ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~番外編(横浜アリーナ編)   作:マーケン

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第二十五話

 量としては細やかな、けれど楽しい食事はあっという間に終わった。私達は舌鼓を打った料理だけではないものにお腹も胸も満たし、残りの時間を打合せとストレッチに費やすこととなった。その時間の中、私達1年生組はほんの少しだけ場内を回る時間を貰うことが出来た。それは本当に幸運だった。

 

「もうすぐ入場が始まるんだよね」

 

「そうね。一万人以上のリトルデーモン達がこの饗宴にーーーーー」

 

「そうずらね」

 

「軽く流されたっ!?」

 

 一般共用通路に行くためにバックヤード内を歩く。

 ここに行く前に私は鞠莉さんやダイヤさんから言われたことを思い返してた。

 曰く、触れるな、踏むな、蹴飛ばすなを心掛け、不審物を見付け次第速やかに報告すること。不審者が居たら不用意に近づかないこと、等々の注意事項を言い渡されたのだ。

 場内を見て回る最後のチャンスだからと言っていたけれど、私はそういった観点での心配はあまりしていなかった。私達はなんというか、そう言うのではないと思うのだ。

 

「もしも学校にテロリストがやってきたら、とか花丸ちゃんは妄想したことない?」

 

「カナコさんはあるずら?」

 

「そんな事ばっかりだよ。電車とか乗って景色を見てると建物の上をマリオが飛びながら高速移動しているのを妄想したり、雲と雲の間に橋を架けて渡る人がいたりとか」

 

 そんな事を照れながらいうカナコさんの言葉に私は内心で物凄く同意していた。

 物語が好きだからなのだろうか、私は無いところに何かを描く事がしばしばある。

 読んだ本には私達の知らない過去や続きの世界があるし、どこかに置き忘れて無くしてしまったハンカチは誰かの涙を拭いているかもしれない。そう考えると色々な物事に意味があるように感じられる。意味があると物語が生じてくる。それを考えるのが楽しいのだ。

 

「花丸ちゃん、考えが筒抜けになってるよ」

 

「ずら!?」

 

「私もね、アニメとかゲームが大好きで、それって物語があるからなんだ」

 

 30分の物語や、ある程度自由度のある物語。私の好きな本という媒体とは形が違うけれど、何だか共通項があると思うと親近感が湧いてくる。

 

「カナコさんの妄想的にはどう思う?」

 

「今回の憑依の件だね。多分テロとか大型事件とかじゃないと思うよ」

 

「やっぱり?オラもそう思う」

 

 その考えがある程度確信に近い感覚となったのは横浜アリーナへの入場作戦の時のことだ。

 ここに来ている人の作品に対する想いが温かいこと。それが良く分かったからだ。

 確かに想いも高じれば、とか沢山の人が居ればごく一部は、とも考えられる。けれど、自分達の目で見た景色には、そんな影は映らなかった。それが根拠だ。

 

「愛が愛を、重すぎるって理解を拒み、憎しみに変わってく前に、か」

 

「それは誰の曲?」

 

「UVERworldの儚くも永久のカナシ。ガンダム00で使ってたOP曲。この曲ってタイアップした作品を切り離しても良いんだけど、ガンダムとセットで歌詞を聴くと凄くリンクしてて、スッと体に入ってくんだ」

 

 グループとして見ればUVERworldはアニソングループとは言い難い。けれど、そのタイアップした楽曲の数々はアニソンとして確立されるだけあり、作品の世界観がよく伝わるのだという。これぞアニソン、とはカナコさんの談だ。

 

「でも今日はこの曲の気分じゃないかな」

 

「鞠莉さんとかダイヤさんはどちらかといえぱそういうのを気にしてたみたいだけどね」

 

「鞠莉さんもダイヤさんもリアリストだしね」

 

 鞠莉さんは小原グループの、経営者としての教育を受けているし、ダイヤさんはルビィちゃんという庇護対象がずっと居たのだ。だからみんなが心配しないようなことも気を配ったりできるのだろう。

 そんな誰かの足りない部分を誰かが補ってというのがチームっぽくてとても良いなと思った。

 

「この辺って花置いてたのかな?」

 

「それにしては花弁の一枚も落ちていないけど?」

 

「でも香りが」

 

 ルビィちゃんや善子ちゃんの言うように共用通路に近づくに連れ、次第に鼻孔に訴え掛けてくる存在感があった。

 

「わぁ」

 

「これは・・・すごいわね」

 

 そしてバックヤードを抜け出るとそこには所狭しとフラワースタンドが飾られていた。

 

「開いた花の香りから」

 

 その景色から得たインスピレーションはきっと次へと繫がって行くものだと思う。口を吐いて出たフレーズは良く口に馴染んだ。

 

「凄いよ、一流レーベルから届いてる」

 

「個人名義のものもこんなに沢山」

 

 そのフラワースタンドを見て回っていると、ふと小さく纏まった造花の花束が目についた。それは奇しくも各メンバーカラーに染められた九本の花束だった。

 

「えっと、個人名義だからかな」

 

 何故かは分からない。けれどその花束はやけに目を惹いた。

 見た目は何と言うことは無い。炉端の綺麗な花を誰かが拾い集めただけの花束に過ぎない。

 

「えっと、エミさんに、ヨシノさんに・・・へー、一人一本ずつ用意したのかな?」

 

 そんな何でも無い花束がそう、親近感が湧いたのだ。

 

「それだけラブライブが、私達が愛されてるってことだね」

 

「確かに受け取ったわ、勤勉なるリトルデーモン達の想い」

 

「そうずらね。本当にこのタイミングで場内を回れて良かった」

 

 開いた花の香りから受け取った想いを胸に、私達は今日という日を良いものにしようと改めて思った。

 

 

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