ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~番外編(横浜アリーナ編)   作:マーケン

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第二十六話

 横浜アリーナから戦略的撤退をした私は減った腹を満たそうと新横浜駅直結の駅ビルを散策していた。

 埼玉に住んでいた頃は駅ビルと言えば池袋の東武か西武と相場が決まっていたけれど新横浜は初めてだ。

 入居しているレストランのラインナップも全然違う。池袋に行った時なんかは背伸びしてグリル満天星に入り、オムライスを食べたりなんかしたけれど、残念ながらここにはなさそうだ。

 トラジや今半なんて高級店があるけれど、流石にそこに入るのは勇気がいる。そういった意味でグリル満天星はちょっとの背伸びで入れるから良かった。

 さて、どこに入ろうかと店のグレードを下げようかとフロアを移動していると、ふと目を惹く文字が書いてある看板を掲げている店があった。

 沼津魚がし鮨。まさかこんな場所で沼津という地名に触れる事となるとは思わなかった。

 普通なら回転しない寿司屋など入ろうなんて発想には至らないけれど、この時の私は吸い込まれるうに自然な足取りで店に入った。

 店内に入り、板前さんの前のカウンター席に座り、出された温かいお茶にホッと一息吐いて、近海握りのセットを注文した。

 落ち着いた店内にはだが、私と同じように店名に惹かれたのか、今日のAqoursのライブを見にきた人と思われる方達が、思い思いに今日のライブへの期待などを語っていた。

 私はスマホでネットでの話題、書き込みなどを巡った。特段、変な危険思想のある書き込みはなく、大凡は期待に胸が膨らむような、そんな内容だった。

 ただ一部残念に思ったのが、μ'sの偉大さを誇張してAqoursを貶めるような内容の書き込みがあったことだ。

 私達の世界でもμ'sの活躍は英雄譚のようであった。

 廃校の危機になった学校を救うべく、世に流行りだしていたスクールアイドルμ'sを結成し、まだ黎明期のラブライブにおいて、流行の火を灯した王者のA-RISEを破った。その勢いで、海外にスクールアイドルというコンテンツを紹介し、国内においては一過性の流行で終わらないようにとスクールアイドルコンテンツの魅力を世に浸透させた。それがたったの一年の出来事とは思えない密度の活躍で、どからこそ歴代のラブライブ王者の中でもμ'sは特別視されている。

 この世界においてはまた違った側面で語り草となっている。

 スクールアイドルという単語を売りに紙面上で始まったそれは当初はアイマスのパクりだの二番煎じの打ち切りコンテンツだのと侮られて居たけれど、プロジェクトのスタッフ達のサポートのもと、キャラクターの声優達がリアルの世界に架空の世界のパフォーマンスを再現することに成功したことで評価が変わり、そしてそのパフォーマンスでもってアニメ化にこぎ着け、劇場映画化され、そして東京ドームでライブするに至った。

 それがどれだけ凄いことかと言われたら、魔法の天使クリィミーマミの主人公がリアルアイドルとして東京ドームでライブするようなものだと例えると分かり易いかもしれない。

 だからそのパフォーマンスで世間の評価を変えたこの世界のμ'sが凄いことも理解できる。できるけれど、積み重ねたものがAqoursとは違うのだから、パフォーマンス面での比較評価をするのはフェアじゃない気がする。この世界においてAqoursまだ始まったばかりで、これからのグループなのだから。

 そんな風に考えているとやはりというか、今日のライブに参加すると思しき客らの会話もその方向の話しとなった。

 

「お門違いとは分かってはいるけどさ、やっぱμ's来ないかなって思っちゃうんだよね」

 

「確かに。やっぱりもう一度ってのはあるよね。でもそれしたらAqoursのライブを完全に食っちゃうからそれは無いよ。流石に」

 

「だよね。でもやっぱキャストとファンの完成度が違うからさ。あの一体感は忘れられないよ。もう一度やりたいな」

 

「Aqoursはまだ手探り感あるからね。でも豊洲PITでやったクリスマスミニライブの動画見たでしょ」

 

「あのミニライブはAqoursの評価ぐっと上げたと思う。最初の頃のAqoursとは比べものにならないほどタフになってたし、君ここのハモり」

 

「あれね。回を重ねる毎によくなってってるよね」

 

「そうそう。やっぱその辺がラブライブなんだなって安心した。キャストと一緒に成長するコンテンツって言うかさ」

 

「はいはい、それね。でもダンスはやっぱμ'sのかが好きかな。練度の話しじゃなくて好みの話しなんだけど、ラブライブってツーステップって感じするじゃん。Aqoursは何かツーステップ感が少ないから再現難しいんだよね」

 

「ダンス再現するのは良いけどライブ中にやらないでよ?周りに迷惑になるから」

 

「そういってMusic S.T.A.R.T!!で踊ってたの誰よ?」

 

「いや。あれは我慢、無理、踊る」

 

「何でカタコト?」

 

 なんて会話だったけれど、そこにはそれぞれの思い入れとかあって、なんだか嬉しくなった。作品をしっかりと愛していることが伝わってきたからだ。

 こんな温かなファンの人が大勢いるコンテンツなのだ。きっと事件なんてのは起こらずライブは無事に行われるだろう。だとすると、Aqoursや私がこの世界に招かれた理由はライブ中のパフォーマンスに関することなのではないかと、一抹の不安を覚えた。

 例えばライブ中の水分補給が足りずに倒れてしまうとか。実際、初日にはペットボトルが中々ホルダーから抜けないなんてプチアクシデントがあったようであるし。

 

「電話は・・・流石にもうでないか。メッセージだけ皆に送っておこ」

 

 怪我無く無理せずに楽しんでね、とメッセージを送り、私は握られた寿司に舌鼓を打った。味は勿論、言うまでも無く美味しかった。

 

 

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