ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~番外編(横浜アリーナ編)   作:マーケン

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次回は12/22更新予定


第二十九話

 私は寿司を食べた後は喫茶店に入り、ひたすら情報収集に努めたけれど、元の世界に戻る方法とかを思い付くこともなかった。

 何かを成さなければならない線を疑っているけれど、きっと何かを成すとしたらAqoursのみんなだ。私に出来るのは周りからそれをサポートするだけである。

 私は少しでもその助けになろうと開始時間の30分前から会場の外周部を見回っているが、人が多すぎて不審者の紛れ込む余地は十分ある。けれど、あからさま過ぎる不審者は見た限りいなそうだ。不審物の設置されるような懸念は意外と少ない。人の多さに比べ会場の周辺は意外と綺麗な状態を保っている。よくよく考えればこの会場に来る前に一通り装備品を整えている人か殆ど。その上、マナーを守らなかった時、コンテンツの開催するイベントにどの様な影響を与えるかみんな承知しているのだ。下手にゴミを捨てたりはしない。

 所詮は私個人で出来る巡視などこの程度。見て分かったけれど、ライブスタッフの相当数が動員されて入場客の案内や誘導、巡視をしている。ここは寧ろ中に入る方が賢明かもしれない。

 私はそう思い、立見の入場待ち列のある駐車場に向かい列に加わった。

 一つここで再燃するのがこの人の所持するチケットの名義がこの人のもので無いと言うことだ。

 もしも入場する際に本人確認を受けたら終わりだ。入場することはできず、施設内の見回りやみんなの晴れ姿を見ることができなくなる。

 そんな気持ちを抱えて待っていると、間もなく入場時間となり、アリーナ席の客から入場が開始する。

 次第に傾いた日も地平線に近づき、空が赤から紫に、紺から黒に移ろいはじめた。昼から夜への境界だ。

 この世界に舞い込んだときに事例の一つとして“君の名は”を思い浮かべたが、その作品内でもこの時間帯の事を黄昏時という言葉で語られていた。

 誰そ彼、つまり逢魔が時のことを言い、この世ならざるモノと遭遇する時間なのだという。

 他にも私が以前読んだ小説“東方香霖堂”では紫という色は境界のことを表すと書かれていた事を思い出した。

 つまりは夕暮れとは現世と常世の境界なのだ。

 そんな時間にライブ会場に入場すると思うと、本当に別世界に入り込むかのような、そんな気分になる。もっとも、私からすれば既に別世界であるのだが。

 ラブライブのライブはアニメという架空を架空のまま終わらせない。実際のキャストがアニメーションのパフォーマンスをすることで、まるで自分達がラブライブの世界に入り込んだような感覚を与える。そんな背景を考えると、もしかしたらだが、黄昏時だからこそ、入場時間がこの時間に設定されているのかもしれない。

 刻一刻と空から赤い部分か少なくなり、紫色の境界を紺色が押し込む。列もどんどん会場内に入って行く。この分だと本人確認は全員を対象にはしていないようだ。恐らくはランダムピックなのだろう。だとしたら怖い反面、少しは入場できる目が出てくるというものだ。

 なるべく私は挙動不審にならないよう平静を装い、進んでいく列に着いていく。

 駐車場から階段を上って二階に上がり、小さな入り口から中に通される。どうやらメインエントランスから入れるのは一階席の人だけのようだ。そして、アリーナ席、スタンド席、立見と入場時間をずらす事で少人数での入場管理をすることに成功しているのだろう。

 施設内に入って間もなく、荷物の目視検査とチケットの確認があった。

 パリッとした小綺麗なスーツに身を包んだスタッフさんが一人一人チケットを確認しているけれど、本人確認証は見せている様子はない。と言うか、なんだか不慣れな様子でそれどころではなさそうに見える。と言うよりだ。なんでみんなが“もぎり”してるのだろうか?

 スタッフさんはみんなマスクを付けているから分かりにくいかもしれないが、Aqoursのみんながもぎりをしている。

 声を掛けたいけれどそれをしたら大きな混乱になるだろう。それは向こうも同じ様で、私を見て気付いた様子はあったけれど、声を掛けてくることは無かった。

 ただ、私の居る列のもぎりである鞠莉さんはその辺は上手かった。

 

「アリーナBブロックのこの番号ってどの辺ですか?」

 

「この番号はステージから見て左の通路側の角よ」

 

 私の居る場所を覚えられる様に敢えて番号を強調した。私の反対列のもぎりをしていた果南さんにも伝わった筈だ。

 私はアイコンタクトで鞠莉さんに頑張って、と伝えると、マスクの上からでも嬉しそうにしているのが伝わってきた。

 

「さて、精一杯応援しますか」

 

 私はチケット確認後は立見という特性からか、引率されて列ごと場内に入っていくこととなった。

 困ったことにここに至った時には既に開演時間の間近。とてもでは無いけれど場内を見回る時間は無かった。

 大丈夫かなとも少し思ったけれど、アリーナ内にまで漂ってくる花の香りが私から不安感を払拭させた。それだけ多くの花が寄せられたということは、やはりこのグループは多くの人から愛されているのだ。だからきっと大丈夫。後はみんな次第だ。

 

「頑張れ」

 

 そう心から祈った。アリーナ内にはその祈りを代弁してくれるかのようにサイリウムが灯っていた

 

 

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