが相手のことを理解しあえている。不安な心も、信じる強さも、自分のことのように。

 

「ほら、鞠莉のお待ちかねの人だよ」

 

 だからなのだろうか?私が気付くよりも先にアイナは星を見付けた。

 私達の誰一人としてこの世界の星が憑依している人の姿を知らないというのに。

 私は気付けば窓を開けていた。流石に顔を出すことはしなかったけど、外をこっそりと覗き込むことは問題ないはずだ。

 

「聴いてください。“ユメノトビラ”」

 

 その声は正しく私の知る星のものだった。

 それ程大きな声でも通る声でも無いのに、凛と鈴を鳴らすかのようにハッキリと聞き取れた。

 

「鞠莉の言うとおりだ」

 

 彼女の奏でる音色は見る間にファンの視線を、いや、心を瞬く間に掴んでいった。

 

「凄いでしょ。浦の星の期待の転校生なんだから」

 

 演奏の間に全力で駆けるメンバーの姿が目に入った。けれど、その姿が誰かに見咎められることはな居。みんなの視線は今、この時は星に注がれていたからだ。夕暮れに見える一番星のように、今は彼女の独壇場だった。

 私は急いで一階に駆け下り、無事に会場内に入ったみんなを出迎えた。梨子も同じ事を考えていたのだろう。丁度同じタイミングで梨子も降りてきた。

 

「みんなお帰り!」

 

「来たよ、横浜アリーナ!」

 

 無事に全員集合したことでスタッフも私達もわっと歓声に沸いた。それは外のパフォーマンスにも負けないものだった。

 

「よーし、じゃあ早速着替えてリハーサルを・・・」

 

 そう意気込む千歌っちには申し訳ないけれど、私は残酷な事実を伝えなければならなかった。

 

「できないのよ。リハーサル」

 

「ほぇ?」

 

「バズーカで飛ばすテープに印刷ミスで何も書かれていなくって、手書きで今書いてたところなの」

 

 そう。ダイヤから連絡が来る前に行っていた作業とはひたすらテープにメッセージを書き込むことだった。全員揃ったことで作業スピードも大幅に上がるだろう。

 

「テープ一枚一枚にメッセージが書いてるの?それって凄くない!」

 

 それは私も館内を巡回していた時に聴かされて驚いたことだ。けれど、それだけに大変だった。少し後になってから来た梨子を捕まえて二人で黙々とテープにメッセージを書き続けた。

 

「本当にファンのみんなを大切に思ってるんだね」

 

 プロジェクト全体でそう思っていることが凄苦嬉しい。今にもみんなを抱きしめたいとでも言うように果南は言った。

 

「そうやって一つ一つ、丁寧に伝えたいんだよ。だから頑張れるんだ」

 

「アイナ」

 

 それは私も、いや。みんな同じ気持ちだった。

 

「よーし。星に負けないように私達もシャイニーするわよ!」

 

 オー、と私達はスタッフも込み込みで円陣を組んで大きく気合いを入れた。

 

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