ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~番外編(横浜アリーナ編)   作:マーケン

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第二十話

 みんなでせっせと作業を行った結果、一時間程でテープへのメッセージの書き込みは無事に終わり、一、二年生は早速リハーサルに取り掛かった。

 私達三年生は他の学年に比べ一曲分パフォーマンスの回数が少ないため、その時間を使ってメッセージ入りのテープをメインステージ前のバズーカまで運んでいた。

 なんでも時間が押した結果、人手が足りないらしいのだ。確かにバックヤードでは導線を確保しながらも通路上にまで荷物が溢れ、スタッフが忙しく動いている。あからさまに準備が追い付いていないのが見受けられる。

 

「ライブ一つをやるだけでこんなにも沢山の人が動いているなんて、私知らなかったよ」

 

 今まで自分達のパフォーマンスを披露することだけに集中していたため気にも止めていなかったことを私は改めて実感している。

 ラブライブ運営は大会に参加するにあたり、パフォーマンスをする場所をある程度提供してくれたり、演出については最大限バックアップしてくれたりするのだ。だから私達スクールアイドルは余計なことを考えずにいられる。

 もちろんグループ独自の活動としてのライブやPVを作ったりするのは全て自分達で賄うこととなるけれど、大きな母体のあることで活動しやすくなったりと恩恵を受けている。私達が知らないところで私達の知らない人が頑張った結果か高じてそうなったのだから、人の繋がりは本当に奥が深い。

 

「だけど今日、こうしてみんなで作業に関わってそれを知ることが出来てよかったと思ってる」

 

 たかがテープの一枚。吹けばどこかへと飛んでいってしまうそれの、一枚一枚にまで想いを込めたライブ。そんな事を知らないでいるのは無知を通り越して罪だ。

 

「空から振ってきたこれを見て、今日来て良かったなとか、明日からまた頑張ろうとか、そう思って貰えたら凄く素敵なことだと思う」

 

「それこそ私達の与り知らないところで、だね。果南の言う通り、作品を通して人に影響を与えるって凄いんだよね。それこそ人生を変えたりするんだから」

 

 ナナカさんはきっと自分の体験のことを言っているのだろう。

 “ひだまりスケッチ”という作品に出逢ったことで今に至ったナナカさんだけれど、それこそ作者のうめ先生の与り知らないところで起きたことなのだから。

 

「あ、これがステージ」

 

 バックヤードから会場内には入ると途端に景色が広がった。

 楕円形に広がったそこは何故だろう、果てが見えるというのに宇宙にでもいるような不思議な気分になった。

 準備をするために手元が暗くならないようまだ照明は煌々と点いている。だから場内の様子はよく見渡せるけれど、そこには見えるもの以上に未知の事が沢山あってそう感じたのかもしれない。

 

「そっか、果南は会場に入ったのは初めてだっね」

 

「予選の会場と同じくらい?いやもっと奥行きがあるのかな?」

 

「どう?私達のステージは?」

 

「凄い“らしさ”がある」

 

 ラブライブの大会会場は確かに大きい。けれどある意味でフェス形式なライブのため、セットや装飾に自分達らしさを出せないのだ。けれど今日は単独。Aqoursの冠が真昼の太陽のように頂きにあることをはじめ、9色のメンバーカラーが虹を作っている。

 

「果南見とれてる?」

 

「今行くよ」

 

 思わず立ち止まってしまった私に鞠莉が声を掛けてくれた。ダイヤも先に行くことはせずに待っていてくれる。

 

「スクールアイドルの聖地とも言えるアキバドームは約4、5万人を収容するそうです。そう考えるとラブライブ本戦の会場が如何に途方もないかよく分かりますわね」

 

「そうだね。でもダイヤは怖くはないんでしょ?」

 

「鞠莉さんだって。それに果南さんも」

 

「そうだね。武者震いっているのかな?早くステージに立ちたいな」

 

 きっと今の私の顔は人に見せられないようなニヤけ顔をしているだろう。流石にこれはナナカさんに申し訳が立たない。彼女のステージ上での立ち振る舞い、特に表情は本当に楽しそうな笑顔一杯で素敵なのだ。

 

「いいんじゃない?だって楽しいって気持ちは本当なんだから」

 

「でもナナカさんのイメージが」

 

「イメージよりもどうやって“楽しい”を伝えるかじゃない?それって私達が楽しいって思ってなきゃできないことでしょ?だったら心から出てくるものをそのまま出していけばいいんじゃない?それこそこのテープのようにパンッ、て飛ばしちゃえばさ」

 

「果南。早くやりましょう。time is moneyよ」

 

 そんなやりとりをナナカさんとしている間にダイヤと鞠莉は段ボールを開けてテープを取り出しそそくさと作業を開始していた。

 慌てて私もステージの直ぐ前に設置されたバズーカにテープを一本一本丁寧に入れていく。

 

「これって纏めて入れちゃ駄目なんでしょ?」

 

「そうですわ。一本一本入れないと綺麗に広がらないとのことで」

 

「飛ばす時は一瞬なのにその一瞬のためにこんな大変なことをしているんだね」

 

「労力としては大変だけど、全然大変なんて思わないな。だって、私達の気持ちが沢山篭もってるんだから」

 

 きっとみんなとスクールアイドルを続けて、ラブライブで優勝したとしてもこんな規模のライブは開けないだろう。だから私はこの奇妙な体験を精一杯、隅々まで楽しもうと思う。それこそが私達かここに居る理由なんだと思うから。

 

 

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